近な食材のひとつ・牛肉。
豚肉や鶏肉と並んで手に入りやすいお肉ですが、栄養素としてはどんなものが含まれているのでしょうか?
牛肉のカロリーや栄養素、上手な取り入れ方を紹介します。
Contents
牛肉のカロリーと栄養素
牛肉のカロリーや栄養素は品種や部位によって大きく異なります。
今回は、平均的な肉質である「国産牛(乳用肥育牛肉)」の「肩ロース」を基本として、品種や部位による傾向を考慮しつつ、カロリーや栄養価を紹介します。
カロリー
牛肉は各種品種・部位を含めると、100gあたりのカロリーは123~514kcalの幅があります。
平均的な肉質の「国産牛の肩ロース」の場合、100gあたりのカロリーは295kcalとなっています。
牛肉は脂身の量に応じてカロリーも高くなっていきますので、脂身(サシ)の多い品種・部位でカロリーが高くなる傾向があります。
品種/部位 | 脂身の少ない部位 | 脂身が中程度の部位 | 脂身の多い部位 |
和牛肉 |
207~258kcal |
319~380kcal (肩ロース、ランプ) |
460~514kcal |
国産牛 (脂身は中程度) |
177~196kcal |
220~234kcal (外もも、肩、ランプ) |
295~381kcal (肩ロース、サーロイン、リブロース、ばら) |
輸入牛 (脂身が少ない) |
123~160kcal (ヒレ、もも、肩) |
197~221kcal (外もも、リブロース、ランプ、肩ロース) |
273~338kcal (サーロイン、ばら) |
※文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」より作成
タンパク質
牛肉の主要な栄養素としては「たんぱく質」が代表的です。
たんぱく質は筋肉をはじめとした全身の細胞などの材料になるため、重要な栄養素のひとつ。
牛肉はアミノ酸スコアが100で、良質なたんぱく質の摂取源となります。
※アミノ酸スコアとは
たんぱく質を構成する20種のアミノ酸のうち、9種類の必須アミノ酸は食事からとる必要があります。
アミノ酸スコアは必須アミノ酸をどのくらいバランスよく含むか示した数値です。
■たんぱく質を含む食品のアミノ酸スコア(例)
- 肉類、魚類、たまご、牛乳、大豆…100
- 米や小麦などの穀類…65程度
牛肉は各種品種・部位を含めると、100gあたりのたんぱく質量は9.7~20.8gの幅があります。
平均的な肉質の「国産牛の肩ロース」の場合、100gあたりのたんぱく質量は16.2gとなっています。
たんぱく質は赤身(筋肉)部分に多く存在するため、脂身の少ない品種・部位でたんぱく質が多くなる傾向があります。
品種/部位 | 脂身の少ない部位 | 脂身が中程度の部位 | 脂身の多い部位 |
和牛肉 |
17.7~19.2g |
13.8~15.1g (肩ロース、ランプ) |
9.7~11.7g |
国産牛 (脂身は中程度) |
19.5~20.8g |
17.1~18.6g (外もも、肩、ランプ) |
12.8~16.5g (肩ロース、サーロイン、リブロース、ばら) |
輸入牛 (脂身が少ない) |
19.6~20.5g (ヒレ、リブロース、もも) |
17.4~19.0g (肩、外もも、ランプ、肩ロース、サーロイン) |
14.4g (ばら) |
※文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」より作成
ビタミン
牛肉はビタミンB12を比較的多く含む食品です。
牛肉は各種品種・部位を含めると、100gあたりのビタミンB12の量は0.6~3.0㎍の幅があります。
平均的な肉質の「国産牛の肩ロース」の場合、100gあたりのビタミンB12の量は1.7㎍となっています。
ビタミンB12はたんぱく質と同様に赤身(筋肉)部分に多く存在するため、脂身の少ない品種・部位でビタミンB12が多くなる傾向があります。
日本人の食事摂取基準2020年版では、12歳以上の男女における1日あたりの推奨量は2.4㎍となっています。
牛肉の中でもビタミンB12を多く含む国産牛のヒレや肩肉の場合、100gで1日の推奨量をまかなうことができます。
ミネラル
牛肉は鉄分や亜鉛といったミネラルを比較的豊富に含む食品です。
いずれも赤身部分に多く存在しているため、たんぱく質と同様、赤身が多い品種・部位で多く、脂身の多い品種・部位では少なくなる傾向があります。
鉄分は「ヘモグロビン」という状態で赤血球に含まれ、全身に酸素を運ぶはたらきを持ちますが、月経のある女性では定期的に鉄分を失うため、不足しやすい栄養素です。
鉄分は吸収しにくい栄養素ですが、牛肉に含まれる鉄分は野菜などに比べると吸収されやすい特徴があります。
牛肉の各種品種・部位では、0.7~2.8㎎の幅があります。
平均的な肉質の「国産牛の肩ロース」の場合、100gあたりの鉄分量は0.9㎎となっています。
鉄分の摂取推奨量は成人男性で7.5㎎、月経のある成人女性で10.5㎎程度となっていますので、100g程度の牛肉で必要な量を補うことが難しいといえます。
牛肉を含めた様々な食品から摂取することが大切です。
一方、亜鉛は皮膚や骨を健康な状態に保つはたらきや、赤血球などを含む細胞の膜を正常に保つはたらきを持ちます。
牛肉の各種品種・部位では、2.6~5.8㎎の幅があります。
平均的な肉質の「国産牛の肩ロース」の場合、100gあたりの鉄分量は4.7㎎となっています。
亜鉛の摂取推奨量は成人男性で11㎎、女性で8㎎となっています。
鉄分ほどは不足しにくいものの、牛肉だけでなくほかの食材をうまく活用して摂取したい栄養素です。
品種や部位による栄養価の違い
牛肉は品種や部位によって肉質が大きく異なります。
品種や部位による肉質の違いをそれぞれ簡単に解説します。
品種による違い
肉類の中でも、牛肉は外国産牛肉か和牛かなどの産地や品種の違いによって肉質が大きく異なります。
- 和牛:
日本に昔からいる食用の品種である特定の4品種と、その4品種の中で掛け合わされたもの。
「黒毛和牛」などがこれにあたります。
脂身が多い傾向があります。 - 国産牛:
和牛以外の国内で肥育されたもの。
和牛と比べると比較的安価で一般的に食べる機会が多い種類。
食品成分表では、「乳用肥育牛肉」として収載されています。
和牛ほどは脂身が多くない傾向にあります。 - 輸入牛:
アメリカやオーストラリアなどから輸入される種類。
比較的赤身が多く、エネルギーは低めですが、やや硬い食感になりやすい側面もあります。 - 交雑牛:
和牛と乳用肥育牛を掛け合わせたもの。
ちょうど2種類の間をとったような肉質で、乳用肥育牛よりもサシが入りやすく、和牛よりも安価になるのが特徴です。
同じ牛肉で同じ部位であっても、輸入牛と和牛では脂質の量が3倍以上にもなり、エネルギーは倍以上になります。
品種によって脂身の入り方が異なるのが大きな要因となるため、エネルギーに関しても栄養価に関しても、「牛肉」としてひとくくりに考えるのは難しいといえそうです。
また、同じ名前のつく部位であっても、脂肪分が少なく赤身の多いほうが、よりたんぱく質やビタミン・ミネラルが多いといえます。
よって、たんぱく質・ビタミン・ミネラルをできるだけたくさんとりたい!という場合には、品種や、部位にかかわらず、そのお肉の赤身と脂身のバランスを確認して選ぶのがよいでしょう。
一方、赤身肉はサシがあまり入っていない分、硬い食感になりがちな特徴もあります。
赤身肉はしっかり煮込んで柔らかくする、薄切り肉を使うなどの工夫で食べやすくできます。
部位による違い
牛肉は部位によって赤身と脂身のバランスが大きく異なります。
- 脂身の多い部位
サーロイン、ばら、リブロース - 中程度の部位
肩ロース、ランプ - 脂身の少ない部位
ヒレ、もも、外もも、肩
脂身の割合が高くなるほど、エネルギーが高くなり、たんぱく質の量は少なくなります。
たんぱく質の摂取源としては、赤身の部分が多い部位のほうが効率的にタンパク質を摂取できるといえます。
ヒレやもも肉では鶏もも肉に匹敵するほどの低エネルギーに抑えられます。
脂質とたんぱく質ほどはっきりとは分かれませんが、ビタミンやミネラルも赤身の割合に比例する傾向があります。
貧血は予防したいけどエネルギー(カロリー)が気になる、という人にとっても、赤身の牛肉は魅力的な食材です。
牛肉の栄養素を活かす食材の組み合わせ
牛肉はたんぱく質や鉄分、亜鉛、ビタミンB12の良い摂取源となりますが、栄養素をより効果的に取り入れるには、その他の食材との組み合わせも大切です。
具体的には、野菜や果物、穀類と組み合わせて食べること。
それぞれの内容について詳しく解説します。
鉄分の吸収を高めるには野菜・果物
野菜や果物に含まれるビタミンCは、牛肉に含まれる鉄分の吸収を良くする働きがあります。
貧血予防の観点からいえば、牛肉に含まれる鉄分とたんぱく質に加えて、鉄分の吸収を高めるビタミンCを組み合わせるのがおすすめです。
ビタミンCを多く含むのは、以下のような野菜・果物が代表的です。
- パプリカ
- ブロッコリー
- キウイフルーツ
- 柑橘類
これらの食品だけに限らず、「肉と野菜」「肉と果物」を合わせて食べるのは理にかなった組み合わせといえそうです。
食事のバランスをとるには穀類・野菜類
牛肉は優れたたんぱく質源ですが、炭水化物や食物繊維、ビタミンCはほとんど含まれておらず、単体で栄養バランスが取れる食品ではありません。
また、肉類が中心の、たんぱく質や脂質に偏った食事ばかりでは生活習慣病のリスクが上がることも心配されています。
牛肉だけでおなかいっぱいにするのではなく、炭水化物を豊富に含むご飯やパン、食物繊維やビタミンCを豊富に含む野菜類などと組み合わせると、バランスのとれた食事内容にできます。
他の肉類も取り入れる
牛肉もほかの肉類もたんぱく質を主に含む食品ですが、それぞれ異なる特徴を持っています。
たんぱく源としてお肉を取り入れたいという時は、鶏肉・豚肉・牛肉のどれを選んでも良質なたんぱく質をとることができます。
どの栄養素も体に必要なものなので、どれかひとつに偏ることなく食べることが大事です。
牛肉の利点を活かすレシピ紹介
牛肉のたんぱく質や鉄分を上手に摂れる、簡単なレシピを2つ紹介します。
赤身牛肉でかんたんヘルシーすき焼き
【材料】2人分
- 牛モモ(すき焼き用薄切り)…150g
- サラダ油…小さじ1(4g)
- 木綿豆腐…小1パック(150g)
- 長ネギ…1/2本(50g)
- まいたけ…1パック(100g)
- 醤油…大さじ3(45g)
- みりん…大さじ3(45g)
- 砂糖…大さじ1.5(18g)
- 水…大さじ2(10g)
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
【作り方】
1. 木綿豆腐は5㎝角に、長ネギは斜め切りに、マイタケは小分けにする。
2. 鍋かフライパンにサラダ油をしき、牛肉を焼く。
3. 牛肉の色が変わったら長ネギ、マイタケ、調味料を加える。
4. 全体が沸いたら木綿豆腐を入れ、ネギに火が通って全体に味がなじむまで煮る。
5. 煮えたら火からおろしてできあがり。
【栄養価とコメント】
1人分360kcal
硬い食感になりやすい赤身肉も、ごく薄いものを使えば時間をかけなくても柔らかく食べられます。
お豆腐やお好みの野菜と組み合わせてすき焼き風のおかずをつくれます。
すき焼きのたれは市販のものでも大丈夫です。
お好みで生卵や温泉卵を絡めながら食べてもおいしいです。(卵1個が加わると+80kcalになります)
牛ももと野菜のしゃぶしゃぶ風温サラダ
【分量】2人分
- 牛モモ(しゃぶしゃぶ用薄切り)…200g
- 豆苗…1パック(85g)
- 白菜…3枚(150g)
- ポン酢…大さじ2(30g)
- ごま油…小さじ2(8g)
【作り方】
1. 豆苗は根元を切って1/3の長さに切る。白菜は食べやすい大きさに切る。
2. 鍋にお湯を沸かし、沸騰したら牛もも肉を1枚ずつさっとゆでる。ゆであがったらお皿に引き上げておく。
3. 耐熱の皿に白菜、豆苗をのせ、ふんわりラップをかけて電子レンジ600W3~5分加熱する。
4. 火の通った野菜にゆでた牛肉を乗せ、ポン酢とごま油をかける。
【栄養価】
1人分243kcal 鉄分1.9mg 亜鉛5.0mg ビタミンC33mg
さっとゆでることで脂が落ちるため低カロリーながら、鉄分とビタミンCが豊富な組み合わせです。
鉄分は成人女性(月経あり)の推奨量の20%、亜鉛は成人女性の推奨量の60%、ビタミンCは成人女性の30%を補えます。
まとめ
牛肉は赤身部分にたんぱく質や鉄分が豊富な食材です。
とはいえ、実際の成分値は品種や部位によって大きく異なっています。
味の好みはもちろんですが、取り入れたい栄養素や食事からのエネルギー全体のバランスを意識しながら上手に取り入れてくださいね。
また、たんぱく質を豊富に含む食品としては、牛肉以外にも鶏肉、豚肉、魚介類、たまご、乳製品、大豆製品など、たくさんの選択肢があります。
どれかひとつにこだわることなく、いろいろな食品を幅広く食べるのが健康的な食事のコツです。
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参考文献 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」 吉田勉 監修:「わかりやすい食品機能栄養学」.三共出版,2010. |