
「飲む点滴」「飲む美容液」とも呼ばれ、健康効果や美容効果が期待されている「甘酒」。
甘酒を取り入れることでどのような効果が期待できるのでしょうか?
甘酒による健康面と美容面、それぞれの効果をまとめました。
Contents
飲む点滴=体が弱った時の栄養補給に◎
消化吸収に優れた糖質エネルギー源
甘酒の主成分は糖質。
原料のお米由来の糖質(でんぷん)がコウジカビのはたらきによってオリゴ糖やブドウ糖に分解されているために、「消化吸収に優れている」という利点があります。
通常、ヒトがご飯を食べると、体内で糖質(でんぷん)の鎖をバラバラにしてから(消化)、体の中に取り込みます(吸収)。
いっぽう、甘酒はコウジカビがあらかじめ糖質を分解していてくれるため、同じ量のでんぷんをとるよりも、体内で消化する負担が減る、と考えることができます。
胃腸の疲れた時に最適
消化吸収にかかる負担が減るため、甘酒は胃腸が弱っているときや、素早くエネルギー補給をしたいときに便利な食品と言えるでしょう。
飲む点滴と言われる理由はここにあります。
実際に、江戸時代にはその消化吸収の良さからか、疲労回復と栄養補給にすぐれた食品として夏バテ防止のために親しまれていたそうです。
飲む美容液=美肌効果がある…かも。
麹のつくる機能性成分が注目されている
甘酒は白米にコウジカビを作用させてつくるものです。
コウジカビが産生する、いくつかの成分に美容にかかわる機能性があるのでは?と期待されています。
いまのところ期待されているものとしては、
デフェリフェリクリシンの「メラニンの生成を抑えるはたらき」、
*)大浦新、堤浩子、秦洋二.麹菌が産生する鉄キレート環状ペプチド(5)-培養細胞および皮膚モデルにおけるデフェリフェリクリシンの美白効果-、日本農芸化学会大会(2012)
グリコシルセラミドやN-アセチルグルコサミンの「皮膚の水分量を高め、皮膚からの水分の蒸発を防いで潤いのある肌を保つはたらき」
*)植田愛美 他.健常成人女性における米糀甘酒摂取による皮膚バリア機能改善効果の検討 ー無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験ー. 薬理と治療, 45巻 11号 1811-1820 (2017)
があげられます。
今のところの効果は…
とはいえ、甘酒を飲めばメラニンが生成されにくくなって明らかに色白になったり、潤いのある美肌になれるか、というとそうではありません。
現時点では人を対象にした研究は少なく、効果があるとは言えない状況。
研究が進めば、将来的には「甘酒のどんな成分にどんな美容効果があるのか」がはっきりとわかるかもしれませんが、今のところは甘酒に目に見えるほどの効果を期待するのは難しそうです。
甘酒の利点を生かすには…?
栄養補給:糖質以外の栄養素は乏しいため「応急処置的」に活用する
甘酒は消化吸収しやすい糖質を豊富に含むいっぽう、たんぱく質や脂質、ビタミンやミネラルは多くは含まれていません。
甘酒に含まれる栄養素について詳しく解説した記事はこちら |
そのため、甘酒だけを長期間の栄養摂取源としたり、栄養バランスを整える目的で取り入れたりすることには適していません。
甘酒はあくまで「素早いエネルギーチャージ」に適した食品。
食事が満足にとれないときの応急処置のような使い方がよいのではないでしょうか。
美容:より重要なポイントを押さえたうえでの「追加要素」として活用する
甘酒の含まれている機能性成分についての研究は進められているものの、その機能性はいまだ未知数なところも多いのが現状です。
いまのところ、「甘酒だけ」で美肌が手に入るとはいえません。
栄養バランスのとれた食事や十分な睡眠、適度な運動、自分に合ったスキンケアなど、重要性が分かっていることを行ったうえで、「おまけ」として甘酒を取り入れるのがよさそうです。
まとめ:甘酒を健康的な生活のきっかけにするのは◎
甘酒は様々な効果が期待されている食品ですが、単体での効果はそう大きなものではなさそうです。
甘酒だけに頼ってしまっては期待外れな結果につながりかねませんが、甘酒を取り入れることをきっかけにして、そのほかの健康にかかわること(食事の栄養バランス、睡眠、運動など)を意識し始めることができたらとても良い習慣作りにつながりそうです。
健康的な暮らしのために、甘酒「だけ」ではなく、甘酒「も」取り入れるのがおすすめです。
参考文献 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 大浦新、堤浩子、秦洋二.麹菌が産生する鉄キレート環状ペプチド(5)-培養細胞および皮膚モデルにおけるデフェリフェリクリシンの美白効果-、日本農芸化学会大会(2012) |