2019.07.19

ラム肉の栄養って?L-カルニチンがダイエットに効果的って本当?

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ラム肉のロースト

鶏肉や豚肉、牛肉に比べるとまだまだ一般的ではないものの、近年ではラム肉を使ったジンギスカンやステーキ、煮込み料理などを食べる機会も増えてきました。
また、ラム肉はほかのお肉に比べて健康的で、ダイエットにも効果的という話まであります。
今回はラム肉の栄養素、ダイエット効果について解説します。

ラム肉の栄養素

ラムは「子羊の肉」

ラム肉は「ひつじ」のお肉です。

羊肉の中でも、生後およそ12か月未満の羊の肉のみを「ラム」といいます。
ラム肉に対して、生後12か月以上の羊の肉は「マトン」と呼ばれます。

ラム肉の栄養成分データ

ラム肉の部位別の栄養成分を表にしました。
それぞれの特徴は次に解説します。

ラム・もも
脂身付き・生
ラム・肩
脂身付き・生
ラム・ロース
脂身付き・生
エネルギー 198kcal 233kcal 310kcal
たんぱく質 20.0g 17.1g 15.6g
脂質 12.0g 17.1g 25.9g
炭水化物 0.3g 0.1g 0.2g
鉄分 2.0mg 2.2mg 1.2mg
亜鉛 3.1mg 5.0mg 2.6mg
ビタミンB1 0.18mg 0.13mg 0.12mg
ビタミンB2 0.27mg 0.26mg 0.16mg
ビタミンB12 1.8㎍ 2.0㎍ 1.4㎍
飽和脂肪酸 4.91g 7.62g 11.73g
一価不飽和脂肪酸 4.39g 6.36g 9.52g
多価不飽和脂肪酸 0.52g 0.61g 0.87g
*100gあたり

※横スクロールで表全体の確認が可能です。

部位によって味や用途、栄養価もちがう

ラムの部位

もも

脂肪が少なく、やわらかい部分はステーキやローストに、固い部分は煮込み料理に使われることが多いようです。

エネルギー(カロリー)としてはもっとも少なく、脂質が少ない分、たんぱく質が多いのが特徴です。

ももと比較すると脂肪が多く、そのため特有のにおいが強いのが特徴です。
かための肉質であるため、煮込み料理に適しています。

脂質が多い分エネルギー(カロリー)も比較的高めになりますが、鉄や亜鉛の量が多いのも特徴です。

ロース

肉質がやわらかい、最高級の部位です。
骨付きのロース肉は「ラムチョップ」とも呼ばれ、骨付きのままローストやステーキに使われます。

脂質が最も多く、高カロリーな部位です。

ラムとマトンの比較

ラムとマトンの違いで大きなポイントのひとつが、その風味の強さ。
一般的にマトンのほうが特有のにおいが強く、苦手とする人が多いようです。
ラムが好まれるのはクセの少なさが理由のひとつだといえそうです。

成長に伴って成分も変わる

同じ部位であっても、ラムとマトンでは栄養素の含有量にも違いがあります。

ラム・もも
脂身付き・生
マトン・もも
脂身付き・生
エネルギー 198kcal 224kcal
たんぱく質 20.0g 18.8g
脂質 12.0g 15.3g
炭水化物 0.3g 0.1g
鉄分 2.0mg 2.5mg
亜鉛 3.1mg 3.4mg
ビタミンB1 0.18mg 0.14mg
ビタミンB2 0.27mg 0.33mg
ビタミンB12 1.8㎍ 1.6㎍
飽和脂肪酸 4.91g 6.88g
一価不飽和脂肪酸 4.39g 5.53g
多価不飽和脂肪酸 0.52g 0.57g
*100gあたり・生

※横スクロールで表全体の確認が可能です。

もも

同じもも肉でも、マトンのほうが脂質の割合が増えるため、やや高カロリーになります。
また、マトンになると鉄分や亜鉛の含有量が少し増えます。

ラム・ロース
脂身付き・生
マトン・ロース
脂身付き・生
エネルギー 310kcal 225kcal
たんぱく質 15.6g 19.8g
脂質 25.9g 15.0g
炭水化物 0.2g 0.2g
鉄分 1.2mg 2.7mg
亜鉛 2.6mg 2.5mg
ビタミンB1 0.12mg 0.16mg
ビタミンB2 0.16mg 0.21mg
ビタミンB12 1.4㎍ 1.3㎍
飽和脂肪酸 11.73g 6.80g
一価不飽和脂肪酸 9.52g 5.52g
多価不飽和脂肪酸 0.87g 0.50g
*100gあたり

※横スクロールで表全体の確認が可能です。

ロース

もも肉とは反対に、ロース肉ではマトンのほうが脂質が少なく、タンパク質が多く、低エネルギー(カロリー)になります。
ラムロースは鉄分があまり多くありませんが、マトンになると鉄分が倍増する点が特徴的です。

ほかのお肉と比較

ジンギスカン

ラム肉は栄養たっぷり?

輸入ラム肉をPRするウェブサイトでは、ラム肉は

・たんぱく質
・鉄
・亜鉛
・ビタミンB12
・n-3系不飽和脂肪酸

が豊富であると紹介されています。
鶏肉や豚肉、牛肉といったほかのお肉と比べる場合にどうか、比較していきましょう。

栄養素データの比較

比較的どのお肉でも使う機会の多い「もも」について比較します。

ラム・もも
脂身付き・生
鶏・もも
皮付き・生
豚・もも
脂身付き・生
輸入牛・もも
脂身付き・生
国産牛・もも
脂身付き・生
エネルギー 198kcal 204kcal 183kcal 165kcal 209kcal
たんぱく質 20.0g 16.6g 20.5g 19.6g 19.5g
脂質 12.0g 14.2g  10.2g 8.6g 13.3g
炭水化物 0.3g 0g 0.2g 0.4g 0.4g
鉄分 2.0mg 0.6mg 0.7mg 2.4mg 1.4mg
亜鉛 3.1mg 1.6mg 2.0g 3.8mg 4.5mg
ビタミンB1 0.18mg 0.10mg 0.90mg 0.08mg 0.08mg
ビタミンB2 0.27mg 0.15mg 0.21mg 0.19mg 0.20mg
ビタミンB12 1.8㎍ 0.3㎍ 0.3㎍ 1.5㎍ 1.2㎍
飽和脂肪酸 4.91g 4.37g 3.59g 3.22g 5.11g
一価不飽和脂肪酸 4.39g 6.71g 4.24g 3.69g 6.39g
多価不飽和脂肪酸 0.52g 1.85g 1.24g 0.25g 0.56g
n-3系脂肪酸 0.18g 0.09g 0.06g 0.05g 0.02g
*100gあたり

※横スクロールで表全体の確認が可能です。

たんぱく質は平均的

ラム肉はたんぱく質を豊富に含む食品といえますが、タンパク質の含有量に関して言えばほかの肉類ともあまり差はありません。

たんぱく質の摂取源としては、赤身の部分や脂肪の量が同程度であれば、どのお肉を選んでも大体同じくらいのタンパク質が取れます。

鉄は牛赤身肉とともによい摂取源

赤身の多い輸入牛肉に次いで、ラム肉は鉄分を豊富に含有しています。

鉄分は吸収率が悪く、月経のある女性では不足しがちな栄養素です。
野菜などに含まれる鉄分に比べると、肉類に含まれる鉄分は吸収されやすいのが特徴です。

赤身の牛肉と合わせて、ラム肉は鉄分の優秀な摂取源となりそうです。

亜鉛も牛肉に次いで豊富

DNA・たんぱく質の合成や、体内のさまざまな機能を健康に保つのに必要な亜鉛。
不足しがちな栄養素というわけではありませんが、亜鉛が比較的豊富に含まれている点はラム肉の魅力のひとつといえます。

ビタミンB12は100gで1日の2/3がとれる

ビタミンB12は動物性食品でしかほとんどとることができない栄養素です。
100gのラムのもも肉では、成人男女の1日推奨量の2/3をまかなうことができます。

n-3系不飽和脂肪酸は肉の中では多いけど…

血中コレステロールを低下する作用があるとして注目されているn-3系脂肪酸は魚が代表的な摂取源ですが、ラム肉は肉類としては比較的豊富に含んでいます。
とはいえ、やはり魚に比べるのその含有量は少なく(例:鮭100gで0.92g/ラムもも肉100gで0.18g)、n-3系脂肪酸を摂取する目的でラム肉を食べるというのはあまり効率的ではないかもしれません。

ラム肉がダイエットに効果ありって本当?

生のラム肉

ラム肉がダイエットに効果的、という話を聞いたことがあるでしょうか。
テレビやネット記事では、ラム肉の脂肪は吸収されにくく、また、L-カルニチンという成分が脂肪の燃焼を助けてくれるためにダイエットに効果が期待できるとのこと。

ラム肉を食事に取り入れることでダイエットが可能ならとても魅力的な話ですが、本当でしょうか?
実際にはどのくらい効果があるのか調べてみました。

エネルギー(カロリー)に関しては一般的な肉類とさほど変わらない

一般的なお肉と比べてラム肉が低カロリーなお肉であると紹介されていることがあります。
しかし、上で紹介した通り、ラム肉のエネルギーは部位によっても大きく差があり、脂身の多い部位ではエネルギーが高くなりやすいですし、反対に赤身の多い部位ではエネルギーが低くなりやすいといえます。

豚肉や牛肉と脂質やたんぱく質の量にさほど違いはないため、ラム肉がほかのお肉と比べて特別に低エネルギーということはありません。

脂肪が吸収されにくい?

ラム肉の脂肪分は融点が高く、ヒトの体温では溶けにくいために消化吸収されずに排泄される割合が高く、太りにくいお肉だという解説を行うメディアもあります。
たしかに、比較的に飽和脂肪酸の多い羊の脂は融点が高い特徴があります。

融点
鶏脂 30-32℃
豚脂 33-46℃
牛脂 40-50℃
羊脂 44-55℃

融点の高い油脂は消化管の中で溶けにくく、消化吸収率に影響を与えることが分かっています。
常温で液体の植物性油脂や、融点の比較的低い豚の脂(ラード)の消化吸収率はほぼ100%であるのに対し、ラム肉に含まれる羊の脂の消化吸収率は80%程度にとどまるともいわれます。

とはいえ、この20%の差がどの程度のエネルギー(カロリー)の差になるのでしょうか。
例として、ラム肉のももと豚肉のももについて比較してみましょう。

ラム肉(もも)の脂質…100gあたり12.0g
消化吸収される脂質の量は12.0g×0.8(80%)=9.6g
消化吸収される脂質のカロリーは9.6g×9kcal=86.4kcal

豚肉(もも)の脂質…100gあたり10.2g
消化吸収される脂質の量は10.2×1.0(100%)=10.2g
消化吸収される脂質のカロリーは10.2g×9kcal=91.8kcal

確かに、ラム肉のほうが吸収される脂質の量が減り、カロリーが低くなりそうです。
とはいえ、その差はわずか100gあたり5kcal。
ダイエットに効果があるほどのものとはとても言えません。

また、消化吸収しにくい油というのは消化管の負担になりやすいため、胃もたれや下痢の原因にもなります。

カルニチンが脂肪燃焼に効果?

ラム肉がダイエットにいいとされる理由のひとつが、L-カルニチンという成分です。
L-カルニチンは脂質をエネルギーに変える機能にかかわる成分であるため、L-カルニチンを豊富に含むラム肉を食べることで体内の脂質の消費を高めてくれるのではと期待されているようです。

ヒトにおいての効果は不十分

ラットを使った実験では、高カロリーな食事と、運動を組み合わせたうえでカルニチンの摂取によって体重の増加が抑えられたとの報告があります。
しかし、ヒトでの試験ではラム肉に含まれるよりも多量の(サプリメントのような状態の)L-カルニチンを摂取しても体重が減った、消費カロリーが増えたといった効果は得られていません。

L-カルニチンという成分単体においても、ラム肉においても、現時点では脂肪の燃焼を助けてダイエットに効果があるとは言いにくいでしょう。

たんぱく質(アミノ酸)から必要量が合成される

また、L-カルニチンは必須アミノ酸から必要な量が体内で作られるため、十分な量のたんぱく質を摂取していれば不足するようなことはありません。
ラム肉に限らず、肉類や魚類、卵などを適度に摂取することで体内において十分な量がつくられますので、サプリメントからわざわざ摂取する必要はありません。

ラム肉は食べすぎOKな食材ではない

ラム肉にいくら良い成分が含まれていても、摂取したカロリーがなかったことになるわけではありませんし、食べるほどにやせるものでもありません。
ダイエットのためには「適度の食事」と「適度の運動」が重要です。

まとめ

ラム肉は鉄分・亜鉛・ビタミンB12が豊富なたんぱく質食品

ラム肉はほかの肉類と同じく、良質なたんぱく質源です。
また、牛肉と並んで鉄分、亜鉛、ビタミンB12が豊富な食品です。

カロリーや脂質の量はほかのお肉と大差はない

脂質やたんぱく質の組成はほかのお肉と同じように部位によって大きな差があります。
カロリーが気になるときは脂身の少ない部分を選ぶといいですね。

脂質のエネルギー代謝にかかわる成分は含まれるものの、食べるだけでダイエット効果があるとは言えない

ダイエット効果が注目されることもありますが、人間の体でダイエット効果があることは確認されていません。

おいしく適度にラム肉を食べましょう

ラム肉は栄養素の豊富な食品ですが、それだけでは健康になれる食品ではありません。
ほかの食事や生活習慣を整えていく中で、食材のひとつとして取り入れられるといいですね。

参考文献

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

日本ハム:「羊肉の基礎知識」

オージー・ラム公式サイト:「元気なラム肉のヒミツ」

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報「アセチル-L-カルニチン」

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報「カルニチン」

厚生労働省「統合医療」情報発信サイト:「カルニチン」

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