2020.11.06

茶色い炭水化物・白い炭水化物は健康にいい?悪い?|管理栄養士執筆

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色の違う穀類

統計や疫学を用いた研究報告から、身近な食品を「体にいい食品」「体に悪い食品」に分ける書籍が話題になりました。

その中で注目されたのが、「茶色い炭水化物は体にいいが、白い炭水化物は少量でも体に悪い」という表現。
玄米や全粒粉などの食品が健康的なものとされたこと以上に、白米や食パンなど、ごく日常的に食べられている食品が「体に悪いもの」とされたことで衝撃を受けた人も少なくありませんでした。

私たちが日常的に食べている「白い炭水化物」は、今すぐに「茶色い炭水化物」に変えるべきなのでしょうか?

「茶色はいい」けど「白色は悪い」というわけではない

茶色い炭水化物とは?白い炭水化物とは?

ここでいう「炭水化物」とは、「炭水化物の主な摂取源となる食品=穀類」のこと。
「茶色い」「白い」とは精製度の違いによる色の違いを表し、「茶色い=精製度が低い(外皮やぬか層が残っている)」「白い=精製度が高い(外皮やぬか層を取り除いている)」ということになります。

具体的には、
・白い炭水化物:白米、小麦粉・小麦製品
・茶色い炭水化物:玄米、小麦全粒粉、大麦、オート麦、ライムギ、キヌア、雑穀類、そば粉
などがあげられます。

栄養価から比べると、いずれも主成分は炭水化物ですが、「茶色い炭水化物」では外皮などの部分が残っているため、食物繊維やミネラルなどの含有量が多くなっていることが違いです。

茶色い炭水化物は◎。だからと言って白い炭水化物=×ではない

十分な食物繊維(特に穀類由来)の摂取は様々な病気の予防にはたらくことが分かってきており、摂取量を増やすことが望ましい栄養素です。

このことから考えると、食物繊維を豊富に含み、習慣的摂取に役立つ「茶色い炭水化物」は健康にいい食品といえそうです。

では、「茶色い炭水化物」から食物繊維を含む部位を取り除いた「白い炭水化物」は体に悪いものなのでしょうか?

「茶色い炭水化物」「白い炭水化物」は対照的なはたらきがあるように説明されていますが、「茶色い炭水化物」と「白い炭水化物」は全く異なるものではなく、玄米の内側は白米と同じであるように、「茶色い炭水化物」にも「白い炭水化物」は含まれています。

玄米と白米の構造図

そのため、「茶色い炭水化物」は摂取量が多いとよい、ということが正しくても、だからといって「白い炭水化物」はできるだけ食べるべきでない…というのは、断言できないのではないか?と、考えます。

疫学研究での結果?

「茶色い炭水化物」の摂取量が多いほど疾病リスクが少ない、「白米」の摂取が増えるほど疾病リスクが増えるという研究報告

話題になった書籍では、さまざまな研究データから、「茶色い炭水化物」の摂取が多いほど、(量と影響の大きさは異なるものの)体重増加、糖尿病や動脈硬化性疾患の発症リスク、死亡率などが低いことが示されました。
いっぽうで「白い炭水化物」の摂取が増えるほど、糖尿病の発症リスクが増える、といった研究データも示されました。

このようなデータをもとにして、「茶色い炭水化物は体にいい、白い炭水化物は体に悪い」と表現されたようです。

白米摂取量が多いほど糖尿病リスク増…それって本当?

気になるのは、「白い炭水化物」は少量でも体に悪いといったような表現です。
「白い炭水化物」の摂取が増えるほど、糖尿病の発症リスクが増える、といった研究データ*)が示されました。
*)Hu Emily A, Pan An, Malik Vasanti, Sun Qi. White rice consumption and risk of type 2 diabetes: meta-analysis and systematic review BMJ 2012; 344 :e1454

私たち日本人が1日にどのくらいの米を摂取しているか、正確なデータは得られなかったものの、平成30年度の食料需給表では、1人1日あたり主食用として142.5gが供給されていることになっており、炊いた白米に換算すると「313g」(=2杯)程度が1日あたりの平均値といえそうです。

上記の研究で示されたグラフでは、白米の摂取量が0の人の糖尿病リスクを1として、摂取量が増えるほどリスクが増えることを示していますが、平均供給量の313g付近でのリスクはおよそ1.2ほど。
600g(約3~4杯)を超えたあたりでリスクが1.5になりますが、0から平均値を少し上回る400gくらいまでの範囲で考えると、「なるべく少なくする」負担に対して、得られるベネフィット(糖尿病リスクの低下)はさほど大きくないように感じられます。

また、この研究では肥満や摂取エネルギーによる影響の調整について言及されておらず、関連する要因を取り除けていないことも考えられます。
(※摂取エネルギー過多や肥満は糖尿病の危険因子のひとつです。食事をたくさん食べる人は肥満である可能性も高く、糖尿病発症リスクが高いのは特定の食品が原因なのか、肥満が原因なのか判断しにくくなります)

このようなことから、「白い炭水化物」よりも「茶色い炭水化物」が糖尿病の予防に優れている…ということは間違ってはいませんが、「白い炭水化物」は体に悪い…とまで言うことはできないのではないでしょうか?

特定の食べ物が「健康にいいか悪いか」は食べる人によっても異なる

また、健康にいいとされる「茶色い炭水化物」も、誰にでも万能の健康食ということではありません。

食物繊維が豊富な全粒穀物は消化しにくい食品であるとも言え、胃腸の消化機能が落ちている人や、消化管が未成熟な乳幼児には「健康にいい食品」とは言いにくい側面もあります。

消化管等に問題がなく、どちらかというと生活習慣病のリスクを下げることが望ましい成人にとっては、摂取エネルギー過剰にならない範囲で玄米や全粒粉などの「茶色い炭水化物」の摂取割合を増やすと生活習慣病の予防にいい食生活に近づく…というくらいが妥当な表現かもしれません。

簡単には白黒つけられない

特定の食品について「健康にいい/悪い」とはっきり決められることはそう多くありません。

多くの食品について、「食べ物の特性」だけでなく、「食べる人の状況」「食べる量や頻度」「ほかの食品との関連」など、いろいろな要素を組み合わせて、食事全体として「自分にとって健康的な食事」をとれることが望ましいことといえるのではないでしょうか?

参考文献

農林水産省:「食糧需給表」

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

Hu Emily A, Pan An, Malik Vasanti, Sun Qi. White rice consumption and risk of type 2 diabetes: meta-analysis and systematic review BMJ 2012; 344 :e145

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。