投稿日: 2022.11.18 | 最終更新日: 2023.08.18

ビタミンDの働きと1日の摂取量、多く含む食品を紹介

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必須栄養素であるビタミンのひとつ、ビタミンDはどのような食品に多く含まれているのでしょうか?
ビタミンDの効果的な摂取源となる食べ物のほか、ビタミンDの働きと1日あたりの摂取目安量について解説します。

ビタミンDとは

そもそも、ビタミンDとはどのような栄養素なのでしょうか?
体内でのビタミンDの働きと、日本人の食事摂取基準2020年版におけるビタミンDの基準値について紹介します。

ビタミンDの働き

ビタミンDは、主に骨を健康な状態に保つことを助ける働きを持ちます。

骨はコラーゲンを中心とした骨組みの上にリン酸カルシウムが沈着・石灰化して作られていますが、このカルシウムが不足すると健康な骨が作られません。

ビタミンDは腸管や肝臓でカルシウムとリンの吸収を促進する働きを持っています。

ビタミンDが不足した状態では、カルシウムがうまく体内に取り込まれないため、カルシウムを十分な量摂取していた場合でも骨の健康状態が維持できなくなってしまいます。

ビタミンDの1日の摂取量の基準値

ビタミンDは必須栄養素のひとつですが、

  • 摂取量と健康リスクの関係が詳しくは分かっていないこと
  • 紫外線によって体内でも産生されるため、日照条件によって必要な摂取量が変わること(詳しくは後述)

などの理由から「健康維持のために摂取すべき量」を正確に知るのが難しいため、一定期間内での摂取量のデータから「摂取目安量」のみが定められています。
*乳児はくる病のリスク回避ができる摂取量から策定

■ビタミンDの摂取目安量

男性  女性
0-11か月  5.0㎍  5.0㎍
1-2歳  3.0㎍  3.5㎍
3-5歳  3.5㎍  4.0㎍
6-7歳  4.5㎍  5.0㎍
8-9歳  5.0㎍  6.0㎍
10-11歳  6.5㎍  8.0㎍
12-14歳  8.0㎍  9.5㎍
15-17歳  9.0㎍  8.5㎍
18歳以上  8.5㎍  8.5㎍

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」報告書 より作成

ビタミンDと日光

すでに触れていますが、ビタミンDは日光に含まれる紫外線によって体内でも作られており、個人における「食事からとるべきビタミンDの量」はその人が浴びる紫外線量によって変化することが知られています。

具体的には、冬よりも夏が、雨の日より晴れの日が、高緯度(日本においては北)よりも低緯度(日本においては南)のほうがより紫外線量が多いため、体内で合成されるビタミンDが増え、食事からとるべきビタミンDの量は少なくなります。

また、気象条件だけでなく、個人の生活習慣(日光浴の時間など)も関係することから、体内で作られるビタミンDの量、およびそれを踏まえたビタミンDの摂取すべき量について、個人レベルで詳しく調べることは困難です。

ビタミンDの不足やとりすぎはどうなる?

必須栄養素のひとつであるビタミンDが不足するとどんなことが起こるのでしょうか?
また、とりすぎによる悪影響はあるのでしょうか?

ビタミンDが不足すると

ビタミンDが欠乏すると食事由来のカルシウムが吸収されにくくなったり、腎臓でカルシウムが再吸収されにくくなったりすることで、骨がうまく作られなくなります。

ビタミンDの欠乏症は子どもでは「くる病」、成人では「骨軟化症」と呼ばれ、以下のような症状が出ることが知られています。

  • 骨が柔らかく曲がりやすくなる(小児)
  • 頭蓋骨等が指で押しただけでへこむほど柔らかくなる(小児)
  • 乳歯が生えるのが遅くなる(小児)
  • 虫歯になりやすい(小児)
  • 足が曲がってО脚やX脚になる(小児)
  • 身長が伸びない(小児)
  • 転びやすい(小児)
  • 関節痛や背中痛(成人)

また、欠乏ほどではない「不足」の状態でも、骨の健康状態が維持されなくなることにより骨粗しょう症のリスクが上昇し、骨折も起こりやすくなることが知られています。

ビタミンDをとりすぎると

反対にビタミンDをとりすぎるとカルシウムの吸収が促進されすぎることで

  • 高カルシウム血症
  • 腎障害
  • 軟組織の石灰化

などが起こることが知られています。

ビタミンDは紫外線によっても作られますが、必要量までしか産生されないことが知られており、紫外線の浴びすぎによるビタミンDの過剰症は起こらないとされています。

ビタミンDを多く含む食品とは

十分な量のビタミンDを摂取するのに役立つ、ビタミンDを多く含む食品にはどんなものがあるでしょうか?
食事選びの参考にしてみてくださいね。

魚類

魚類はビタミンDの主要な摂取源となる食品群で、平成28年度の国民健康・栄養調査ではビタミンD摂取量の8割近くが魚介類からの摂取であるとされています。

一般的に身近な魚類に限った場合のビタミンD含有量は以下のようになっています。

食品名  食品100g中のビタミンD量(㎍/100g)
しらす干し(半乾燥品)  61.0
べにざけ(生)  33.0
まいわし(生)  32.0
しろさけ(生)  32.0
からふとます(生)  22.0
くろまぐろ(脂身、生)(トロ)  18.0
さんま(皮つき、生)  16.0

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より作成

生の魚類ではサケ・マスの仲間やイワシに多く、次いで脂質の多いマグロのトロやサンマに多く含まれています。

しらす干しは水分含量が少ないため、重さあたりのビタミンD含有量は多いものの、生の魚類に比べて1回の摂取量は少ないため、1食あたりのビタミンD摂取量は大きく変わらないかもしれません。

べにざけの場合、焼き魚として食べるときの一切れの重さを70~100g程度と考えると、1食でとれるビタミンDは23~33㎍と推定され、成人の1日あたりの摂取目安量の3~4倍近くにもなります。

ビタミンDは比較的長期間体内に貯蔵することができる栄養素であるため、食事摂取基準では1日あたりの摂取目安量はあるものの、毎日同じ量を摂取する必要性はあまりありません。(一定期間での平均摂取量を示した数値です。)

ビタミンDを十分な量摂取するという目的の上では魚料理を毎日食べる必要はなく、数日に1回程度の摂取でもよいと考えることができるでしょう。

たまご類

魚類ほどではありませんが、たまごは比較的ビタミンDを多く含む食品で、中でも卵黄部分に多く含まれています。

食品名  食品100g中のビタミンD量(㎍/100g)
鶏卵/卵黄(生)  12.0
鶏卵/卵黄(ゆで)  7.1
鶏卵/全卵(生)  3.8
うずら卵/全卵(水煮)  2.6
鶏卵/全卵(ゆで)  2.5

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より作成

含有量は魚に比べると少なめですが、たまごのほうがより摂取頻度が高いという人が多いと推測されますので、摂取源として有力なものといえそうです。

鶏卵1個は50~60g前後ですので、1日1個程度の卵を食べている場合には2㎍程度のビタミンDは摂取できていそうですね。

きのこ類

きのこには乾燥のものと生のものがあり、単純比較が難しいため、「ゆで」調理を行ったもののビタミンDの含有量を紹介します。

食品名  食品100g中のビタミンD量(㎍/100g)
きくらげ(ゆで)  8.8
まいたけ(ゆで)  5.9
エリンギ(ゆで)  2.6
乾燥しいたけ(ゆで)  1.4
しいたけ(原木栽培・ゆで)  0.4

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より作成

きのこは天日干しにすることでビタミンDの含有量が増えることが知られており、天日干し・熱風乾燥といった製造方法によっても左右されるものの、同じしいたけでも乾燥品のほうが重さあたりのビタミンD含有量が多くなっています。

また、生しいたけ、干ししいたけのいずれでも、調理前に1時間程度日光に当てることでビタミンDが増えることが報告*)されています。

ビタミンDのサプリメントは必要か

骨の健康維持に重要なビタミンDが不足しないために、サプリメントを活用すべきでしょうか?

平均的な食生活では必要なし

日本人の食事摂取基準2020年版で示されているビタミンDの摂取目安量は、日本の4地域、16日間の食事調査によって得られた摂取量のデータから設定されたもので、この値を確保しなければ直ちに健康へ悪影響があることがわかっているような強い科学的根拠のある数字ではありません。

ビタミンDを含む食品としては魚類、たまご類、きのこ類が挙げられますので、日常的に(毎日でなくとも)これらの食材を取り入れた食事がとれているのであれば、サプリメントが必要というほどことはないと考えられます。

ビタミンDは骨の健康に重要な役割を果たすものの、現時点の日本人の多くが意識して摂取量を増やさないといけない…というレベルのものではないと考えてよいでしょう。

魚類、たまご、きのこ類を含むいろいろな種類の食材を偏りなく取り入れるようにしたいですね。

日に当たる機会が極端に少ない場合は有用

成人において、一般的な食生活で、かつ日本国内で紫外線を浴びる機会がそれなりにある場合にはビタミンDの欠乏を心配する必要はあまりありませんが、極端に日光を浴びる機会が少ない場合や、日本の北海道よりもさらに高緯度で暮らしているような場合には、ビタミンDサプリメントが必要となる可能性も考えられます。

ビタミンDは個人の食習慣だけでなく生活習慣、住環境から受ける影響が大きいため、一概にサプリメントが必要、不要と判断することが難しい栄養素です。

自分にとってビタミンDのサプリメントが必要かどうか気になるという場合には、管理栄養士等の専門家に相談の上、生活習慣や日常的な食事内容について個別のチェックを受けるのがおすすめです。

過剰摂取に注意

サプリメントは特定の栄養素や食品成分を簡単に摂取できるのが利点です。
しかし、それゆえに過剰摂取にもつながりやすい点に注意が必要です。

ビタミンDの場合、過剰摂取では以下のような症状がみられることが分かっています。

  • 高カルシウム血症
  • 腎障害
  • 軟組織の石灰化
  • 乳児の成長遅延

通常の食品から過剰量のビタミンDを摂取し続けることは容易ではありませんが、サプリメントはとり方次第で過剰量を簡単に摂取できてしまいます。

ビタミンDのサプリメントをとること自体は問題ありませんが、過剰摂取にならないよう、摂取量には注意しましょう。

ビタミン全般について詳しく解説した記事はこちら

まとめ

ビタミンDは必須栄養素のひとつであり、以下のような働きを持つ栄養素です。

  • カルシウムとリンの吸収を促進する
  • 骨を健康な状態に保つ

健康維持のために摂取が必要であるため、日本人の食事摂取基準2020年版では摂取基準が設けられています。

  • 摂取目安量(18歳以上)…8.5㎍/日(男女とも)

一方で、ビタミンDは紫外線を浴びることで体内でも合成されることが知られており、食事から摂取すべきビタミンDの具体的な量は個人の住んでいる場所や季節、生活習慣によっても異なることが分かっています。

ビタミンDが不足・欠乏した場合には、以下のような影響が知られています。

  • くる病(小児)
  • 骨軟化症(成人)
  • 骨粗しょう症リスクの上昇
  • 骨折リスクの上昇

また、摂りすぎた場合には、以下のような健康への悪影響があるため、適量の摂取が必要です。

  • 高カルシウム血症
  • 腎障害
  • 軟組織の石灰化

ビタミンDを多く含む食品には以下の3つが代表的です。

  • 魚類
  • たまご類
  • きのこ類

中でも特に魚類は主な摂取源として重要な食品群です。
毎日食べる必要はありませんが、数日に1回程度のペースで取り入れられるとよいでしょう。

個人ごとのビタミンDの必要量や摂取量を正確に判断することは難しく、サプリメントの必要性は生活環境などにより、人それぞれといえます。

サプリメントは摂取量を増やすのに役立ちますが、その一方で誤った摂り方をすると摂取過剰にもなりやすいことに注意が必要です。

ビタミンDは体にとって重要な必須栄養素のひとつですが、健康維持のための正確な摂取量についてはまだ分かっていないことが多い栄養素です。
ビタミンDに限らず、必要な栄養素が不足しないように、または特定の栄養素を摂りすぎないように、いろいろな食材を取り入れたバランスの良い食事を心掛けたいですね。

バランスの取れた食事について、詳しく解説した記事はこちら

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参考文献

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

*)竹内 敦子, 岡野 登志夫, 和田 知子, 須藤 都, 新谷 有美, 小林 正. 日光照射によるしいたけ中のビタミンD_2増量効果. ビタミン 65 (3), 121-124 (1991)

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。