
近年、健康的な食品として注目度が高まっているナッツ類ですが、具体的にはどのような点が健康に良いのでしょうか?
ナッツに含まれる栄養素とナッツと健康の関係について紹介します。
Contents
ナッツ5種類の栄養素比較
ナッツ、といっても種類はたくさん。
今回は比較的食べる機会の多い5種に絞り、栄養価とその特徴をみていきましょう。
■ナッツ5種の栄養成分値
エネルギー | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | 食物繊維 | |
アーモンド(いり) | 608kcal | 20.3g | 54.1g | 20.7g | 11.0g |
くるみ(いり) | 674kcal | 14.6g | 68.8g | 11.7g | 7.5g |
らっかせい(いり) | 588kcal | 25.0g | 49.6g | 21.3g | 11.4g |
ピスタチオ(いり・味付) | 615kcal | 17.4g | 56.1g | 20.9g | 9.2g |
マカダミアナッツ(いり・味付) | 720kcal | 8.3g | 76.7g | 12.2g | 6.2g |
*100gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
ひとくくりにナッツといっても、それぞれ別の植物からとれるものであるため、栄養成分値はまちまちです。
ナッツ全体の傾向としては、50-75%前後を脂質が占める高脂質・高カロリーな食品です。
また、脂質の中でも不飽和脂肪酸の割合が多いのが共通した特徴です。
そのほか、それぞれのナッツに含まれる栄養素の特徴は以下の通り。
いちどの食事で100gものナッツを食べる機会は少ないため、15gあたりの栄養素量を紹介します。
アーモンド
アーモンド(いり) | 食事摂取基準比(18-64歳女性) | |
エネルギー | 91kcal | – |
ビタミンE | 4.3㎎ | 72-86%(目安量) |
ビタミンB2 | 0.16㎎ | 13%(推奨量) |
ナイアシン | 1.13㎎ | 9-10%(推奨量) |
マグネシウム | 47㎎ | 16-17%(推奨量) |
*15gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
アーモンドはビタミンEが特に多いのが特徴です。
そのほかビタミンB2やナイアシン、マグネシウムなどのビタミン・ミネラルが豊富に含まれます。
くるみ
くるみ(いり) | 食事摂取基準比(18-64歳女性) | |
エネルギー | 101kcal | – |
脂質 | 10.3g | – |
多価不飽和脂肪酸 | 7.54g | – |
うちn-3系 | 1.34g | 70-84%(目安量) |
うちn-6系 | 6.20g | 78%(目安量) |
*15gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
くるみは多価不飽和脂肪酸が豊富で、15gで必須脂肪酸の1日目安量の大半を摂取することができます。
多価不飽和脂肪酸は通常の食生活では不足するものではありませんが、脂質の摂取量が少ない食生活の人にとっては、必須脂肪酸の手軽な摂取源となりそうです。
ピスタチオ
ピスタチオ(いり・味付) | 食事摂取基準比(18-64歳女性) | |
エネルギー | 92kcal | – |
カリウム | 150㎎ | 6%(目標量) |
ビタミンB1 | 0.06㎎ | 5%(推奨量) |
ビタミンB6 | 0.18㎎ | 16%(推奨量) |
*15gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
ピスタチオはカリウム、ビタミンB1、ビタミンB6を比較的多く含んでいます。
少量で1日に必要な分がとれる…といったものではありませんが、栄養素の摂取量をある程度底上げすることができそうです。
マカダミアナッツ
マカダミアナッツ(いり・味付) | 食事摂取基準比(18-64歳女性) | |
エネルギー | 108kcal | – |
脂質 | 11.5g | – |
*15gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
マカダミアナッツはナッツ類の中でも特に脂質が多く、76%を脂質が占めているのが特徴です。
そのため、重さあたりのエネルギーはバターに匹敵するほど。
とはいえバターと比較すると不飽和脂肪酸の割合が多く(バター29%⇔マカダミア83%)、生活習慣病のリスクにつながりにくい油といえそうです。
ピーナッツ(らっかせい)
らっかせい(いり) | 食事摂取基準比(18-64歳女性) | |
エネルギー | 88kcal | – |
ナイアシン | 4.1㎎ | 34-37%(推奨量) |
ビオチン | 15.8㎍ | 32%(目安量) |
*15gあたり、日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成 |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
落花生は正確には豆の1種ですが、栄養素の特徴がナッツ類に近いため、ナッツ類として分類されています。
脂質のほか、ナイアシン、ビオチンといったビタミンが多く含まれています。
ナッツは健康的な食品?
ナッツは全体として脂質が多く高カロリーな食品ですが、それぞれ多様に栄養素を含んでいるようです。
ナッツ類は健康的な食品といわれますが、それはどの点を指しているのでしょうか?
ナッツと健康についての研究報告を紹介しながら、健康への役立て方を紹介します。
ナッツを毎日食べる人は健康的?
ナッツを毎日食べる人は全く食べない人と比較して、全死亡リスクが20%軽減するという研究報告*)が発表されています。
*)Bao Y, Han J, Hu FB, Giovannucci EL, Stampfer MJ, Willett WC, Fuchs CS. Association of nut consumption with total and cause-specific mortality. N Engl J Med. 2013 Nov 21;369(21):2001-11.
この研究はアメリカで12万人を対象に行われたもので、ナッツを頻繁に食べる人ほど
|
という傾向がみられたと報告されています。
また、ナッツを全く食べなかった人を1とした場合の死亡率(BMIや生活習慣などの影響は調整済み)では、
|
といった結果が得られたとしています。
この研究では、対象がアメリカ人であるために日本人にも同じような傾向があるのかは分からず、また、ナッツのどのような要素(栄養素、食品成分やそのバランスなど)がどのように健康に影響しているのかはわかりませんが、ナッツを食べることは(理由はよくわかっていないものの)健康的な食習慣のひとつ、といえるかもしれません。
脂質が多く高カロリーなので食べすぎ注意
とはいえ、「ナッツはいくら食べても大丈夫」、または「ナッツを食べてさえいればほかの食事はどんなものでも大丈夫」ということではありません。
ナッツ類全体としていえるのは、脂質が多く、カロリーが高い食品であること。
いくら健康によいらしいと言っても、食べすぎれば摂取エネルギーの過剰や栄養素のバランスの偏りの原因にもなります。
ナッツ類の「摂取目安量」となる指標はありませんが、間食として食べる場合には1日200kcalまでがひとつの目安になりそうです。
(食事バランスガイドにおける菓子・嗜好飲料の目安…1日200kcalまで)
ナッツとダイエットの関係について詳しく解説した記事はこちら
健康的なナッツの選び方
健康のためにナッツを食べるのであれば、フライ・味付きのものより素焼きのものを選ぶのが正解です。
ナッツは製品によって栄養価が異なり、油で揚げてあるものはエネルギーが上乗せされ、味付けされているものは塩分摂取量が多くなりがちです。
ナッツはもともと脂質が多いものであることに加え、日本人は塩分をとりすぎている人が多いことからも、健康のためにナッツを取り入れるのであれば、揚げたものや味付けしたものではなく、素焼きのものがおすすめです。
まとめ
ナッツは健康的な食生活の一部になるようですが、「ナッツさえあれば」ということはありません。
バランスのとれた食事や適度な運動など、健康的な生活習慣のあくまで一部として、適度に取り入れるのがよさそうです。
参考文献 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 Bao Y, Han J, Hu FB, Giovannucci EL, Stampfer MJ, Willett WC, Fuchs CS. Association of nut consumption with total and cause-specific mortality. N Engl J Med. 2013 Nov 21;369(21):2001-11. 社団法人日本栄養士会監修:「食事バランスガイド」を活用した栄養教育・食育実践マニュアル.第一出版,2011. |