2019.11.15

ブロッコリースプラウトの栄養効果は期待値低め? 簡単調理が魅力

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ブロッコリースプラウト

「ブロッコリースプラウト」、食べたことありますか?
かいわれ大根によく似た野菜の新芽の一種です。
様々な機能が注目され、様々なメディアで取り上げられているものの、普段通り食べるだけでは期待に見合う効果は得られないかもしれません。
ブロッコリースプラウトの栄養素とそのはたらき、おすすめの使い方を紹介します。

ブロッコリースプラウトって?

ブロッコリースプラウトとは、「ブロッコリーの新芽(=スプラウト)」のこと。

種から発芽して数日までの新芽を食用にしたものです。

見た目はかいわれ大根によく似ていますが、比べるとブロッコリースプラウトのほうがやや細く小さいです。

多くは水耕栽培のものが20~50g程度ごとのパックで販売されています。

機能性が高いと人気?

ブロッコリースプラウトは特有の機能性成分「スルフォラファン」が含まれており、その機能が注目されています。

抗酸化作用や肝臓の健康、ダイエットに効果があるとする情報もよくみられますが、実際にどのくらい食べれば効果があるのでしょうか?

「スルフォラファン」の効果と課題

ブロッコリースプラウトのアップ

スルフォラファンとは?

スルフォラファンはブロッコリーをはじめとするアブラナ科(ほかにキャベツ、カリフラワー、ダイコンなどが属します)に含まれる食品成分のひとつです。

ヒトが生きていくうえで必要な必須栄養素ではありませんが、私たちの体に様々な効果をもたらすのではないか?と期待され、研究が進んでいる成分です。

ブロッコリースプラウトなど、植物の中に存在するときには「スルフォラファングルコシノレート」の状態で含まれており、食べるときに細胞が壊されることで酵素によって加水分解され、機能性のあるスルフォラファンに変化します。

いろいろな機能が期待されている、けど…

スルフォラファンの機能性は様々な視点から研究が行われており、今まで

抗酸化作用(細胞)*1)

解毒作用(ラット)*2)

アセトアルデヒドの代謝を促進し悪酔いを防ぐ作用(マウス)*3)

肥満抑制作用(マウス)*4)

ピロリ菌の殺菌・炎症抑制作用(ヒト)*5)

といったはたらきがあることが報告されています。

小さな新芽であるブロッコリースプラウトを食べるだけでこれらの効果が得られたとしたら、まさしく「スーパーフード」といえそうです。

しかし、残念ながらこれらの研究報告を鵜呑みにすることはできないようです。
どういうことでしょうか?報告された作用のことだけでなく、「これらの研究報告がもつ意味」を考えてみましょう。

研究レベル的にも現時点で効果ありとは言いにくい

実験イメージ

ブロッコリースプラウトに含まれる機能性成分「スルフォラファン」には、様々な効果が期待されていますが、現状では効果あり、と断言することはできません。

①大部分が細胞実験レベル、マウスなどの動物実験レベルでの結果であること

抗酸化作用、解毒作用、悪酔い抑制作用、肥満抑制作用の実験は、試験管内の細胞やマウスの体にスルフォラファンがどう作用するかを調べたものです。

食品の機能性を調べる実験にはいくつか段階があり、最終的にヒトに対しての効果はヒトがその食品を食べなければ確認することができません。
そのため、細胞やマウスなどを使った実験だけでは私たちにも効果があるとは言い切れません。(もちろん、有力な候補にはなります)

試験管内の細胞に対して効果があってもヒトの体内にきちんと吸収されて目的の細胞まで届くとは限りませんし、
マウス(ねずみ)とヒトの体は同じ哺乳類ではありますが、体の大きさも、細かなつくりも異なるため、必ずしも同じ効果が得られるとは言えません。

いずれもヒトに効果があるのかを確認する前の「予備実験」なので、私たちがブロッコリースプラウトを食べて何らかの効果がある、ということには直結しないのです。

②ヒトでの効果がみられても、実験と同じくらい食べられるのか?という問題

紹介した研究報告のなかで、ピロリ菌の殺菌作用とピロリ菌による炎症の抑制作用に関しては、ヒトでの試験が行われています。

しかし、この実験についてより詳しく調べてみると、被験者は1日70gのブロッコリースプラウト(およそ1.5パックに相当)を8週間にわたって食べ続けたそうです。

かつ、食べるのをやめてしまうと数値は元の数値に近いポイントまで戻ってしまうため、食べ続けることが大事なのが分かります。

ピロリ菌の悪影響を抑える、ということを目的としてブロッコリースプラウトが手軽な選択肢のようにも思えますが、1日1.5パックを長期間にわたって食べ続けることを考えると、病院でしかるべき検査と治療を受けるほうが確実で経済的な方法といえそうです。

現時点では機能性成分だけを食べる理由にするのは難あり

これらの結果から考えると、スルフォラファンの機能性だけでブロッコリースプラウトを選ぶ、というのは期待外れな結果を招きかねません。
実際に体調不良がある人は、医療機関に相談するほうが確実です。

スルフォラファンをふくむブロッコリースプラウトには健康に良い影響をもたらす作用があることは間違いではありませんが、現時点ではあくまでも食材のひとつとして、薬ではないものと考えるのが確実です。

野菜としての栄養価

機能性成分の摂取源としてではなく、私たちの健康を保つために必要な必須栄養素の供給源として、ブロッコリースプラウトはどうなのでしょうか?

栄養データ
ブロッコリー
スプラウト
かいわれだいこん
(参考)
食事摂取基準の充足率
(30歳-69歳女性の数値から)
エネルギー 10kcal 11kcal
たんぱく質 1.0g 1.1g 2%
脂質 0.3g 0.3g
炭水化物 1.3g 1.7g
食物繊維 0.9g 1.0g 5%
カリウム 50mg 50mg 2%
ビタミンA 60㎍RAE 80㎍RAE 9%
ビタミンK 75㎍ 100㎍ 50%
葉酸 37㎍ 48㎍ 15%
ビタミンC 32mg 24mg 32%
*可食部50g(1パック)あたり
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成

※横スクロールで表全体の確認が可能です。

1パック50gあたりで見ても10kcalと、摂取エネルギー過剰にはつながりにくい食材です。
ほとんどが水分ですが、しゃきしゃきとした食感もあるので食事の満足感を増やしてくれます。

緑黄色野菜に分類

体内でビタミンAとして働くβ-カロテンが豊富で、緑黄色野菜に分類されます。
とはいえ1日の推奨摂取量がまかなえるほどではないので、いろいろな食材を食べることが重要です。

ビタミンKとビタミンCが比較的豊富

ビタミンKやビタミンCは野菜に豊富に含まれるビタミンですが、ブロッコリースプラウト50g(約1パック)でも1日に取りたい量の大部分を補うことができます。
手軽に野菜の栄養素をとれる食材といえそうですね。

1回使用量は少なめなので他の野菜も取り入れて

ブロッコリースプラウトはきゃしゃな見た目に比べると栄養素を豊富に含んだ野菜ではありますが、1パック食べても野菜からとれる栄養素を十分にとり切れるというものではありません。

栄養素の意味でも、バリエーションに富んだ飽きない食事という意味でも、いろいろな野菜をとり合わせて食事をとるのが大事です。

使い勝手のいい野菜のひとつとして活用が◎

スプラウトを使った料理

簡単調理が最大の魅力

ブロッコリースプラウトのほんとうの魅力は、特別な栄養素というよりも調理の手軽さではないでしょうか?

根元から切り取るだけで(商品によっては切る必要なしに)さっと洗って食べることができます。

下茹でなどの調理もいらず、いろいろな料理に組み合わせることができます。

野菜不足の食事にちょい足しするのにも便利

生でサラダのように食べることが一般的ですが、野菜不足が気になる食事にちょい足しするのにもおすすめです。

レンジ調理のパスタやインスタントラーメンでは野菜がほとんど入っていませんが、さっと洗ったブロッコリースプラウトを加えれば栄養バランスも整います。

手軽な食事管理のひとつとして、ブロッコリースプラウトを活用するのはいかがでしょうか?

参考文献

*1)X.Gao, PNAS, 2001, vol.98, No.26, pp15221–15226

*2)Kikuchi M., World Jornal of Gastroenterology. 2015, Vol.21, Issue.43, pp12457-12467.

*3)Ushida Y., Alcohol Alcohol., 2013, Vol.48, pp526-534.

*4)Naoto Nagata, Liang Xu, Susumu Kohno, Yusuke Ushida, Yudai Aoki, RyoheiUmeda, Nobuo Fuke, Fen Zhuge, Yinhua Ni, Mayumi Nagashimada, Chiaki Takahashi, Hiroyuki Suganuma, Shuichi Kaneko, Tsuguhito Ota. Glucoraphanin ameliorates obesity and insulin resistance through adipose tissue browning and reduction of metabolic endotoxemia in mice. Diabetes 2017 Feb; db160662.

*5)Yanaka A., Cancer Prevention Reserch.Vol.2, 2009, pp353-360.

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」>

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(スルフォラファンについて)

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)」