話題のもち麦ダイエット、メカニズムと効果は?|管理栄養士執筆

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もち麦ご飯

お米と一緒に炊き込んで食べる「もち麦」がダイエットに効果的と注目されています。
その要は「β-グルカン」と呼ばれる食物繊維。
もち麦に含まれる食物繊維やもち麦そのものがダイエットに与える影響について、研究報告を踏まえて解説します!

もち麦って何?

ビールや麦茶、麦飯でおなじみの「大麦」の一種

麦、と呼ばれる作物にはいくつかの種類があります。
パンやうどん作りに活用される小麦、
麦茶やビール、麦ごはんに使われる大麦、
そのほか、ライ麦や燕麦(えんばく)、ハト麦などがありますが、もち麦はこのうちの「大麦」の一種です。

お米でいうところの「もち米」の「大麦バージョン」

麦と同じイネ科の米には「うるち米(ふつうのお米)」と「もち米」があります。
麦にも同じように「うるち性の麦」と「もち性の麦」があり、もち麦は「もち性の大麦」を指します。

うるち性の大麦は「押し麦」などに使われ、身近なところでは「麦とろご飯」などで食べる機会が多い食材です。

うるち性ともち性の違い

「うるち性」と「もち性」では主成分であるでんぷん質の組成が異なり、食感にも違いが出てきます。

うるち性に比べるともち性の米や麦は粘りの強い「アミロペクチン」の割合が多いため、うるち性の米や麦に比べるとパサつかず、粘りが強いもちもちとした食感になります。
そのため、押し麦や麦ごはんがぱさぱさして食べづらい、という人にも食べやすい品種として知られています。

もち麦の栄養的特徴と期待されている効果

もち麦

白米、玄米と比較

白米ごはんと比較されることの多い「もち麦」ですが、栄養素としてはどのような利点があるのでしょうか?
精白米、玄米、押し麦(うるち性の大麦)と比較してみました。

もち麦 押し麦 玄米 精白米
エネルギー 337kcal 346kcal 353kcal 358kcal
たんぱく質 8g 6.7g 6.8g 6.1g
脂質 1.6g 1.5g 2.7g 0.9g
炭水化物 79.1g 78.3g 74.3g 77.6g
食物繊維 13g 12.2g 3.0g 0.5g
*調理前100gあたり。
もち麦のみ、はくばく「国産もち麦」栄養成分表示より
食物繊維の多さが特徴的

米の2種に比べると、食物繊維の多さが特徴的です。
精白米に比べて食物繊維が豊富とされる玄米をも大きく上回っています。
日常的に取り入れることで、生活習慣病予防などに有効な食物繊維の摂取量を引き上げるための力強い味方になりそうです。

食物繊維はなぜとったほうがいいの?

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、食物繊維の摂取量が増えると循環器疾患や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中の発症率が下がるという内容の研究報告が多数あることが紹介されています。

摂取量の基準値としては、
18~64歳の女性で18g以上、18~64歳の男性で21g以上が目標量とされています。
現状の摂取量としては、
20歳以上の男女ともに15g前後になっています。(平成29年国民健康・栄養調査より)

若い世代ほど食物繊維の摂取量は少ない傾向にあるので、平均的にはあと3~5g、若い世代では5~7gほど摂取量を増やしたい成分です。

もち麦を取り入れると食物繊維をどのくらいプラスできる?

通常、押し麦やもち麦は白米と混ぜて「麦ごはん」で食べる場合が多いです。
白米に対してどのくらいの量をもち麦に置き換えるかによって、プラスできる食物繊維の量は変わってきます。

白米のみの場合:
1人分を半合として白米75g
→白ごはんとして180g

食物繊維2.7g
エネルギー302kcal

白米3:もち麦1の場合:
1人分を半合として白米57g:もち麦18g
→麦ごはんとして米137g:もち麦64g→191g

食物繊維4.4g(白米のみと比較して+1.7g)
エネルギー291kcal

白米2:もち麦1の場合:
1人分を半合として白米50g:もち麦25g
麦ごはんとして米120g:もち麦75g→195g

食物繊維5.1g(白米のみと比較して+2.4g)
エネルギー286kcal

混ぜ込む割合にもよるものの、お茶碗1杯を半合(炊きあがり180~200gくらい)で1.7g~2.4gほどをプラスすることができそうです。
2:1の麦ごはんであれば、1日2回ほど取り入れることで、5g近い食物繊維を増やすことができる計算になりますね。

もち麦でダイエットできる?

ゆでたもち麦

カロリーは大きくは変わらない

白ごはん180gあたり302kcalと比較して、白米2:もち麦1のご飯は180gあたり264kcalとなり、38kcalほど少なくなります。

もち麦ご飯にすることによって、摂取エネルギーが低くなったといえばそうなのですが、
目に見えてダイエット効果が表れるほどの差か、といわれるとそうではないと考えます。

1食当たり38kcalカットできたとすると、体脂肪1㎏を落とすまでに189日、おおよそ半年かかる計算です。
1日2食をもち麦ご飯にするなら1日76kcalカットでき、95日、3か月で1㎏程減らせそうですが、「これでダイエットできる!」というほど大きな効果とは言いにくいでしょう。

食物繊維が脂肪を排泄するはたらきでやせる?
食物繊維は食事の脂肪を吸着して排泄する

もち麦には「β-グルカン」という水溶性食物繊維が含まれ、この働きによってやせることができるとされています。
水溶性食物繊維は食事の脂肪分を吸着して体外に排出する作用があり、そのために摂取エネルギーを抑えられることが分かっています。

しかし、「どのくらい」の脂肪が排出されるかまでは、どの媒体でも紹介されていませんでした。
食べた脂肪の半分が排出されれば大きな違いですが、1%なら摂取カロリーにはさほど影響を与えないため、ダイエットに効果的とは言えないと考えます。

同じ水溶性食物繊維の研究データ

β-グルカンについての研究報告は見つけることができませんでしたが、同じ水溶性食物繊維でトクホにも使用されている「難消化性デキストリン」での研究報告を見つけることができました。

水溶性食物繊維である難消化性デキストリン5gを含む飲料を1日3本、3回の食事とともに摂取したところ、便からの脂質の排出がおおよそ倍に増加した*1)、という内容のものです。
*1)Yuka Kishimoto, Yuko Yoshikawa, Shoko Miyazato, Hiroshi Oga, Takako Yamada, Hiroyuki Tagami, Chieko Hashizume, Kunio Yamamoto. Effect of Resistant Maltodextrin on Digestion and Absorption of Lipids Journal of Health Science, 55 (5) 838-844 (2009)

脂質の排出が倍に増加した、というとかなりのダイエット効果を期待してしまいますが、ダイエットに関して言えば、どのくらいのエネルギーが吸収されなかったのか、という点が重要です。
デキストリンを摂取していない場合では0.77gだった脂質の排出が、デキストリンを摂取した場合では1.44gになったそうです。
確かにおおよそ倍になってはいますが、「なかったこと」になった脂質は0.67g分、エネルギーとしてわずか6kcalにとどまります。

食物繊維による脂肪分の排泄

1日15gの水溶性食物繊維を追加で摂ったとしても、食べている量が同じであれば摂取されるエネルギーはほとんど変わらないといえそうです。

「食物繊維が脂肪をからめとって排出させて痩せる」というのはあまりダイエットには効果は期待できなさそうです。

腹持ちはよくなりそう

食物繊維の脂肪排出作用はさほど大きなものではありませんが、「食事量を減らす」という点では効果を発揮する可能性があります。

大麦を加えて炊いた麦ごはんを食べるグループと、白米のみのご飯を食べたグループの食事量や満腹感を調べた研究報告を紹介します。

・朝食に大麦入りごはんを食べたグループ
・朝食に白米ごはんを食べたグループ
では、麦ごはんのグループのほうが昼食前の満腹感が高くなり(おなかがすきにくく)、昼食の食事量が減った*2)という内容です。
*2)Aoe S, Ikenaga T, Noguchi H, Kohashi C, Kakumoto K, Kohda N. Effect of cooked white rice with high β-glucan barley on appetite and energy intake in healthy Japanese subjects: a randomized controlled trial. Plant Foods Hum Nutr. 2014 Dec;69(4):325-30.

食物繊維を豊富に含む大麦を摂取することで、白米ごはんに比べて消化・吸収に時間がかかるため、満腹感が持続しやすいと考えられています。
また、水溶性食物繊維は水分を含んで膨張するため、満腹感を感じやすいのでは、とも考察されています。

ダイエット中においては「おなかがすきにくい」というのはとても大きな利点です。
食べすぎを防ぎ、無理なくダイエットをするのにもち麦や押し麦を活用するのはとても良い方法といえそうですね。

ダイエット中のかしこい取り入れ方

「腹持ちがいい」ことを活用しよう

もち麦を含む大麦の特徴は「食物繊維が多いこと」です。

大麦やもち麦は「食べれば食べるほどやせる」といった性質のものではありません。

ダイエットを目的としているのであれば、「もち麦ご飯を食べること」を目的とするのではなく、「無理なく摂取エネルギーを減らす」ことを目的として取り入れるのがいいでしょう。

もち麦ご飯を取り入れたことで、余計な間食が減ったり、食べすぎを防ぐことができれば、ダイエットの手助けになりそうです。

無理なく続けるダイエットにはぴったりの食材といえそうです。

参考文献

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

株式会社はくばく:「国産もち麦」

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

Yuka Kishimoto, Yuko Yoshikawa, Shoko Miyazato, Hiroshi Oga, Takako Yamada, Hiroyuki Tagami, Chieko Hashizume, Kunio Yamamoto. Effect of Resistant Maltodextrin on Digestion and Absorption of Lipids Journal of Health Science, 55 (5) 838-844 (2009)

Aoe S, Ikenaga T, Noguchi H, Kohashi C, Kakumoto K, Kohda N. Effect of cooked white rice with high β-glucan barley on appetite and energy intake in healthy Japanese subjects: a randomized controlled trial. Plant Foods Hum Nutr. 2014 Dec;69(4):325-30.

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。