
野菜不足が健康に悪いというのは、誰もが何となく持っている印象ではないでしょうか。
でも、そもそもなぜ野菜は食べたほうがいいといわれるのでしょうか?
野菜を食べる意味、野菜を増やすコツを紹介します。
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野菜1日350gの根拠は?
「1日分の野菜は350g」とよく言われますが、そもそもどんな根拠があってのことなのでしょうか?
もともとは「21世紀における国民健康づくり運動」、「健康日本21」と呼ばれる日本人の健康意識を高めるための取り組みで設定された目標値のひとつが「1日に野菜を350g食べましょう」というものでした。
肥満や健康リスクの回避
野菜を食べることが健康な生活につながるのかを調査した報告があります。
野菜や果物を全く食べない人と比べると、野菜や果物の食べる量が増えるにつれて調査期間中の死亡率が低下し、およそ400g以上では、死亡率には大きな差がなくなったことが示されています。
それを受けてかどうかは分かりませんが、健康日本21では体重コントロール、生活習慣病のリスクを下げるために、野菜を1日あたり350g、そのうち緑黄色野菜を120gとりましょうという目標を掲げています。
カリウムや食物繊維、ビタミンCの給源であり生活習慣病の予防にも
また、野菜は低エネルギー(カロリー)でカリウムや食物繊維、ビタミンCが豊富に含まれる食品です。
野菜を十分にとることで、体重を適正範囲にコントロールし、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病を予防することが期待されています。
ダイエットの観点だけでなく、将来の健康のことも考えると、野菜はたっぷり食べたい食品ですね。
野菜350gまで、どのくらい食べればいいの?
野菜350gとはいっても、どのくらいの量を食べるべきなのか、具体的なイメージはわきにくいものです。
350g分の野菜の量を画像で見てみましょう。
画像は一例ですが、トマト1個、オクラ5本(1/2パック)、長ネギ1/2本、キャベツ1/8玉でおよそ350gとなりました。(お皿の重さは除いています)
様々な種類の野菜を組み合わせて、1日あたりこのくらいの量が理想的といわれています。
日ごろ自分が食べている量と比べていかがでしょうか?
日本人は普段野菜をどのくらい食べている?
日本人は平均すると野菜をどのくらい食べているのでしょうか?
平成29年度の国民健康・栄養調査の結果を見ると、20歳以上の成人男女の平均では、1日あたり290g近く食べているようです。
意外とたくさんの野菜を食べられているようですね。
しかし、世代別に見てみると、20代~30代の比較的若い世代では摂取量が少なくなっています。
- 男性(20~29歳):264g(目標値-86g)
- 男性(30~39歳):257g(目標値-93g)
- 女性(20~29歳):218g(目標値-132g)
- 女性(30~39歳):232g(目標値-118g)
今の体型のコントロールのためにも、将来の健康のためにも、もう少し野菜を食べる習慣をつくりたいですね。
あとどれくらいは食べるべき?
20代から30代の人たちは、1日あたり90~130g程度、野菜を増やすとよさそうですが、これはどのくらいの量でしょうか?
トマト1個=150g
キャベツ3枚=150g
にんじん1本=150g
このうちどれかを増やすとおおむねクリアできそうです。
少量ずつを組み合わせると食べやすくなりますね。
料理単位で考えると、野菜をメインとした小鉢のおかず1品がおおよそ70gくらい。
1日を通して野菜料理を2皿増やせると理想的です。
野菜摂取量を増やすヒント
野菜をもっと食べましょうと言っても、その分時間や手間がかかるのでは負担が増えてしまいます。
なるべく手間暇かけず、簡単に取り入れられるヒントを紹介します。
すぐ食べられるものを選ぶ
野菜の種類によっては包丁とまな板を出す必要がなく、洗ってそのまま(ものによっては洗わずに)食べることができます。
- ミニトマト
- レタス系(一口大にちぎる)
- ベビーリーフ
- カット済み野菜サラダ
などがあげられます。
やっと野菜やベビーリーフは洗って食べるべきか洗わなくても食べられるかは商品によって異なる場合がありますので、パッケージなどの指示に従ってくださいね。
カット野菜や冷凍野菜を活用
スーパーやコンビニで購入できるカット野菜は切る手間が省ける優れものです。
袋を開けてすぐに炒めものなどに使うことができるので、調理の手間を大幅に減らすことができます。
最近では炒め物用・ラーメン用など、用途に合わせて数種類の野菜がミックスされたものも売られていてバリエーションが豊富なのもうれしいポイントです。
→1人暮らしの味方!カット野菜で手軽に栄養価アップ&ヘルシーに
朝ごはん用の野菜料理も前日にまとめて作ってしまう
昼食や夕食に比べると、朝食は忙しく、野菜の料理を取り入れにくくはないでしょうか?
洗ってすぐ食べられるミニトマトなどを活用するのもいいですが、前日の夕食を多めに作っておくのもアリですね。
おすすめは野菜たっぷりのスープ。
くたくたになった野菜は朝でも食べやすいおかずになりそうです。
夜はコンソメスープをつくり、朝はカレー粉を少し足したりするアレンジも飽きにくくおすすめです。
コンビニなどの調理済み食品を活用
自炊はほとんどしないという人でも、工夫次第で野菜の摂取量を増やすことができます。
最近ではコンビニのお弁当や麺類などの調理済み食品でも、「野菜たっぷり」「1日分の1/2の野菜が取れる」といったことを売りにしている商品が増えてきました。
また、パウチ入りのお惣菜も充実しているため、選択肢も豊富です。
コンビニで食事を選ぶときには、野菜を食べることを意識して売り場を見てみてくださいね。
加熱してカサを減らす
手間はともかく、そんなにたくさんは野菜を食べられないという人も少なくありません。
生の野菜、特に葉物は重さのわりにカサが張るため、100g食べるのは大変です。
キャベツの千切りを想像してみるとわかりやすいかもしれません。
つい食べすぎてしまうという人にはカサが張る野菜はうれしい食材なのですが、小食な人にとっては食べにくい食材になってしまいます。
野菜をたっぷり、なるべく小さくして食べるには加熱するのが一番です。
スープの具として煮込んでしまえば、栄養素のロスも少なく、たくさんの野菜と食べることができます。
カロリーが高めなので食べすぎは注意ですが、野菜たっぷりのカレーも食べやすくていいですね。
野菜ジュースは野菜の摂取量にカウントできる?
不足しがちな野菜を補う、というときに注目されるのが野菜ジュースではないでしょうか。
野菜ジュースは野菜の魅力である食物繊維の量が少なくなっていることがほとんどなので、そのまま野菜に置き換えられるものとは考えにくいでしょう。
とはいえ、飲まないほうがいいというわけでもありません。
野菜ほどのメリットはないものの、カリウムや各種ビタミンはある程度は取ることができますので、「どうしても野菜が食べられなかった」という時のサポート要員として考えるのがよいでしょう。
野菜ジュースを選ぶときは、なるべく野菜100%のものを選ぶのがおすすめです。
→野菜ジュースの栄養素について詳しく解説した記事はこちら「野菜ジュースには栄養がある?ない?」」
野菜の摂取にあたって注意が必要なもの
野菜の摂取量は増やしたいですが、野菜不足以上に心配されているのが日本人の塩分のとりすぎです。
塩分は取りすぎると高血圧などの生活習慣病のリスクを高めるため、若いうちからも控えめにしたい成分です。
野菜を食べる量を増やそうとすると、どうしても味付けのための調味料やドレッシングで塩分が増えがちです。
お漬物などは手軽に用意できて食べやすい野菜料理なのですが、塩分が高いため、あまりたくさん食べることは避けたいです。
なるべくであれば、普段の食事の味付けはあまり変えず、野菜の量だけを増やすようにすると余分な塩分を増やさずに済みそうです。
補足:可能なら果物も取り入れるとなおよい
カリウム、食物繊維、ビタミンCの摂取という意味では、野菜に並んで果物も優秀な食品です。
1日の食事の目安を示した「食事バランスガイド」では、1日あたり200g程度の果物を食べるのが目安になっています。
みかんやキウイ、いちごなどはむく手間も少なく食べやすくておすすめです。
また、コンビニやスーパーでカット済みのフルーツを売っていることもあるので、見かけたら手に取ってみてくださいね。
参考文献 佐々木敏:「佐々木敏のデータ栄養学のすすめ」.女子栄養大学出版部,2018. Wang et al.Fruit and vegetable consumption and mortality from all causes, cardiovascular disease, and cancer: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective cohort studies. BMJ. 2014 Jul 29;349:g4490. 厚生労働省、公益財団法人健康・体力づくり事業財団:「健康日本21」 |