
手に入りやすくてとても身近なヨーグルトは、毎日の食生活に取り入れやすい食材ですよね。
ヨーグルトの栄養効果といえば整腸作用。
ですが、近年ではインフルエンザ予防や花粉症予防に効果があるのでは、と期待されています。
実際にはどこまで効果が期待できるのでしょうか?
整腸作用以外のヨーグルトの機能性が注目されている
ヨーグルトは乳酸菌やビフィズス菌を利用した発酵食品
ヨーグルトは牛乳や羊乳を、乳酸菌・ビフィズス菌の発酵により凝固させた食品のことを指します。
牛乳の中に含まれるカゼインといわれる乳たんぱく質は、酸で固まる性質を持っています。
乳酸菌やビフィズス菌といった菌が牛乳の中に含まれる糖分を分解し、酸を作り出すとカゼインが固まります。
そのためヨーグルトは固まり、特有のほのかな酸味が出てくるようになります。
乳酸菌やビフィズス菌の機能性が注目されている
ヨーグルトをつくるための乳酸菌やビフィズス菌には多くの種類があります。
ヨーグルトの製品ごとにいろいろな種類の菌が使われており、その特性も様々です。
これまで、ヨーグルトに含まれる乳酸菌の栄養機能は整腸作用が主なものでしたが、近年は研究機関やメーカーでの研究が進み、
・免疫機能強化
・アレルギーの改善・予防
・コレステロール値の低下
・プリン体対策
などの機能性を持った乳酸菌株が注目されています。
働きは菌種によってさまざま
上に示したような機能はすべての乳酸菌が等しく持っているものと、そうでないものがあります。
パッケージや企業の情報ページなどで比較してみると、自分の希望に合ったものが見つけやすそうです。
乳酸菌の機能性=ヨーグルトの機能性ではないので注意
乳酸菌についての研究成果は様々な企業ページで紹介されています。
多くは「○○菌に■■の機能があることを発見しました」というように、「ヨーグルト」としての機能性ではなく、「乳酸菌」としての機能として紹介されていることに要注意です。
その理由は、「○○菌の機能性」=「○○菌が入ったヨーグルトの機能性」とは言い切れないためです。
機能性が確認された研究で使われた乳酸菌とヨーグルトに使われた乳酸菌が同じでも、厳密には量が違ったり、食品としての状態が同じであるとは限りません。
例えば、研究では1日あたり○○菌を10億個摂取することで効果が期待出来ていても、実際の製品では1億個しか入っていなかったとしたら、同じ効果が出るとは言い切れません。
また、研究の対象がわたしたちヒトではなく、動物や細胞では、たとえ効果があったとしても、私たちヒトにも効果があるとは限りません。
「量」や「対象がヒトか」というのは、見落としがちですが重要なポイントでもあります。
効果が期待できるヨーグルトを見分けるポイントは
私達が食べる状態のヨーグルトで効果が期待できるかをチェックするためには、「トクホマーク」と「トクホになった理由(許可表示)」をしっかり確認してみましょう。
トクホでは「実際の製品」を使って「ヒト」に対して「何に効果があるのか」を調べているので、トクホマークがあり、どんな効果があるのかを知る手掛かりになります。
「トクホマークがあること」「自分の目的の効果が得られること」をチェックして、賢く選びたいですね。
期待できる?ヨーグルトの乳酸菌の機能性
では、実際にヨーグルトで「トクホ」になっているものは、どんな効果があるのでしょうか?
トクホになっている!ヨーグルトで期待できる効果
整腸作用
トクホマークのついているヨーグルトの大部分は「おなかの調子を整える」という機能で特定保健用食品と認められています。
内臓脂肪面積の減少
限られた製品ではありますが、内臓脂肪の減少を助ける機能があるとしてトクホになっているものもあります。
一定の機能性はあるものの、トクホなどの認可は受けていないもの
話題になっているインフルエンザの予防や花粉症やアレルギーの症状軽減などの機能でトクホのように製品として効果が確認されているものはありませんでした。
免疫機能強化(ラブレ株、R-1乳酸菌、ビフィズス菌SP株など多数)
病原菌が腸の粘膜に結合するのを防いだり、ヒトの持つ免疫細胞を活性化して感染症にかかりにくくする機能が期待される菌種があります。
ラブレ株については、予防接種の効果には及ばないものの、2か月間の継続摂取でインフルエンザウイルスの罹患率が下がったという報告もあります。
アレルギー症状の改善・予防(LGG菌、L-55菌、BB536菌など多数)
腸内で悪玉菌が優位になると、アレルギー症状のもととなる細胞の働きが高まり、アレルギーを起こしやすくなることがあります。
ヒトの免疫に働きかけてアレルギー症状を抑えたり、腸管からアレルゲンが侵入するのを防いでアレルギーが発症しないように働くと考えられている菌種もあります。
LGG乳酸菌とTMC0356乳酸菌を含んだヨーグルトを10週間継続摂取することによって、花粉症の人で鼻詰まりの自覚症状が低下したとの報告もあります。
コレステロール値の低下(ガセリ菌SP株、クレモリス菌FC株など多数)
血中コレステロール値が上がると、動脈硬化や心筋梗塞といった疾病の原因となります。
コレステロールを多く含む胆汁と菌そのものが結合することによってコレステロールの排泄を高める機能が注目されています。
ガセリ菌SP株を用いた実験では、軽度の高コレステロール血症の人に対して、11週間の継続摂取により血中のコレステロール値を10%程度低下させる働きがあったとする報告があります。
トクホではないものに効果はないの?
特定保健用食品として認められていない製品に関しては、製品として実験が行われていない以上、「効果があるかどうかはわからない」としか言いようがないのが現状です。
今後研究が進み、しっかりとした結果が得られれば特定保健用食品などとして販売されるかもしれません。
テレビ番組などのメディアでは「ヨーグルトを食べていれば薬はいらない」と思ってしまうような表現もみられることがあります。
しかし、一般的に食品の機能性は「効果がある人も、ない人もいる」というレベルのもので、医薬品ほど効果のあるものないと考えるのが妥当です。
現時点では薬や予防接種のように「花粉症が改善するヨーグルト」「インフルエンザにかかりにくくなるヨーグルト」といえるものはありません。
生活への取り入れ方・注意点
さまざまな効果が期待されるヨーグルトですが、いくつか工夫をすることで、より効果が得られやすくなるかもしれません。
食べ物は薬にはならない
ヨーグルトに限らず、様々な食品の機能性が注目されていますが、食品の機能性はとても限定的なもので、治療に関しては医薬品には及びません。
インフルエンザ予防に関しても、花粉症に関しても、基本は医療機関での予防接種やアレルギーの治療がメインになります。
機能性のある食べ物といっても、医療の代わりにはなりません。
あくまで食べ物であり、食べ続けることで「もしかしたら、インフルエンザにかかりにくくなるかも」という程度であることを覚えておきましょう。
毎日食べ続けるのがポイント
ヨーグルトの機能性を調べた実験では、2か月以上の継続摂取をしたものが多くみられました。
一度にたくさんの量を食べるよりも、1日1~2食程度の量を毎日食べることによって、効果が表れた実験の条件により近づけることができます。
もちろん、ヨーグルトを食べるだけではなく、バランスの取れた食事や適度の運動も健康のためには必要です。
また、人によって菌種との相性がありますので、おなかの調子が崩れたり、合わない製品があったら避けることも重要です。
加熱すると菌が死んでしまう
ヨーグルトの菌は生き物なので、60度以上で死滅してしまいます。
生きて腸に届くことを売りにしている商品などは、生きた菌の効果を引き出すために、加熱せずに食べたほうがよいでしょう。
冷えに弱い人は常温に戻す
冷たいものでおなかを壊しやすい人は、ヨーグルトを常温に戻してから食べる方法をとることで冷えを防ぎましょう。
ヨーグルトは要冷蔵の食品ですので、食べる分だけ器に移して常温に戻すのがおすすめです。
常温に戻したヨーグルトは長期保存には適さないので、なるべく1回で食べきりましょう。
生活への取り入れ方・まとめ
これらのポイントをまとめると、
・薬の代わりにはならないので、医療機関での治療を優先する
・効果を期待するのなら毎日、継続して食べる
・ヨーグルトだけでなくその他の食生活にも気を付ける
・なるべく加熱調理はせずに食べる(砂糖を足したりするのは問題ありません)
・常温に戻すときは食べる分だけにする
・体に合わなければ食べるのをやめる
過度な期待は禁物ですが、食事を選ぶ要素のひとつとして、ヨーグルトの機能性に注目してみるといいですね。
参考文献 タカナシ乳業株式会社:「LGG乳酸菌効果① 花粉シーズンと乳酸菌」 梶本 修身,平田 澤,青江誠一郎,高橋 丈生,鈴木 豊,田中 博.境界域及び軽度高コレステロール血症に対しLactobacillus gasseri(ガゼリ菌SP株)を含有する発酵乳は血清コレステロール値を低下させる Japanese Journal of Lactic Acid Bacteria Vol.13, No. 2(2002) |