投稿日: 2019.10.21 | 最終更新日: 2023.04.10

朝ごはんを抜くと太る?ダイエット中の朝食抜きのデメリットを解説

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朝食と肥満の関係

「ダイエットのためには朝食抜きは逆効果」「1日3食食べたほうがやせる」、とよく言います。
食べたほうがやせるというのはどういうことなのでしょうか?

この仕組みは摂取エネルギーの増減だけではなく、生活習慣全体がかかわっているようです。

「朝食抜き」がダイエットに与える影響

朝食と体内時計

単純に考えれば、朝食を食べない分摂取エネルギー(カロリー)は少なくなります。

1日を通しての活動量が変わらないのであれば、摂取エネルギーが少なくなるほど痩せやすい状態になっていると考えられます。

しかし、「朝食を抜くと太る」という説はなじみのあるものではないでしょうか?

実際、研究分野でも、朝食を食べる人に比べ、朝食を食べない人では腹囲やBMIが大きかった、という報告*1)があります。

朝食と肥満については、摂取エネルギーだけでは説明できない理由があるようで、朝食習慣の有無と肥満との間には、

  • 体内時計の乱れ
  • 睡眠時間の不足

といった要因がかかわっているようです。

体内時計の乱れによる体重への影響

ヒトを含めた動物の体には「体内時計(概日リズム、サーカディアンリズムともいう)」というはたらきが備わっています。

私たちの体は24時間同じ状態ではなく、時間帯によって体内のエネルギー代謝やホルモンの分泌量が異なると考えられています。

体内時計と食事の関係

体内時計は必ずしも正確に24時間周期であるわけではなく、1日に1回程度、リセットをすることで正常に働きます。

このリセット機能のスイッチとなるものは2つあり、

  • 朝、日の光を浴びること
  • 朝、食事をすること

によって体内時計がリセットされ、体全体も休息期から活動期に切り替わり、体温を上げ、エネルギーを消費するほうに働き始めるといわれています。

体内時計の乱れと体重増加

つまり、朝食を食べないということは体内時計のリセットが不十分で、活動期への切り替えがスムーズにいかないことを示し、昼食までの時間をエネルギー消費の少ない「省エネモード」で過ごすことにつながると考えられます。

朝食(にあたる時間帯の食事)を食べさせなかったマウスは、活動期でも体温が上がりにくく、エネルギー消費が減少したことで、食事摂取量が同じでも体重の増加がより大きかったという研究報告*2)があります。

マウスを使った実験で、直接ヒトにあてはめられるものではありませんが、いつも食べている朝食を抜いた時に体の冷えを感じたり、反対にいつも食べていない朝食を食べた時は午前中から活動的に動けたり、という経験がある人も少なくないのではないでしょうか?

睡眠時間の不足と肥満の関係

睡眠とダイエットの関係

体内時計の乱れに加え、睡眠不足も体重増加にかかわる要因となっているようです。
睡眠不足は「朝食抜き」の原因にもなりますが、それ以外の要因でも、体重増加に拍車をかけてしまうようです。

睡眠時間と肥満との関連

朝食を食べる習慣がなくなる理由の一つに、「睡眠不足」が考えられますが、食事だけでなく、朝食の欠食につながる「睡眠不足」そのものにも太ってしまう原因があるようです。

睡眠不足の状態は食欲にかかわるホルモン分泌に影響し、食べすぎにつながる*3)といわれています。

また、睡眠時間とBMI(体格指数:身長に対する体重)の関係を調べた研究では、睡眠時間が7時間よりも長くても短くても、BMIが高くなり、生活習慣病の発生頻度が高くなったとする報告*4)もあります。
(睡眠時間が長すぎる場合は、活動時間が短くなることによりエネルギー消費が小さくなることが肥満の原因と考えられています)

肥満予防のための生活習慣改善

運動とダイエット

また、冒頭で挙げた論文では、朝食の有無と体型のほかに、運動習慣や野菜の摂取量を比べた結果も示されていました。
朝食を食べる人に比べ、朝食を食べない人では運動習慣が少なく、テレビを見る時間が長く、野菜や果物の摂取量が少ない傾向にあることが報告*1)されています。

朝食を食べないというだけでは、太ることに直接つながるとは言いにくいように感じます。
しかし、「朝食を食べない」ということの前後には、

  • 夜寝る時間が遅い、睡眠時間が足りない、
  • 体内時計がうまくリセットされない
  • 運動習慣が少なくなり、消費エネルギーが小さくなりがち

といった「不規則な生活による生活習慣の乱れ」も存在しているといえそうです。

身体活動量を確保する

朝食を食べないことによって太る原因には、「摂取エネルギーが増える」以上に「消費エネルギーが減る」要因が大きくかかわっているようです。

体脂肪の増減は「食事からの摂取エネルギー」と「日常生活や運動による消費エネルギー」の差によっておこります。

朝食を抜くことで摂取エネルギーが減ったとしても、それに伴って体温を上げるエネルギーを使わなくなり、運動習慣が減ったことで消費エネルギーも減ってしまうのでは、ダイエットに効果的とは言いにくいでしょう。

また、人によっては睡眠不足の習慣があり、ホルモン分泌の異常で食べすぎを引き起こしていたら、なおのことです。

しっかり食べてしっかり動く

ダイエットでは摂取カロリーよりも消費カロリーを大きくすることで体脂肪を減らすのが目的になります。
しかし(例えばですが)「食事の制限による1日-500kcal」と、「食事と運動の組み合わせによる1日-500kcal」はかなり性質が異なります。

食事制限のみでは

  • 体の正常なはたらきに必要な栄養素がとり切れない
  • 不足するエネルギー源を補填するために筋肉の分解が高まり、基礎代謝が落ちる
  • 運動不足そのものが将来の生活習慣病のリスクを高める要因になる

といった問題点があります。

体に悪影響を与えないダイエットとしてだけではなく、将来の生活習慣病を予防する意味でも、「しっかり食べてしっかり動く」ことが大事だといえます。

まとめ

睡眠不足や朝食を抜く不規則な生活では朝食以外のエネルギー摂取が増えがちな一方で、運動などによるエネルギー消費が少ないライフスタイルになりがちなようです。

朝食を抜くと太る、というのは厳密には間違いで、「朝食を抜くような不規則な生活習慣は太りやすい」というのが比較的正解に近いのではないでしょうか。

ポイントは「朝ごはん」だけでなく、「整った生活習慣全体」といえそうです。
まず第一歩として、今日は早めに寝て、明日は朝ごはんから1日をスタートしてみてはいかがでしょうか?

ダイエット中に食べたい朝ごはんのポイントについて詳しく解説した記事はこちら

参考文献

厚生労働省e-ヘルスネット:「体内時計」

*1)Smith KJ,et al. Skipping breakfast:longitudinal associations with cardiometabolic risk factors in the childfood Determinants of Adult Hearth Study.Am J Clin Nutr 2010;92:1316-25.

*2)Shimizu H, Hanzawa F, Kim D, Sun S,Laurent T, Umeki M, et al. (2018) Delayed first active-phase meal, a breakfast-skipping model, led to increased body weight and shifted the circadianoscillation of the hepatic clock and lipid metabolism-related genes in rats fed a high-fat diet. PLoS ONE 13(10): e0206669.

*3)香川 靖雄. 時間栄養学による生活習慣病の予防, 体力科学 第63巻 第3号 293-304(2014)DOI:10.7600/jspfsm.63.293

*4)Luyster FS, Strollo PJ Jr, Zee PC, Walsh JK; Boards of Directors of the American Academy of Sleep Medicine and the Sleep Research Society. Sleep: a health imperative. Sleep 35: 727-734, 2012.

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。