2020.05.15

感染症予防、免疫力を上げる食べ物より大事なこと|管理栄養士執筆

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いろいろな食材

風邪やインフルエンザだけでなく、新型コロナウイルスなど、感染症への関心が高まっています。

このような感染症予防のためには手洗いやマスクの着用などの「病原体を体内に入れない」ための予防法が勧められていますが、その一方で「感染症予防には○○を食べて免疫力アップ!」といった、体そのものを強くする視点の情報も存在します。

食べるだけで感染症を防げるのであれば積極的に取り入れたいものですが、残念ながら「免疫力アップ効果」によって感染症予防に役立つ食べ物は今のところ見つかっていません。

特定の食べ物によって「免疫力アップ」ができない理由と、感染症から体を守るために気を付けたいポイントを紹介します。

そもそも「免疫力」とは?高ければ高いほどいいものではない

「免疫」と「免疫力」の違い

「免疫」とは医学用語であり、自分以外のもの(病原体など)から自分の体を守るはたらき*1)を指す言葉です。
*1)参考:田中越郎. イラストで学ぶ人体のしくみとはたらき 医学書院, 2006.

いっぽう、「免疫力」という言葉は、医学用語として存在するものではなく、明確な定義のあるものではありません。
しかし、「ウイルスや細菌などによる感染症などの病気に対するかかりにくさ・かかった時の抵抗力・体力」などを簡単に伝えるための言葉として便利であるため、用いられることが多いようです。

免疫力が高い・低いと表現することもありますが、体温や血糖値のように測定・数値化できるものでもありません。

免疫の働きが強い=病気になりにくい?

異物から体を守る「免疫」のはたらきが強い状態であれば、病気にかかりにくい…というのは、実は誤解です。

免疫の働きが低下している状態では、ウイルスなどによる感染症にかかりやすいといえますが、免疫の働きが「高すぎる」場合にも、また別の問題が起こります。

免疫の働きが活発になりすぎると、本来からだにとって害のない物質や自分自身にまで攻撃を始めてしまいます。
このような状態を起こしたものが花粉症などのアレルギー疾患や、自己免疫疾患です。

免疫の働きは高ければ高いほどいいのではなく、「ちょうどいいバランス」で保つことが重要です。

免疫の働きが正常に働いている状況を「免疫力が高い」と表現することもありますが、正確には免疫力は「高くする」のが望ましいのではなく、「正常に保つ」が正解です。

食べ物と免疫のかかわり

免疫力を上げる食品・サプリメントは「ない」

○○を食べて免疫力を上げよう!といわれることが往々にしてあります。

「免疫力」は便利な言葉ですが、数値化できるものではありません。
ものさしそのものが存在しないため、特定の食べ物が「免疫力を上げる」かどうか、調べることはできません。

(特定の食品が免疫細胞の働きを高める、といった研究報告等は存在しますが、免疫細胞の働きが高い=病気になりにくいとは異なることは先に述べたとおりです。
また、特定の食品を食べることで何らかの感染症にかかりにくくなったとしても、あらゆる感染症を防ぐ効果があるというわけではありません。)

必須栄養素が不足して「免疫が正常に働かない=免疫力の低下」はありえる

私たちは体に必要な栄養素を、食品から摂取することで健康を維持しています。

よって、偏った食事などにより、必須栄養素の一部(特に免疫にかかわるもの)が不足した場合には、免疫の働きが不十分になり、感染症等にかかりやすい「免疫力が低下した状態」となることもあります。

だからといって、免疫にかかわっている栄養素をとればとるほど正常な状態を超えて感染症にかかりにくくなるわけではありません。
また、極端な量を一度に、または長期間にわたって摂り続けた場合には、過剰症などの悪影響も起こりえます。

新型コロナウイルス感染症の予防効果をうたう食品に注意

特に最近では、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、予防効果をうたう食品・サプリメントも目にすることが多くなってきています。

しかし、感染症全般を予防できるような「免疫力アップ」を証明することはできないこと、また、新しいウイルスである新型コロナウイルスを用いた研究・実験等は現状では実施できないことからも、本当に予防効果があるといえる根拠のあるものは現時点では存在しません。

消費者庁では「新型コロナウイルス予防に根拠があるサプリメントや特定の食品はありません。」として、新型コロナウイルス感染症への予防効果を標ぼうする食品について注意喚起*2)を行っています。
2*)消費者庁:新型コロナウイルス予防効果を標ぼうする食品について(注意喚起)

「病気にかかりにくいからだ」を得るために大事なこと

「免疫力を正常以上に上げる」ことはできませんが、病気にかかりやすい、いわゆる「免疫力の低下した状態」を避けるためにできることはあります。

病原体に対する抵抗力を下げる要因には、
・疲労やストレス
・睡眠不足
・過剰なダイエットや食事制限
・過剰な運動(疲労)や運動不足(体力低下)
などがあげられます。

いわゆる「免疫力」を下げないためには、これらの反対のこと、
・疲労やストレスを解消する
・十分な睡眠
・適量でバランスの取れた食事
・適度な運動
が望ましく、結局のところ大事なことは、「バランスの取れた生活を心がける」という結論になるでしょう。

まとめ:基本を大事にしましょう

感染症への不安が高まっていますが、感染症予防に効果的な方法は特定の食品やサプリメントを摂取することではなく、手洗いやマスクなどでウイルスに接触する機会を減らしつつ、体調を整えるためにバランスのとれた生活を心がけるのが一番といえそうです。

参考文献

田中越郎. イラストで学ぶ人体のしくみとはたらき 医学書院, 2006.

消費者庁:新型コロナウイルス予防効果を標ぼうする食品について(注意喚起)

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報「新型コロナウイルス感染予防によいと話題になっている食品・素材について」

朝日新聞デジタル 齋藤紀先:免疫を高める=病気にならないと勘違いしていませんか

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。