投稿日: 2019.09.23 | 最終更新日: 2023.07.27

ファスティング(断食)とは?ダイエット効果と注意点を紹介

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
ファスティング、ジュースクレンズ

短期間で劇的にやせられる、体がリセットされて健康になると話題のファスティング(断食)ダイエット。
体重減少だけでなく体のデトックス、クレンズといった効果も話題ですが、効果はどれほどなのでしょうか?

【おすすめ】普段の食事を置き換えてカロリーオフと栄養バランス改善ができるダイエット用宅配食のご紹介

ファスティングとは?

酵素ドリンクを併用した断食(ファスティング)ダイエットやジュースクレンズダイエットは、名前や取り入れる飲み物の違いはあるものの、おおむね同じ内容を指しています。

2~3日の間、決められた飲み物以外は飲食しない」というもので、飲み物のバリエーションはレモネードや野菜中心のコールドプレスジュース酵素ドリンクと呼ばれるものなど、さまざまです。

また、1日のうちで「食べる時間」「食べない時間」を区別するタイプの食事法も「ファスティング」という単語が使われることもありますが、体に与える影響が異なるため、今回は除外します。

有名人が取り入れているダイエット法

クレンズダイエットやファスティングが注目される大きな要因が、「有名人が行っているダイエット方法」だということです。

SNSなどで有名人自らが「これでやせた!」と口コミを載せて話題になる、というのが多いようです。

ダイエット効果とデトックス効果

では、話題になっているこのような「断食系」ダイエット方法には、どのような効果が期待されているのでしょうか?

これらのダイエット方法をすすめるメディアではこのような効果が謳われています。

  • 体重が減るダイエット効果
  • 固形の食べ物を制限することで胃や腸、肝臓などを休ませる
  • 体内の有毒物質、老廃物を排泄する(クレンズ、デトックス効果)

また、上記のような効果に加えて2~3日の短期間で数㎏単位の減量ができた、体がリセットできたというような口コミや、おしゃれなダイエットドリンクなどが魅力的に感じられ、注目されているのではないかと思います。

栄養学的に見て、断食は効果的?

断食のダイエット効果

では、断食を伴う「クレンズダイエット」「ファスティング」は効果的なダイエット方法といえるのでしょうか?

ダイエット効果と悪影響を差し引いて考えても「実施すべきではない」

結論からいうと、「実施すべきではないダイエット方法」だと考えます。

華やかに紹介され、ヘルシーな印象を持たれることも多いものの、

  • 心身の負担の割に効果が大きくないこと
  • さまざまな体調不良が起こる可能性があること
  • 不要な出費につながる可能性があること

など、問題点は数多くあげられます。
それぞれの問題点について、詳しく解説します。

断食のダイエット効果を計算してみる

では、ジュースだけを飲むような断食を伴うダイエット方法では、どれだけのダイエット効果が期待できるのかを計算で求めてみましょう。

3日でどのくらいやせられる?

ジュース類のみを摂取するダイエットの内容は

  • 断食を行う期間は3日程度
  • 1日の摂取エネルギー(カロリー)が500~1000kcal程度

おおむねこのようになっています。

1日の摂取エネルギー(カロリー)を最も厳しい500kcalとした場合を考えてみましょう。

前提:通常消費するエネルギー(カロリー)について

18~49歳の女性で、スポーツなどは行っていなくとも通勤や通学などで身体活動のある人の1日の消費エネルギー(推定エネルギー必要量)は2000kcal程度です。

通常、消費エネルギーと同じ量のエネルギー(カロリー)を食事からとっていれば、体重は増えも減りもせず、維持されると考えられます。

断食を伴うダイエットを行うと仮定し、摂取エネルギー(カロリー)を500kcalに制限します。

すると1日に2000kcal必要なところ、摂取できるのは500kcal。
およそ1500kcalが不足することになり、不足分は体脂肪や筋肉が分解されて消費されます。

3日間続けると、1日1500kcal×3日間=4500kcalぶんのカロリーが体から消費されることになります。

4500kcalとは、体脂肪だと何㎏ぶんに相当するのでしょうか?

体脂肪1㎏は7200kcalに相当します。
不足分のエネルギー(カロリー)がすべて脂肪から動員されたとしても(実際には筋肉からも動員されます)3日間で減らせる体脂肪の量は0.625㎏、ということになります。

1日の摂取エネルギー(カロリー)が500kcalよりも多い場合はこれよりもさらに減らせる体脂肪の量は少なくなります。(1000kcalの場合は0.417㎏)

同じ量の体脂肪を断食せずに減らすとしたら…?

断食を伴うダイエット方法は負担が大きいため、あまり高頻度では行えません。
どんなに多くとも1か月に1回程度、比較的多数派なのは年に4回程度のようです。

上の計算では3日間で4500kcalをカットしましたが、毎日少しずつ食事量を減らす方法ではどのくらい減らせばいいのでしょうか?

4500kcal÷30日=150kcal/日

150kcalを食事に換算すると、以下のようなものに置き換えられます。

  • 白米ごはん90g(お茶碗1/2杯)
  • チョコレート30g(1.5かけ)
  • コーラ350ml(缶1本)

もし日常的に食べているものをこの程度減らすことができれば、30日で3日間の断食とおなじ効果を得ることができます。

反対に言えば、3日間の断食を耐え抜いたとしても、この程度の「食べすぎ」を繰り返していれば、あっという間に断食の意味はなくなってしまいます。

ダイエットは「習慣化」が重要

断食を伴うダイエットでは3日でカットできる摂取カロリーは大きいものに感じますが、1か月に1回しか行えないため、その効果はあまり大きいものとは言えません。

クレンズダイエットやファスティングでは、極度の食事制限によって身体的にも精神的にも負担を負いますが、その結果得られるダイエット効果はあまり大きくありません。

断食を伴うダイエットでは、

  • 心身の負担が大きいこと
  • 負担に対して効果が小さいこと
  • 太る原因である食習慣の改善につながらないこと

などから、失敗につながりやすいダイエット方法といわざるを得ないでしょう。

【おすすめ】普段の食事を置き換えてカロリーオフと栄養バランス改善ができるダイエット用宅配食のご紹介

3日で3㎏やせた体験談は嘘?

ファスティング用グリーンスムージー

3日間の断食で減少する体脂肪量は0.6㎏程度という計算でしたが、クレンズダイエットやファスティングなどの体重減少はもっと大きいものです。
では、これらの口コミ・体験談は嘘なのでしょうか?

体重の減少は脂肪だけではない

ダイエットに関する「体重減少の口コミ」というのはダイエットにかかわる商品の販売のために誇張されたものである可能性も大いにありますが、一般の方の体験談には本当のものもあるでしょう。

3日間で3㎏減りました!という体験談が本当だったとしても、実際に減ったのは体についた脂肪だけとは言いきれません。

断食をすると胃や腸に入る固形物が減るため、腸の中の便が減少します。
また、エネルギー(カロリー)不足状態では肝臓に貯蔵されている糖質が消費され、それに伴って水分は排出されます。

つまり、体重減少=体脂肪の減少ではなく、
体重減少=体脂肪・胃腸の内容物・水分の減少なのです。

体脂肪量の減少に加え、胃や腸の内容物、体内の水分が排出されることにより合計して数㎏の体重減少が表れると考えられます。

水分や消化管内容物はすぐに戻ってしまう!

脂肪であれ水分であれ体重が減るならOK、と感じるかもしれません。

しかし、体脂肪が1㎏減らす/増やすのに7200kcal必要なのに対し、水分や胃腸の内容物は食事の量や内容によってすぐに変動してしまうものです。

厳しい食事制限で3㎏体重が減ったとしても、食事内容を戻すことで1~2㎏程度はすぐに戻ってしまいます。

好転反応は効いているあかし?

ダイエットで体調不良になる女性

もう一つの問題点は、断食に伴って様々な体調不良が表れる点です。
「デトックスがうまくいっている証」などといわれますが、この考え方には大きな問題があります。

断食に伴う「好転反応」とは?

ダイエットや健康増進を目的とした食事制限中におこる、体の不調を「好転反応」と表現することがあります。

こういった体の不調が出るのは毒素や老廃物が体の外に出ているから、という説明がなされることがありますが、実際にはそのような根拠はありません。

「好転反応」は存在しない

「効果が出るときに起こる一時的な好転反応」というものに科学的根拠はなく、体調不良は体調不良でしかありません。

ジュースクレンズダイエットや酵素ドリンクによるファスティングのときにおこる頭痛や倦怠感などの体調不良は摂取カロリー不足による低血糖などが考えられます。

明確な体調不良があらわれたときは直ちにダイエットを中止する必要がありますが、「好転反応だから大丈夫」と考えてしまうと体調不良に対する適切な対処ができなくなってしまいます。

適切な対処ができなかった結果として、深刻な健康への影響も考えられます。

「好転反応」という言葉はクレンズダイエットやファスティング以外でも、さまざまなところで使われている言葉です。
しかし、これはダイエット方法や健康食品・サプリメントによる健康被害を覆い隠すためのものだと考えたほうがいいでしょう。

どんなものであっても、体に悪影響があるものは使い続けるべきものではありません。

高価な「ダイエット用ドリンク」がつきもの

負担に対して効果が小さいこと、健康被害が起こる可能性があることに加えて問題なのが、ダイエット中に飲むものに高価なものが多いことです。

余計なお金を使っていない?

ジュースクレンズダイエットやファスティングなどには、断食中に摂取するドリンク類がつきものです。

ダイエットの方法によって、レモネードや野菜のコールドプレスジュース、酵素ドリンクなどが推奨されています。

いずれもダイエット用に販売されているものは通常の食品に比べかなり高価なものが多くなっています。

品質の良いものを使っているから材料費がかかって高価である、という可能性は否定できません。

しかし、酵素ドリンクやコールドプレスジュースでは体内の体脂肪を排出するような効果は期待できないため、「空腹感を紛らわす」という目的以外にわざわざ摂取する必要性はありません。

無理のないダイエットならお金はかからない

断食を伴うダイエットの本質は「エネルギー(カロリー)制限」であり、上で紹介したような「毎日、少しずつ食事を減らす」ものであれば高価なドリンクは必要ありません。

ファスティングやジュースクレンズ、デトックスなどは高価な健康食品などを売るための口実となっている場合もあるため、注意が必要です。

まとめ

有名人が実践していたり、短期間で大きな効果が表れるように思えるジュースクレンズやファスティング。

しかしダイエット効果はそう大きいものではないにも関わらず、心身に大きな負担をかけ、取り入れる方法によっては金銭的負担にもなりえます。

短期間で無理をするような方法ではなく、からだに負担をかけず、太らない生活習慣が身につくような緩やかなダイエットがおすすめです。

健康的なダイエットについて詳しく解説した記事はこちら

【消費カロリー管理に便利】スマートウォッチのおすすめ商品ランキングのページはこちら

【おすすめ】普段の食事を置き換えてカロリーオフと栄養バランス改善ができるダイエット用宅配食のご紹介

置き換えダイエットにおすすめ商品ランキングのページはこちら

置き換えダイエット5選

参考文献

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

厚生労働省:「健康食品の正しい利用法」

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。