
「ダイエットのためには朝食抜きは逆効果」「1日3食食べたほうがやせる」、とよく言います。
食べたほうがやせるというのはどういうことなのでしょうか?
この仕組みは摂取エネルギーの増減だけではなく、生活習慣全体がかかわっているようです。
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「朝食抜き」がダイエットに与える影響
単純に考えれば、朝食を食べない分摂取エネルギー(カロリー)は少なくなります。
1日を通しての活動量が変わらないのであれば、摂取エネルギーが少なくなるほど痩せやすい状態になっていると考えられます。
しかし、「朝食を抜くと太る」という説はなじみのあるものではないでしょうか?
実際、研究分野でも、朝食を食べる人に比べ、朝食を食べない人では腹囲やBMIが大きかった、という報告*1)があります。
朝食と肥満については、摂取エネルギーだけでは説明できない理由があるようで、朝食習慣の有無と肥満との間には、
- 体内時計の乱れ
- 睡眠時間の不足
といった要因がかかわっているようです。
体内時計の乱れによる体重への影響
ヒトを含めた動物の体には「体内時計(概日リズム、サーカディアンリズムともいう)」というはたらきが備わっています。
私たちの体は24時間同じ状態ではなく、時間帯によって体内のエネルギー代謝やホルモンの分泌量が異なると考えられています。
体内時計と食事の関係
体内時計は必ずしも正確に24時間周期であるわけではなく、1日に1回程度、リセットをすることで正常に働きます。
このリセット機能のスイッチとなるものは2つあり、
- 朝、日の光を浴びること
- 朝、食事をすること
によって体内時計がリセットされ、体全体も休息期から活動期に切り替わり、体温を上げ、エネルギーを消費するほうに働き始めるといわれています。
体内時計の乱れと体重増加
つまり、朝食を食べないということは体内時計のリセットが不十分で、活動期への切り替えがスムーズにいかないことを示し、昼食までの時間をエネルギー消費の少ない「省エネモード」で過ごすことにつながると考えられます。
朝食(にあたる時間帯の食事)を食べさせなかったマウスは、活動期でも体温が上がりにくく、エネルギー消費が減少したことで、食事摂取量が同じでも体重の増加がより大きかったという研究報告*2)があります。
マウスを使った実験で、直接ヒトにあてはめられるものではありませんが、いつも食べている朝食を抜いた時に体の冷えを感じたり、反対にいつも食べていない朝食を食べた時は午前中から活動的に動けたり、という経験がある人も少なくないのではないでしょうか?
睡眠時間の不足と肥満の関係
体内時計の乱れに加え、睡眠不足も体重増加にかかわる要因となっているようです。
睡眠不足は「朝食抜き」の原因にもなりますが、それ以外の要因でも、体重増加に拍車をかけてしまうようです。
睡眠時間と肥満との関連
朝食を食べる習慣がなくなる理由の一つに、「睡眠不足」が考えられますが、食事だけでなく、朝食の欠食につながる「睡眠不足」そのものにも太ってしまう原因があるようです。
睡眠時間とBMI(体格指数:身長に対する体重)の関係を調べた研究では、睡眠時間が7時間よりも長くても短くても、BMIが高くなり、生活習慣病の発生頻度が高くなったとする報告*3)もあります。
(睡眠時間が長すぎる場合は、活動時間が短くなることによりエネルギー消費が小さくなることが肥満の原因と考えられています)
睡眠不足と食欲にかかわるホルモンとの関連
また、睡眠不足の状態は食欲にかかわるホルモンの分泌に影響し、食べすぎにつながる*4)といわれています。
食欲にかかわるホルモンには、「食欲を抑えるホルモン」と「食欲を強めるホルモン」が存在します。
睡眠時間が短く、睡眠の質が悪いほど、食欲を抑えるホルモンのひとつである「レプチン」の分泌が少なく、反対に食欲を強めるホルモンである「グレリン」の分泌が多くなること*5)が知られており、食べすぎやすい体の状態になることが推測されます。
肥満予防のための生活習慣改善
朝食欠食と睡眠不足は互いに関係しあいながら、体重増加を促す要因となっているようです。
また、冒頭で挙げた論文では、朝食の有無と体型のほかに、運動習慣や野菜の摂取量を比べた結果も示されていました。
朝食を食べる人に比べ、朝食を食べない人では運動習慣が少なく、テレビを見る時間が長く、野菜や果物の摂取量が少ない傾向にあることが報告*1)されています。
朝食を食べないというだけでは、太ることに直接つながるとは言いにくいように感じますが、「朝食を食べない」ということの前後には、睡眠時間や運動習慣、食事の質など、「生活習慣全体」の問題があるようです。
夜寝る時間が遅い、睡眠時間が足りない ↓ 朝食を食べないため、体内時計がうまくリセットされない ↓ 運動習慣が少なくなり、消費エネルギーが小さくなりがち ↓ 体重増加 |
このような生活習慣の乱れによる肥満を防ぐための具体的な方法は、以下の3つが挙げられます。
- 夜は早めに就寝し、十分に睡眠時間をとる
- 朝起きたら日光を浴び、朝食をとる
- 運動を取り入れたダイエットを行う
それぞれについて詳しく解説します。
夜は早めに就寝し、十分に睡眠時間をとる
前述のとおり、BMIを低く、生活習慣病の発生頻度を抑えるためには、7時間前後の睡眠が必要とされているようです。
次の日に起きるべき時間から逆算して、早めに布団に入るようにしましょう。
寝つきを良くする、睡眠の質を上げるための取り組みとしては、以下のようなものがあります。
- 就寝2~3時間前に入浴する
- 寝る前にカフェインをとらない
- 寝る前にアルコールはとらない
- 寝る前に強い光を浴びない
朝起きたら日光を浴び、朝食をとる
朝起きてから日光を浴びて朝食をとることにより、体内時計をリセットし、活動的な体の状態を整えましょう。
朝食は初めから完璧なものを目指そうとする必要はありません。
簡単なもの・食べやすいものから習慣化するとよいでしょう。
朝食習慣をつくるための食事については、この後に詳しく解説します。
運動を取り入れたダイエットを行う
体脂肪の増減は「食事からの摂取エネルギー」と「日常生活や運動による消費エネルギー」の差によっておこります。
朝食を抜くことで摂取エネルギーが減ったとしても、それに伴って体温を上げるエネルギーを使わなくなり、運動習慣が減ったことで消費エネルギーも減ってしまうのでは、ダイエットに効果的とは言いにくいでしょう。
また、人によっては睡眠不足の習慣があり、ホルモン分泌の異常で食べすぎを引き起こしていたら、なおのことです。
ダイエットでは摂取カロリーよりも消費カロリーを大きくすることで体脂肪を減らすのが目的になります。
しかし(例えばですが)「食事の制限による1日-500kcal」と、「食事と運動の組み合わせによる1日-500kcal」はかなり性質が異なります。
食事制限のみでは
- 体の正常なはたらきに必要な栄養素がとり切れないことがある
- 不足するエネルギー源を補填するために筋肉の分解が高まり、基礎代謝が落ちる
- 運動不足そのものが将来の生活習慣病のリスクを高める要因になる
といった問題点があります。
体に悪影響を与えないダイエットとしてだけではなく、将来の生活習慣病を予防する意味でも、「しっかり食べてしっかり動く」ことが大事だといえます。
朝ごはんを習慣にするためのおすすめメニュー
では、朝ごはんには、どんなものを食べるのがよいのでしょうか?
一汁三菜がそろった健康的な食事は理想的ですが、時間的余裕のない朝ごはんにおいてはそこまでこだわらなくても大丈夫です。
最優先は主食
最優先で用意したいのが、米・パン・麺類などの「主食」。
炭水化物(糖質)は脳を含む全身の主なエネルギー源となるため、炭水化物を主に含む主食は優先的にとりたい食材です。
たんぱく源になる主菜をプラス
次いで、たまごや肉類・魚類などの「主菜」が加わるとよりバランスがよくなります。
おにぎりやサンドイッチでは主食に加えて主菜となる具が一緒に食べられるため、便利です。
野菜の副菜でバランスアップ
さらに余裕があれば野菜のおかず「副菜」を加えると理想的なバランスになりますが、用意する手間も食べる量も増えてしまうため、無理に用意する必要はありません。
昼食や夕食など、1日を通してしっかり取れれば問題ありません。
果物・乳製品を有効活用
一方で、朝ごはんは不足しがちな果物や乳製品をとるチャンスでもあります。
朝ごはんにぴったりのヨーグルトや牛乳、カット済みの冷凍フルーツは調理の手間もないため、手軽に朝ごはんの栄養価を充実させるのに最適です。
負担なく用意できそうなものから、朝ごはんの習慣を作ってみてくださいね。
まとめ
睡眠不足や朝食を抜く不規則な生活では朝食以外のエネルギー摂取が増えがちな一方で、運動などによるエネルギー消費が少ないライフスタイルになりがちなようです。
朝食を抜くと太る、というのは厳密には間違いで、「朝食を抜くような不規則な生活習慣は太りやすい」というのが比較的正解に近いのではないでしょうか。
ポイントは「朝ごはん」だけでなく、「整った生活習慣全体」といえそうです。
まず第一歩として、今日は早めに寝て、明日は朝ごはんから1日をスタートしてみてはいかがでしょうか?
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参考文献 *1)Smith KJ,et al. Skipping breakfast:longitudinal associations with cardiometabolic risk factors in the childfood Determinants of Adult Hearth Study.Am J Clin Nutr 2010;92:1316-25. *2)Shimizu H, Hanzawa F, Kim D, Sun S,Laurent T, Umeki M, et al. (2018) Delayed first active-phase meal, a breakfast-skipping model, led to increased body weight and shifted the circadianoscillation of the hepatic clock and lipid metabolism-related genes in rats fed a high-fat diet. PLoS ONE 13(10): e0206669. *3)Luyster FS, Strollo PJ Jr, Zee PC, Walsh JK; Boards of Directors of the American Academy of Sleep Medicine and the Sleep Research Society. Sleep: a health imperative. Sleep 35: 727-734, 2012. *4)香川 靖雄. 時間栄養学による生活習慣病の予防, 体力科学 第63巻 第3号 293-304(2014)DOI:10.7600/jspfsm.63.293 *5)三輪孝士, 高橋一平, 西村美八, 岩間孝暢, 工藤久, 甲斐知彦, 飯塚浩史, 糟谷昌志, 浜野学, & 中路重之. (2015). 食欲調整ホルモン(レプチン、グレリン)と睡眠時間・睡眠の質との関係. 体力・栄養・免疫学雑誌(JPFNI), 25(1), 52–58. 社団法人日本栄養士会監修:「食事バランスガイド」を活用した栄養教育・食育実践マニュアル.第一出版,2011. |