
近年、ダイエットや健康面で悪者にされがちな糖質。
炭水化物・糖質・糖類など、いろいろな呼び方があって、どれが何なのか、分かりにくいうえ、体に必要なのか不要なものなのか、様々な意見が飛び交っています。
炭水化物とはそもそもどんなものなのか?
不足したり、取りすぎたりすることによってどんなことが心配されるのか、解説します。
Contents
炭水化物・糖質とは、何なのか?
炭水化物や糖質、糖類、様々な呼び名がありますが、どれも同じもののような、違うような。
まずはどの言葉が何を指すのか整理していきましょう。
砂糖の仲間が糖類
脳のエネルギーとなるブドウ糖(グルコース)、
果物に多く含まれる果糖(フルクトース)、
ブドウ糖と果糖が結合した上白糖などの砂糖(ショ糖・スクロース)など、甘味のあるもののグループを糖類といいます。
比較的分子が小さく、消化吸収に時間がかからないのが特徴です。
体の組織の中でも、脳と赤血球はブドウ糖のみをエネルギー源にできます。
1gあたり4kcalのエネルギー(カロリー)を持っています。
でんぷんを加えたグループが糖質
糖類に加えて、ブドウ糖が多く連なったオリゴ糖やでんぷん、グリコーゲンを合わせたグループを糖質といいます。
でんぷんやグリコーゲンは体内でブドウ糖に消化されてから吸収されるため、体内ではほとんど同じ働きをします。
1gあたりのエネルギーは糖類と同じく4kcalです。
食物繊維まで含めると炭水化物
糖類を含む糖質に、さらに食物繊維を加えたグループを炭水化物といいます。
糖質=炭水化物とし、食物繊維は炭水化物に含まないとする場合もあります。
しかし、市販品の栄養成分表示では食物繊維も炭水化物に含まれていますので、ここではその基準に合わせて説明します。
食物繊維とは、ヒトの体では消化されない食品の成分のことを指した総称で、糖質とは違いほとんどエネルギー源にならない成分です。
糖質が不足するとどんなことが起こる?
近年、糖質制限ダイエットが注目されていますが、糖質制限ダイエットでは糖質不足による健康への影響が心配されています。
体が必要な量の糖質が摂取できていないと、
・脳に必要な糖質が不足し集中力がきれたり、眠気やイライラが起こりやすくなる
・筋肉を分解して血糖値を維持するため、筋量低下、代謝低下がおこり太りやすい体になる
・糖の代わりに体内でエネルギー源になるケトン体の影響で体臭がでることもある
・血中の脂質が増加し、脂質異常症や血管疾患のリスクが高まる
・腸内の悪玉菌が増加し、便秘などの原因となる
などの影響が出る可能性が考えられています。
糖質をとりすぎるとどんなことが起こる?
糖質に限らず、消費エネルギーに比べてエネルギー源となる栄養素を取りすぎると、余ったエネルギーは体脂肪として蓄積されます。
これは炭水化物だけではなく、たんぱく質や脂質など、どのエネルギー源も同じことが言えます。
体脂肪の増減は基本的には摂取エネルギーと消費エネルギーの差が問題で、糖質はだめ、たんぱく質ならいくらでも食べてよいというものではありません。
ただし、食事全体のバランスを見たときに、糖質の割合が大きくたんぱく質や脂質の割合が少ないと、体が必要とするぶんのたんぱく質や脂質が不足することにもつながります。
そのため、極端に糖質に偏った食事は避けるべきですが、反対に糖質を少なくしすぎることも体には悪影響を及ぼします。
0か100か、ではなく、糖質の「量」と「割合」を適正な範囲に収めることが大事なポイントです。
炭水化物は1日にどのくらい食べればよい?
量よりも割合が大事
炭水化物の摂取量としては、gで示されるような量よりも、食事全体に対しての割合の大きさが重要になってきます。
日本人に推奨される炭水化物の摂取量は、摂取エネルギー全体の50~65%と示されています。
最低限とりたい糖質の量
とはいえ、脳や赤血球といった糖質(ブドウ糖)をエネルギー源とする組織が必要とする絶対量というものもありますので、最低限の量の確保は必要です。
脳や赤血球のような組織が1日に必要とする糖質の量は最低でも160g以上といわれています。
最低限必要な量と、摂取エネルギー全体に対する割合とを組み合わせると、平均的な体格・運動量の20代の女性では、最低でも160g、おおむね200~300g程度の糖質をとることが望ましいといえそうです。
目安となる食事の量は?
糖質はごはんなどの主食だけに含まれているわけではありません。
野菜や果物、調味料、砂糖など様々な食品に含まれていますので、厳密には表現できませんが、
炭水化物を主に含む主食では食パン6枚切り1枚60g(糖質28g)、おにぎり2個200g(糖質74.2g)、うどんひと玉200g(糖質43.2g)くらいで合計およそ150gの糖質をとることができますので、
1日3回の食事にそれぞれ主食となる食品(ごはんやパン、麺類)1人前相当の量をとるようにすると、最低限の摂取量を下回るといったことはなくなりそうです。
主食に加えて副菜や果物など、いろいろな食材を食べることで、1日でで200~300g程度の糖質をとるのが理想的です。
糖質を控えるとダイエットになるの?
糖質は摂取エネルギーの6割近くを占めるため、糖質を減らすことで摂取エネルギーを減らしやすく、ダイエットにつなげやすいといわれています。
とはいえ、糖質を減らすといっても、単に「0」に近づけるのではさまざまな問題の原因となります。
糖質主体の食事の人は適度に減らすことでカロリーオフに
普段の食事がもともと糖質が多いという人、たとえば
・野菜の少なく炭水化物の多い丼物のようなものが多い場合
・甘いお菓子やおせんべい、糖類の多く含まれたジュースなどの間食が多い
といった人は、それだけで糖質からのエネルギーの過剰摂取になっている場合があります。
そのような場合は、炭水化物の量を減らして代わりに野菜を食べたり、間食やジュースをやめたりするだけでも過剰になっていた糖質の摂取量やエネルギーを適正値までオフすることができます。
悪者にされがちな糖質、少なければいいということはありません
「主食抜き」はトラブルのもと
反対に、ごはんやパンなどの主食を抜くことが多くおかずばかり食べている人は、「糖質オフでヘルシー」といわれることがありますが、実はそうとも言い切れません。
たんぱく質や脂質の割合が高くなると、脂質異常症や血管疾患、糖尿病や肥満のリスクが上がるともいわれています。
また、穀類に含まれる食物繊維の摂取量も少なくなるため、便秘などのトラブルも起きやすくなります。
糖質のとりすぎがよくないとはいえ、脂質やタンパク質の割合が多すぎるのも問題になるのです。
「野菜だけ」はエネルギー不足で不健康
「野菜中心の食事」というと健康的なイメージがありますが、こちらも度を過ぎれば不健康なものになってしまいます。
食事のほとんどがサラダなどの野菜料理で、肉のおかずやごはんやパンなどの主食をとっていない人は、そもそものエネルギーが足りていないことが予想されます。
エネルギー不足の状態が続くと筋量が徐々に減っていき、体調を崩しやすくなるなどの影響が考えられます。
おにぎり一つや卵焼き1人前からでも、エネルギー源になる食事をプラスすることで健康的な食事に近づけることができます。
どんな栄養素と組み合わせるといい?
少なすぎず多すぎない十分な量の糖質をとったうえで、糖質と一緒に食べるとおすすめなのは、食物繊維とビタミンB1です。
食物繊維は糖質をゆっくり吸収させる
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があり、そのなかでも水溶性食物繊維は腸の中でゲルを形成し、脂肪と炭水化物の消化吸収を遅らせる作用があります。
そのため、水溶性食物繊維を含む精製度の低い穀類や野菜、海藻などを取り入れることで満腹感を引き延ばして腹持ちが良くなり、間食などの食べ過ぎを防いでくれます。
さらに、食物繊維はヒトの体では消化されないため、エネルギーはほとんどないものとして考えられます。
食物繊維を多く含む食品は摂取エネルギーを低く保ったまま、食事のカサを増やしてくれるので、満腹感を促し、食べ過ぎによる肥満を防いでくれます。
体内で糖質を上手に利用するためのビタミンB1
ビタミンB1は豚肉や魚、米などの胚芽に含まれるビタミンで、糖質をエネルギーに変える手助けをするビタミンです。
糖質に加えてビタミンB1を十分に補給することにより、糖質をしっかりとエネルギーとして使うことができます。
ごはんなどの主食に加えて肉や魚の主菜、野菜などを使った副菜を組み合わせた定食スタイルの食事は、バランスの良い食事をとるのに最適といえます。
どんな食事にしようか迷ったときは、定食に近い形を心がけるだけで、食事のバランスを整えることができますよ。
まとめ
最近では避けられることが多い糖質ですが、人間の主なエネルギー源としてとても重要な役割を持っています。
過剰に避けるのではなく、バランスに気を付けていきたいですね。
参考文献 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 吉田勉 監修:「わかりやすい食品機能栄養学」.三共出版,2010. |