
ここ数年、砂糖などの味付けがされていない「無糖の炭酸水」の人気が高まっています。
シュワシュワ、パチパチする炭酸の刺激が魅力ですが、健康によい、または悪いといったウワサも。
実際のところはどうなのでしょうか?炭酸水のはたらきについて紹介します。
Contents
炭酸水は普通の水とどう違う?
炭酸水は普通の水と比較して味わいは大きく異なりますが、実質的な違いはどこで、共通する特徴にはどんなものがあるのでしょうか。
炭酸水と水とで異なること
炭酸水が普通の水と異なるのは、二酸化炭素が溶け込んでいるというところ。
自然の中で水に二酸化炭素が溶け込んだ天然の炭酸水のほか、人工的に圧力をかけて二酸化炭素を溶かし込んだものに分けられます。
水に溶け込んだ二酸化炭素は炭酸という状態で存在するため、炭酸水は酸性を示します。
また、炭酸が溶けた状態では独特のパチパチ感のほかに、苦味のような味を感じますが、炭酸飲料に特有のパチパチとした刺激は発生した泡ではなく、水に溶けた「炭酸」による刺激なのだそうです。
炭酸水と水で共通すること
反対に、普通の水と同じところとしては、炭酸以外の成分のほとんどであり、カロリーや、溶け込んだミネラル分にはほとんど影響がありません。
製品によってミネラル分の量に差がありますが、これは炭酸水だからというよりも原料の水(またはミネラルウォーター)のミネラル分の差によるものです。
炭酸水は健康に良い、健康に悪い?噂のウソとホント
炭酸水には
- 疲労回復
- 血行促進
- 消化管を刺激する
- 歯や骨を溶かす
…といったウワサがあります。
健康に良いとも健康に悪いともいわれることがある炭酸水ですが、これらのウワサは本当でしょうか?
炭酸水は疲労回復によい?→ウソ
炭酸水に含まれる炭酸が、体内の疲労物質である乳酸を減らして疲労回復に…といったウワサがありますが、実際にはそのようなことはありません。
そもそも、体内の乳酸が「疲労物質」ということが誤りであり、いずれにしても炭酸水を飲んで疲労が回復するということはありません。
ただ、炭酸のシュワシュワ感や刺激によって気分転換ができる、という場合もあります。
明確なメカニズムはありませんが、気分転換に取り入れるのもいいかもしれませんね。
炭酸水を飲むと血行がよくなる?→ウソ
炭酸水を飲む、または口に含むことによって血行が促進される、というウワサがあります。
しかし、炭酸水を飲んだことによってこれらの効果があったという研究報告などは見つけられず、今のところこれらの効果はあまり期待できないようです。
炭酸の溶け込んだ温泉では疲労回復や血行促進が効能として紹介されることもありますが、飲むのとは別物と考えておいたほうがよさそうです。
炭酸水を飲むと胃腸を刺激する?→ホント
炭酸入りの飲み物を飲むとげっぷが出やすくなりませんか?
これは、炭酸水を飲むと炭酸の気泡で胃が膨れるため。
胃酸が逆流しやすい(逆流性食道炎など)人は炭酸水の飲みすぎは控えたほうがいいでしょう。
また、胃や腸に対して刺激を与えるため、便秘改善に働く一方で胃や腸に炎症や潰瘍がある人、過敏性腸症候群など、刺激に敏感な人はあまり適していない飲み物です。
いっぽうで、胃腸にトラブルのない人では食欲増進にはたらくことも知られており、自分の状況に合わせて取り入れるのがよさそうです。
炭酸水は歯や骨を溶かしてしまう?→ウソ
コーラなど、炭酸を含んだ清涼飲料水は歯や骨を溶かす、といわれることがあります。
炭酸を含んだ炭酸水は酸性の液体であり、水代わりに飲むことで歯が酸性のものに触れ続け、「酸蝕歯」という状態を引き起こすのではないかと心配されています。
しかし、味付けのしていない炭酸水の酸性度は高いものではなく、歯を溶かしてしまうほどのものではない、と報告*1)されています。
また、炭酸飲料と骨密度の関係を調べた研究*2)では、リンやカフェインを含まない炭酸飲料(≒炭酸水)を定期的に飲んだ場合でも、骨密度に有意な低下は見られなかった、とされています。
炭酸水の利点を生かした使い方
炭酸水は実際のところ期待されるような健康効果はあまりないようですが、利点がないという訳ではありません。
より健康になるために炭酸水を取り入れられるポイントを紹介します。
リフレッシュに
炭酸水の利点は、シュワシュワとした刺激ですっきりと飲めるところ。
刺激が苦手、という人はあえて炭酸水を選ぶ必要はありませんが、水分補給のタイミングだけでなく、気分転換・リフレッシュしたいときにも適した飲み物といえそうです。
炭酸ジュースから切り替えてカロリーオフ
コーラやサイダーのような、炭酸入りの清涼飲料水はおいしくてついつい手が伸びてしまいますが、習慣になってしまうと意外にも摂取エネルギーを引き上げる要因のひとつになります。
100mlあたり46kcal程度のものの場合、500ml1本ではおよそ230kcal。
1ヵ月あまり毎日飲み続けた場合では、炭酸入り清涼飲料から体脂肪1㎏分に相当するエネルギーを摂取することになります。
飲みものからのエネルギーを減らすのも立派なダイエットのひとつ。
ダイエット中だけど水やお茶では物足りない人でも取り入れやすく、比較的少ない負担で摂取エネルギーのカットに役立ちそうです。
炭酸水のダイエット効果について詳しく解説した記事はこちら
まとめ:炭酸水は健康に対して特別よいことも、悪いこともない
炭酸水の味わいは普通の水と比べると大きく異なりますが、体に与える影響はそれほど大きくは変わらないようです。
炭酸水の魅力はシュワシュワ感やパチパチとした刺激。
健康を目的に飲むよりも、炭酸水の風味を楽しむことを目的としたほうがいいかもしれません。
参考文献 山城 秋美・加賀山 あかり・鈴木 裕一.飲料に加えた炭酸が女子大学生の消化管機能や味覚に与える影響 仙台白百合女子大学紀要,20巻(2016) 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 *1)Parry J, Shaw L, Arnaud MJ, Smith AJ. Investigation of mineral waters and soft drinks in relation to dental erosion. J Oral Rehabil. 2001 Aug;28(8):766-72. *2)Katherine L Tucker, Kyoko Morita, Ning Qiao, Marian T Hannan, L Adrienne Cupples, Douglas P Kiel, Colas, but not other carbonated beverages, are associated with low bone mineral density in older women: The Framingham Osteoporosis Study, The American Journal of Clinical Nutrition, Volume 84, Issue 4, October 2006, Pages 936–942 |