2019.11.01

冷え解消・ポカポカ効果は脳の錯覚?生姜の栄養素と効能のしくみ

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生姜湯のポカポカ効果

冬だけでなく人によっては夏にもつらい「冷え」。
体を温め、冷えを改善する効果が期待されている食品といえば「生姜」が代表的ではないでしょうか?

ホット飲料やスープ、サプリメントなど、生姜のポカポカ効果を暗に示すような商品はたくさんありますが、生姜そのものに体温を上げる効果はあまり期待できないようです。

その理由とともに、より良い生姜の活用方法を考えていきましょう。

「温感」があるからといって体温も上がっているとは言えない

生のしょうが

味覚とポカポカ感の関係

生姜や唐辛子などの辛い食材を食べると体が熱く感じる、というのは多くの人が知っている感覚だと思います。

これは生姜や唐辛子に含まれる辛味成分(ショウガオールやカプサイシン)が口の中の温感を感じる受容体(TRPV1温受容体)を刺激するためです。

実際の体の温度以上に熱くなったように感じる、いわば「錯覚」とも言えます。

汗をかくほど食べるとかえって体温が下がるかも

体が熱さ(暑さ)を感じると、余分な熱を放出しようとして血管を拡張させ、汗をかきます。

しかし、味覚からの熱さによって汗をかいた場合では、実際にはそれほど体温が上がっていないのに体温を下げる仕組みが働くため、より体温を下げてしまうとも考えられています。

体が冷えているから辛いものを食べよう!といって汗をかくほど食べるのは、かえって体温を下げることにつながってしまうといえそうですね。

体温を上げるはたらきはあるものの、効きめははっきりしない

生姜など、辛い食べ物に体温を上げるはたらきは全くないのかというと、そうではありませ
ん。

ショウガオールなどの辛味成分は交感神経を刺激して体温を上げるメカニズムもあるようです。
しかし、仕組みとしては体温を上げる作用があるものの、生姜を食べることによって「数値でわかるほどの体温上昇」が起こるとした十分な研究報告はいまだありません。

生姜を食べると体が温まるのは「感覚」であり、実際の体温上昇についての「効きめ」はほとんどないようです。

「温感」は熱を加えた生姜のほうが感じやすいかもしれない

温かい料理にも、冷たい料理にも使う生姜

生姜にはいくつかの辛味成分があり、代表的なものがショウガオールとジンゲロールです。

ショウガオールは上で紹介した通り、温感を感じるTRPV1温受容体を刺激する辛味成分です。
いっぽう、ジンゲロールはショウガオールとは反対に、冷感を感じるTRPA1冷受容体を刺激する辛味成分です。

生姜は調理加工によってこれらの辛味成分の量が変わり、
・生の状態ではジンゲロール(冷感を刺激)が多くショウガオール(温感を刺激)が多い
・30分~60分の加熱調理(ゆで、蒸しなど)によってジンゲロールが減少しショウガオールが増加する
ということが報告されています。

冷感を刺激するジンゲロールがなくなるわけではありませんが、しっかりと加熱調理することで温感を刺激するショウガオールの量や割合が多くなるようです。

薬味で食べるような生の生姜はスッキリさっぱり、煮込み料理の風味付けに使われる生姜はよりじんわりあたたかく感じる、というのは料理の温度とともに、このような違いにも理由があるのかもしれませんね。

冷えの根本解決にはならなさそう

生姜そのものには体温を上げる効果は期待できないようですが、辛味成分によってあたたかさをより強く感じさせてくれるようです。
冷えの根本的な解決になるものではないため、薬のように考えることはできませんが、寒いときの食事をよりあたたかく感じるための調味料、と考えるのがよさそうです。

食事誘発性熱産生

食事で温まる女性

食後にポカポカするのは

ちなみに、辛味成分が入っていない食事でも、食後はポカポカ暖かくなることが多いはず。

これは、「食事誘発性熱産生」と呼ばれる現象で、エネルギー源となる栄養素が含まれる食事をとることで体熱がつくられることを指します。

この体熱の産生は栄養素の種類によっても異なり、たんぱく質は食べた量の30%、糖質は6%、脂質は4%が熱エネルギーとして消費されます。
たんぱく質、糖質、脂質の混ざり合った通常の食事の割合では、全体の10%程度が体熱の産生に使われるようです。

無理な食事制限は冷えの原因に

食後の熱産生に限らず、エネルギー源となる栄養素がなければ、体は体温を上げることができません。

冷え性の原因の一つにダイエットなどによる食事量の低下も挙げられます。
心当たりがある場合は、食事内容を見直してみてくださいね。

体温を作り出すのは内臓と筋肉。生姜は「ポカポカ味」と理解しよう

温かい感覚を強めてくれるしょうが

内臓と筋肉が体温を作り出している

私たちの体温はおおよそ36℃を保っていますが、これは内臓や筋肉による熱の産生と発汗(及び蒸発)などの放熱によって体温が調節されているためです。

筋肉量が少ない、また筋肉の活動が少ないと筋肉による熱産生も少なくなるので、筋肉の少ない体は温まりにくい体とも言い換えられます。

筋肉を動かし、増やすことも冷え対策になる

同じ生活を行っていても、筋肉量の多い人のほうがエネルギーを熱として利用しやすいと考えられています。
暖かい恰好をしたり、食事をしっかりとることに加えて十分な運動を行うことで、健康的に冷えにくい体をつくることにつながるといえます。

食べ物が薬のような効き目を持つことはほとんどない

冷え対策の特効薬のように扱われることもある生姜ですが、その効果ははっきりと確認されているものではありません。
あくまで食材のひとつとして、より強く暖かさを感じるための味付け、スパイスあるという風に理解したほうがよさそうです。

参考文献

尾形 優, 金子 健太郎, 後藤 慶太, 河野 かおり, 山本 真千子. 冷え症の生理学的メカニズムについて―循環動態および自律神経活動指標による評価―Japanese Journal of Nursing Art and Science Vol.15, No.3, pp227-234, 2017

夏野 豊樹, 平柳 要. 生姜抽出物の経口摂取が冷え性の人のエネルギー消費等に及ぼす効果 人間工学 Vol.45, No.4 p.236-241(2009)

吉田 真美、平林 佐央理. ショウガ中の6-ジンゲロールの加熱調理による変化 日本調理科学会誌,Vol.48,No.6,398~404(2015)

温度感受性TRPチャネル Science of Kampo Medicine 漢方医学 Vol.37 No.3 164-175(2013)

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(ショウガについて)