気温が高くなってくると、気になるのが暑さによる脱水症状。
脱水時の水分補給に適した飲み物として代表的なものが「経口補水液」。
熱中症対策だけでなく、発熱時や下痢・嘔吐などで体内の水分が失われたときにも活用できるものです。
スポーツドリンクとの違いや使い分け方、メーカー別の特徴と選び方を紹介します!
Contents
経口補水液とは?本当の意味で「飲む点滴」
経口補水液はその名の通り、「口から水分を補うための飲料」です。
大量に汗をかいたり、下痢や嘔吐によって体内の水分が一定以上失われると、体内の水分不足による様々な悪影響が表れます。(脱水症状)
この脱水症状・脱水状態の改善のためには体内に水分を補う必要があります。
点滴によって血管から水分を補給する方法が最も効率的ですが、点滴は医療機関でしか行うことができません。
そのため、より簡単に・かつ効率よく水分を体内に取り入れるために考え出されたのが経口補水液です。
まさに「口から飲む点滴」が「経口補水液」ということです。
糖とミネラルを含むので吸収されやすくなっている
経口補水液は一定範囲内の濃度で糖とナトリウムなどのミネラルを含むのが基本です。
ナトリウムや糖は小腸で吸収されるときに水分も一緒に取り込む、という作用を持っています。
そのため、糖とナトリウムを含む経口補水液を補給した場合、水だけを補給した場合と比べてより効率的に水分を体内に取り込むことができることが分かっています。
通常、水分の吸収は主に大腸で行われますが、糖とナトリウムを含むことによって、下痢などで大腸の機能が障害されている時でも、小腸から水分を吸収できる、という利点もあります。
水分を補給するなら普通の水でもいい、と思いがちですが、経口補水液は水分補給に特化した製品である、といえますね。
汗や下痢で失われるミネラルも補給できる
また、汗をかいたり下痢や嘔吐をによって水分が失われるときは、水分だけでなくナトリウムやカリウムといったミネラル(電解質)も一緒に失われています。
ミネラルが失われた状態で水分だけを補ったとしても、体は体内のミネラル濃度を一定に保とうとするため、水分が排出されてしまいます。
経口補水液を利用することで、水分と一緒にミネラルをとることで体内のミネラルが薄まらず、水分もしっかり保持されるようになります。
熱中症対策と水分補給に適した飲み物・食べ物について詳しく解説した記事はこちら
経口補水液はどんな時に飲む?年齢制限や購入場所は?
効率的な水分補給に適した経口補水液について、どんな時に飲むものか、誰でも飲めるのか、購入場所はどこかについて解説します。
経口補水液が適しているのは脱水状態のとき
経口補水液は基本的に「脱水状態になりそうなとき」「軽度の脱水症状があるとき」に飲みます。
具体的には
・過度に汗をかいたとき
・下痢、嘔吐、発熱などがあるとき
が一般的な利用シーンといえそうです。
何歳でも飲める?
基本的にはどの年代であっても飲んで問題のあるものではありませんが、年齢ごとに飲む量の目安が変わってくる場合もあるため、各商品の説明文に従うのが安心です。
持病によってはナトリウムやカリウムの摂取制限によって飲めない場合もありますので、不安な方は医療機関等に相談してみてくださいね。
購入場所は?
ドラッグストアや薬局などにおいてあることが多いです。
体調不良の時は薬の購入や病院への受診と一緒に経口補水液も、といった流れがスムーズですね。
外出が難しい場合には、ネットでの購入も便利です。
糖とミネラルが入っていれば経口補水液といえる?
糖とミネラルが含まれて水分補給に適した経口補水液ですが、どんな濃度でも糖とミネラルが含まれていれば経口補水液として使うことはできるのでしょうか?
経口補水液にもレシピがある
経口補水液は体内へ水分やミネラルがもっとも吸収されやすいように計算されています。
しかし、脱水の原因となるものによって、体から失われるミネラルの量は変わるために、「全世界共通のレシピ」というものがあるわけではありません。
WHO(世界保健機関)やAPP(米国小児科学会)、ESPGHAN(ヨーロッパ小児栄養消化肝臓学会)などからそれぞれ異なる値が推奨されています。
■各機関で推奨されている経口補水液の電解質組成
WHO (1975年) |
WHO (2002年) |
ESPGHAN 欧州小児栄養 消化肝臓学会 |
APP 米国小児科学会 |
|
ナトリウム | 90mEq/L | 75mEq/L | 60mEq/L | 40-60mEq/L |
カリウム | 20mEq/L | 20mEq/L | 20mEq/L | 20mEq/L |
塩素 | 80mEq/L | 65mEq/L | 60mEq/L | – |
ブドウ糖 | 2.0% | 1.35% | 1.6% | 2.0-2.5% |
大塚製薬:「オーエスワンの使用について」リーフレットより作成
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
日本ではAPPやESPGHANの推奨値に近い製品が多いのが特徴です。
経口補水液はスポーツドリンクと何が違う?
糖分と塩分が含まれた飲み物、というとスポーツドリンクも一般的です。
スポーツドリンクと経口補水液はどう違うのでしょうか?
■スポーツドリンクと経口補水液の比較
APP 米国小児科学会 |
大塚製薬 OS-1 |
大塚製薬 ポカリスエット |
|
分類 | 推奨値 | 病者用食品 | 一般食品 |
ナトリウム | 40-60mEq/L | 50mEq/L | 21mEq/L |
カリウム | 20mEq/L | 20mEq/L | 5mEq/L |
炭水化物 | 2.0-2.5% | ブドウ糖1.8% | 6.2% |
浸透圧 | – | 270mOsm/L | 324mOsm/L |
谷口 英喜. 経口補水療法 日本生気象学会雑誌, 52巻 (2015) 4号より作成
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
スポーツドリンクでは推奨値と比較してナトリウムやカリウムが少なく、炭水化物が多いことが分かります。
スポーツドリンクも普通の水に比べると水分とミネラルの補給に適していますが、経口補水液に比べると「体調不良時の脱水」には特化していないと考えられます。
状況に応じて使い分けよう
脱水状態にない場合には、スポーツドリンクでも十分に水分と塩分をとることができますが、病的な脱水状態においては、スポーツドリンクはミネラルが少なく、糖が多いために水分とミネラルの補給に「最適」ではありません。
一方、経口補水液は脱水時の水分とミネラルの補給に最適な組成になっています。
しかし、「おいしさ」「飲みやすさ」を重視したものではないため、普段使いにするにはやや飲みにくいものが多いようです。
日常的な運動時など、ひどい脱水の恐れがないときは飲みやすい「スポーツドリンク」を、
下痢や嘔吐が続いたときや、過度の発汗などの体調不良につながりかねない脱水の恐れがあるときは体に適した「経口補水液」を選ぶのがよいでしょう。
どのタイプがいい?経口補水液の選び方
経口補水液にはペットボトルタイプ・粉末タイプ・ゼリータイプが存在します。
また、メーカーによっても成分が少しずつ異なるようです。
それぞれのメリットと選ぶポイントを紹介します。
かたちの違いによる比較
ドリンクタイプ
もっとも一般的なタイプで、すぐに最適な状態で飲めるのが利点です。
一方で粉末タイプなどに比べると体積が大きいため、大量の保存には向きません。
粉末タイプ
適量の水に溶かして飲むタイプで、保管しておくときに場所をとらないのがメリットです。
飲むときに溶かさなければいけないので、やや手間がかかるという点がデメリットです。
ゼリータイプ
嚥下に不安がある高齢者の方など、サラサラの液体は飲みにくい場合に飲みやすいのが特徴です。
また、液体タイプよりも塩味がおだやかに感じられやすく、子どもでも比較的飲みやすい点もポイントです。
液体タイプよりも容量が少なく、割高になるのがデメリットです。
経口補水液のメーカーごとの成分比較
味の素 アクアソリタ |
コカ・コーラ アクエリアス 経口補水液 |
明治 アクアサポート |
大塚製薬 OS-1 |
APP 米国小児科学会 |
|
分類 | 栄養補助食品 | 清涼飲料水 | 清涼飲料水 | 病者用食品 | 推奨値 |
ナトリウム | 35mEq/L | 43mEq/L | 50mEq/L | 50mEq/L | 40-60mEq/L |
カリウム | 20mEq/L | 21mEq/L | 20mEq/L | 20mEq/L | 20mEq/L |
塩素 | 33mEq/L | 濃度記載なし | 50mEq/L | 50mEq/L | – |
炭水化物 | 炭水化物1.8g | 炭水化物2.7g ブドウ糖1.5g |
炭水化物2.3g ブドウ糖2.0g |
ブドウ糖1.8g | 2.0-2.5% |
浸透圧 | 175mOsm/L | 263mOsm/L | 257mOsm/L | 270mOsm/L | – |
*100mlあたり |
各社ホームページおよび 谷口 英喜. 経口補水療法 日本生気象学会雑誌, 52巻 (2015) 4号 より作成
「経口補水液」として販売されていても、メーカーによって成分値は異なり、スポーツドリンクとの中間のようなものも存在します。
同じ売り場に複数の経口補水液があった場合、脱水の程度に応じて選ぶのもいいかもしれません。
症状が軽いのであれば、ナトリウム濃度が低いもののほうが飲みやすく感じられそうです。
脱水症状ではなく健康維持のため1日に必要な水分量について解説した記事はこちら→1日に必要な水分量は?水を飲む重要性と水分補給のタイミング
飲むときに気をつけたいポイント
水分補給の面では優れた組成となっている経口補水液ですが、使い方には注意が必要です。
食事制限がある人は注意が必要
経口補水液は通常の飲料やスポーツドリンクと比較するとナトリウムやカリウムが多く含まれています。
そのため、特定の疾患でこれらのミネラルを制限されている人はかかりつけの医療機関に相談するようにしましょう。
薄めたり混ぜたり凍らせたりしない
経口補水液はそのまま(粉末タイプでは決められた量の水で希釈して)飲むことが重要です。
ほかの飲み物と混ぜたり、水で薄めたりしてしまうと成分の濃度が変わり、期待した効果が得られなくなってしまいます。
また、なにかと混ぜていなくても、「冷凍」には注意が必要です。
ボトルごと冷凍してしまうと溶けるときに濃いところと薄いところに分かれてしまい、想定された濃度で体内に入っていかなくなってしまいます。
どうしても凍らせたい場合は製氷皿などに小分けにして冷凍し、ひとかけらは一口で食べるのがよいでしょう。
症状によっては飲み方に注意しよう
嘔吐の症状があるときは飲み方に注意が必要です。
消化管に急激に水分が入ると嘔吐を引き起こすことがありますので、少しずつ、時間を空けて飲むことが推奨されています。
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参考文献 谷口 英喜. 経口補水療法 日本生気象学会雑誌, 52巻 (2015) 4号 |