投稿日: 2019.12.20 | 最終更新日: 2023.08.02

もち麦ご飯でダイエットできる?痩せるための効果的な使い方を解説

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もち麦ご飯

お米と一緒に炊き込んで食べる「もち麦」がダイエットに効果的と注目されていますが、その要は「β-グルカン」と呼ばれる食物繊維。
もち麦に含まれる食物繊維やもち麦そのものがダイエットに与える影響について、研究報告を踏まえて解説します!

もち麦とは

麦と呼ばれる作物にはいくつかの種類があります。

  • 小麦…パンやうどん作りに活用される
  • 大麦…麦茶やビール、麦ごはんに使われる
  • ライ麦…パン作りに活用される
  • 燕麦(えんばく)…オートミールなどに使われる
  • ハト麦

もち麦はこのうちの「大麦」の一種です。

もち性の大麦

麦と同じイネ科の米には「うるち米(ふつうのお米)」と「もち米」があります。
麦にも同じように「うるち性の麦」と「もち性の麦」があり、もち麦は「もち性の大麦」を指します。

うるち性の大麦は「押し麦」などに使われ、身近なところでは「麦とろご飯」などで食べる機会が多い食材です。

うるち性ともち性の違い

「うるち性」と「もち性」では主成分であるでんぷん質の組成が異なり、食感にも違いが出てきます。

うるち性に比べるともち性の米や麦は粘りの強い「アミロペクチン」の割合が多いため、うるち性の米や麦に比べるとパサつかず、粘りが強いもちもちとした食感になります。
そのため、押し麦や麦ごはんがぱさぱさして食べづらい、という人にも食べやすい品種として知られています。

もち麦の栄養価と健康効果

もち麦

白米ごはんと比較されることの多い「もち麦」ですが、栄養素としてはどのような利点があるのでしょうか?
もち麦の栄養価を精白米、玄米、押し麦(うるち性の大麦)と比較してみました。

もち麦とほかの穀類の栄養価を比較

もち麦とその他の穀類の栄養価を比較した表がこちら。

■もち麦とその他の穀類の栄養価

もち麦 押し麦 玄米 精白米
エネルギー 337kcal 346kcal 353kcal 358kcal
たんぱく質 8g 6.7g 6.8g 6.1g
脂質 1.6g 1.5g 2.7g 0.9g
炭水化物 79.1g 78.3g 74.3g 77.6g
食物繊維 13g 12.2g 3.0g 0.5g
*調理前100gあたり、もち麦…はくばく「国産もち麦」栄養成分表示より

もち麦は、米の2種に比べると食物繊維の多さが特徴的で、精白米に比べて食物繊維が豊富とされる玄米をも大きく上回っています。
もち麦を日常的に取り入れることで、生活習慣病予防などに有効な食物繊維の摂取量を引き上げるための力強い味方になりそうです。

食物繊維の健康効果

厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)では、食物繊維の摂取量が増えると循環器疾患や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中の発症率が下がるという内容の研究報告が多数あることが紹介されています。

食物繊維の摂取量の基準値としては、18~64歳の女性で18g以上、18~64歳の男性で21g以上が目標量とされています。
現状の摂取量としては、20歳以上の男女ともに15g前後になっています。(平成29年国民健康・栄養調査より)

若い世代ほど食物繊維の摂取量は少ない傾向にあるので、平均的にはあと3~5g、若い世代では5~7gほど摂取量を増やしたい成分です。

もち麦で増やせる食物繊維摂取量

通常、押し麦やもち麦は白米と混ぜて「麦ごはん」で食べる場合が多いです。
白米に対してどのくらいの量をもち麦に置き換えるかによって、プラスできる食物繊維の量は変わってきます。

白米のみの場合

白米1人前(半合)は生のお米でおよそ75gに当たり、出来上がり量は180gとなります。
この量のごはんからとれる食物繊維とカロリーは、以下の量になります。

  • 食物繊維2.7g
  • エネルギー302kcal

白米:もち麦=3:1の場合

白米ともち麦を3:1の割合で混合し、75gとした場合、それぞれの量は白米57g:もち麦18gとなります。
この場合の出来上がり量は191gとなり、食物繊維とカロリーは以下のように変化します。

  • 食物繊維4.4g(白米のみと比較して+1.7g)
  • エネルギー291kcal(白米のみと比較して-11kcal)

白米:もち麦=2:1の場合

白米ともち麦を2:1の割合で混合し、75gとした場合、それぞれの量は白米50g:もち麦25gとなります。
この場合の出来上がり量は195gとなり、食物繊維とカロリーは以下のように変化します。

  • 食物繊維5.1g(白米のみと比較して+2.4g)
  • エネルギー286kcall(白米のみと比較して-16kcal)

割合によって1.7~2.4gのプラスが可能

混ぜ込む割合にもよるものの、お茶碗1杯を半合(炊きあがり180~200gくらい)で1.7g~2.4gほどをプラスすることができそうです。
白米:もち麦=2:1の麦ごはんであれば、1日2回ほど取り入れることで、5g近い食物繊維を増やすことができる計算になりますね。

もち麦ダイエットの痩せる効果

ゆでたもち麦

ダイエットに使われることもある「もち麦」ですが、取り入れることで得られるダイエット効果にはどんなものがあるのでしょうか?

もち麦に期待されるダイエット効果については、以下の3種類が期待されています。

  • カロリーカット効果
  • 食物繊維の脂肪排出効果
  • 満腹感の持続効果

このうち、ダイエットに対して現実的な効果が得られそうなのは、「満腹感の持続効果」です。

それぞれを詳しく解説します。

カロリーカット効果

白ごはん180gあたり302kcalと比較して、白米2:もち麦1のご飯は180gあたり264kcalとなり、38kcalほど少なくなります。

もち麦ご飯にすることによって、摂取エネルギーが低くなったといえばそうなのですが、目に見えてダイエット効果が表れるほどの差か、といわれるとそうではないと考えます。

1食当たり38kcalカットできたとすると、体脂肪1㎏を落とすまでに189日、おおよそ半年かかる計算です。
1日2食をもち麦ご飯にするなら1日76kcalカットでき、95日、3か月で1㎏程減らせそうですが、「これでダイエットできる!」というほど大きな効果とは言いにくいでしょう。

食物繊維の脂肪排出効果

もち麦には「β-グルカン」という水溶性食物繊維が含まれ、この働きによってやせることができるとされています。
水溶性食物繊維は食事の脂肪分を吸着して体外に排出する作用があり、そのために摂取エネルギーを抑えられることが分かっています。

しかし、「どのくらい」の脂肪が排出されるかまでは、どの媒体でも紹介されていませんでした。
食べた脂肪の半分が排出されれば大きな違いですが、1%なら摂取カロリーにはさほど影響を与えないため、ダイエットに効果的とは言えないと考えます。

β-グルカンについての研究報告は見つけることができませんでしたが、β-グルカンと同じ水溶性食物繊維でトクホにも使用されている「難消化性デキストリン」での研究報告を見つけることができました。

水溶性食物繊維である難消化性デキストリン5gを含む飲料を1日3本、3回の食事とともに摂取したところ、便からの脂質の排出がおおよそ倍に増加した*1)、という内容のものです。

食物繊維による脂肪分の排泄

脂質の排出が倍に増加した、というとかなりのダイエット効果を期待してしまいますが、ダイエットに関して言えば、どのくらいのエネルギーが吸収されなかったのか、という点が重要です。
デキストリンを摂取していない場合では0.77gだった脂質の排出が、デキストリンを摂取した場合では1.44gになったそうです。
確かにおおよそ倍になってはいますが、「なかったこと」になった脂質は0.67g分、エネルギーとしてわずか6kcalにとどまります。

1日15gの水溶性食物繊維を追加で摂ったとしても、食べている量が同じであれば摂取されるエネルギーはほとんど変わらないといえそうです。

「食物繊維が脂肪をからめとって排出させて痩せる」というのはあまりダイエットには効果は期待できなさそうです。

満腹感の持続効果

食物繊維の脂肪排出作用はさほど大きなものではありませんが、「食事量を減らす」という点では効果を発揮する可能性があります。

大麦を加えて炊いた麦ごはんを食べるグループと、白米のみのご飯を食べたグループの食事量や満腹感を調べた研究報告を紹介します。

  • 朝食に大麦入りごはんを食べたグループ
  • 朝食に白米ごはんを食べたグループ

では、麦ごはんのグループのほうが昼食前の満腹感が高くなり(おなかがすきにくく)、昼食の食事量が減った*2)という内容です。

食物繊維を豊富に含む大麦を摂取することで、白米ごはんに比べて消化・吸収に時間がかかるため、満腹感が持続しやすいと考えられています。
また、水溶性食物繊維は水分を含んで膨張するため、満腹感を感じやすいのでは、とも考察されています。

ダイエット中においては「おなかがすきにくい」というのはとても大きな利点です。
食べすぎを防ぎ、無理なくダイエットをするのにもち麦や押し麦を活用するのはとても良い方法といえそうですね。

まとめ

もち麦を含む大麦の特徴は「食物繊維が多いこと」です。

大麦やもち麦は「食べれば食べるほどやせる」といった性質のものではありません。

ダイエットを目的としているのであれば、「もち麦ご飯を食べること」を目的とするのではなく、「無理なく摂取エネルギーを減らす」ことを目的として取り入れるのがいいでしょう。

もち麦ご飯を取り入れたことで、余計な間食が減ったり、食べすぎを防ぐことができれば、ダイエットの手助けになりそうです。

無理なく続けるダイエットにはぴったりの食材といえそうです。

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参考文献

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

株式会社はくばく:「国産もち麦」

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

*1)Yuka Kishimoto, Yuko Yoshikawa, Shoko Miyazato, Hiroshi Oga, Takako Yamada, Hiroyuki Tagami, Chieko Hashizume, Kunio Yamamoto. Effect of Resistant Maltodextrin on Digestion and Absorption of Lipids Journal of Health Science, 55 (5) 838-844 (2009)

*2)Aoe S, Ikenaga T, Noguchi H, Kohashi C, Kakumoto K, Kohda N. Effect of cooked white rice with high β-glucan barley on appetite and energy intake in healthy Japanese subjects: a randomized controlled trial. Plant Foods Hum Nutr. 2014 Dec;69(4):325-30.

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。