投稿日: 2019.08.05 | 最終更新日: 2020.03.27

低カロリーで高たんぱく。鶏肉の栄養素を紹介|管理栄養士執筆

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栄養豊富な鶏肉

「鶏肉」といえば、お肉の中でもお手頃価格で手に取りやすいイメージが強いもの。
ダイエット食材としてのイメージも大きいですが、どのような栄養素が含まれている食材なのでしょうか?

鶏肉の栄養価と活用のポイントを紹介します。

鶏肉の主成分は?カロリーは?特徴は?

鶏肉のカロリーと主成分

鶏肉をはじめとした肉類の主成分は「たんぱく質」です。
たんぱく質は全身の細胞の材料となる重要な栄養素のひとつで、およそ20種類のアミノ酸からできています。
20種類のアミノ酸のうち9種類はヒトの体内で合成することができないため、食事からとる必要があり、この9種のアミノ酸を「必須アミノ酸」といいます。
必須アミノ酸9種をどれだけ効率よく含んでいるかを示す数値を「アミノ酸スコア」といいますが、鶏肉をはじめとした肉類や魚類、たまごや牛乳のアミノ酸スコアは100となっています。

鶏肉の栄養素を豚肉・牛肉と比較

身近なお肉といえば、鶏肉をはじめとして、豚肉、牛肉などが一般的です。
今回は豚肉・牛肉と比較した場合の鶏肉の栄養価を見てみましょう。

鶏肉(皮付きもも) 豚肉(肩ロース) 牛肉(肩ロース・乳用肥育牛)
エネルギー 204kcal 253kcal 318kcal
たんぱく質 16.6g 17.1g 16.2g
脂質 14.2g 19.2g 26.4g
炭水化物 0g 0.1g 0.2g
ビタミンA 40㎍RAE 6㎍RAE 7㎍RAE
ビタミンK 29㎍ 2㎍ 8㎍
ビタミンB1 0.10mg 0.63mg 0.06mg
ビタミンB6 0.25mg 0.28mg 0.21mg
ビタミンB12 0.3㎍ 0.5㎍ 1.7㎍
ナイアシン 8.4mg 7.0mg 6.7mg
鉄分 0.6mg 0.6mg 0.9mg
亜鉛 1.6mg 2.7mg 4.7mg
*100gあたり
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成

※横スクロールで表全体の確認が可能です。

■たんぱく質の優秀な摂取源

たんぱく質が豊富なイメージの鶏肉ですが、100gに含まれるたんぱく質そのものの量は豚肉や牛肉と大きな差はありません。
どのお肉もたんぱく質源として優秀な食品です。

■低脂質で低カロリー

1gあたり4kcalの炭水化物やたんぱく質とくらべると、脂質は1gあたり9kcalと高カロリーな成分です。
鶏肉は肉類の中でも比較的水分が多く、脂質が少なく、低カロリーなお肉といえるでしょう。
また、鶏肉の脂質は皮とその周辺に集中しているため、皮を外せば大幅なカロリーカットが可能という利点も。
ダイエット中の人にも好まれるのはこういった理由が大きそうですね。

■脂溶性ビタミンが比較的豊富

通常の量の鶏肉で1日分をまかなえるほどの含有量ではありませんが、豚肉や牛肉と比べると、ビタミンAやビタミンKといった「脂溶性ビタミン」が比較的豊富に含まれています。
ビタミンAは皮膚や粘膜、眼の細胞を正常な状態に保つために必要なビタミンで、ビタミンKはけがをしたときなどに血液を固めて出血を止めるために必要なビタミンです。

■水溶性ビタミンやミネラルは豚と牛に劣る

いっぽう、栄養素をエネルギーや体の一部に利用するのに必要な水溶性ビタミン(ビタミンB1やB6)は豚肉、血液の構成成分となる鉄分などのミネラルに関しては牛肉のほうがよりよい摂取源となります。

どのお肉にもそれぞれ特徴があり、どれかひとつが人間にとって最適の食材、ということはありません。
いろいろな食材を取り入れるのがおすすめです。

鶏肉の部位ごとの栄養価の違い

鶏肉の部位

鶏肉と一口に言っても、もも肉・むね肉・ささみなど、部位によって味わいも栄養価も異なります。
部位ごとの違いを見てみましょう。

もも肉は脂質多め

もも肉は皮下脂肪が比較的多く、鶏肉の中では高カロリーな部位になります。
脂質が多い分、脂溶性ビタミンも多めに含まれているのが特徴です。
うまみも強くしっとりしているので、よく食べられている部位ですね。

むね肉は低価格・低脂質

胸肉はもも肉に比べて脂質が少なく、その分タンパク質が豊富な部位です。
皮以外の部分には比較的水溶性ビタミンが多いのも特徴です。
皮を外せばさらに脂質をカットできるので、ダイエット中の人やボディメイクをしている人に人気の部位です。

ささみは脂質をほとんど含まない

皮がついていないため、もともと脂質がかなり少ないのが特徴です。
構成成分はほとんどたんぱく質と水分で、皮を取り除いたむね肉とほとんど変わりません。
胸肉よりも割高になること、すじ取りなどの手間があるのはデメリットといえるかもしれません。

鶏ささみの栄養価やカロリーについて詳しく解説した記事はこちら

→ささみのカロリーはどのくらい?栄養価は高い?

鶏肉の利点を生かした使い方

たんぱく質の摂取源として

鶏肉に含まれる栄養素のうち、最も特徴的なのはやはり「たんぱく質」です。
ヒトの体に必要なたんぱく質の摂取源として、(ほかのお肉やお魚などを取り入れながら)食事の中に取り入れるのがいちばんの活用法といえるでしょう。

脂質及びカロリーのコントロールのしやすいお肉として

ダイエット中は摂取エネルギーを抑えつつ、必要なたんぱく質はしっかりとりたいもの。
お肉類はたんぱく質の摂取源として優秀ですが、たんぱく質と同時に脂質も摂取することになりやすい特徴もあります。

鶏肉はお肉の中でも脂身のカットが比較的容易であり、摂取エネルギーのコントロールがしやすいことも特徴に挙げられます。

鶏ささみを取り入れるときの注意点と補足

ダイエット効果があるものではないことに注意

ダイエットに最適な食材と考えられていることも多い鶏肉ですが、一番の特徴は
・脂質が少なく、たんぱく質が取れる
・肉の中ではエネルギー(カロリー)が低い
ということであって、特別にやせる成分が含まれている食材というわけではありません。

消費エネルギーに比べて食べすぎてしまえばもちろん肥満につながりますし、栄養素も偏ってしまいます。

たんぱく質に偏った食べ方に注意

たんぱく質の割合が多い食事は一見すると健康的という印象を受けることもありますが、たんぱく質も取りすぎると健康へのリスクが高まります。

バランスの取れた食事では、たんぱく質は摂取エネルギー(カロリー)全体の12~20%を占めますが、20%を超えた食事を続けていくと肥満や生活習慣病のリスクが高くなることが知られています。

1日におよそ2000kcalを摂取する人(身体活動レベルがふつうの20代女性の例)では、およそたんぱく質100g、鶏むね肉でいえば2枚分を毎日食べるような食事では「とりすぎ」に当てはまります。

ほかの食材と合わせて取り入れよう

鶏肉はたんぱく質を豊富に含む食品ですが、炭水化物や食物繊維、各種ビタミンやミネラルはあまり含まれていません。

そのため、様々な食品と組み合わせることで食事全体のバランスがとりやすくなります。
具体的には、

炭水化物を豊富に含む食品…米やパン、麺類などの穀類
食物繊維、ビタミンCなどを含む食品…野菜類や果物類
ミネラル、ビタミンが豊富な食品…牛肉や豚肉、牛乳、卵など

といったもの。
いろいろな種類の食材のひとつとして取り入れるのがよさそうです。

まとめ

鶏肉は「これだけ」で完璧な栄養が取れるものではありませんが、たんぱく質が豊富で、脂質のコントロールもしやすいところが魅力の食品です。

健康的な食事の一部として、鶏肉を上手に活用してくださいね。

参考文献

吉田勉 監修:「わかりやすい食品機能栄養学」.三共出版,2010.

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

厚生労働省e-ヘルスネット:「良質たんぱく質」

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。