2019.12.27

梅干しは「1日1粒で医者いらずの栄養効果」よりも食塩量に注意!

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
梅干し

「梅干しは1日1粒で医者いらず」ともいわれますが、小さな梅干しひとつで効果があるならぜひ試したいという人も少なくないのではないでしょうか。
梅干しに含まれるクエン酸の効果に期待する声は多いものの、反面、気になるのは梅干しに含まれる食塩の量です。
梅干しの効果と注意したいポイントについて、どちらをとるべきか、考えていきましょう。

梅干しパワーで風邪にもなりにくいって本当?

疲労回復に殺菌・抗菌作用?

梅干しの効果として紹介されることの多い「疲労回復作用」「殺菌・抗菌作用」による「風邪やインフルエンザの予防効果」

梅干しに含まれる成分に疲労回復作用や殺菌・抗菌作用があるといわれていますが、実際に病気にならない体づくりに役立つのでしょうか?

注目されているのはすっぱい味の本体「クエン酸」

梅干しに含まれる成分で、疲労回復作用や殺菌・抗菌作用が期待されているのはクエン酸やリンゴ酸。

クエン酸やリンゴ酸は「有機酸」と呼ばれるグループに属する成分で、酸味を持っています。
クエン酸はレモンなどの柑橘類にも含まれ、さわやかな酸味を示す成分です。

クエン酸で疲労回復?

クエン酸が豊富に含まれる梅

クエン酸そのものが疲労回復に効くというデータはない

梅干しに限らず、「クエン酸といえば疲労回復」といわれる場面が多いのではないでしょうか。

昔のスポーツ漫画にありがちな「差し入れのはちみつレモン(レモンのはちみつ漬け)」も疲労回復のイメージがありますね。

たしかに、疲れのたまった体よりも、疲れのない体のほうが病気になりにくい、というのは考えられやすいことだと思います。

しかし、実際には梅干しやレモンに含まれるクエン酸がヒトの疲労に対して効果があったとする研究データは今のところなく、「効くとは言えない」というのが実際のところのようです。

しっかり食べてエネルギー補給の助けに

梅干しに含まれるクエン酸そのものには疲労回復効果はないと考えますが、別のところで役立つポイントがありそうです。

梅干しは梅に含まれるクエン酸の酸味や、製造中に加える食塩の塩味によって食欲を増すことが考えられます。

疲れていたり風邪をひいていて食欲のない人が、梅干しのすっきりとした味でご飯をしっかり食べられれば、十分なエネルギー補給ができ、疲労を回復したり、風邪が治ったり…ということはありそうです。

クエン酸などの有機酸による殺菌・抗菌作用?

風邪と梅干しのイメージ

ウイルスを遠ざけて風邪予防できるか

では、殺菌・抗菌作用はどうでしょうか。
風邪やインフルエンザの原因となるウイルスを体から遠ざけることができれば、病気になりにくい、といえそうです。

殺菌・抗菌作用はあるけれど…

梅干しに含まれる有機酸(クエン酸やリンゴ酸)、ベンズアルデヒドや安息香酸(未熟な梅に含まれるシアン化合物の分解物)には殺菌・抗菌作用があることが知られています。

しかし、これらの殺菌作用は基本的にはこの成分が存在する場所のみに限られます。

風邪やインフルエンザの感染場所はノドの粘膜などがあげられますが、梅干しを食べてものどの粘膜に有機酸や安息香酸といった成分が長時間存在するとは考えにくいため、感染予防に実用的とは言いにくいでしょう。

お弁当の梅干しも、過信は禁物

やや話題はずれますが、梅干しは有機酸や安息香酸などのはたらきのほかに、食塩によって細菌等が利用できる水分が少ないために腐りにくいという特徴があります。

この特徴から、お弁当が傷むのを防ぐという目的で梅干しを入れるということもよくあるのではないでしょうか?

しかし、こちらも殺菌・抗菌作用が発揮されるのは「梅干し本体」および「梅干しが触れている部分」に限られると考えられます。

梅干しの殺菌作用

梅干しそのものがお弁当の腐敗の原因にはなりにくいものの、お弁当全体を腐りにくくしているとは考えにくいでしょう。
(白ごはんに梅干しをのせた日の丸ごはんよりも、刻んだ梅干を混ぜ込んだりしたほうが有機酸等がふれる範囲が大きいため、効果が異なるということはあるかもしれません)

お弁当に梅干しが入っていたとしても、やはりあまり高い温度の場所に長時間置くといったことは避けるべきです。

また、最近では市販の梅干しは昔ながらの梅干しよりも食塩濃度が少なく作られている場合が多く、梅干しそのものとしても、昔に比べると傷みやすくなっているようです。

1日何粒食べていい?

梅と塩分

健康効果への期待よりも、食塩過剰の不安

「1日1粒」といわれる梅干しですが、気になるのは食塩の量

食塩(塩化ナトリウム)の取りすぎは遺伝的体質や肥満、飲酒習慣と並んで高血圧のリスクを高める要因のひとつであり、世界的にも適切な範囲での摂取が望ましいとされる成分です。

日本人は世界と比べてもかなり多くの塩分を摂取しており、調査によっては男性で1日あたり10-12g、女性で1日あたり9-10gを摂取しているとのデータ*1)もあります。
*1)Keiko Asakura, Ken Uechi, Yuki Sasaki, Shizuko Masayasu and Satoshi Sasaki. Estimation of sodium and potassium intakes assessed by two 24 h urine collections in healthy Japanese adults: a nationwide study British Journal of Nutrition Volume 112, Issue 7 14 October 2014 , pp. 1195-1205

WHOが推奨する食塩の摂取量は男女ともに1日あたり5.0g未満ですが、この数値は日本人の現状と比べるとあまりに厳しいもの。

そのため、厚生労働省が定める日本人の食事摂取基準(2015年版)では、実施可能性を考慮した数値として、成人男性で1日あたり8.0g未満、成人女性で1日あたり7.0g未満の目標値が掲げられています。

梅干しの食塩量は、多くて1粒3gのものも

市販の梅干し80種類の塩分含有量を調査した報告*2)では、梅干しの食塩濃度は3~20%と幅があり、1粒に含まれる食塩の量は(大きさの違いもあるものの)0.1g~3.2gと大きな幅がありました。
*2)片山 直美, 蜂谷 奈都美. 梅に関する研究 美味技術研究会誌, 2008巻 11号 7-13(2008)

梅干しの塩分

1粒3gの食塩を含んだ梅干を単に普段の食事に足すだけでは、梅干しの健康効果どころか、生活習慣病のもととなる食塩の過剰摂取に拍車をかけてしまうことになります。

梅干しを食事に取り入れるのであれば、減塩タイプを選んだり、ほかの料理の食塩量を控えめにしたり、といった調節ができると安心ですね。

塩分摂取量に気を付けながら、おいしく食べましょう

風邪をひいたときにおかゆや雑炊に梅干しを入れるとさっぱり食べやすく、ということはあるでしょう。

日常的な塩分摂取の過多による影響を考えると、風邪などの病気に対する予防薬として1日一粒の梅干しを食べることよりも、手洗いやうがいといったことのほうがトータルでのメリットは大きそうです。

梅干しはさっぱりおいしい食材として、塩分取りすぎに気を付けながら楽しむのがいちばんのようです。

参考文献

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(クエン酸について)

Keiko Asakura, Ken Uechi, Yuki Sasaki, Shizuko Masayasu and Satoshi Sasaki. Estimation of sodium and potassium intakes assessed by two 24 h urine collections in healthy Japanese adults: a nationwide study British Journal of Nutrition Volume 112, Issue 7 14 October 2014 , pp. 1195-1205

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)」

片山 直美, 蜂谷 奈都美. 梅に関する研究 美味技術研究会誌, 2008巻 11号 7-13(2008)

World Health Organization:「Salt reduction」