クレアチンは血液検査の項目のひとつです。
健康診断でクレアチニンの値が高いことを指摘されたものの、どんなことに気を付ければいいのか分からないという人が多いのではないでしょうか?
この記事では、血中のクレアチニンの値が高いことが示す体の状態と、クレアチニンを下げる働きのある食べ物はあるか、腎機能の維持・腎臓病の進行予防のための食事と生活習慣の見直しポイントを解説し、腎臓病の食事療法におすすめのレシピも紹介します。
クレアチンの数値がどのようなことを意味するのか、健康状態の改善のためにどのような治療・対処が必要なのかを知りたい方はぜひ参考にしてくださいね。
Contents
クレアチニンとは?腎臓病との関係を解説
クレアチニンとはアミノ酸の一種であるクレアチンが代謝されてできる老廃物で、筋肉や血液中に含まれる成分です。
血液中のクレアチニンが検査基準値を超えた場合に心配される主な病気に腎臓の疾患が挙げられます。
腎臓の機能低下が深刻な場合には自覚症状が現れることも。
クレアチニンの基準値と数値が高い原因、自覚症状、治療方法について解説します。
クレアチニンの基準値
クレアチニンは筋肉運動のエネルギー源となる「クレアチンリン酸」が代謝されてできる老廃物であり、筋肉から血液を介して腎臓に運ばれ、尿中に排出されます。
血液中のクレアチニン濃度は通常、一定以下のレベルで保たれています。
血液検査におけるクレアチニンの基準値は検査機関によっても異なりますが、日本人間ドック学会の場合、以下の数値が正常範囲の基準値とされています。
■血清クレアチニンの基準値(日本人間ドック学会)
性別 | クレアチニン値 |
男性 | 1.00㎎/dl以下 |
女性 | 0.70㎎/dl以下 |
クレアチニンの数値は筋肉量が多い程高い傾向があり、女性より男性、高齢者より若年者で高くなる傾向があることが知られています。
クレアチニンが高い原因とは?クレアチニンと腎臓病の関係
クレアチニンは体内で作られても、通常の場合腎臓を介して排出されて一定以下のレベルを維持しています。
そのため、クレアチニンの数値上昇は、老廃物を排出する腎臓の働きが悪いことの指標のひとつとなります。
具体的には、以下の病気の可能性が考えられます。
- 糸球体腎炎
- 腎機能障害(急性腎臓病、慢性腎臓病)
- 心不全
また、上記のような腎臓の機能低下のほか、筋肉量が多い人でもクレアチニンが基準値よりも高くなることがあります。
腎機能の指標となる検査項目は他にも以下のようなものがあります。
- BUN(尿素窒素)
- eGFR(糸球体ろ過量)
クレアチニン値は上記の項目に比べると精度が低いため、実際に腎臓の機能に問題があるかどうかを知るためには、上記の検査や自覚症状等と組み合わせた判断をする必要があります。
クレアチニンが高いときの症状とは
クレアチニンが高く、腎機能が低下している場合、以下のような症状を認めることがあります。
- 疲労感
- むくみ
- 尿量の減少
- 高血圧
- 吐き気
- 食欲不振
ただし、慢性腎臓病などゆっくり進行する病気の場合、病状によっては自覚症状がないということも少なくありません。
腎臓疾患は自覚症状がないからと言って放置すると、知らず知らずのうちに進行してしまいます。
自覚症状がなくても、健康診断等で腎機能障害が疑われたときには必ず医師の診断を受け、なるべく早い段階で治療を始めることが大切です。
高いクレアチニンを下げる対処法・治療方法
血中のクレアチニンの値は腎機能の低下度合いを示しています。
よって、腎臓の機能が回復すれば、クレアチニンの値も下がることが期待できます。
クレアチニンの値が高い原因が急性の腎臓疾患の場合、原因となっている疾患の治療により、腎機能が回復する可能性も期待できます。
一方、腎機能が徐々に低下していく慢性腎臓病(CKD)では、一度失われた腎機能は改善が難しく、血中のクレアチニン値も下げることは難しいため、クレアチニン値は「下げる」ではなく「上げない」ようにすることが目的になります。
いずれの場合も、腎臓の負担を少なくし、病状の悪化を防ぐために、以下のような治療や対処法がとられます。
- 薬物療法
- 食事療法
- 生活習慣の改善
ただし、腎臓病ではその病状に応じて実施する治療内容が異なるため、医師の診断を受けたうえで自分の状態に合った治療法や対処法をとることが必要です。
クレアチニンを下げる食べ物はある?腎臓病の食事療法のポイント
残念ながら、機能が低下した腎臓の状態を改善し、血中のクレアチニンの値を下げるような効果を持つ特定の「腎臓によい食べ物」というものは存在しません。
腎臓病の食事療法では、腎臓の機能を改善することではなく、腎臓に負担を掛けないように体に必要な栄養素を補給することが主題になっています。
具体的には、以下のような栄養素について、病状に応じた制限が必要になります。
- たんぱく質の制限
- 塩分の制限
- カリウムの制限
- 適切なエネルギー(カロリー)摂取
腎臓病の食事療法における基本的な内容を解説します。
たんぱく質の制限
腎臓の機能が低下していると、たんぱく質が代謝されてできる老廃物(尿素など)がうまく排泄されなくなります。
体内にこれらの老廃物が蓄積されると、腎機能のさらなる低下や体内におけるほかのトラブルの原因になるため、たんぱく質の摂取制限が推奨されます。
1日あたりの適切なたんぱく質の摂取量は腎臓病の進行度と体重によって異なり、以下のようになっています。
■慢性腎臓病における1日あたりのたんぱく質制限
ステージ | 制限内容 |
ステージG1 | 過剰摂取を避ける |
ステージG2 | 過剰摂取を避ける |
ステージG3a | 0.8~1.0g/㎏体重/日 |
ステージG3b | 0.6~0.8 g/㎏体重/日 |
ステージG4 | 0.6~0.8 g/㎏体重/日 |
ステージG5 | 0.6~0.8 g/㎏体重/日 |
たんぱく質は以下のような食品に多く含まれているため、主に以下のような食品の摂取量に注意する必要があります。
- 肉類
- 魚類
- たまご
- 大豆製品
- 乳製品
ただし、たんぱく質は健康維持のために適量の摂取が必要な「必須栄養素」のひとつであり、摂取量を限りなくゼロにするような食事内容はかえって悪影響を及ぼすため、あくまで適正範囲内での摂取を心がけましょう。
上記のようなたんぱく質の多い食品を控えるほか、通常よりもたんぱく質を減らした加工食品(レトルトごはん・乾麺など)も販売されており、上手に活用することで効果的にたんぱく質を減らすことができます。
塩分の制限
塩分(食塩、ナトリウム)は高血圧の原因の一つになる栄養素です。
高血圧は腎臓の機能低下を加速させる要因のひとつであることから、腎臓病の食事療法では高血圧の予防・改善のために塩分制限が必要になります。
腎臓病における1日あたりの食塩摂取量の制限内容は、以下のようになっています。
■慢性腎臓病における1日あたりの食塩摂取制限
ステージ 制限内容 | |
ステージG1 | 高血圧がある場合3g以上~6g未満 |
ステージG2 | 高血圧がある場合3g以上~6g未満 |
ステージG3a | 高血圧がある場合3g以上~6g未満 |
ステージG3b | 3g以上~6g未満 |
ステージG4 | 3g以上~6g未満 |
ステージG5 | 3g以上~6g未満 |
塩分は味付けや保存のために、さまざまな食品に使われています。
特に塩分濃度が高く、少量でも注意が必要な食品には、以下のようなものが挙げられます。
- 調味料
- 漬物類
- 塩漬けの加工品
また、特別に塩辛いと感じる食品でなくとも、料理の種類によっては食塩の摂り過ぎにつながりやすいため、注意が必要なものも少なくありません。
- 外食全般
- 汁物
- 麺類のつゆ・スープ
現代の日本人の食生活では、一般的な内容であってもほぼすべての人が塩分を摂り過ぎていると考えられるため、何らかの改善が必要な場合がほとんどといえます。
- 薄味を心掛ける
- 酸味、辛味、香りのある食材・香辛料を活用する
- だしをきかせる
- 減塩調味料を活用する
このような味付けの工夫をすることで、減塩しつつも食事を楽しむことができます。
カリウム制限
腎臓病が進行すると、体内のカリウムの排出がしにくくなり、血液中のカリウムが増えすぎる「高カリウム血症」を引き起こすことがあります。
高カリウム血症は不整脈や心停止につながることが知られており、血中のカリウム濃度を下げるため、カリウムの摂取制限が必要になる場合があります。
個人の血中カリウム値にもよりますが、腎臓病のステージにおけるカリウム制限の目安は以下のようになっています。
カリウムは必須栄養素でもあるため、制限範囲内であって適量を摂取することが大切です。
■慢性腎臓病における1日あたりのカリウム摂取制限
ステージ | 制限内容 |
ステージG1 | 制限なし |
ステージG2 | 制限なし |
ステージG3a | 制限なし |
ステージG3b | 高K血症がある場合制限:2,000 mg/日 |
ステージG4 | 高K血症がある場合制限:1,500 mg/日 |
ステージG5 | 高K血症がある場合制限:1,500 mg/日 |
血液透析(週3回) | 2000㎎/日以下 |
腹膜透析 | 制限なし(高K血症がある場合には血液透析と同様に制限) |
カリウムは幅広い食品に含まれていますが、特に注意が必要とされている食品には、以下のようなものが挙げられます。
- 野菜類
- 果物類
- 海藻類
- 芋、豆類
- 肉、魚、乳製品
- お茶、コーヒー、ジュース類
食事からのカリウム摂取を減らすためには、上記のようなカリウムを多く含む食品を控えるほか、切ってから水にさらす、茹でこぼすといった調理の工夫も効果的です。
血中カリウム値を下げるために気を付けたい食事内容について詳しく解説した記事はこちら
適切なエネルギー(カロリー)摂取
腎臓病ではたんぱく質の制限が行われますが、たんぱく質はエネルギー源(カロリー源)となる栄養素でもあるため、摂取カロリーの不足リスクが高まります。
腎臓病であってもエネルギー必要量は健康な方と変わりないため、たんぱく質以外のエネルギー源となる栄養素(炭水化物、脂質)から適正量のエネルギー(カロリー)をとることが必要です。
1日あたりのエネルギー必要量は年齢、性別、身体活動量によっても異なりますが、おおよそ以下の数値が目安となります。
- 1日あたりのエネルギー必要量…25~35 kcal/kg 体重
具体的な数値に関しては、個人の身体状況に応じて医師や管理栄養士と決めることが望ましいでしょう。
腎臓病の食事療法に!おすすめレシピの紹介
クレアチニンが高い原因が腎臓の疾患だった場合、治療の一環として食事療法を行うことがあります。
ここからは、腎臓の負担を少なくし、腎機能を長く維持するための食事におすすめのレシピを紹介します。
ポイントとなるのは、たんぱく質、塩分、カリウムを控えめに、カロリーをしっかりとれること。
実際の食事内容については、医師の指示のもとで検査値や体の状態に合わせて決定する必要がありますが、今回のレシピは腎臓病の食事療法の考え方を取り入れたものとなっていますので、ぜひ参考にしてくださいね。
たんぱく質・塩分・カリウム控えめ。カレー風味の鮭フライ
※画像はイメージです
分量(1人分)
- 生鮭(銀鮭)…50g(2/3切れ)
- 薄力粉…3g
- カレー粉…0.5g
- 水…4g
- パン粉…7g
- 揚げ油…適量
- マヨネーズ…10g
- 玉ねぎ…10g
- 黒コショウ…0.5g
- キャベツ…50g
作り方
- キャベツは千切りに、玉ねぎはみじん切りにしてそれぞれ水にさらす。
- 玉ねぎの水けをとり、マヨネーズ、黒コショウと合わせてタルタル風ソースをつくる。
- 薄力粉、カレー粉、水を混ぜる。
- キッチンペーパーで鮭の表面の水分をとり、衣を絡ませ、パン粉をまぶす。
- 170℃に熱した揚げ油で揚げる。
- 皿に水けをきったキャベツ、フライを盛り付け、タルタル風ソースをかける。
栄養価とポイント
- エネルギー…253kcal
- たんぱく質…12.0g
- 脂質…19.5g
- 炭水化物…10.6g
- カリウム…290㎎
- 食塩相当量…0.3g
たんぱく質・塩分控えめの主菜メニューです。
鮭は脂身の多い「ぎんざけ」を選ぶとエネルギーをプラスできます。
衣にカレー粉、タルタル風ソースに黒コショウを使って塩分の少なさをカバーしています。
キャベツと玉ねぎは切った後に水にさらすことでカリウムを減らしています。
カリウム控えめ・エネルギーをプラス。りんごのコンポート
※画像はイメージです
分量(1人分)
- りんご…正味100g(1/2個)
- 砂糖…15g
- 水…適量
作り方
- りんごは皮をむいて食べやすい大きさに切る。
- 鍋にりんごとひたひたの水を加えて加熱し、煮立ったら水分を捨てる。
- 再びひたひたの水と砂糖を加えて煮る。
- りんごに火が通ったら火を止め、食べるまでよく冷やす。
栄養価とポイント
- エネルギー…112kcal
- たんぱく質…0.1g
- 脂質…0.2g
- 炭水化物…30.4g
- 食塩相当量…0g
- カリウム…90㎎(推定量)
りんごは果物の中でもカリウムが少ない食品です。
さらに、一度茹でこぼすことによってカリウムが20~30%溶け出すことが期待できます。
今回のレシピは手に入れやすい砂糖で作りましたが、腎臓病食でよく使われる甘味料の「粉飴」を使った場合、同じ量(カロリー)でも甘味が1/8になるため、甘い味が苦手な方や、カロリーを効果的に上げたい方におすすめです。
自炊が難しい方は宅配食という選択肢も
1食ごとに栄養価計算された食事をインターネット等で注文でき、自宅まで配送してくれる「宅配食」のサービスでは、腎臓病の方向けの食事を提供しているものも増えてきています。
腎臓病向け宅配食では、たんぱく質や塩分、カリウムなど、腎臓病の食事療法で気を付ける必要がある栄養価について、1食ごとに基準に収まるように作られているため、調理の手間が省けるだけでなく、病状に合わせて食事内容を悩む必要がないところが魅力です。
毎日の食事づくりの手間を大幅にカットできる便利なサービスですので、自炊が負担…という方におすすめです。
腎臓病だけでなく、各種生活習慣病の食事療法に適した食事が注文できる宅食サービスを紹介した記事はこちら
クレアチニンを上げないための食事以外の生活習慣のポイント
腎臓病の治療では、食事内容の見直しが大きな要素となっていますが、食事以外の生活習慣の改善も、病気の進行予防や健康状態の維持に関連することが知られています。
腎臓の健康維持のために気を付けたい生活習慣について紹介します。
適度な運動
肥満に脂質異常症や糖尿病、高血圧が組み合わさった「メタボリックシンドローム」の場合、腎臓病を進行させるリスク要因になることが知られています。
反対に、内臓脂肪が減ることで健康状態の維持にもつながることが示されています。
腎臓病に加えてメタボリックシンドロームや肥満がある場合には、肥満の解消のために適度な運動を行うことが推奨されています。
運動習慣を身につけたり、日々の生活で体を動かす時間を増やしたりすることが望ましいですが、運動をどの程度まで行ってよいか、という点に関しては身体状況によっても異なるため、医師に相談してから取り組むようにすると安心です。
運動の種類ごとのカロリー消費量を紹介した記事はこちら
禁煙
喫煙は血管にダメージを与え、さまざまな病気のリスクを高めることが知られています。
腎臓病においても病気の進行や心血管疾患の発症に影響することが知られており、なるべく禁煙をすることが推奨されています。
禁煙外来や補助薬を活用しつつ、たばこの本数を減らすところから始めるとよいでしょう。
まとめ
クレアチニンは腎機能の指標のひとつであり、クレアチニンが高い場合には腎機能が低下している可能性が心配されます。
クレアチニンが高くても筋肉量が多いためであり腎機能には問題がないというケースもありますが、自己判断せず、必ず診察を受けて体の状態を確認しましょう。
腎機能が低下している場合、治療のために食事の見直しが必要になる場合があります。
「クレアチンを下げる食べ物」というものはありませんが、腎機能の維持や病気の進行予防のために、気を付けるべきポイントは存在します。
- たんぱく質制限
- 塩分制限
- カリウム制限(必要な場合)
- 適切なカロリー摂取
いずれも個人の身体状況や病気の進行度合いによっても具体的な内容は異なりますので、医師や管理栄養士に相談の上、自分の体に最適な食事内容を選択することが大切です。
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参考文献 日本腎臓学会:「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」 日本腎臓学会:「慢性腎臓病 生活・食事指導マニュアル 〜 栄養指導実践編 〜」 日本腎臓学会:「医師・コメディカルのための慢性腎臓病 生活・食事指導マニュアル」 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」 五訂増補 調理のためのベーシックデータ. 女子栄養大学出版部, 2009.6 |
監修医師
医院名 | NOBUヘルシーライフ内科クリニック |
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院長名 | 藤原 信治 |
資格 | ・医学博士 ・日本内科学会認定 総合内科専門医 ・日本糖尿病協会認定 療養専門医・指導医 ・日本腎臓病学会認定 腎臓指導医 ・日本透析医学会認定 透析専門医・指導医 ・日本循環器学会認定 循環器専門医 ・厚生労働省認定 難病指定医 |