
スーパーやコンビニでも購入でき、調理の手間も省ける「カット野菜」。
便利さが魅力ですが、栄養素が抜けていて食べる意味がない、薬品を使っているために体に悪いというウワサも。
野菜不足を感じている人でも、カット野菜は使わないほうがいいのでしょうか?
安全面と栄養面から考えてみましょう。
Contents
カット野菜の安全性や栄養素は?
カット野菜は工場での加工を受けているため、家庭で調理した場合と比べて健康面での危険や栄養面での損失があるのでは?と心配する人も少なくありません。
カット野菜の安全性と栄養素について、家庭での調理と比べてどのくらい違いがあるのかを調べてみました。
カット野菜の加工工程は体に悪影響があるものではない
カット野菜の製造工程はそのメーカーや取り扱う野菜によっても違いがありますが、作業工程を公開しているいくつかのメーカーの情報をまとめると、おおむね以下のような流れになるようです。
1. 下処理…商品に適さない部分を取り除きます。ここで洗浄・殺菌を行う場合もあります。 2. カット…多くはスライサーなどの機械を使用し千切りなど商品の形にカットされます。 3. 洗浄(殺菌)…雑菌の繁殖防止のため、電解次亜水(でんかいじあすい)などの殺菌水を用いて洗浄と消毒を行い、水で再び洗浄します。 4. 脱水…野菜の表面に水分が残っていると雑菌の繁殖や劣化につながるため、水分をしっかりとります。 5. 袋詰め…袋詰めされ、店頭の売り場まで冷蔵されて輸送されます。 |
家庭で生野菜を扱うときとの違いは、殺菌水を使っている点。
この殺菌水による殺菌工程を危険視する声もありますが、人体には影響のない使用方法で取り扱われているため、カット野菜が人体にとって危険ということはありません。
保存性という点では殺菌水に加え、カットに使われるスライサーなどの切れ味がよいことや、包装時の脱気、輸送・保管時の低温の維持が大きな役割を果たしています。
カット野菜は加工工程で栄養素がなくなるということはない
また、「カット野菜は栄養が抜けてしまっているから食べても意味がない」と言われることがあります。
事実、カット野菜は家庭での調理と違い、カットしてから洗浄を行うため、家庭での調理よりも水に触れている断面が多いといえます。
そのため、家庭での調理に比較して水溶性の栄養素が抜けやすいということがあります。
ただし、栄養素がすべて抜けてしまっているわけではありません。
千切りキャベツの場合、30分水にさらした場合でも、ビタミンCはさらす前の70%が残っていたという実験結果*1) も報告されています。
大手メーカーが行った調査では、カット野菜でも家庭での水洗いをした野菜でも、どちらの条件でもほとんどの栄養成分で80~90%が残っていた*2)そうです。
私たちが心配するほどには、栄養素は抜けていないといえそうですね。
野菜を食べる目的はカット野菜でも達成できる
そもそも、野菜を食べることのメリットとは何でしょうか?
栄養学的には、必須栄養素であるビタミン・ミネラル、生活習慣病のリスクを下げる食物繊維が取れることです。
また、肥満防止の観点では、野菜は水分が多くエネルギー(カロリー)が低いため、食事のエネルギーを上げずに食事のボリュームを上げてくれることがあげられます。
水に溶けだしやすい栄養素は7割程度まで減少しますが、まったくなくなるわけではありません。
また、食事のボリュームアップとしての役割は生野菜でもカット野菜でも変わりません。
もちろん、新鮮な丸ごとの野菜を使う直前に切って使うのに越したことはありませんが、忙しい毎日を送っている人にはなかなか難しいことです。
そんな時に、野菜を食べることをあきらめるのではなく、カット野菜を活用して、無理なく食事に野菜を取り入れることが、健康的な食生活を送ることにつながるのではないでしょうか。
緑黄色野菜が少ないのが気になるところではある
とはいえ、カット野菜だけで100点満点の栄養バランスを目指すことは難しいかもしれません。
カット野菜はキャベツやもやしといった淡色野菜が多く、(ニンジンやピーマンが多少入っていることもありますが)緑黄色野菜が少なめ。
1日に野菜は350g、といわれますが、そのうち120gは緑黄色野菜をとることが目標*3)とされています。
(緑黄色野菜は淡色野菜に比べて体内でビタミンAとして働くβ-カロテンが豊富に含まれているという違いがあります。)
カット野菜を取り入れた食事から、さらに一歩進んだ工夫をする余裕が出てきたら、トマトや豆苗など、調理の手間がかかりにくい緑黄色野菜をプラスできると理想的です。
カット野菜の特徴とメリットを活かす使い方
カット野菜は加工しない野菜とは異なるプロセスを経て家庭に届きますが、それによって具体的にはどのような違いが出てくるのでしょうか?
カット野菜ならではの特徴と、利点を活かし弱点をカバーする使い方を紹介します。
調理の手間を大幅カットできる
サラダ用・加熱用いずれも「野菜の可食部をカット・洗う・食べる大きさに切る」といった工程が省けるのが大きな魅力です。
切り方のバリエーションが多くないのが難点といえば難点ですが、最近ではサラダ用だけでなく鍋用、炒め物用などの加熱向きの大きめカットも販売されています。
保存性は低めなので早めに消費しましょう
洗浄・殺菌されているとはいえ、丸ごとの野菜ほどは日持ちしません。
冷蔵庫内で保存していても消費期限は最大でも4日程度。
買い置きには適していないので、買ったらなるべく早く食べるのがよいでしょう。
価格は割高ながらも安定
カット野菜は丸ごとの野菜と比べると割高なものが多いです。
とはいえ、一人暮らしなどではたくさんの種類の野菜をとろうとすると、使い切れずに余る可能性が高いといえます。
丸ごとの野菜を購入して使い切れなくなってしまうより、カット野菜を活用したほうが経済的ですね。
価格変動が少ないので、野菜が高騰していてもほとんど影響がないのもうれしいポイントです。
サラダ用より加熱用のほうが味は気になりにくい
雑菌の繁殖を防ぐために水けをきっているためか、サラダ用のカット野菜はぱさぱさした食感になりやすく、生野菜にと比べると味は落ちやすいようです。
ぱさぱさした食感が気になる方は、さっと洗って水けを軽くとるか、電子レンジで軽く加熱することでしっとりさせることができます。
対して、炒め物や煮物用のカット野菜は調理によって水分や油分が補われるので、あまり違いは気にならないことが多いようです。
まとめ:栄養バランス改善の一歩として活用しよう
カット野菜は、味や種類など、丸ごとの野菜に劣る部分もありますが、
- 少人数でも使いきれる量
- 手間なく取り入れられる
といった点が魅力です。
最初から完璧にしようとするのではなく、まずは簡単なカット野菜を活用して、健康的な食生活に近づけていきたいですね。
一人暮らしの人におすすめしたいカット野菜の魅力とレシピを紹介した記事はこちら |
参考文献 *1)吉田企世子 監修. 女子栄養大学 栄養のなるほど実験室. 女子栄養大学出版部, 2019. *3)公益財団法人 健康・体力づくり事業財団:「健康日本21」 太田 英明,菅原 渉.カット野菜の品質保持研究の現状 調理科学Vo1,19No.4(1986) |