
基礎代謝とは、簡単に言えば運動量にかかわらず消費されるエネルギーのことです。
「基礎代謝を高めればやせやすくなる」とよく言われます。
とはいえ、基礎代謝はには個人差があり、環境によっても変わるもの。
自分の基礎代謝はどのくらいか、基礎代謝を高めるにはどんなことが必要なのかを解説します。
基礎代謝とは
動いていなくても生命維持のために消費されるカロリー
基礎代謝とは、正式には「基礎代謝量」といい、心身ともに安静な状態の時に生命維持のために消費される必要最小限のエネルギー代謝量のことを指します。
何もせずじっとしている時でも、体は生命活動を維持するために、心拍や呼吸・体温の維持などを行っていますが、
基礎代謝量(単に基礎代謝ともいいます)はこれらの活動で消費される必要最小限のエネルギー量のことです。
簡単に説明すると、「動いていない状態でも最低限消費されるエネルギー(カロリー)量」を示す言葉です。
基礎代謝量は人それぞれ
基礎代謝量は年齢や性別、体表面積、体重、体組成などによって変わるため、人それぞれ違った値になります。
簡易的に計算を行う場合は年齢と性別、体重から算出することができます。
“基礎代謝量(kcal/日)=〔0.0481×体重(㎏)+0.0234×身長(㎝)-0.0138×年齢(歳)-性別による定数(男性:0.4235、女性0.9708)〕×1000/4.186”
(日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書より)
基礎代謝基準値と体重から概算する
とはいえ、この計算をするのが大変な場合は、体重から計算する基礎代謝基準値というものもあります。
年齢ごとの数値×現在の体重(㎏)で自分の基礎代謝量を概算することができます。
(身長や体重などの体格が基準よりも大きく外れている場合には誤差が大きくなります)
男性の場合
年齢 | 基礎代謝基準値 (kcal/㎏体重/日) |
1-2 | 61.0 |
3-5 | 54.8 |
6-7 | 44.3 |
8-9 | 40.8 |
10-11 | 37.4 |
12-14 | 31.0 |
15-17 | 27.0 |
18-29 | 24.0 |
30-49 | 22.3 |
50-69 | 21.5 |
70以上 | 21.5 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
女性の場合
年齢 | 基礎代謝基準値 (kcal/㎏体重/日) |
1-2 | 59.7 |
3-5 | 52.2 |
6-7 | 41.9 |
8-9 | 38.3 |
10-11 | 34.8 |
12-14 | 29.6 |
15-17 | 25.3 |
18-29 | 22.1 |
30-49 | 21.7 |
50-69 | 20.7 |
70以上 | 20.7 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
活動量を加味した1日のエネルギー(カロリー)消費量を計算するには
基礎代謝量にさらに毎日の身体活動(身体活動レベル)を加味して計算されるのが1日の消費エネルギー(カロリー)です。
身体活動レベルは
Ⅰ:1日のほとんどを座って過ごす(1.5)
Ⅱ:座っての仕事でも通勤や通学などの歩行・立ち作業・家事・軽いスポーツを行っている(1.75)
Ⅲ:移動や立ち仕事が多い、活発な運動習慣がある(2.00)
に分けられ、基礎代謝にそれぞれ1.5、1.75、2.00をかけて計算されます。
基礎代謝を含む1日のエネルギー(カロリー)消費量について、詳しくは以下の記事で解説しています。
→自分の体を知る!「エネルギー(カロリー)」について勉強しよう
25歳、体重50㎏、身体活動レベルⅡの女性の場合、
基礎代謝量=22.1×50(体重)=1110kcal/日
1日の総消費エネルギー(カロリー)=1110×1.75=1942.5kcal
となります。
基礎代謝量にかかわるもの
基礎代謝量の個人差にかかわるものとして、厚生労働省の計算では性別、身長、体重、年齢が使われていました。
その他の基礎代謝にかかわるものには筋肉や体脂肪の量(体組成)、体表面積、気温があります。
筋肉や臓器の割合が大きく、体脂肪の割合が小さいほど基礎代謝は高い
結論から言うと、筋肉量が多いほど基礎代謝量は高くなります。
1日に消費するエネルギー(カロリー)は、
脂肪組織1㎏は4.5kcal/日であるのに対し、
筋肉組織1㎏は13kcal/日を消費することが知られています。
また、脂肪以外の全組織(除脂肪組織)1㎏は30kcal/日と考えられています。
一般的な体重計で筋肉量を量ることはむずかしいため、体脂肪率と除脂肪体重で考えるのが分かりやすいかもしれませんね。
同じ体重であった場合、体脂肪率のより低い人のほうがより基礎代謝量が大きくなるといえます。
体表面積が大きいほど基礎代謝は高い
ヒトの体は体温を36~37℃に保つようにできています。
内臓や筋肉の活動に伴ってエネルギー(カロリー)を消費して熱が生み出されています。
生み出された熱によって温められた血液が全身をめぐることで体全体が温まります。
しかし、体の外部は体内よりも温度が低いことが多いため、体の表面から体温が奪われていきます。
体の表面積が多いほど奪われる体温が多くなるため、体温の維持のためのエネルギー(カロリー)消費が大きくなることが分かっています。
消費エネルギー(カロリー)の計算をするとき、体表面積の計算は困難なため、身長や体重といった数値が近い値として使われることが多いようです。
気温が低いほど基礎代謝は高くなる
体表面からの体温低下にかかわるのが気温です。
気温が低いほど体表面から奪われる熱は多くなるため、夏に比べて冬のほうが体温維持のための消費エネルギー(カロリー)が大きく、基礎代謝が高くなるといえます。
夏のように外気温が高く、体温が上がりすぎてしまう場合には汗をかいたり呼吸をしたりすることによって水分の蒸発とともに体温を放出しています。
ただし、注意が必要なのが気温による活動量の変化です。
冬の寒い時期では活動量が少なくなりがちで、基礎代謝は上がっていても身体活動によるエネルギー(カロリー)消費が減るためにトータルの消費エネルギー(カロリー)が減るといったことも起こりえます。
食事に伴うエネルギー(カロリー)消費もある
基礎代謝とは別のものですが、食事に伴って起こるエネルギー(カロリー)の消費もあります。
食事から体内に吸収された栄養素が分解されると、その一部が体温として消費されるため、運動をしていなくてもエネルギー(カロリー)の消費が増えることを「食事誘発性熱産生」といいます。
この食事誘発性熱産生は栄養素の種類によって異なり、タンパク質は摂取エネルギーの約30%、糖質は約6%、脂質は約4%を消費するといわれ、これらの混ざり合った通常の食事ではおよそ10%が体温の産生に使われています。
この熱の産生には筋肉量や食事のとり方もかかわっており、筋肉の量が多いほど、またよく噛んで食べるほど食事誘発性熱産生も高くなるといわれています。
基礎代謝を高めるには
基礎代謝の大小にかかわるものの中で、日々の努力によって変えられるものは「体重」と「体組成」です。
除脂肪組織を増やす、筋肉を増やす
先に述べた通り、筋肉(または除脂肪組織)は脂肪に比べて消費エネルギー(カロリー)が大きいので、筋肉(除脂肪組織)を増やすと基礎代謝が高まります。
1㎏の筋肉で基礎代謝が13kcalしか変わらない、とはよく言われますが、複数の研究報告から、実際には筋肉を含む除脂肪量(体脂肪以外の体重)が1㎏増えるごとに30~50kcalの消費が増えるといわれています。
除脂肪組織のうち努力によって増やすことができるのは筋肉ですが、筋肉を増やすのに必要なのは筋肉に対する負荷、いわゆる筋トレです。
筋肉に強い負荷をかけると筋細胞が壊れますが、それが修復されるときに筋細胞が壊れる前よりも大きく成長します。
この働きによって筋肉を大きくします。
筋肉を効率よく増やすには筋トレと食事が重要
しかし、やみくもに筋トレをするだけでは筋肉は増えません。
食事から筋肉の材料となるアミノ酸(タンパク質)を取り込む必要があります。
また、食事からのアミノ酸を効率よく使う(=代謝する)ためには、ビタミンB6などのビタミンも必要です。
絶食を伴うようなダイエットではたんぱく質やビタミンが不足して筋肉が増えていかないことが考えられるため、十分な食事からの必要な量のタンパク質やビタミンの摂取が重要になります。
また、より厳しく筋肉量を増やそうとするアスリートの方などは、タンパク質やビタミンの補給としてプロテインサプリメント、ビタミンサプリメントを使用している人もいます。
体重を増やす
ダイエット中の人にとっては皮肉なことですが、体重が重いほど基礎代謝は高くなります。
基礎代謝を高めるには、体重を増やすのが最も手っ取り早いとも言えます。
反対に、ダイエットなどをして体重が減ると、基礎代謝も基本的には下がってしまいます。
単純に今よりも基礎代謝量を高めたいのであれば、体重の減少はあまり望ましくありません。
体重は変えずに体脂肪率を下げて筋肉を含む除脂肪体重を上げるか、体重を増やしてでも筋肉量を増やすことでしか基礎代謝は増えないといえそうです。
基礎代謝とダイエット
基礎代謝を上げる「だけ」では体重は減らしにくい
単に基礎代謝を高めようとすると体重が増えていくので、単純に「基礎代謝を増やすこと」と「体重を減らすダイエット」はつながるものではありません。
除脂肪体重を1㎏増やしても1日あたりの消費エネルギー(カロリー)の増加は30~50kcalといわれており、単純計算でも体脂肪1㎏に相当するエネルギーを消費するまでに144~200日もかかってしまう計算になります。
さらに、体脂肪が減って体重が軽くなるとその分基礎代謝も低くなるので、消費エネルギー量は元のレベルまで戻ってしまうことが考えられます。
そのため、体重を減らすダイエットのためのエネルギー(カロリー)消費を基礎代謝に求めるのは難しいといえそうです。
単に消費エネルギー(カロリー)を増やすには「基礎代謝を高くする」ということよりも筋トレや有酸素運動などの「体を動かすこと」が効率的です。
ではなぜダイエットの観点からも基礎代謝を高めようといわれるのでしょうか?
基礎代謝が上がると太りにくくなる
ダイエットによって体脂肪が減り、体重が減った後が問題になります。
食事制限のみのダイエットなど、筋肉に運動などによる負荷がかかっていない状態で摂取エネルギー(カロリー)が減ると、脂肪とともに筋肉量も減少することが知られています。
しかし、運動や筋トレによって筋肉に負荷を与えながらダイエットを行うと、筋肉量(除脂肪量)が維持されるため、食事のみのダイエットと比較して筋肉量(除脂肪量)に差が生まれます。
同じ体重においては、体脂肪率が低く除脂肪量が多いほうが基礎代謝が高いことは説明した通りです。
ダイエット終了後に、同じエネルギー(カロリー)の食事を食べていても、体脂肪率の低い人は太らず、体脂肪率の高い人は太るといったことが起こるのです。
つまりダイエット後も「太りにくい体」を作るために除脂肪組織を維持し、基礎代謝を「下げない」ことが重要です。
体型を維持しやすくするためにも、適度な食事の管理と運動を組み合わせたダイエットが望ましいですね。
参考文献 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 M. ELIA .THE INTER-ORGAN FLUX OF SUBSTRATES IN FED AND FASTED MAN, AS INDICATED BY ARTERIO-VENOUS BALANCE STUDIES.Nutrition Research Reviews (1991),4,3-31 田中 喜代次,中田 由夫.減量しながら筋肉量および基礎代謝量を高めることは可能か?体力科学 第 66巻 第 3 号 209-212(2017) |