
魚の脂に含まれる栄養素として注目されている「DHA」「EPA」。
サプリメントに配合されていることも多い成分ですが、私たちの体にどのような効果があるのでしょうか?
Contents
DHA・EPAとは…油の中で生活習慣病のリスクを下げる「オメガ3」の一部
DHA・EPAは必須脂肪酸「オメガ3」(n-3系脂肪酸)に属する成分
DHA、EPAは略称であり、DHAは「ドコサヘキサエン酸」、EPAは「イコサペンタエン酸」が正式名称です。
人体の生命活動に必須の栄養素であり、食事から必ずとる必要がある「必須脂肪酸」です。
オメガ3としてはエイコサノイドの材料となる・血中コレステロール値を下げる
DHAとEPAは脂質(あぶら、油脂)を構成する脂肪酸という物質のうち、多価不飽和脂肪酸、そのうちのオメガ3(n-3系脂肪酸)に属する成分です。
オメガ3は、オメガ6とともにエイコサノイド(ホルモンのような物質)の材料になる成分で、全身の免疫機能の調整にかかわっています。
また、血中コレステロール値を下げる働きを持ち、生活習慣病(脂質異常症)予防にはたらくことが知られています。
DHAとEPAを含むオメガ3として、飽和脂肪酸と置き換えた場合に心疾患の発症率・死亡率が低くなることから、健康的な油として注目されました。
オメガ3のはたらきと健康への効果について詳しく解説した記事はこちら |
どんな食品からとれる?効果的なとり方は?
DHA・EPAの主な摂取源は魚類
オメガ3は植物油にも含まれていますが、DHAとEPAだけを見ると、魚類が主な摂取源となります。
■EPAを多く含む食品
含有量 | 1食でとれる量 | |
たいせいようさば(生) | 1800㎎/100g | 1800㎎(半身の1/2:100g) |
みなみまぐろ(トロ) | 1600㎎/100g | 240㎎(寿司1貫分:15g) |
しろさけ・イクラ | 1600㎎/100g | 270㎎(大さじ1:17g) |
さんま(生) | 1500㎎/100g | 1500㎎(1匹150gの可食部:100g) |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
■DHAを多く含む食品
含有量 | 1食でとれる量 | |
みなみまぐろ(トロ) | 4000㎎/100g | 600㎎(寿司1貫分:15g) |
たいせいようさば(生) | 2600㎎/100g | 2600㎎(半身の1/2:100g) |
さんま(生) | 2200㎎/100g | 2200㎎(1匹150gの可食部:100g) |
しろさけ・イクラ | 2000㎎/100g | 340㎎(大さじ1:17g) |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
DHA・EPAを無駄なくとるなら…
DHAとEPAは魚の脂に含まれています。
そのため、加熱によって脂が溶け出すと、口に入る量は生よりも少なくなってしまいます。
よって、DHAやEPAを無駄なくとりたい場合には脂が溶け出さない「生=刺身」が最も効率的な調理法といえそうです。
しかし、加熱したからといってDHAやEPAがまったくなくなってしまうわけではありませんので、好みの調理法で魚料理の頻度を上げるほうが取り入れやすい方法になるのではないでしょうか。
DHAとEPAをもっととるべき?
DHAとEPAは体に必要な栄養素ですが、DHAやEPAを豊富に含む魚の摂取量は年々減っているとの情報も。
私たちはDHAやEPAが不足しているのでしょうか?
必須脂肪酸としてはDHA・EPAとして摂取しなければいけないわけではない
少々ややこしい話になりますが、DHAとEPAは必須脂肪酸であるオメガ3に分類されますが、必ずしもDHAとEPAだけで必要量を摂取しなければいけないわけではありません。
オメガ3と呼ばれる脂肪酸にはDHA、EPAのほかにα-リノレン酸という脂肪酸も含まれています。
α-リノレン酸からDHAやEPAをつくることができるため、これら3つの合計で十分な量をとれていれば問題ないというわけです。
私たち日本人は食事からのオメガ3の大部分をサラダ油や菜種油などの植物油に含まれるα-リノレン酸から摂取しており、DHAとEPAが占める割合は少ない*1)のが現状です。
*1)厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書より
また、血中コレステロール値の低下など、生活習慣病予防の観点ではDHA・EPAおよびオメガ3に限定せず、オメガ6を含む多価不飽和脂肪酸全体として、飽和脂肪酸に置き換えるようにしてとることが大事なようです。
現代日本人はDHA・EPAが不足気味??
また、DHAやEPAおよびオメガ3として、「これくらいとらないと健康に悪影響がある」「これくらいとらないと生活習慣病予防にならない」という明確な数値はわかっていません。
また、通常の日本人の食生活ではDHA・EPAおよびオメガ3の欠乏による健康への影響はほとんど報告されていません。
よって、現代の日本人みんなが「DHA・EPA(及びオメガ3)が不足している」とは言えません。
反対に、世界的にみれば日本人はかなり多くDHAやEPAをとっているといわれ、一部の報告ではエネルギー比でアメリカ人の4倍ともいわれています。*2)
*2)厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書、平成22年、平成23年「国民健康・栄養調査」の結果、Food and Nutrition Board. Dietary reference intakes, for energy, carbohydrate, fiber, fat, fatty acids, cholesterol, protein, and amino acids., National Academies Press : Washington, DC, 2005.より
サプリとして摂取するメリットはある?
近年いろいろなところで販売されている「DHA・EPA」のサプリメント。
健康増進目的に摂取するメリットはあるのでしょうか?
上で述べた通り、通常の食生活をしている現代の日本人で欠乏症状が報告されていないため、よほど脂質を制限した食事をしていない限り、不足を心配してサプリメントをとる必要はありません。
また、生活習慣病予防の観点では、血中コレステロールの低下には、「飽和脂肪酸の摂取量減少と加えて」DHA・EPAを含む多価不飽和脂肪酸の摂取量を上げることが有効とされています。
食事内容の見直しをせず、サプリメントとしてのDHA・EPAを含む多価不飽和脂肪酸の追加摂取をするだけでは、単なる脂質及びエネルギーの追加摂取になりかねません。
また、サプリメントとして通常の食事以外から摂取されたものは、食品由来と同じように働くかはわからないという点も気を付けたいポイントです。
現時点では、血中コレステロール値が気になる人であっても、「まずサプリ」ではなく、普段の食事を見直すことが大事といえそうです。
まとめ:食生活の見直しポイントのひとつとして意識してみよう
DHAとEPAは体内で重要な役割を持ちますが、必ずしもDHA・EPAとして摂取する必要はないようです。
また、現在の日本人の食事では、サプリとしてDHAとEPAを摂取する必要性は低そうです。
生活習慣病リスクが気になるという人は、DHAとEPAだけに注目するのではなく、DHA・EPAを含む「多価不飽和脂肪酸」とリスクを高める「飽和脂肪酸」を意識して、食生活の見直しをするのが理想的です。
参考文献 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(魚油、DHA、EPA、n-3系脂肪酸について) 厚生労働省:「統合医療」情報発信サイト オメガ3脂肪酸について知っておくべき7つのこと 吉田勉 監修:「わかりやすい食品機能栄養学」.三共出版,2010. Food and Nutrition Board. Dietary reference intakes, for energy, carbohydrate, fiber, fat, fatty acids, cholesterol, protein, and amino acids., National Academies Press : Washington, DC, 2005. |