2020.07.24

牛乳と豆乳、健康にいいのはどっち?|管理栄養士執筆

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牛乳と豆乳

見た目が似ていてお互いに代用されることも多い牛乳と豆乳。
健康にはどちらがいいと思いますか?

牛乳は牛の乳汁ですが、豆乳は大豆をゆでてすりつぶし、絞った液体のこと。

見た目は同じ白っぽい液体ではあるものの、原材料・風味はかなり異なります。
原材料が異なるため、含まれる栄養素の違いから、それぞれ特徴があるといえそうです。

カロリーや栄養価、飲む人の状況ごとに整理し、比べてみましょう。

栄養価を比較してみよう

見た目の似ている牛乳と豆乳。
エネルギー(カロリー)、必須栄養素、機能性成分の量やバランスを比較してみましょう。

「牛乳」として扱われるものにはいくつか種類があり、成分を調整していない「普通牛乳」と脂肪分をある程度取り除いた「低脂肪乳」があります。(そのほか、無脂肪乳や加工乳など)
いっぽう、豆乳には絞ったまま成分を調整していない「無調整豆乳」と、飲みやすく糖質や脂質を加えられた「調製豆乳」があります。

飲み物として「牛乳」「豆乳」といわれるものはそれぞれ「普通牛乳」「調製豆乳」が一般的です。

エネルギー(カロリー)と3大栄養素

3大栄養素とは、たんぱく質・脂質・炭水化物のこと。
これらの含有量の合計がエネルギー(カロリー)に関係します。

エネルギー たんぱく質 脂質 炭水化物
普通牛乳 67kcal 3.3g 3.8g 4.8g
低脂肪乳 46kcal 3.8g 1.0g 5.5g
調製豆乳 64kcal 3.2g 3.6g 4.8g
無調整豆乳 46kcal 3.6g 2.0g 3.1g
*100gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より数値引用

普通牛乳と調整豆乳のエネルギーはおおよそ同じくらい、比較的脂質が少ない低脂肪乳と無調整豆乳のエネルギーはやや低めとなっています。

■牛乳の糖質は乳糖、豆乳の糖質はショ糖が多い
乳糖 ショ糖 麦芽糖
普通牛乳 4.4g 0g 0g
低脂肪乳 4.9g 0g 0g
調製豆乳 1.3g 0.3g
無調整豆乳 0g 0.8g 0g
*100gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より数値引用

牛乳に含まれる主な糖質は「乳糖」と呼ばれるもので、豆乳には含まれません。
一方、豆乳には大豆由来のショ糖(=砂糖)のほか、調製豆乳では添加されたとみられるショ糖と麦芽糖を含みます。

乳糖は哺乳類の赤ちゃんのエネルギー源となる一方、「乳糖不耐症」の人ではお腹がゆるくなる作用が知られています。

■含有たんぱく質のアミノ酸スコアどちらも100

食品に含まれるたんぱく質の利用効率を「アミノ酸スコア」で比較することができます。
牛乳と豆乳のアミノ酸スコアはいずれも100。
たんぱく源としては、どちらも効率的なものといえそうです。

■牛乳は飽和脂肪酸が多く、豆乳は不飽和脂肪酸が多い

脂肪酸は食品中の「あぶら」の構成成分のこと。
構造の違いから飽和・一価不飽和・多価不飽和脂肪酸に大別され、体内でのはたらき(特に血中コレステロール値に与える影響)が異なることがわかっています。

飽和脂肪酸 一価不飽和脂肪酸 多価不飽和脂肪酸
普通牛乳 2.33g 0.87g 0.12g
低脂肪乳 0.67g 0.23g 0.03g
調製豆乳 0.50g 0.75g 1.99g
無調整豆乳 0.32g 0.37g 1.05g
*100gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より数値引用

牛乳は飽和→一価不飽和→多価不飽和の順に多く、
豆乳では逆に多価不飽和→一価不飽和→飽和の順となっています。

飽和脂肪酸は血中LDLコレステロール値を上げる働きを持つのに対し、
多価不飽和脂肪酸は血中LDLコレステロール値を下げる働きを持ちます。

コップ1杯程度の牛乳を飲むことで飽和脂肪酸の取りすぎにつながるような量ではありませんが、血中LDLコレステロール値を上げたくない場合には、牛乳よりも豆乳のほうが気にせず取り入れられる食品といえそうです。
また、牛乳であっても、脂肪分を減らした「低脂肪乳」であれば、豆乳とさほど大きな差はないため、選択肢のひとつとなりそうです。

ビタミン・ミネラル・食物繊維

たんぱく質・脂質・炭水化物のほかに、食品にはビタミンやミネラルが含まれています。

■ビタミンAは牛乳、葉酸は豆乳…だけど、どちらも極めて多いとは言えない
ビタミンA
レチノール当量
ビタミンB2 葉酸
普通牛乳 38㎍RAE 0.15㎎ 5㎍
低脂肪乳 13㎍RAE 0.18㎎ 微量
調製豆乳 0㎍RAE 0.02㎎ 31㎍
無調整豆乳 0㎍RAE 0.02㎎ 28㎍
食事摂取基準
(30-49歳女性)
700㎍RAE/日
(推奨量)
1.2㎎/日
(推奨量)
240㎍/日
(推奨量)
*100gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より数値引用

牛乳と豆乳を比較すると、
牛乳はビタミンAやビタミンB2が、
豆乳は葉酸が多い特徴があります。

いずれも必須栄養素として体内で重要な働きをもつものの、一般的な食生活で不足しがちなものというわけではなく、また、牛乳や豆乳が主な摂取減となるものというわけではないため、牛乳と豆乳のどちらを選ぶか、という決め手にはなりにくそうです。

■牛乳といえばカルシウム。豆乳は意外に鉄分を含む
カルシウム カリウム
普通牛乳 110㎎ 0㎎ 150㎎
低脂肪乳 130㎎ 0.1㎎ 190㎎
調製豆乳 31㎎ 1.2㎎ 170㎎
無調整豆乳 15㎎ 1.2㎎ 190㎎
食事摂取基準
(30-49歳女性)
650㎎/日
(推奨量)
10.5㎎/日
(月経あり推奨量)
2600㎎/日
(目標量)
*100gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より数値引用

牛乳に含まれる栄養素として代表的なカルシウム。
豆乳にカルシウムはあまり含まれていませんが、反対に鉄を比較的多く含みます。

骨の成長や健康維持に重要なカルシウムの摂取減として考えると、豆乳は牛乳の代わりにはならなそうです。
一方、月経のある女性では不足しやすい鉄は豆乳のほうが多め。
飲む人によって、選ぶものが変わりそうなポイントともいえそうです。

■わずかでも食物繊維を含むのは豆乳のみ
水溶性食物繊維 不溶性食物繊維 食物繊維総量
普通牛乳 0g 0g 0g
低脂肪乳 0g 0g 0g
調製豆乳 0.2g 0.1g 0.3g
無調整豆乳 0.2g 0g 0.2g
食事摂取基準
(30-49歳女性)
18g/日以上
(目標量)
*100gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より数値引用

食物繊維は主に植物由来の食品に含まれ、牛乳には含まれていません。
大豆が原料の豆乳には食物繊維が含まれていますが、量としてはごくわずか。
食物繊維摂取の目的で豆乳を選ぶのはやや期待外れになるかもしれません。

気になる機能性成分は?

「健康にいい」というと、必須栄養素以外の機能性成分も気になるところ。
牛乳・豆乳ともに様々な機能性成分が研究されています。

牛乳に含まれるホエイ(乳清たんぱく質)の筋力向上作用や、豆乳に含まれるダイズイソフラボンの更年期における血管障害、骨粗しょう症の改善作用などが注目されていますが、こういった機能性はあくまで「成分そのもの」によるものであり、現状では、食品としての牛乳・豆乳から摂取できる量で効果があるとは言えません。
効果の有無、効果を得るために必要な摂取量等が確立していない現状では、○○という機能性成分が含まれているから牛乳/豆乳を選ぶ、という選び方は難しそうです。

飲む人の状況によっても様々な考え方がある

「健康にいいかどうか」の判断基準になるものは、栄養価や機能性成分など様々です。

人それぞれ体の状況が異なるため、どれか一つを理由に、全員に対して「こっちのほうがいい」と決めることはできません。
自分なりの判断基準を決め、状況に応じて選べるとよいでしょう。

避けたい栄養素がある人もいれば、積極的に摂りたい栄養素がある人もいる

病気の予防・発症・治療に対して食事が影響することは少なくありません。

特に高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病は、日頃の食事内容が大きくかかわっていることが知られています。

たとえば、脂質異常症のうち血中LDLコレステロールが高い人では、飽和脂肪酸(血中LDLコレステロールを高める作用を持つ)を減らすよう指導されることも。
このような場合には、飽和脂肪酸が比較的多い牛乳ではなく、豆乳や低脂肪乳を選ぶのが「健康にいい」といえそうです。

反対に、(病気ではありませんが)成長期は骨の成長に伴ってカルシウムの必要量が増える時期といえます。
この場合、カルシウムを豊富に含む牛乳はカルシウム摂取量を確保するのにとても重要。
学校給食で牛乳が必ずと言っていいほど提供されるのには、このような理由があります。

アレルギーなど、「飲めない」事情がある場合もある

からだへの影響から積極的に選ぶほか、やむを得ずどちらかしか選べない場合もあります。

発生頻度は牛乳のほうが高いものの、牛乳・豆乳(大豆)はともに食物アレルギーの原因食品になるものです。
また、牛乳に含まれる乳糖を消化吸収できずにお腹がゆるくなる「乳糖不耐症」という体質の人も少なくありません。

どちらかを選ぶというよりは、特定の食べられない食材があることによって起こりうる栄養素の不足や過剰(例:アレルギーによって給食の牛乳が飲めず、成長に必要なカルシウム摂取量が減ってしまうなど)に気を付けたいところです。

味や保存性で選ぶ方法もある

もちろん、健康を害さないことを前提に、味や香りなどから選ぶことも重要です。

料理によっては牛乳のほうが合う/豆乳のほうが合うものがあり、絶対にどちらかしか使ってはいけないということはありません。

また、保存がきくかどうか、というポイントを重視してもいいでしょう。
一般的な牛乳は未開封でも冷蔵保存が必要ですが、豆乳は未開封なら常温で比較的長期間の保存が可能です。(あまり一般的ではありませんが、長期間保存可能な牛乳もあります)

まとめ:「健康にいい食品」は人によっても違う

牛乳・豆乳それぞれに特徴があり、どちらがいいと決められるものではなさそうです。

あえて選ぶというのであれば個人の体の状況に合わせて、
・カルシウムを積極的に摂りたい
という人は牛乳を、

・飽和脂肪酸をひかえたい
・鉄の摂取量を増やしたい
という人は豆乳を選ぶのがいいかもしれません。

もちろん、必ずどちらか…ではなく、料理によって使い分けてもいいですね。
(健康に問題がない人であれば、偏りなく取り入れることで栄養素の偏りも防げます)

牛乳や豆乳に限らず、食品は「健康にいい」「健康に悪い」とは簡単に決められません。
大事なのは、より健康にいい食品を選ぶことよりも、食生活全体をみて、偏りの無いように整えていくことではないでしょうか。

参考文献

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

日本食品分析センター:食品たんぱく質の栄養価としての「アミノ酸スコア」 

今井 孝成, 杉崎 千鶴子, 海老澤 元宏. 消費者庁「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業」平成23年 即時型食物アレルギー全国モニタリング調査結果報告 アレルギー 65 (7), 942-946. 2016

厚生労働省:「第4章 食物アレルギー」

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。