
昔から、トマトが赤くなれば医者が青くなる、といわれるほど、健康的な食材として親しまれてきたトマト。
現代でもその機能性が注目されていますが、現時点で期待できる効果にはどのようなものがあるでしょうか?
トマトに含まれる成分のはたらきと、私たちがトマトを食べることで得られる効果の実際について解説します。
Contents
トマトといえば、リコピン?機能性成分について
トマトの鮮やかな赤色は「リコピン」と呼ばれる色素によるものであり、赤色が強いほどリコピンを多く含みます。
リコピンは「カロテノイド」というグループに属する成分で、試験管内では活性酸素を除去する抗酸化作用などのはたらきを持つこと*1)が知られています。
*1)Di Mascio P.Kaiser S,Sies H (1989)Lycopene as the most efficient biological carotenoid singlet oxygen quencher Arch Biochem Bioρhys 274,534−538
そのリコピンが体内に入ることで、
・美肌効果
・ダイエット効果
・生活習慣病予防効果
などの効果があるのでは?と期待され、研究がすすめられています。
トマトリコピンにダイエットや美容の効果はあるの?
効果について科学的根拠がないのが現状
リコピンは代謝を上げてダイエットに効果的、抗酸化作用で美肌効果も、というウワサがあります。
しかし、実際にはリコピンに関してダイエット効果や美肌効果ががあるとする「ヒトを対象とした研究報告」はなく、根拠のない話のようです。
かつてトマトの成分を含んだサプリメントが、根拠がないにもかかわらず飲むだけで痩せる効果があるかのように表示し、消費者庁から措置命令を受けた例があります。
いまだにリコピンが含有されていることによってダイエット効果・美容効果をにおわせるダイエット用のサプリや食品が出回っていることがありますが、科学的根拠に基づいたものではないことは知っておきたいポイントですね。
過剰摂取や濃縮物は注意が必要
効果があるか確認できていないということは、「たくさん食べれば」「濃縮したサプリを飲めば」効果があるというわけではありません。
トマトの過剰摂取により健康被害を受けた例も報告されていることからも、むやみにたくさん食べたり、濃縮したサプリを飲むというのはおすすめできません。
特に、サプリのように濃縮されたものでは、通常ではありえない量の食品成分(今回の場合はリコピン)を一度に摂取することにつながります。
トマトの価値は「リコピンだけ」じゃない!野菜不足の助けに
健康のためには野菜を1日350g食べましょう、という言葉はかなり広まってきたものではないでしょうか?
1日あたり野菜を350g程度食べることがすすめられている理由は、食物繊維や抗酸化作用を持つビタミンC、取りすぎた食塩を排出してくれるカリウムなどがふくまれているため。
食物繊維、ビタミンC、カリウムといった栄養素は十分な量をとることで、将来の循環器疾患やがんの予防に効果的に働くと考えられています。
世間の注目度はリコピンのほうが大きいですが、ヒトの体にとっては、ビタミンCやカリウムのほうがより大きな意味を持つといえます。
トマトに含まれる栄養素
トマト | ミニトマト | |
エネルギー | 19kcal | 29kcal |
水分 | 94.0g | 91.0g |
たんぱく質 | 0.7g | 1.1g |
脂質 | 0.1g | 0.1g |
炭水化物 | 4.7g | 7.2g |
食物繊維 | 1.0g | 1.4g |
カリウム | 210mg | 290mg |
ビタミンC | 15mg | 32mg |
100gあたり(トマト約2/3個、ミニトマト約6個) |
■トマトのエネルギー
94%を水分が占めるため、エネルギー源となる栄養素は少なく、低エネルギーな食品です。
トマトを食べて痩せる、ということは期待できませんが、たくさん食べても摂取エネルギーのとりすぎにはつながりにくい食品、とは言えそうです。
■カリウム、ビタミンCの摂取源として
トマトをはじめとした野菜類はエネルギーをとりすぎずにカリウムをとるのに適した食品です。
また、トマトは1個150gでビタミンCの1日推奨量の2割をとることができます。
栄養面で考えれば、トマトはカリウム・ビタミンCの摂取源としてよい食品ですね。
野菜1日350gまで、あと100g=トマト1個で十分
野菜を1日に350gとりましょう、といわれます。
平成29年の国民健康・栄養調査では、20歳以上の男女の平均値は280gほどで、足りない分は、おおよそあと70~100g。
トマトなら半分~1個を普段の食事に加えれば、「しっかり野菜をとれている」といえそうです。
トマトの魅力は低カロリーと簡単にプラスできる野菜の栄養
トマトは
・エネルギーが低くたっぷり食べても肥満につながりにくい
・切るだけで1品になり、野菜不足を手軽に解消できる
というのが魅力の食材です。
特別なはたらきだけではなく、ぜひ食材としてのトマトを活用してみてくださいね。
参考文献 Di Mascio P.Kaiser S,Sies H (1989)Lycopene as the most efficient biological carotenoid singlet oxygen quencher Arch Biochem Bioρhys 274,534−538 |