
健康にいい、美容にいい成分として注目されるポリフェノールですが、具体的にどのような効果があるか、ご存知ですか?
抗酸化作用により、活性酸素を取り除き、ダメージを修復する作用があるようですが、体内にはわずかしか吸収されないという弱点も。
ポリフェノールが含まれた食品は健康的なイメージがつきますが、たくさん取るべきなのでしょうか?
体の中でのはたらき、トクホなどに使われている例なども交え、紹介します。
ポリフェノールとは?
ポリフェノールとは
りんごの変色(褐変)の原因でもある物質
ポリフェノールとは植物に含まれ、野菜や果物では色素や渋味成分、また変色のもとにもなる成分です。
身近なところでいえば、ごぼうやリンゴなどを切った後、水にさらさずにおいておくと変色してしまいますね。
この色の変化はポリフェノールと酸素が反応して起こるものです。
たくさんの種類がある
ポリフェノールは植物に含まれる成分ですが、すべて同じものではなく、5000種類以上が存在しているといわれています。
種や皮の部分に多く存在し、植物の体を守るための物質とも考えられています。
化学的に言えば、数個以上(ポリ)のフェノール性水酸基(-OH)をもつ成分をまとめて「ポリフェノール」といいます。
注目されるきっかけになった「フレンチ・パラドックス」
ポリフェノールの健康効果が注目されたきっかけは「フレンチ・パラドックス」といわれています。
「フランスでは食事の脂質が多いにも関わらず心臓疾患にかかる人が少ない」ことが、「フレンチ・パラドックス(フランスの矛盾)」と呼ばれていました。
1990年ごろ、この矛盾の理由はワインに含まれるポリフェノールを毎日摂取しているためではないかという研究が報告され、ポリフェノールの健康効果が期待されるようになりました。
実はこのエピソードにも少し注釈がつくのですが、それはまた後で紹介します。
どんなものに含まれている?
植物であればどんなものにも含まれていると考えられますが、代表的なものを紹介します。
緑茶…カテキン
ごぼう…タンニン
ブドウ…レスベラトロール
ブルーベリー…アントシアニン
カカオ…カカオポリフェノール
大豆…イソフラボン
ターメリック…クルクミン
生姜…ショウガオール
コーヒー…コーヒーポリフェノール
イネ科植物…フェルラ酸
ひとつの植物に1種類が含まれているわけではなく、数種類のポリフェノールをもつことも多く、また、別の植物でも同じポリフェノールを持つ場合もあります。
ポリフェノールの主な働き
主に抗酸化作用
ポリフェノール全体に言える働きは、「抗酸化作用」と呼ばれる働きです。
・体内で発生した活性酸素やフリーラジカルといった物質の発生を抑える
・活性酸素やフリーラジカルを捕まえて分解する
・活性酸素やフリーラジカルによって損傷した部分を修復する
といったはたらきがあります。
活性酸素、フリーラジカルとは
ヒドロキシラジカル、スーパーオキシド、過酸化水素などをまとめて活性酸素と呼んでいます。
酸素や水、脂肪酸など、体内の物質が使われる過程でごく一部が活性酸素といわれる、不安定で反応性の高い物質に変わります。
体が正常な状態でも作られるもので、常にごく少量が体内に存在するものです。
フリーラジカルも活性酸素と似たものといえます。(厳密には別物です)
同じく不安定な物質で、体内の物質と反応しやすいのが特徴です。
細胞やDNAを傷つける
活性酸素の作用として、細胞やDNAを傷つけるといったことがあります。
また、活性酸素が細胞の脂質を酸化すると過酸化脂質ができます。
その過酸化脂質がDNAを損傷することが、ガンの発生原因の一つとも考えられています。
害しかないもの?
ガンの原因にもなると聞くと、とても恐ろしいものに聞こえますが、活性酸素は有害無益なもの、というわけでもありません。
活性酸素の一部は
・細胞内での情報伝達や代謝の調節
・免疫機能の中で病原菌の殺菌
などの働きを持つため、全くないほうがいいというものでもありません。
過剰に生成されたものが細胞やDNAを傷つけていると考えられており、問題のない範囲で生成される活性酸素に関してはあまり敵視する必要はないと考えられます。
人体にもともとある抗酸化物質
では、体内で生成された活性酸素やフリーラジカル、またはそれらによって傷ついた細胞やDNAはそのまま体内に残されるのでしょうか?
ヒトの体にはもともと抗酸化物質があり、尿酸、グルタチオン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)と呼ばれる酵素などがあげられます。
これらの物質が抗酸化作用を持ち、体内の活性酸素の影響を抑えています。
活性酸素やその影響が増える要因
通常の場合、必要以上に発生した活性酸素・活性酸素によるダメージは体内の抗酸化物質によって処理されます。
しかし、病的な状態、たばこ、紫外線、過剰な運動などによって、活性酸素の発生量が増えてしまいます。
体内にもともと存在する抗酸化物質の量や能力以上に活性酸素が増えてしまうのは望ましくない状態といえるでしょう。
ポリフェノールは活性酸素によるダメージを修復する
そういった場合に注目されるのが食品由来の抗酸化物質であり、そのうちのひとつがポリフェノールです。
先に述べたように体内で発生した活性酸素やフリーラジカルといった物質の発生を抑えたり、捕まえて分解したり、活性酸素やフリーラジカルによって損傷した部分を修復したりといった作用が注目されています。
抗酸化作用を持つ必須栄養素「ビタミンC、ビタミンE」
食品由来の抗酸化物質はポリフェノールだけではありません。
ビタミンCやビタミンEは抗酸化作用を持つビタミンで、ヒトに不可欠なものとして摂取基準が設けられています。
ビタミンに比べるとポリフェノールは吸収率が悪い
ポリフェノールの特徴の一つに、「吸収率が非常に悪い」という点があげられます。
同じく抗酸化作用を持つビタミンEに比べて1/100、ビタミンCに比べて1/500の吸収率ともいわれており、ポリフェノールはこれらのビタミンの補助的な働きをするものと考えられています。
ポリフェノールのその他の働き
抗酸化作用をもつポリフェノールですが、抗酸化作用以外の働きにも注目が集まっています。
種類によって働きも違う
ポリフェノールには5000もの種類があり、それぞれが違った構造を持つため、それぞれについて、ヒトの体にどのような作用を持つのかという研究が進められています。
その作用は抗酸化作用だけではなく、肥満にかかわるものや血管の健康、目の健康にかかわるものなど、様々な働きが期待されています。
トクホにも使われているポリフェノール
効果が実証されたものは多くはありませんが、その中でもヒトを対象にした試験で有効性が認められたものに関しては、特定保健用食品などとして販売されているものもあります。
黒烏龍茶
ウーロン茶の製造過程でできるウーロン茶重合ポリフェノールが、脂質を多く含む食事の中の脂肪分の分解・吸収を妨げ、便からの脂質の排泄を促す効果が認められてトクホになりました。
ヘルシア緑茶
緑茶に含まれるポリフェノールであるカテキンが、BMIが高めの人に対して体脂肪の消費を促進する作用がある事が認められ、特定保健用食品として販売されています。
緑茶に含まれるカテキンにはこのほかにも殺菌作用や血圧低下作用などが知られています。
伊右衛門特茶
緑茶や玉ねぎなどに含まれるケルセチン配糖体というポリフェノールにより、軽度肥満の人に対して脂肪細胞からの脂肪の分解を促進する効果が認められています。
効果はおだやかなもの
トクホで効果が認められているといっても、その効果はかなり穏やかな作用で、条件もかなり限られたうえでの効果であることを知っている人はさほど多くないかもしれません。
ダイエットや肥満対策として有名なものであっても、体重の変化は限定的な範囲であることが多いです。
マイナスの影響は?
サプリでの摂取に注意
特定保健用食品に関しては有効性とともに安全性が検証されているため、通常の食生活の中で体に悪影響を及ぼすことはほとんどないと考えられます。
その他の大部分のポリフェノールに関しては、通常の食生活の中で摂取する食品に含まれる範囲での悪影響は考えにくいですが、サプリメントのように食品の中からポリフェノールを抽出し、高濃度の状態で摂取するものに関しては、何かしらの影響もある可能性もあります。
現在分かっているものとしては、ポリフェノールの一つであるタンニンなどの多量の摂取でミネラルの吸収を阻害することが分かっています。
単にポリフェノールを含むサプリメント製品では、安全性も有効性も実証されていないことも多いため、取り入れる際には注意が必要です。
ポリフェノールはどれくらいとればいい?
ポリフェノールは必須の栄養素ではない
ポリフェノールはビタミンなどと違って、体に必ずしも必要な成分ではないため、どれくらいとるべきといった指標はありません。
つまり、ポリフェノールの不足を心配してそれらを豊富に含む食品を大量にとったりする必要はないのです。
ポリフェノールを逃さない工夫
もちろん、通常の食事からとる範囲では体にとって悪影響を及ぼすものではないので、ポリフェノールを多く含む野菜や果物を積極的に、幅広く取り入れるのはポリフェノール以外の視点からもおすすめできます。
ポリフェノールは野菜や果物では渋味や変色の原因となります。
ごぼうなどの食材を切った後、変色を防ぐために水にさらすのはポリフェノールを水に溶けださせている作業です。
もちろん、水にさらしたからといって、すべてのポリフェノールが溶け出すといったことはありません。
切った断面に存在するポリフェノールが溶け出すのみで、断面以外の場所に存在するポリフェノールは残っています。
もし、少しでも多くのポリフェノールを残したいのであれば、
・大きめに切って断面を減らす
・切った後にすぐに加熱して変色を防ぐ
・リンゴなど火を通さないものは食べる直前に切る
・いっそ変色は気にしない
といった工夫をするのもいいですね。
積極的にとるべき?
どれだけとれば健康に効果があるのかはまだまだ不明
繰り返しになりますが、ポリフェノールには多くの種類があり、それぞれの健康効果や安全な摂取量についてもまだまだ分かっていません。
普段の食生活の中で、いろいろな食材を取り入れるきっかけとして考えてほしいと思います。
ポリフェノールばかりに気をとられていると…
「○○はポリフェノールがたっぷりだから健康にいい!」と特定の食品にこだわることは避けるべきことです。
冒頭に紹介したフレンチ・パラドックスについても、ワインの摂取量の多いフランスでは心臓疾患については少なかったものの、近隣の国と比較しても特に寿命には差は見られず、また、アルコールに起因すると考えられる肝臓の疾患は多かったといわれています。
同じく、ポリフェノールが豊富だとして注目されるチョコレートについても、脂質を多く含み、高カロリーであるため、食べすぎは肥満や健康を害する恐れもあります。
ひとつの成分に注目しすぎないようにしよう
ポリフェノールに限らず、食品の機能が注目され、メディアが紹介した食材が爆発的にブームになることも多いですが、食品はさまざまな成分から成り立っています。
ひとつの成分・食品に注目しすぎると、かえって食事のバランスをとれなくなることも大いに考えられます。
健康の維持には炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの各種栄養素をバランスよくとり、適度に運動をする、十分に休養をとるといったことが大事です。
どんなに健康にいいとされている食べ物も、それひとつだけでは健康を保つことはできないのです。
特定の食品に偏ることなく、バランスの取れた食生活を心がけていきたいですね。
参考文献 独立行政法人国民生活センター:「ポリフェノール含有食品の商品テスト結果」 吉川敏一:フリーラジカルの医学.京府医大誌,120(6),381-391,2011 食品安全委員会:「黒烏龍茶に係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)」 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(ヘルシア緑茶、伊右衛門特茶、黒烏龍茶OTPPについて) |