投稿日: 2019.04.21 | 最終更新日: 2020.04.22

プロテインは何のために飲む?初心者向け解説|管理栄養士執筆

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プロテインとシェーカー

最近、体を健康的に引き締めることが注目されています。
トレーニングを行っている人が活用している「プロテイン」について、「聞いたことはあるけどなんだかよくわからない」という人が多いのではないでしょうか。
今回は、そもそもプロテインとはなんなのか?どんな時に使うといいのかを解説します。

Contents

プロテインとは?

「プロテイン」とはもともと英語でたんぱく質を指す言葉です。

では、たんぱく質とはそもそも何なのでしょうか?
たんぱく質は主に筋肉や皮膚、内臓などを構成している成分です。
その他にも、ホルモンとして体のさまざまな機能を調整したり、エネルギーが必要な時には体内で代謝されてエネルギーを生み出すこともあります。
たんぱく質はアミノ酸がたくさんつながった鎖のような構造をしており、胃や腸でバラバラに分解され、アミノ酸として吸収され、体内で利用されます。
たんぱく質はさまざまな食品に含まれていて、肉や魚などのほか、米や麦などの穀類にも含まれています。

→たんぱく質とは?食事の適正量とおすすめの組み合わせを紹介

日本でプロテインといえば「サプリメントとしてのプロテイン」が一般的ですね。
一般的にプロテインというときは、たんぱく質を主成分としたサプリメントを指すことが多いです。

成分は製品によって異なり、糖質や微量の脂質が含まれ、ビタミンやミネラルが配合されている場合もあります。

プロテインにはどんな効果がある?

トレーニングをする女性

プロテイン=筋肉?飲んでそのまま筋肉に変わるわけではない

プロテインといえば筋肉を増やすというイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。

実際にはプロテインを飲むだけでは筋肉が増えることはありません。
スポーツやトレーニングなどによって筋肉がダメージを受けると、その修復の過程で食事やプロテイン由来のアミノ酸が使われます。
修復後にはトレーニング前よりも筋肉組織が発達することで、「筋肉が増えた」ということが起こります。

プロテインは脂質の摂取量を抑えつつたんぱく質の摂取量を増やすのに有効

たんぱく質が豊富な食品は数多く、トレーニングを行う人の多くは、体脂肪は減らしつつ筋肉量は増やしたいと考えているのではないでしょうか。
筋肉を増やすためにはたんぱく質の摂取が必要ですが、肉や魚などのたんぱく質源となる食品を増やすと、同時に脂質の摂取量も増えてしまい、カロリーオーバーになって体脂肪が減らない・または増えてしまうといったことも起こりえます。

そういった場合にたんぱく質源としてプロテインサプリを取り入れることで、余分な脂質のエネルギー(カロリー)の摂取を避けてたんぱく質を効率よく摂取することができます。

また、多くのプロテインサプリのアミノ酸スコア(理想のアミノ酸バランスをどれだけ満たしているかを示す値)は肉や魚と同じ100になっていることが多いので、たんぱく質の質も問題はないと考えられます。

疲労感の低減にもはたらく可能性あり

このほかに、トレーニング中やトレーニング後に摂取することで疲労感を低減するといった効果もあると考えられています。

不足しがちなたんぱく質補給に…それって本当?

日本人はたんぱく質不足?自分に必要なたんぱく質量は?

1日あたり、自分に必要なたんぱく質の量をご存知でしょうか。
からだを維持するためのタンパク質の必要量は体格によって異なり、体重1㎏あたり最低でも0.66g程度が必要で、推奨される量としては体重1㎏あたり0.83gとされています。
(日本人の食事摂取基準(2020年版)の策定検討会より)
(注意:標準的な体重から極端に離れている人では体重からの計算が不適な場合もありますので、注意してください。)
厚生労働省が発表している日本人の食事摂取基準(2020年版)では、平均的な身長と体重から、成人男性では60~65g、成人女性では50gの摂取を推奨しています。

日本人はたんぱく質不足?実はそんなことはない

プロテインサプリを勧めるウェブサイトでは、しばしば「日本人はたんぱく質不足」「たんぱく質の摂取量が年々減少」「1日に必要なたんぱく質をとるのは大変」といった表現がみられます。

たんぱく質の摂取量が年々減少しているという点に関して間違いではないのですが、不足しているとまでは言えません。
平成29年の国民健康・栄養調査での栄養素等摂取量のデータでは、20歳以上のたんぱく質摂取量の平均値は64.9gと、推奨量をしっかりとクリアしています。
また、総エネルギーに占めるたんぱく質の割合も、食事摂取基準では13~20%(1~49歳)を目標値にするとされていますが、国民健康・栄養調査の数値も15%と目標値の範囲内に収まっています。

通常の生活で必要とされるたんぱく質の量であれば、不足を補うためにプロテインを取り入れる、といった必要性はあまりなさそうです。

タンパク質60gの食事の例

簡単な計算にはなりますが、1日のタンパク質の摂取量の例を紹介します。

食パン6枚切り1枚(60g)
たまご1個(50g)
ごはん軽く1杯(150g)
鮭ひときれ(80g)
間食 カフェオレ(牛乳100ml)
ごはん軽く1杯(150g)
鶏もも肉1/3~1/2枚(120g)

(主なたんぱく源のみ記載。栄養バランスの整った食事にはこのほかに副菜や果物があるのが理想的です)

1日にこの程度の食事をとれていたのなら、1日に60gのたんぱく質を摂取できています。
「60gのたんぱく質」は日常的に十分摂取可能な内容であるということが分かるのではと思います。

トレーニングをしていない普通の人にもプロテインは必要?

つまり、単純に不足する栄養素の補給という点では、多くの人はプロテインをとる必要はないといえそうです。
もちろん、トレーニングによって筋肉量を増やしたいという人にとって最適なサプリメントであることは間違いではありません。

プロテインとトレーニング用品

食事内容が偏っている人の場合はプロテインでたんぱく質を補うのもいい

では、筋肉を増やしたい人には最適のサプリメントといえるプロテインですが、そうでない人には全くの無意味なものなのでしょうか?

先に述べた栄養素の摂取状況はあくまで平均値ですので、すべての日本人がこの量のタンパク質が取れているというわけではありません。
肉や魚、卵などのたんぱく源をとる機会の少ない人はプロテインを取り入れることでたんぱく質の不足状態を改善できるでしょう。
(ただし、肉や魚の脂質やその他の成分には体に必要なものもあり、プロテインが完全に肉や魚の代わりになるわけではありません)

ダイエット中に運動を併用する場合は「やせる」ではなく「筋肉量の維持」目的で使う

さらに、ダイエット中の人にもプロテインは有効となる場合があります。

筋肉の少ない体はリバウンドの原因のひとつ

ダイエット中など、消費エネルギーよりも摂取エネルギーが少ない状態では、必要なエネルギーの産生のために、体脂肪のほかに筋肉も分解されてエネルギー源になります。
単に食事量を減らし運動をしないでいると、筋肉が分解されていくばかりで筋肉量が減っていくことが考えられます。

ダイエット中に行う運動には、単に消費エネルギーを増やすことと、筋肉を使うことで筋肉量を維持するという二つの意味があります。

筋肉は皮下脂肪に比べて消費するエネルギーが大きいため、筋肉が多い人ほど消費エネルギーの大きい、太りにくい体といえます。
ですが、体重と同時に筋肉量も減ってしまうと、ダイエット前よりもエネルギー消費の少ない、太りやすい体になってしまうといえます。

ダイエット中の筋肉量を維持するためのプロテインと運動

プロテインの利点は脂質を抑えながらたんぱく質を摂取できる点にあります。
ダイエット中は摂取エネルギーをおさえるために食事量の制限と運動をすることが多いですね。

食事量を減らすと、カロリーとともにたんぱく質の摂取量も少なくなります。
食事量の制限と同時に運動をしていたとしても、タンパク質が不足した状態では筋肉が十分に修復されず、期待した効果が得られない可能性も考えられます。

その状態を防ぐために、全体の食事量を減らして摂取エネルギーを減らしつつ、不足したたんぱく質をプロテインで補うといった活用方法も考えられます。
プロテインはたんぱく質を主成分としたサプリメントであり、体脂肪を減らす効果はありませんが、ダイエット中の食事のバランスを調整するのには有効であるといえるでしょう。

プロテインにはどんな種類がある?

牛乳と豆乳

プロテインには材料となるものによって数種類に分けられます。
珍しいものでは牛肉由来のものなどもありますが、一般的に手に入れやすいのは牛乳を使用したホエイプロテインとカゼインプロテイン、大豆を使用したソイプロテインがあげられます。

ホエイプロテイン

ホエイというのは日本語では「乳清」といい、牛乳から脂肪分やたんぱく質のカゼインを除いたものを指します。
身近なものではヨーグルトの上澄み液がこれに当たり、ホエイ(ホエー)と呼ばれていますね。チーズの製造過程での副産物としても知られています。
この液体にも様々な成分が溶け込んでおり、乳糖、たんぱく質、ミネラル、微量の脂肪分も含まれています。
このホエイの水分を取り除き、成分を調整したものがホエイプロテインとして一般に使用されています。

水に溶けやすく、風味も比較的飲みやすいこと、水に溶ける性質によって吸収されやすいことから、トレーニング直後の筋肉の回復に素早くアミノ酸を補給できるとして現在のプロテインの中では主流のものになっています。

カゼインプロテイン

ヨーグルトなどにおいて、水に溶けるホエイたんぱく質に対して、水に溶けず固まるたんぱく質がカゼインです。
固形成分であるため、ホエイに比べて消化吸収されにくい性質があります。
時間をかけて吸収されていくため、継続的にアミノ酸を供給できるという利点があり、また腹持ちも比較的良いといわれています。

ソイプロテイン

大豆から油を取り除いたものからとれるタンパク質を利用したものがソイプロテインです。
ソイプロテインも比較的消化吸収に時間がかかるため、即効性よりも持続性があります。
独特の風味があるため飲みにくいと感じることもあるようです。
大豆たんぱくには血中コレステロール値の低下作用や血中中性脂肪の低下作用が認められているため、血中脂質の値が気になっている人には取り入れたい成分ともいえるでしょう。
乳成分ではないため、乳糖不耐症(乳成分の乳糖でおなかがゴロゴロしやすい体質)の方に向いている種類ともいえるでしょう。

それぞれのプロテインに利点や特徴があり、製品によってはそれぞれを組み合わせたものもあるようです。

プロテインの効果的な使い方は?

筋肉の修復に効果的なのはトレーニング後

最も一般的な使い方はトレーニングの直後に飲む方法です。
トレーニングによってダメージを受けた筋肉にプロテイン由来のアミノ酸を補うことで、筋肉の修復と筋量の増加を助けることが目的とされています。

たんぱく質源としてのプロテインはいつ飲んでもいい

その他に関しては、プロテインは基本的には「食品」なので特に決まりはありません。

いつもの食生活で肉や魚といったたんぱく質源をとる機会が少ないと感じている人は、食事中や食事の前後にプロテインを取り入れることで食事のバランスをある程度整えることが期待できます。

食事量を制限しつつ、たんぱく質の摂取量を確保したいと考えている人には、比較的腹持ちの良いカゼインや大豆たんぱくをメインにしたプロテインを利用することで、食事の量を減らしても空腹感を感じにくくすることができるかもしれません。

プロテインを使う上での注意点は?

プロテイン=ダイエットサプリではない

プロテインはたんぱく質を主成分としたサプリメント(食品)であり、薬ではありません。

そのため、いつもの食事に加えて飲むだけでは筋肉量が増えることも、体型が引き締まることもありません。

カロリーオーバー、たんぱく質摂取過多に注意

また、むやみに摂取量を増やすことは腎臓の負担を増やし、さらにはカロリーオーバーにもつながります。
たんぱく質もエネルギー源となる成分であり、カロリーがあります。
使い切れなかった分は体脂肪として蓄積されますので、取りすぎには注意が必要です。

→プロテインは飲むと太る?ダイエット中の疑問を解説

あくまでトレーニングによる体づくりやたんぱく質摂取不足のおそれのある場合に有効なものなので、使い方に不安がある場合は専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

小原 亜希子 、鈴木 省三 、藤井 久雄 、内丸 仁 、竹村 英和.運動後の糖質配合プロテインサプリメントの摂取は筋タンパクの異化を抑え、疲労感を軽減する.体力科学 , 58 巻6 号640(2009)/p>

三本木 千秋 、石坂 美穂子 、安部 久貴 、水上健一 、坂本 佑樹 、高原 桂 、藤枝 賢晴.高強度間欠運動中の水溶性プロテインの摂取による筋損傷指標への影響.体力科学 , 58 巻6 号647(2009)

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

厚生労働省:平成29年「国民健康・栄養調査」の結果

桑田 有.ホエイからの各種有用成分の分離と栄養,機能食品への応用研究 Milk Science Vol.61,No.2 2012

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。