投稿日: 2024.01.11 | 最終更新日: 2024.01.18

【医師監修】塩分を摂り過ぎた時の対処法は?塩分を排出する食べ物と飲み物を紹介

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塩分を摂り過ぎた時の対処法

塩分とは、主に調味料などに含まれる食塩(塩化ナトリウム)のことを指します。
このうち、ナトリウムは体内の水分バランスを保つ機能を持つミネラルですが、摂り過ぎると健康状態に影響を与えたり、将来の病気につながったりすることが知られています。

この記事では、塩分を摂り過ぎてしまって体調不良を感じている方や、生活習慣病が不安な方に向けて、塩分を摂り過ぎた時に短期的・長期的に起こることについて整理し、それぞれに合った対処法を紹介します。

将来の健康のために気を付けたい減塩のコツについても紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。

塩分を取りすぎるとどうなる?

食塩を摂り過ぎるとどうなる?

食塩を多く含む食品の過剰摂取などの原因によって塩分(ナトリウム)を取りすぎると、体に様々な影響を与えます。
塩分の取りすぎによっておこる影響には短期的なものと長期的なものがあり、それぞれ以下のような症状が挙げられます。

  • 短期的な影響…のどの渇き、むくみ
  • 長期的な影響…高血圧リスク

また、塩分の取りすぎによる高血圧によって起こりうる影響としては、慢性腎臓病や心臓病、胃がんなどの大きな病気につながることが考えられます。

それぞれの関連について、詳しく解説します。

のどの渇き、むくみなどの症状がおこる

塩分の取りすぎでは、短期的な影響としてのどの渇きやむくみなどの症状が起こります。

多量の塩分を摂取すると血液中のナトリウム濃度が上昇し、血液を含む細胞外の浸透圧が高まり、細胞から水分が奪われて脱水状態になるためです。
脱水状態になった体は水分を求めるため、喉の渇きを感じます。

また、このとき、血管内圧が高くなって細胞外の水分が血管内に移動しにくくなることで組織間に溜まり、むくみの原因となります。

むくみは脚や顔などに起こることが多く、見た目が腫れぼったくなるほか、膨満感、だるさを感じることもあります。

高血圧のリスクを高める

習慣的な塩分過多の状態が長期に及ぶと、高血圧の原因となります。

これは食塩を取りすぎると血液中の水分量を増やし、血管内の圧力が高くなる作用があるためです。
上の血圧(収縮期血圧)が130㎜Hg以上、または下の血圧(拡張期血圧)が85㎜Hg以上になると高血圧と診断されます。
初期は症状がほとんどありませんが、病状が進行すると頭痛、めまい、胸の圧迫感などが現れることがあります。

慢性腎臓病、心臓病につながる

食塩の取りすぎによる高血圧が長期間になると、血管、心臓や腎臓といった臓器にダメージを与え、以下のような疾患の原因となります。

  • 動脈硬化
  • 心臓病(狭心症、心筋梗塞、心不全など)
  • 脳卒中(脳梗塞、脳梗塞など)
  • 認知症
  • 慢性腎臓病(CKD)

これらの疾患は糖尿病や脂質異常症といったほかの生活習慣病がある場合にさらにリスクが高くなります。
いずれも食事を中心とした生活習慣が発症リスクと大きくかかわっている病気ですので、早期の対処が大切です。

高血圧と血圧を下げる食べ物について解説した記事にリンク

胃がんのリスクを高める

食塩の摂取量が多かったり、塩漬けのような塩分の多い食品を頻繁に食べたりする食生活では、胃がんの発症リスクが高まることが知られています。
塩分摂取量が増えるほど胃がんの発症リスクが高くなることが報告されています。

胃がんはがんの中でも比較的発症数が多いがんで、男性では3位、女性では4位の発症部位となっています。

胃がんのリスク要因となるものではピロリ菌が有名ですが、塩分摂取量もリスク要因になるため、普段の食生活を見直していきたいですね。

塩分を取りすぎた時の対処法と取り入れたい食べ物・飲み物

塩分を取りすぎた時の対処法と取り入れたい食べ物・飲み物

食塩を取り過ぎてしまったとき、特に短期的な影響であるのどの渇きやむくみを解消するための対処法としては、以下のような栄養素や食品成分を摂取することが挙げられます。

  • 水分
  • カリウム
  • 適量のカフェイン

また、長期的な塩分の取りすぎによる高血圧の予防・改善のためには、以下の栄養素がかかわっていることが知られています。

  • カリウム
  • カルシウム

それぞれの詳しい内容のほか、塩分を取りすぎたときに起こる喉の渇きの改善やむくみ解消のために取り入れたい食べ物・飲み物の具体例を紹介します。

水分をとる

取りすぎた塩分(ナトリウム)は尿として排出されるため、水分を摂取することが第一の対処法です。

塩分、糖類、カフェイン、アルコールを含まず、おおむねほぼ純粋な水分として考えることができる飲み物には、以下のようなものが挙げられます。

  • 炭酸水(無糖のもの)
  • 麦茶
  • ルイボスティー

カリウムをとる

ミネラルのひとつであるカリウムにはナトリウムの排出を助ける作用があり、カリウムを多く含む食品を摂取することで、取りすぎた塩分の排出を促すことができます。

カリウムはさまざまな食品に含まれますが、食品の種類によってはカロリーの取りすぎにつながってしまうため、低カロリーでカリウムが多いものを選ぶのが良いでしょう。

低カロリーでカリウムが多い食品のうち代表的なものは、野菜類や果物類が挙げられます。
野菜や果物は水分も多く含むので、食事からの水分補給にも適した食材です。

カリウムを比較的多く含む野菜と果物には、以下のようなものがあります。

  • ほうれんそう
  • えだまめ
  • モロヘイヤ
  • にら
  • 小松菜
  • バナナ
  • メロン
  • キウイフルーツ

ナトリウムを追加で摂取しないよう、塩分の少ない味付けで食べるのがおすすめです。

また、飲み物では野菜ジュースや果物ジュースも、ある程度カリウム摂取ができます。

  • 野菜ジュース
  • 果物ジュース

ただし、食材由来または添加された糖類が多く含まれる場合にはのどの渇きを悪化させることが考えられますので、取りすぎには注意が必要です。
また、野菜ジュースでは味付けのために食塩が含まれることがありますので、食塩無添加のものを選ぶようにしましょう。

適量のカフェインをとる

コーヒーやお茶に含まれるカフェインには利尿効果があることが知られており、摂取することで尿量を増やすとともに、尿中に排泄されるナトリウムの量も増やすことが知られています。

カフェインを含む飲み物には以下のようなものがあります。

  • コーヒー(カフェイン60㎎/100ml)
  • 緑茶(玉露)(カフェイン160㎎/100ml)
  • 緑茶(煎茶)(カフェイン20㎎/100ml)
  • 紅茶(カフェイン30㎎/100ml)
  • ウーロン茶(カフェイン20㎎/100ml)

カフェインは水分とともに塩分の排出を促す一方で、取りすぎると中枢神経や循環器、消化器に悪影響を及ぼすため、適量範囲にとどめることが大切です。
特にサプリメントの形式では過剰摂取につながりやすいため避けるのが安心です。

体への悪影響を及ぼさないカフェインの摂取量については個人差が大きく、日本人向けの明確な目安は示されていないものの、世界的には1日400㎎までとする国が多くなっています。
(成人の場合。乳幼児・妊婦・授乳婦はこれよりも少ない量が適量とされます)
カフェインの含有量を確認の上、1日の上限量を超えないように取り入れてみるのも良いでしょう。

カルシウムをとる

食塩の過剰摂取が長期化すると、高血圧が引き起こされることがあります。
カルシウムの摂取量が多い人ほど血圧が低い事が報告されています。

カルシウムを多く含む食材としては、乳製品や緑黄色野菜などが代表的です。

  • 牛乳
  • ヨーグルト
  • モロヘイヤ
  • 大根の葉
  • かぶの葉
  • ケール
  • 水菜
  • 小松菜

また、カルシウムの含有量だけでいうと小魚類も摂取源となりますが、食塩が比較的多く含まれますので、高血圧対策としては最適とは言えなさそうです。

塩分の取りすぎに対する運動と入浴の効果

塩分の取りすぎに対する運動と入浴の効果

塩分を取りすぎた時の対処法として有酸素運動を行うことやお風呂に入ることが挙げられることがあります。
結論から述べると、運動や入浴を行って「汗をかくこと」による塩分の排出効果はあまり期待できません。

一方、塩分の取りすぎが長期化すると心配な高血圧の予防に対しては適度な運動が有効であることが知られています。

それぞれについて詳しく解説します。

運動・入浴のナトリウム排出効果は弱い

取りすぎた塩分(ナトリウム)は主に尿として排出されますが、汗からも排出されることが知られています。

しかし、汗に含まれる塩分は尿に含まれる塩分よりも濃度が低く、塩分の排出効率としては尿に劣るものとなっています。

運動や入浴によって汗をかくと、水分摂取量が同じ場合には尿量が減ってしまいますので、かえって逆効果になるかもしれません。

塩分を取りすぎた時に運動を行う場合には、いつも以上に水分をこまめに摂るように気を付けてくださいね。

運動は高血圧の予防には有効

一方、習慣的な運動は血管の健康維持に役立つことが知られており、高血圧を改善する効果があることが知られています。

具体的には以下のような有酸素運動が推奨されています。

  • ウォーキング
  • ステップ運動
  • スロージョギング
  • ランニング

これらの運動を定期的に、できれば毎日30分以上行うことが推奨されています。
30分の運動時間を設けるのが難しい場合には、1回あたり10分以上、1日合計で40分以上行うことが望ましいとされています。

塩分の適切な摂取量とは

塩分の適切な摂取量とは

喉の渇きやむくみを起こさないための塩分の適切な摂取量は個人の状況によって異なるために線引きは難しいですが、将来の健康維持を目的とした塩分(ナトリウム)の摂取目標量は示されています。

日本人の食事摂取基準2020年版におけるナトリウムの摂取目標量と、現代日本人の平均摂取量を紹介します。

成人男女の摂取目標量

厚生労働省から発表されている日本人の食事摂取基準2020年版では、高血圧の発症予防の観点から、成人において以下の目標量を設定しています。

■食塩相当量の摂取目標量(1日あたり)

  • 男性(18歳以上)…7.5g未満
  • 女性(18歳以上)…6.5g未満

また、高血圧や慢性腎臓病(CKD)がある場合には、重症化予防のため、男女ともに6g未満が目標量とされています。

日本人の平均摂取量

食塩の摂取目標量に対して、日本人はほとんどの人が摂りすぎていることが知られています。

平成30年度の国民健康・栄養調査では、成人の食塩摂取量は以下のようになっています。

  • 男性(20歳以上)…11.0g
  • 女性(20歳以上)…9.3g

一方、別の報告では、実際にはさらに多くの食塩を摂取しているとするものもあります。

  • 男性…14g
  • 女性…11g

いずれにしても、日本の平均的な食事内容では、健康のための食塩摂取量の目標値を大きく超えているというのが現状です。
塩分の取りすぎによる短期的な影響だけでなく、将来の高血圧の予防のためにも、塩分摂取量を抑えるように心がける必要があるといえます。

塩分を取りすぎないための減塩のコツ

塩分を取りすぎないための減塩のコツ

塩分の取りすぎを防ぐことは、短期的にも、長期的にも健康な体の維持に重要なポイントのひとつです。
日本人の食生活は塩分を取りすぎる傾向にあり、現時点で何もトラブルが起きていなくても、将来的に高血圧などを発症するリスクがあります。

塩分の多くは調味料や加工品に含まれているため、これらの摂取量の見直しが必要です。
とはいえ、単に味付けを薄くするのでは食事が物足りず、長期間続けられないという事も少なくありません。
将来にわたって健康を維持するために、おいしさを維持しながら塩分摂取量を減らすコツを紹介します。

不必要な調味料を減らす

調味料は味付けのタイミングや具材の量、卓上での使い方によって、適量以上を余分に使ってしまっているかもしれません。

不必要な調味料を減らすための調味料の使い方のポイントには、以下の3つが挙げられます。

  • 和え物は食べる直前に調味する
  • 汁物は具沢山にして汁の量を減らす
  • 卓上調味料(醤油、ソース、塩など)はかけずに「付ける」

和え物、サラダなど、調味料を混ぜ込む料理では、混ぜてから食べるまでの時間が長いと、食材から水分が抜けて水っぽくなり、調味料の量のわりに味が薄くなったり、味を調えるために余分に調味料を加えたりといったことにつながります。
余分な調味料を避けるため、食べる直前に調味料を加えると必要最小限の調味料でおいしく食べられます。

また、味噌汁やスープ類は塩分の大きな摂取源のひとつです。
具材に比べて汁の塩分濃度が高いため、具材を増やすことで汁の量を減らしましょう。
カリウムを多く含む野菜類を中心に具材を増やすと、減塩とカリウム摂取が同時に可能です。

醤油、ソースといった調味料は食卓で使うことも少なくありません。
このとき、料理に対して調味料をかけるように使うと、味わい以上に多く使い過ぎてしまう傾向があります。
塩味を感じる舌に触れる部分にだけ調味料を付けるようにすると、余分な調味料をとらずにおいしく食べられます。

このほか、外食では家庭での食事に比べてもともとの味付けが濃くなっていることが多いため、家庭の感覚で調味料を足してしまうと、塩分の取りすぎにつながりやすくなります。
何もつけずに一口食べてみて、物足りなければ少量の調味料を付けて食べる、という事を習慣にするのも有効です。

スパイス、ハーブ、酸味、だしを活用する

スパイス、ハーブ(香味野菜)、酸味、だしはそれぞれ塩分とは別に、料理の風味や旨味を増して味わいを深めてくれる食材です。

塩分量が少なくても気にならなくなるので、調味料を少なくしつつ、これらの食材を活用すると、減塩に役立ちます。

■スパイスの例

  • こしょう
  • とうがらし
  • 山椒
  • 花椒
  • カレー粉

■ハーブ類の例

  • しそ
  • 生姜
  • みょうが
  • 三つ葉
  • バジル
  • パクチー

■酸味のある食材の例

  • レモン
  • ゆず

■だし、またはだしの出る食材の例

  • かつおだし(かつお節)
  • こんぶだし
  • 干しシイタケ
  • 貝類
  • エビ、カニ

加工品の場合、製品によっては食塩が添加されているものもありますので、原材料等を確認しながら活用するとよいでしょう。

高塩分の加工食品を避ける

塩分は調味料のほかに、塩漬けの加工品や乾物類などにも多く含まれています。
重さのわりに塩分を多く含みますので、食べる頻度を減らす、食べてもなるべく少量に留めるなどの工夫が必要です。

  • 漬物類
  • 梅干し
  • しらす干し、ちりめんじゃこ
  • 魚卵加工品(たらこ、めんたいこ、いくら)
  • 塩辛
  • 佃煮

また、魚介練り製品や肉類の加工品も隠れた塩分の摂取源となりやすい食材です。
食べすぎに気を付けるほか、味付けを控えめにすることを心掛けられるとよいでしょう。

  • 魚介練り製品(かまぼこ、魚肉ソーセージ)
  • 肉類加工品(ベーコン、ハム、生ハム、ソーセージ)

減塩調味料を活用する

通常の製品よりも塩分量を減らした「減塩調味料」の活用も有効です。
同じ感覚で使ってもある程度の減塩効果があるため、負担の少ない減塩に適した食品といえます。
近年はさまざまな種類の調味料に対して減塩タイプが販売されています。

  • 醤油
  • ソース
  • ケチャップ
  • ドレッシング
  • 味噌
  • 顆粒だし

ここまで紹介した減塩のコツと合わせて取り入れることで、より効果的に減塩ができるようになりそうですね。

まとめ

塩分(ナトリウム)を取りすぎた時の影響には、短期的なものではのどの渇きやむくみが、長期的なものでは高血圧家それに関連した生活習慣病、胃がん発症のリスクが挙げられます。

短期的な対処法としては、水分補給を行い、カリウムを摂取して尿からのナトリウムの排出を促すとよいでしょう。
長期的な塩分取りすぎの対処法としては、カリウムとカルシウムの摂取に加え、減塩に取り組めると理想的です。

塩分の取りすぎは日本人のほとんどが持つ健康上の課題のひとつです。
短期的にも、長期的にも、塩分の取りすぎによるトラブルを避けるために「塩分控えめ」を普段から意識して食事をとるようにしたいですね。

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参考文献

厚生労働省e-ヘルスネット:「ナトリウム」

厚生労働省e-ヘルスネット:「高血圧症を改善するための運動」

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

厚生労働省:「国民健康・栄養調査」

内閣府 食品安全委員会:「食品中のカフェインについてのファクトシート」

公益財団法人 日本対がん協会:「がんの部位別統計」

Linda K. Massey, Tracy A. Berg, The effect of dietary caffeine on urinary excretion of calcium, magnesium, phosphorus, sodium, potassium, chloride and zinc in healthy males, Nutrition Research, Volume 5, Issue 11, 1985, Pages 1281-1284

Keiko Asakura, Ken Uechi, Yuki Sasaki, Shizuko Masayasu and Satoshi Sasaki. Estimation of sodium and potassium intakes assessed by two 24 h urine collections in healthy Japanese adults: a nationwide study British Journal of Nutrition Volume 112, Issue 7 14 October 2014 , pp. 1195-1205

上西一弘. 食品成分最新ガイド 栄養素の通になる 第5版. 女子栄養大学出版部, 2022.8

五訂増補 調理のためのベーシックデータ. 女子栄養大学出版部, 2009.6

監修医師

医院名 NOBUヘルシーライフ内科クリニック
院長名 藤原 信治
資格 ・医学博士
・日本内科学会認定 総合内科専門医
・日本糖尿病協会認定 療養専門医・指導医
・日本腎臓病学会認定 腎臓指導医
・日本透析医学会認定 透析専門医・指導医
・日本循環器学会認定 循環器専門医
・厚生労働省認定 難病指定医
平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。