投稿日: 2019.04.22 | 最終更新日: 2023.03.15

DHA・EPAとは?効果と摂取できる食品、サプリをとるべきか解説

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
青魚

魚の脂に含まれる栄養素として注目されている「DHA」「EPA」。

サプリメントに配合されていることも多い成分ですが、私たちの体にどのような効果があるのでしょうか?

DHA・EPAとは

DHA、EPAは略称であり、DHAは「ドコサヘキサエン酸」、EPAは「イコサペンタエン酸」が正式名称です。
人体の生命活動に必須の栄養素であり、食事から必ずとる必要がある「必須脂肪酸」です。

必須脂肪酸としての働き

DHAとEPAは脂質(あぶら、油脂)を構成する脂肪酸という物質のうち、多価不飽和脂肪酸、そのうちのオメガ3(n-3系脂肪酸)に属する成分です。

脂質の分類

オメガ3は、オメガ6とともにエイコサノイド(ホルモンのような物質)の材料になる成分で、全身の免疫機能の調整にかかわっています。

また、血中コレステロール値を下げる働きを持ち、生活習慣病(脂質異常症)予防にはたらくことが知られています。

エイコサノイドのバランスDHAとEPAを含むオメガ3として、飽和脂肪酸と置き換えた場合に心疾患の発症率・死亡率が低くなることから、健康的な油として注目されました。

オメガ3のはたらきと健康への効果について詳しく解説した記事はこちら

DHA・EPAの摂取源となる食品

魚を食べる子ども

オメガ3は植物油にも含まれていますが、DHAとEPAだけを見ると、魚類が主な摂取源となります。

EPAを多く含む食品

含有量 1食でとれる量
たいせいようさば(生) 1800㎎/100g 1800㎎(半身の1/2:100g)
みなみまぐろ(トロ) 1600㎎/100g 240㎎(寿司1貫分:15g)
しろさけ・イクラ 1600㎎/100g 270㎎(大さじ1:17g)
さんま(生) 1500㎎/100g 1500㎎(1匹150gの可食部:100g)

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成

※横スクロールで表全体の確認が可能です。

DHAを多く含む食品

含有量 1食でとれる量
みなみまぐろ(トロ) 4000㎎/100g 600㎎(寿司1貫分:15g)
たいせいようさば(生) 2600㎎/100g 2600㎎(半身の1/2:100g)
さんま(生) 2200㎎/100g 2200㎎(1匹150gの可食部:100g)
しろさけ・イクラ 2000㎎/100g 340㎎(大さじ1:17g)

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成

※横スクロールで表全体の確認が可能です。

無駄なく摂取するポイント

DHAとEPAは魚の脂に含まれています。
そのため、加熱によって脂が溶け出すと、口に入る量は生よりも少なくなってしまいます。

よって、DHAやEPAを無駄なくとりたい場合には脂が溶け出さない「生=刺身」が最も効率的な調理法といえそうです。

しかし、加熱したからといってDHAやEPAがまったくなくなってしまうわけではありませんので、好みの調理法で魚料理の頻度を上げるほうが取り入れやすい方法になるのではないでしょうか。

DHA・EPAの必要性

DHA・EPAのサプリメント

DHAとEPAは体に必要な栄養素ですが、DHAやEPAを豊富に含む魚の摂取量は年々減っているとの情報も。
私たちはDHAやEPAが不足しているのでしょうか?

必須脂肪酸としてはα-リノレン酸との合計量が重要

少々ややこしい話になりますが、DHAとEPAは必須脂肪酸であるオメガ3に分類されますが、必ずしもDHAとEPAだけで必要量を摂取しなければいけないわけではありません。

オメガ3と呼ばれる脂肪酸にはDHA、EPAのほかにα-リノレン酸という脂肪酸も含まれています。
α-リノレン酸からDHAやEPAをつくることができるため、これら3つの合計で十分な量をとれていれば問題ないというわけです。

私たち日本人は食事からのオメガ3の大部分をサラダ油や菜種油などの植物油に含まれるα-リノレン酸から摂取しており、DHAとEPAが占める割合は少ない*1)のが現状です。

また、血中コレステロール値の低下など、生活習慣病予防の観点ではDHA・EPAおよびオメガ3に限定せず、オメガ6を含む多価不飽和脂肪酸全体として、飽和脂肪酸に置き換えるようにしてとることが大事なようです。

DHA・EPAの不足による悪影響の報告はない

また、DHAやEPAおよびオメガ3として、「これくらいとらないと健康に悪影響がある」「これくらいとらないと生活習慣病予防にならない」という明確な数値はわかっていません。

また、通常の日本人の食生活ではDHA・EPAおよびオメガ3の欠乏による健康への影響はほとんど報告されていません。

よって、現代の日本人みんなが「DHA・EPA(及びオメガ3)が不足している」とは言えません。
反対に、世界的にみれば日本人はかなり多くDHAやEPAをとっているといわれ、一部の報告ではエネルギー比でアメリカ人の4倍ともいわれています。*1)*2)*3)

DHA・EPAサプリの必要性は低い

近年いろいろなところで販売されている「DHA・EPA」のサプリメント。
健康増進目的に摂取するメリットはあるのでしょうか?

上で述べた通り、通常の食生活をしている現代の日本人で欠乏症状が報告されていないため、よほど脂質を制限した食事をしていない限り、不足を心配してサプリメントをとる必要はありません。
また、生活習慣病予防の観点では、血中コレステロールの低下には、「飽和脂肪酸の摂取量減少と加えて」DHA・EPAを含む多価不飽和脂肪酸の摂取量を上げることが有効とされています。
食事内容の見直しをせず、サプリメントとしてのDHA・EPAを含む多価不飽和脂肪酸の追加摂取をするだけでは、単なる脂質及びエネルギーの追加摂取になりかねません。

また、サプリメントとして通常の食事以外から摂取されたものは、食品由来と同じように働くかはわからないという点も気を付けたいポイントです。

現時点では、血中コレステロール値が気になる人であっても、「まずサプリ」ではなく、普段の食事を見直すことが大事といえそうです。

脳の発達に対するDHAの効果

勉強をする子ども

魚を食べることによって脳やその働きの発達により良い効果はあるという話を聞いたことはないでしょうか?

DHAは脳をはじめとする神経組織の発育や機能の維持に大きくかかわることから、DHA、およびDHAを多く含む魚を食べることで、脳の発育や機能の向上に効果があるのでは…と考えられたようです。

しかし、魚やDHAを通常の食生活で食べる以上に食べたときに脳の働き(記憶力や知能など)が向上したというような「頭がよくなる」効果については、明確な有効性は示されていないのが現状です。

DHAを含むサプリメントの効果

通常の食材としての魚のほか、DHAや魚油を用いたサプリメントであっても、「頭をよくする」効果は証明されていないため、過信は禁物といえそうです。

不足しないように…とサプリメントを利用している場合もありますが、上で紹介した通り、DHAは植物油由来のn-3系脂肪酸から体内で合成することもできるため、魚の摂取量がさほど多くなくとも、通常の食事では不足の心配はありません。

体が著しく成長する子どもの場合、大人に比べてよりたくさんの栄養素が必要となる場合もありますが、脳の発達に関しては、基本的に余分にとるべき栄養素はありません。

子どもの脳を育てるために気を付けたいこと

子どもの脳やその働きの発達において、特別にとるべき栄養素というものはありませんが、子どもが脳を使って考えることを妨げないような体の状態は作ってあげたいですね。

健康が損なわれた状態で深く考えることや、勉強への集中力を保つことは大人でも難しいもの。
食事の面では、子どもが健康な状態を保てるように、お魚を含めいろいろな食材を用いたバランスの取れた食事を用意してあげることが大事です。

食事以外にも、十分に睡眠をとる、適度に運動をする…など、心身の健康を維持することが脳の働きを伸ばすためにも大事ではないでしょうか?

まとめ

DHAとEPAは体内で重要な役割を持ちますが、必ずしもDHA・EPAとして摂取する必要はないようです。

また、現在の日本人の食事では、サプリとしてDHAとEPAを摂取する必要性は低そうです。
生活習慣病リスクが気になるという人は、DHAとEPAだけに注目するのではなく、DHA・EPAを含む「多価不飽和脂肪酸」とリスクを高める「飽和脂肪酸」を意識して、食生活の見直しをするのが理想的です。

参考文献

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

*1)厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

*2)厚生労働省:「国民健康・栄養調査」

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(魚油、DHA、EPA、n-3系脂肪酸について)

厚生労働省:「統合医療」情報発信サイト オメガ3脂肪酸について知っておくべき7つのこと

吉田勉 監修:「わかりやすい食品機能栄養学」.三共出版,2010.

*3)Food and Nutrition Board. Dietary reference intakes, for energy, carbohydrate, fiber, fat, fatty acids, cholesterol, protein, and amino acids., National Academies Press : Washington, DC, 2005.

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。