
様々な健康効果が期待され、注目されている「緑茶」。
緑茶の代表的な機能性成分といえば、「カテキン」ですが、いったいどのようなものなのでしょうか?
緑茶に含まれる「カテキン」のはたらきとおすすめの取り入れ方を紹介します。
Contents
お茶の成分「カテキン」とは?
ポリフェノールの一種
カテキンは様々な植物に含まれる「ポリフェノール」の一種で、緑茶の渋味のもととなる成分です。
カテキンと呼ばれるグループには、カテキン、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートの4種類が属します。
多くの場合、これらをまとめて「カテキン」と呼んでいます。
ほかの食品にも含まれる
カテキンを含む食品は緑茶だけではありません。
含有量には差はあるものの、
・ほうじ茶
・ウーロン茶
・紅茶
・抹茶
などの茶葉加工品にも含まれています。
また、
・カカオ豆
・ナッツ類
・りんご
・ブドウ
などの食品にも、カテキンが多数つながったポリフェノールの「プロシアニジン」が含まれています。
どのくらい入っている?
わたしたちが飲むお茶の中に含まれるカテキンの量は、お茶に使われている茶葉の生育環境や加工工程、お湯で抽出するときの条件によっても変わります。
・お湯に対しての茶葉の量が多いほどカテキンが多い
・お湯の温度が高いほど多い
・発酵酸化されていないほどカテキンが多い
というデータもあるため、
・濃いお茶>薄いお茶
・熱いお湯でいれたお茶>ぬるいお湯で入れたお茶
・緑茶>ウーロン茶>紅茶
という順にカテキンが多いといえます。
1gの茶葉で100mlを抽出したお茶を使った実験では、100mlあたり80mgのカテキンが含まれていたそうです。
一般的に1人分の茶葉の量は2g、お湯の量は100mlともいわれているので、1杯で80mgよりは多めの量を飲むことができそうです。
体にいいってほんとう?
いろいろな効果があるって聞くけど…
カテキンは様々な場面で健康効果が注目されていますが、どのようなものがあるでしょうか?
俗に
・抗酸化作用
・血中コレステロールを低下させる作用
・血中中性脂肪を低下させる作用
・体脂肪を減少させる作用
・抗菌作用
について期待されていますが、トクホなどの個別に効果が検討されたものを除いて、これらの効果はまだ「このような効果がある可能性がある」という表現にとどまります。
ヒトでの有効性は開発の途中
様々な効果が注目されているカテキンですが、人のからだでどこまで効果があるか、どのくらいの量でその効果が得られるのかといったことは分かっていない部分が多いのが現状です。
そのため、毎日緑茶を飲んでいるからと言って上で紹介したような効果が必ずしも得られるとは言えません。
ただ、細胞を使った試験管内での実験や、動物を使った実験では効果があったとする報告もあるので、今後、研究が進むことによって明確な効果が表れるものとして開発が進むことに期待しましょう。
トクホにも活用されている
カテキンは一部の特定保健用食品(トクホ)にも活用されています。
カテキンを関与成分として、
「内臓脂肪が多めの方に適する」
「体脂肪が気にある方、コレステロールが気になる方に適する」
という表示が許可されたものがあります。
トクホの「効果」の詳しい内容
2種類のトクホ商品について、どのくらいの効果があったのか紹介します。
「内臓脂肪が多めの方に適する」トクホ飲料
茶カテキンのはたらきにより、脂肪の分解・消費のために働く体内の酵素の活性を高めることで体脂肪をエネルギーとして消費し、内臓脂肪を減らす効果が認められています。
2019年4月現在の製品情報では、トクホ飲料に相当する量の茶カテキンを含む飲料を12週間にわたって飲み続けたことで、平均109.2㎠あった腹部内臓脂肪面積が10.3㎠(9.5%)低減したそうです。
*腹部脂肪面積とは、CTによって腹部を輪切り状に撮影した断面の画像での脂肪の占める面積です。 ウエストサイズとは異なる数値で、100㎠以上だと「メタボリックシンドローム」と診断される要件のひとつを満たします。(そのほかに血液検査の結果によってメタボリックシンドロームと診断されます) 1㎠は1㎝×1㎝の面積を指し、この実験の結果では、およそ10㎠=2㎝×5㎝の面積の分の脂肪が減少したことになります。 |
また、上の実験と同様にトクホ飲料に相当する量の茶カテキンを含む飲料を12週間にわたって摂取した別の実験では、平均82.3㎏の体重が81.2㎏へ、1.1㎏減少したという結果も出ています。
トクホの効果の範囲は意外と小さい
それぞれ約3か月、毎日飲み続けた場合でも、体重や体脂肪面積の変化の範囲はさほど大きいものではなかったのでは、と思います。
カテキンの効果の中では、ダイエットにかかわるものとして体重の減少が最も注目されるのではないでしょうか。
3か月で1.1㎏の体重の減少を1日あたりのエネルギー消費量に換算すると、1日あたりおよそ100kcalのエネルギー消費に相当すると説明がされています。
100kcalに相当する食事は、白ごはんで計算するとおよそ60g。2口分くらいでしょうか。
トクホ飲料を毎日飲み続けることでエネルギーの消費が上がったとしても、暴飲暴食がなかったことになるような消費量ではないのは確かです。
通常の緑茶よりもはるかに多くのカテキンを含むトクホ飲料であっても効果は限定的なものなので、通常の緑茶では、目に見えるような効果を期待するのは難しそうです。
毎日の取り入れ方のポイント
万能薬感覚で使うのはよくない
カテキンは様々な機能が注目されている成分ですが、カテキンを含む緑茶を飲んでいるからと言ってやせる・太らない・健康でいられる、というわけではありません。
健康の維持についても、ダイエットについても、何かひとつの食品や食品の成分に頼るのでは、食品の機能性とは別のところで問題が起きることが考えられます。
多量摂取は危険
たくさんとれば効果があるのでは?と考えるのは危険につながります。
特定の成分を、サプリメントなどで日常的にとる量を大きく超えてとることは肝臓などにダメージを与える可能性があります。
お茶にはカフェインもある程度入っているため注意
また、カテキンが豊富な緑茶にはある程度のカフェインが含まれています。
1日1杯程度では問題ありませんが、妊娠中の女性や乳幼児など、カフェインの影響を受けやすい人では多量の摂取はしないように注意しましょう。
バランスの取れた食事のバリエーションに
繰り返しになりますが、ダイエットについても毎日の健康についても、ひとつのものに頼るのは避けたほうがいいでしょう。
バランスの取れた食生活を送っていく中で、適度の緑茶のカテキンを取り入れることによって、将来的に何かいい効果が得られる「かもしれない」、程度に考えておくのが安心といえそうです。
参考文献 厚生労働省e-ヘルスネット:「メタボリックシンドロームの診断基準」 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(チャ、カテキン、プロシアニジンについて) 花王株式会社:食と健康ナビ「茶カテキンの機能(2)「1日540mgで約10分のジョギングと同じ消費カロリー効果」」 Nagao T, Hase T, Tokimitsu I.A green tea extract high in catechins reduces body fat and cardiovascular risks in humans. Obesity (Silver Spring). 2007 Jun;15(6):1473-83. 寺田 志保子, 前田 有美恵, 増井 俊夫, 鈴木 裕介, 伊奈 和夫. 各種茶(緑茶,半発酵茶,紅茶)浸出液およびティードリンクス中のカフェイン,カテキン組成. 日本食品工業学会誌 34巻 1号(1987) 後藤 哲久, 長嶋 等, 吉田 優子, 木曽 雅昭. 市販 緑茶の個別カテキン類とカフェインの分析. 茶業研究報告, 1996巻83号 (1996) |