
カロリーが高く敬遠されがちな油脂類の中でも、「健康的なあぶら」として注目されている「オメガ3」。
オメガ3のはたらきや効果的なとり方はどんなものでしょうか?
Contents
オメガ3とは
オメガ3は「n-3系脂肪酸」ともいう、「脂質=あぶら」の一種です。
オメガ3にはいくつかの脂肪酸が属し、主なものとしてはα-リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、イコサペンタエン酸などがあります。
(厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、「n-3系脂肪酸」という表現が使われていますが、この記事内ではメディアで広く使われている「オメガ3」という表現で統一します。)
必須脂肪酸の一種
オメガ3は生命活動に必要な物質ですが、体内で作り出すことができないために食品などから必ずとる必要がある「必須脂肪酸」です。
必須脂肪酸は大きくオメガ3とオメガ6にわけられ、日本人の食事摂取基準(2020年版)では、それぞれに1日あたりの摂取目安量が定められています。
エイコサノイドの材料となる
オメガ3はオメガ6とともにエイコサノイド(ホルモンのような物質)の材料となり、免疫機能などにかかわっています。
食事からのオメガ3とオメガ6のバランスが変化すると、免疫機能やアレルギー症状の強弱などに影響が及ぶと考えられています。
血中コレステロール値を引き下げ、心臓疾患のリスク低減に関与
そのほか、生活習慣病・心疾患のリスクにかかわることが知られています。
飽和脂肪酸は摂取量が増えることで血中コレステロールを上げることが知られています。
対して、不飽和脂肪酸、特に多価不飽和脂肪酸は血中コレステロールを下げることが分かっています。
オメガ3とオメガ6を合わせた「多価不飽和脂肪酸」として、「飽和脂肪酸」と置き換える形で摂取すると、心臓病(冠動脈疾患・心筋梗塞)の発症率と死亡率に有意な差がみられたというデータもあり、食事改善のヒントのひとつになりそうです。
オメガ3を含む食品
オメガ3のうち「α-リノレン酸」は植物油に、「DHA(ドコサヘキサエン酸)」および「EPA(イコサペンタエン酸)」は魚の脂身に多く含まれる傾向があります。
α-リノレン酸を多く含む食品
含有量 | 1食でとれる量 | |
アマニ油 | 57000㎎/100g | 6800㎎(大さじ1:12g) |
くるみ(いり) | 9000㎎/100g | 1400㎎(5かけ:15g) |
調合油(サラダ油) | 6800㎎/100g | 820㎎(大さじ1:12g) |
マヨネーズ | 4900㎎/100g | 590㎎(大さじ1:12g) |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
EPAを多く含む食品
含有量 | 1食でとれる量 | |
たいせいようさば(生) | 1800㎎/100g | 1800㎎(半身の1/2:100g) |
みなみまぐろ(トロ) | 1600㎎/100g | 240㎎(寿司1貫分:15g) |
しろさけ・イクラ | 1600㎎/100g | 270㎎(大さじ1:17g) |
さんま(生) | 1500㎎/100g | 1500㎎(1匹150gの可食部:100g) |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
DHAを多く含む食品
含有量 | 1食でとれる量 | |
みなみまぐろ(トロ) | 4000㎎/100g | 600㎎(寿司1貫分:15g) |
たいせいようさば(生) | 2600㎎/100g | 2600㎎(半身の1/2:100g) |
さんま(生) | 2200㎎/100g | 2200㎎(1匹150gの可食部:100g) |
しろさけ・イクラ | 2000㎎/100g | 340㎎(大さじ1:17g) |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成
オメガ3の主な摂取源
健康食品等によるイメージから、「オメガ3といえば魚」と考えられがちですが、実際の摂取源としては植物油が大部分を占めています。
魚類に含まれるオメガ3について詳しく解説した記事はこちら |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
オメガ3の摂取量の目安
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、オメガ3の摂取量の目安量は1日あたり18-49歳の男性で2.0g(2000㎎)、18-49歳の女性で1.6g(1600㎎)としています。
この量は、不足による健康への影響がみられない日本人の習慣的なオメガ3の摂取量(平成28年度国民健康・栄養調査)を根拠としたもので、1日あたり魚介類を50g、油脂類を10g程度食べる人で十分に摂取できる量です。
魚介類は毎日必ず50gとる必要はなく、1週間などの期間を平均して1日あたり50g(例えば2日に1回100g程度)の摂取ができていればよい、と考えます。
また、この量を下回ったからといってすぐに健康に影響があるものではありませんので、「オメガ3が不足しているかも」と不安になる必要はありません。
オメガ3のおすすめの取り入れ方
生活習慣病の予防効果については、「このぐらいとるとよい」という十分なデータがないのが現状です。
そのため、生活習慣病予防の目的での明確な数値設定はありません。
現段階では、飽和脂肪酸が血中コレステロール値を上げ、多価不飽和脂肪酸が血中コレステロール値を下げることが分かっています。
よって、血中コレステロール値が気になる人においては、飽和脂肪酸を多く含む食品を、多価不飽和脂肪酸(オメガ3+オメガ6)を多く含む食品に置き換えるような使い方がよいと考えられています。
具体的には、毎日の食事のうち、
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といった取り入れ方がよいでしょう。
そもそもの脂質の摂取量が多いという人は脂質摂取量のカットも視野に入れるといいですね。
オメガ3を取り入れるときの注意点
オメガ3の摂取量について、
- ○○gを下回ると健康に影響がある
- ○○gを確保すると生活習慣病予防に効果がある
という明確な数値は明らかになっていません。
日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、通常の食事がとれる多くの人ではオメガ3の不足による欠乏症状は報告されていません。
そのため、「現代の日本人はオメガ3が不足気味だ」とは考えにくいでしょう。
ただし、植物油や魚由来の油脂などを含めた脂質全般を極端に制限している人では、通常に比べて摂取量が少ないことが考えられます。
そのような場合では、平均的な日本人の摂取量(=摂取目安量)に近づけるように食事改善の必要がある可能性があります。
また、食事が肉類に偏っている人ではオメガ3の不足というよりも飽和脂肪酸の過剰が心配されます。
この場合はオメガ3を足す、というよりも飽和脂肪酸を減らし、オメガ3を含む多価不飽和脂肪酸の割合を増やす必要があるかもしれません。
オメガ3のサプリの必要性
近年、オメガ3を配合したサプリメントが販売されているのを多く見かけます。
しかし、
- 通常の食生活を送っている日本人では欠乏症がみられない
- 生活習慣病リスク低減の意味では、飽和脂肪酸摂取量の低下も併せて行いたい
- サプリメントとして摂取した場合では、通常の食品から摂取した場合と同じ効果が得られるとはいえない
このような理由から、サプリメントという形でオメガ3を足す必要性は低いと考えられます。
オメガ3のダイエット効果
オメガ3がダイエットに効果的、とするメディアの情報も見受けられますが、現状、オメガ3の摂取によって体重減少がみられたとする信頼性の高い研究データは見当たりません。
ダイエット=体脂肪の減少には摂取エネルギーが消費エネルギーより小さくなることが必要です。
オメガ3も脂質の一部。いつもの食事に足すだけでは、摂取エネルギーを増やすだけなので注意しましょう。
まとめ
多価不飽和脂肪酸のうち、オメガ3に注目が集まっていますが、現時点では通常の食事から摂取できる量を超えて摂取した場合の健康効果ははっきりわかっていません。
今のところは、オメガ3はあくまで不飽和脂肪酸の一部として、脂質全体の摂取量に気を付けながら、適度に取り入れるのがよさそうです。
参考文献 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(n-3系脂肪酸について) 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 厚生労働省:「統合医療」情報発信サイト オメガ3脂肪酸について知っておくべき7つのこと Mensink RP, et al. Effect of dietary fatty acids on se-rum lipids and lipoproteins: A meta-analysis of 27 trials. Arterioscler Thromb 1992; 12: 911-9. |