ビタミンEは必須栄養素のひとつであり、健康維持のために適量の摂取が必要な成分です。
ビタミンEの働きと不足や過剰のリスク、1日あたりの摂取目安と摂取源となる食品、ビタミンEを配合したサプリメントの選び方について解説します。
Contents
ビタミンEとは
ビタミンEは脂溶性ビタミンに属すビタミンの一種で、8種類の物質がビタミンEに分類されています。
■ビタミンEの同族体
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このうち、私たちの体に存在するビタミンEのほとんどはα-トコフェロールが占めています。
また、食事から摂取されることが多いのはα-トコフェロールとγ-トコフェロールの2種ですが、ビタミンEとしての働きの強さ(生理活性)が異なり、α-トコフェロールを10とするとγ-トコフェロールは1に相当します。
このことから、摂取基準値などでは、ビタミンE=α-トコフェロールを指すことが多くなっています。
ビタミンEの働き・効果
ビタミンEは全身の細胞に存在するほか、神経伝達物質やホルモンの生成にかかわることで健康維持に役立っています。
具体的には、以下のような働きが知られています。
- 抗酸化作用
- 血流を良くする
- 生殖機能の維持
抗酸化作用
ビタミンEは過酸化脂質の生成や動脈硬化の進行を抑える働きを持ちます。
細胞膜を構成する脂質が酸化されてできる「過酸化脂質」は細胞の破壊や異常細胞の形成などの作用があり、細胞を老化させることが知られている物質です。
また、同じく脂質の一種である血中のLDLコレステロールが酸化されると、血管が硬くもろくなる「動脈硬化」が促進されることが知られています。
ビタミンEの働きにより過酸化脂質の生成やLDLコレステロールの酸化が抑えられることで、細胞の老化・がん・動脈硬化に対して予防的に働くと考えられています。
血流を良くする
ビタミンEは毛細血管を拡張して血液が流れやすくする働きが知られています。
血管の収縮を促す神経伝達物質の生成をビタミンEが抑えることで、血流を良くする作用があります。
生殖機能の維持
ビタミンEは性ホルモンの生成・分泌を通じて生殖機能を正常に保つ働きが知られています。
ビタミンEの不足や過剰摂取の影響
ビタミンEは健康維持のために食事などから一定以上の摂取が必要な「必須栄養素」のひとつです。
不足による健康への悪影響が知られているほか、必要な量を大きく超えてとりすぎた場合にも健康に悪い影響を及ぼすことが知られています。
ビタミンEが不足すると
通常の食生活を送っている場合には、ビタミンEの不足による健康障害は起こりにくいといわれています。
しかし、何らかの原因でビタミンEが長期間にわたって不足すると、赤血球が壊れやすくなったり、血管や全身の細胞膜の健康維持が難しくなったり、正常な生殖機能が維持されなくなったりします。
具体的には、以下のような影響が知られています。
- 溶血性貧血
- 動脈硬化のリスクが高まる
- 不妊や流産のリスクが高まる
ビタミンEを過剰摂取すると
ビタミンEを過剰摂取すると、ビタミンEの血流を良くする働きが強くなりすぎることのほか、全身に健康障害が現れることが知られています。
具体的には、以下のような影響が挙げられます。
- 出血しやすくなる
- 筋力の低下
- 疲労
- 吐き気
- 下痢
ビタミンEの過剰摂取による健康障害についても通常の食生活では起こりにくいとされていますが、サプリメントや強化食品のような、ビタミンEを濃縮したような食品では過剰症が起こる可能性があります。
ビタミンEの1日摂取量の目安
「健康維持のためにビタミンEはどのくらい必要か」「過剰摂取となるのはどのくらいか」については、存在する研究報告等がかなり古いなどの理由から、実ははっきりとは分かっていません。
そのため、厚生労働省が発表している日本人の食事摂取基準2020年版では、現在の日本人の平均的な摂取量であれば血液中のビタミンE濃度が問題のない範囲に収まることから、この数値をもとに摂取量の目安を設定しています。
ビタミンEの摂取目安量と耐容上限量
平成28年の国民健康・栄養調査では、20歳以上の男女におけるビタミンE摂取量の中央値は以下のようになっています。
- 男性(20歳以上)…6.4㎎/日
- 女性(20歳以上)…5.9㎎/日
日本人の食事摂取基準2020年版においては、各年齢区分・性別における摂取量中央値をもとに目安量が決められています。
また、主なビタミンEであるα-トコフェロールについて、体重62.2㎏の成人の場合、1日800㎎までなら健康障害が起こらないと考えられていることから、各年齢区分の体重に応じた値が耐容上限量として設定されています。
■ビタミンEの摂取基準値(男性)(目安量、耐容上限量)
年齢等 | 目安量 | 耐容上限量 |
0~5か月 | 3.0㎎ | – |
6~11か月 | 4.0㎎ | – |
1~2歳 | 3.0㎎ | 150㎎ |
3~5歳 | 4.0㎎ | 200㎎ |
6~7歳 | 5.0㎎ | 300㎎ |
8~9歳 | 5.0㎎ | 350㎎ |
10~11歳 | 5.5㎎ | 450㎎ |
12~14歳 | 6.5㎎ | 650㎎ |
15~17歳 | 7.0㎎ | 750㎎ |
18~29歳 | 6.0㎎ | 850㎎ |
30~49歳 | 6.0㎎ | 900㎎ |
50~64歳 | 7.0㎎ | 850㎎ |
65~74歳 | 7.0㎎ | 850㎎ |
75歳以上 | 6.5㎎ | 750㎎ |
厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 より作成
■ビタミンEの摂取基準値(女性)(目安量、耐容上限量)
年齢等 | 目安量 | 耐容上限量 |
0~5か月 | 3.0㎎ | – |
6~11か月 | 4.0㎎ | – |
1~2歳 | 3.0㎎ | 150㎎ |
3~5歳 | 4.0㎎ | 200㎎ |
6~7歳 | 5.0㎎ | 300㎎ |
8~9歳 | 5.0㎎ | 350㎎ |
10~11歳 | 5.5㎎ | 450㎎ |
12~14歳 | 6.0㎎ | 600㎎ |
15~17歳 | 5.5㎎ | 650㎎ |
18~29歳 | 5.0㎎ | 650㎎ |
30~49歳 | 5.5㎎ | 700㎎ |
50~64歳 | 6.0㎎ | 700㎎ |
65~74歳 | 6.5㎎ | 650㎎ |
75歳以上 | 6.5㎎ | 650㎎ |
妊婦 | 6.5㎎ | – |
授乳婦 | 7.0㎎ | – |
厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 より作成
日本人のビタミンE摂取状況
令和元年の国民健康・栄養調査では、20歳以上の男女におけるビタミンE摂取量の中央値は以下のようになっています。
- 男性(20歳以上)…6.6㎎/日
- 女性(20歳以上)…6.0㎎/日
食事摂取基準のもととなったデータは平成28年のものですが、令和元年についても摂取量に大きな差はありません。
日本人の平均的な食生活の場合には、ビタミンEの栄養状態に問題がないであろう量が摂取できていると考えることができそうです。
ビタミンEを多く含む食べ物
ビタミンEの主な摂取源となる食品は、以下のものが代表的です。
- 野菜類
- 油脂類
- 魚介類
- 種実類
このほか、量は少ないですが、調味料類、穀類、卵類などの食材からもビタミンEを摂取することができます。
野菜類
野菜類は多くの種類でビタミンEを含み、ビタミンEの最も主要な摂取源となる食品グループです。
野菜に含まれる一部のビタミンはゆでることで水に溶けだして摂取量が減ってしまうものもありますが、ビタミンEは脂溶性であるため水に溶けだしにくく、茹でたりしても損失しにくい特徴があります。
■野菜類のビタミンE含有量(100gあたり)
食品名 | ビタミンE含有量* |
モロヘイヤ | 6.5㎎ |
西洋かぼちゃ | 4.9㎎ |
赤ピーマン(赤パプリカ) | 4.3㎎ |
豆苗(生) | 3.3㎎ |
オレンジピーマン(パプリカ) | 3.1㎎ |
ブロッコリー(生) | 3.0㎎ |
菜の花(生) | 2.9㎎ |
*α-トコフェロールとして
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成
ビタミンE摂取源となる食品の中でも、野菜類は重さあたりのエネルギーが低いのが特徴です。
たっぷりの野菜を食べることで摂取エネルギーを抑えながら必要なビタミンEを摂取できるのが魅力といえそうです。
油脂類
油脂類は重さあたりのビタミンE含有量が高く、少ない使用量でもビタミンEを摂取できるのが特徴です。
■油脂類のビタミンE含有量(100gあたり)
食品名 | ビタミンE含有量* |
ひまわり油 | 39.0㎎ |
グレープシードオイル | 28.0㎎ |
べにばな油(サフラワーオイル) | 27.0㎎ |
こめ油 | 26.0㎎ |
コーン油 | 17.0㎎ |
ファットスプレッド | 16.0㎎ |
マーガリン | 15.0㎎ |
なたね油(キャノーラ油) | 15.0㎎ |
サラダ油(なたね・大豆調合油) | 13.0㎎ |
*α-トコフェロールとして
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成
油脂類の中でも特に植物油に多く含まれています。
油脂類はエネルギーも高いため、単体をそのまま摂取する必要はありませんが、調理油として適量を取り入れることでビタミンEも摂取することができそうです。
魚介類
魚介類も多くの種類でビタミンEを含み、ビタミンEの主要な摂取源のひとつとなっています。
■魚介類のビタミンE含有量(100gあたり)
食品名 | ビタミンE含有量* |
あんこうのきも(生) | 14.0㎎ |
鮭すじこ | 11.0㎎ |
鮭いくら | 9.1㎎ |
うなぎ(生) | 7.4㎎ |
たらこ(生) | 7.1㎎ |
サーモントラウト(にじます)(養殖・生) | 5.5㎎ |
ぶり・はまち(養殖・生) | 5.5㎎ |
*α-トコフェロールとして
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成
内臓(きも)や魚卵で含有量の高さが目立つものの、身にも一定レベル以上含まれています。
含有量の高いものを意識してとるよりも、魚介類からいろいろなものを適量摂取するのがよいでしょう。
種実類(ナッツ類)
日常的な摂取源としてはあまり大きい割合を占めるものではないものの、ナッツ類の一部は重さあたりの含有量が比較的高く、ビタミンEのイメージが強い食品群といえます。
■種実類のビタミンE含有量(100gあたり)
食品名 | ビタミンE含有量* |
アーモンド(煎り、無塩) | 29.0㎎ |
松の実(煎り) | 12.0㎎ |
落花生(煎り) | 11.0㎎ |
ピスタチオ(煎り、味付き) | 1.4㎎ |
くるみ(煎り) | 1.2㎎ |
*α-トコフェロールとして
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 より作成
ナッツ類は種類によってビタミンE含有量の差が大きいのが特徴です。
ビタミンE含有量が特に多いのはアーモンドとなっています。
近年ではアーモンドミルクも人気ですが、実はアーモンド由来のビタミンEは少なく、市販のアーモンドミルクに含まれるビタミンEは後から添加されたものが多くなっています。
アーモンドミルクについて詳しく解説した記事はこちら
ビタミンEのサプリメントについて
ビタミンEは抗酸化作用による細胞の老化防止などの働きを持つことから、サプリメントの素材としても人気の高い栄養素です。
日本人の平均的な食生活では、基本的にビタミンEのサプリメントによる摂取の必要はありませんが、あえて取り入れたい!という場合には、健康リスクを避ける取り入れ方をすることをおすすめします。
基本的には必要なし
日本人の平均的な食生活を送っている場合にビタミンEの不足による健康障害のリスクは低く、食事摂取基準2020年版においても摂取目安量は日本人の摂取量の中央値から設定されています。
食事から摂取する以上のビタミンEをサプリメントから摂取することのメリットについてはまだはっきりとは分かっておらず、現時点において明確な効果を期待して取り入れるのはオススメしません。
選ぶなら単一成分のものがおすすめ
明確な効果は期待できずともビタミンEの配合されたサプリメントを取り入れたい、という場合には、健康リスクを起こしにくいシンプルな配合のものを選び、過剰症に注意しながら取り入れましょう。
ビタミンEだけでなくほかの様々な栄養素や有効成分と称するものが含まれたサプリメントはお得に感じられますが、精製・濃縮された成分による過剰摂取や成分同士の相互作用による健康障害のリスクが高まるため、必要のない成分は摂取しないほうが安心です。
具体的な選び方としては、以下のポイントに気を付けてサプリメントを選択・摂取するようにしましょう。
- ビタミンEのみが配合されたものを選ぶ
- ほかの食品やサプリと合わせて1日あたりのビタミンE摂取量が耐容上限量に収まるようにする
まとめ
ビタミンEは抗酸化作用により全身の細胞の老化の予防、身体機能の維持に役立つ栄養素です。
不足することでおこる欠乏症には溶血性貧血が知られているほか、動脈硬化・不妊・流産のリスクが高まると考えられています。
また、サプリメントなどによる過剰摂取では、出血が起こりやすくなるなどの全身の健康に不調が現れます。
日本人の平均的な食生活では、ビタミンEの不足や過剰は起こりにくいとされています。
ビタミンEの摂取源となる食品には野菜類、油脂類、魚介類などがあり、不足や過剰を防ぐためには、いろいろな食材を偏りなく食べることが大切です。
サプリメントとしての摂取の必要性はあまりありませんが、取り入れる場合には特定の成分の過剰摂取や成分同士の相互作用による健康障害を避けるため、ビタミンEのみが配合されたものを選び、摂取量に注意するようにしましょう。
ビタミンEだけでなくそのほかの栄養素も過不足なくとるために、バランスの取れた食生活を心掛けたいですね。
バランスのとれた食生活のポイントについて詳しく解説した記事はこちら
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参考文献 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 吉田勉 監修. わかりやすい食品機能栄養学. 三共出版, 2010. 上西一弘. 食品成分最新ガイド 栄養素の通になる 第5版. 女子栄養大学出版部, 2022.8 |