
食物繊維という単語は、健康や美容、ダイエットの話題でよく出てくるものですが、そもそもどんなもので、なにに含まれているか、ご存知でしょうか?
便秘予防に効果的という印象は強いものの、その他の効果は知らない人も多いのでは。
実は、生活習慣病予防やがん予防のはたらきがあることが知られている食物繊維。
しっかりとって、健康的な食生活を目指しましょう!
Contents
食物繊維とは
消化吸収されない「第6の栄養素」
食物繊維とは、ヒトの体では消化されない食品の成分のことを指した総称です。
腸管を通過するだけで体内に吸収されるものではないため、健康への効果は比較的最近まで知られていませんでした。
しかし、研究が進み食物繊維のもつさまざまな健康効果がみとめられ、今や第6の栄養素ともいわれています。
不溶性と水溶性がある
食物繊維というと、固くスジっぽいものに多く含まれているイメージがありますが、必ずしもそのようなものだけに含まれているわけではありません。
食物繊維には、水溶性のものと不溶性のものがあり、それぞれ違った効果を持っています。
食物繊維のはたらき
便秘改善
不溶性食物繊維は便の骨組みに
不溶性食物繊維は消化されないため、便のかさを増やし排便を促す作用があります。
便秘によって腸内にたまった老廃物が吸収され、肌荒れなどを引き起こすこともあり、便秘解消によって便秘が原因となっている肌荒れの改善・予防も期待できます。
水溶性食物繊維は便をやわらかくする
一方、水溶性食物繊維は水分を含んでゲル状になる性質があり、腸内で水分を含んで便のかさを増やし、こちらも排便を促す作用があります。
また、水溶性食物繊維は腸内のビフィズス菌や乳酸菌の働きを高めて腸内環境を改善し、腸の働きを良くしてくれます。
肥満予防
不溶性食物繊維は食べ応えアップ
食物繊維はヒトの体では消化されないため、エネルギー(カロリー)はありません。
食物繊維を多く含む食品は摂取エネルギー(カロリー)を低く保ったまま、食事のカサを増やしてくれるので、満腹感を促し、食べ過ぎによる肥満を防いでくれます。
水溶性食物繊維は腹持ち長続き
また、水溶性食物繊維は腸の中でゲルを形成し、脂肪と炭水化物の消化吸収を遅らせる作用があります。
そのため、満腹感を引き延ばして腹持ちが良くなり、食べ過ぎを防いでくれます。
生活習慣病の予防効果
脂肪と炭水化物の消化吸収が緩やかになることで、急激な血糖値の上昇を抑える効果、
体内のコレステロールを原料とする胆汁酸の排泄を促すことによる血中コレステロールの低下作用があるといわれています。
がん予防も?
食物繊維が排便を促す過程で、がんの発生にかかわる有害物質を吸着・排出する効果があり、がん予防に効果があるとする研究報告もあります。
食物繊維はどのくらいとればいい?
食物繊維は足りている?
日本人の食事摂取基準2015年版では、1日あたり男性20g、女性18g、理想的には24gの摂取が望ましい、と言われています。
しかし、現代人は男女ともに1日あたり15g前後の摂取にとどまっています。
1日の食物繊維は、レタス何個分?
食物繊維の量を表現するとき、よく「レタス●●個分!」といったような表現をよく見ますが、1日に24gの食物繊維とはどのくらいの量なのでしょうか?
レタス100gあたりに含まれる食物繊維は1.1g。
レタスはひと玉300~500gなので、ひと玉あたりに3.3~5.5gしか含まれていないことになります。
レタスだけで食物繊維を18gとるには、1日に2.4㎏のレタス(4~6玉)を食べなければいけない計算になり、とても実現不可能な量に思えてしまいます。
実は、レタスはさほど食物繊維の多い食品ではありません。
食物繊維を豊富に含む食品を上手に選べば、無理なく食物繊維摂取量を上げられます。
食物繊維の多い食べ物は?
食物繊維は主に植物性の食品に含まれており、肉や魚などにはほとんど含まれていません。
不溶性食物繊維は、穀物(全粒穀物、穀物ふすま)、野菜、いも、豆類、おから、きのこ、甲殻類の殻、こんにゃくに多く含まれます。
水溶性食物繊維は、果物(アボカド、キウイ、リンゴ、イチゴなど)、野菜、海藻、こんにゃくゼリーに豊富に含まれます。
100gあたり食物繊維総量 | 1食あたり使用量 | 1食あたり食物繊維総量 | |
生おから | 11.5g | 50g(煮物) | 5.8g |
押し麦 | 12.2g | 10g(麦飯) | 1.2g |
グリンピース | 7.7g | 25g(混ぜご飯) | 1.9g |
干し芋 | 5.9g | 30g(1枚) | 1.8g |
戻したわかめ | 5.8g | 30g(スープ)乾3g | 1.7g |
ごぼう | 5.7g | 50g(きんぴら・1/2本) | 2.8g |
ライ麦パン (ライムギ粉50%) |
5.6g | 70g(6枚切り1枚) | 3.9g |
生しいたけ | 5.5g | 20g(煮物など・1個) | 1.1g |
アボカド | 5.3g | 50g(1/2個) | 2.7g |
玄米 | 3.0g | 75g(1/2合) | 2.3g |
キウイフルーツ | 2.5g | 100g(1個) | 2.5g |
こんにゃく | 2.2g | 125g(炒め煮など・1/2枚) | 2.8g |
いちご | 1.4g | 75g(5粒) | 1.1g |
レタス | 1.1g | 50g(サラダ・2枚) | 0.6g |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
食物繊維の摂取源というと野菜がイメージしやすいですが、押し麦や玄米などの穀類も、食物繊維の摂取源として大きな割合を占めます。
主食として毎日の食事に取り入れやすいので、白米を玄米ご飯に変えたり、食パンを全粒粉入りパンやライムギパンに変えるといったことでも食物繊維の摂取量を増やせます。
フルーツは穀類や根菜類と比べると食物繊維の総量が低い傾向にありますが、水溶性食物繊維の割合が比較的に高く、水溶性食物繊維の摂取源として優秀です。
1種類だけでなく、いろいろな食材を食べることで不溶性・水溶性ともにしっかりとることができるので、ひとつの食材に偏らないようにするとよいでしょう。
食物繊維とあわせて取りたい食品
食物繊維は単体で摂取するよりも、はたらきを高めてくれるものや、似たような機能を持つものと一緒に摂取するとより効果的に働きます。
水分
食物繊維そのものも水分を吸収するので、水分が足りない状態で食物繊維をとりすぎると便秘や腸閉塞になる恐れがあります。
食物繊維を多く含む食べ物を食べたときには、多めに水分をとることを心がけましょう。
水分をたっぷりとると食事の満足感も高まります。
ヨーグルトや納豆などの発酵食品
水溶性食物繊維には、腸内の善玉菌や発酵食品に含まれる乳酸菌の栄養源となる特徴があります。
便秘などのトラブルがある腸内は悪玉菌が優勢になっている場合があり、食物繊維を積極的にとることで善玉菌優位の腸内環境をつくる手助けになります。
便秘にはオリーブオイルなどの油脂や刺激のある食品(香辛料、炭酸水等)
オリーブオイルに含まれるオレイン酸は小腸で吸収されず、大腸を刺激して腸の運動を活発にする働きがあります。
1日大さじ1~2杯を食事に取り入れると効果的と言われています。
ただし、油脂は取りすぎると下痢を起こしたり、食事そのものがカロリーオーバーになりやすくなるので適度の使用がおすすめです。
オリーブオイルなどと同様に、辛味や酸味のある香辛料、炭酸水などは腸を刺激して腸の動きを促します。
食べ過ぎは下痢の原因となりますが、様子を見つつ適度に取り入れましょう。
食物繊維を簡単にたっぷりとれるメニュー
食物繊維の多い食べ物と食べ合わせの良い食材を使った簡単メニューを紹介します。
どれも簡単なので、ぜひお試しください。
ねばねばキムチアボカド丼
【材料】1人分
ごはん | 120g |
納豆 | 1パック(50g) |
キムチ | 30g |
めかぶ | 1パック |
アボカド | 1/2個(正味50g) |
醤油 | 10g(お好みで) |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
【作り方】
1.アボカドの皮と種を取り除き、2㎝角に切る。
2.器にごはんを盛り、その上に納豆、めかぶ、キムチ、アボカドをのせる
3.醤油をかけて出来上がり。
【栄養価】1人分422kcal 食物繊維8.9g
根菜とオリーブオイルのスープ
【材料】1人分
玉ねぎ | 1/4個(50g) |
人参 | 1/4個(50g) |
ごぼう | 1/4本(40g) |
水 | 150ml |
顆粒コンソメ | 小さじ1 |
オリーブオイル | 小さじ1 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
【作り方】
① 玉ねぎ・人参・ごぼうは皮をむいて2㎝角に切る。ごぼうは水にさらす。
② 鍋に水と野菜をすべて入れ、火にかけて煮る。
③ 野菜に火が通ったらコンソメで味付けし、オリーブオイルを加える。
【栄養価】1人分105kcal 食物繊維4.3g
はちみつキウイヨーグルト
【材料】1人分
キウイ | 1個(100g) |
無糖ヨーグルト | 80g |
はちみつ | 小さじ2(15g) |
【作り方】
1. キウイは皮をむいて食べやすい大きさに切る。
2.器にヨーグルト、キウイを盛り付け、はちみつをかける。
【栄養価】1人分134kcal 食物繊維2.5g
おからクッキー
【材料】作りやすい量・3人分
生おから | 50g |
薄力粉 | 50g |
砂糖 | 40g |
ティーバッグ紅茶 | 1袋(2g) |
オリーブオイル | 20g |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
【作り方】
1.ボウルに油以外の材料を入れ、全体におからの水分がなじむようによくすり混ぜる。
2.サラダ油を加え、ひとまとまりにする。(おからの水分量によっては緩くなりすぎるので調節してください)
3.トースターの天板にアルミホイルを敷き、ごく薄く油を塗る。(分量外)
4.生地を一口サイズに丸めてから厚さ5mmに伸ばすか、生地全体を厚さ5mm程度に伸ばしてから型抜きし、天板に並べる。
5.オーブントースターで10分~15分ほど、焼き色がつくまで焼く。
【栄養価】1人分193kcal 食物繊維2.6g
この4種類の献立だけで女性の1日の食物繊維摂取の目標量18gをクリアすることができます。
もちろん1日でこれらのレシピを実践しなくても、日々の生活の中で取り入れられそうなものから行っていくことで、少しずつ食物繊維の摂取量を上げていけるのではないでしょうか。
注意点
食物繊維は便秘を解消し、余分な成分を排出する働きがありますが、その効果を発揮するには十分な量の水分を必要とします。
便秘の時に十分に水をとらないまま食物繊維を多く摂取すると、腸内で食物繊維そのものが水分が足りずに詰まってしまい、逆効果になることもあります。
また、食物繊維は腸を刺激する性質を持っているので、一度に多量に摂取すると、おなかが緩くなったり下痢になることもあります。
十分な水分を摂取しながら、食物繊維だけに頼らず、バランスの良い食事と、適度に体を動かすことも健康な腸を維持するには必要です。
参考文献 |