投稿日: 2020.01.03 | 最終更新日: 2023.07.28

はちみつダイエットとは?夜寝る前のはちみつに痩せる効果はある?

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はちみつ

寝る前にはちみつをとるだけでやせる、というダイエット法をご存じでしょうか?
濃厚な甘味をもつはちみつはダイエット中には不向きのように思いますが、実はダイエットに効果あり…との噂です。
書籍にもなっているはちみつダイエットについて、本当に効果があるのか検証してみました。

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はちみつダイエットとは

はちみつダイエットは医師が考案したダイエット方法のひとつで、医師本人も25㎏の減量に成功したとのこと。

方法は、「寝る前に大さじ1杯のはちみつをなめるだけ」
書籍の表紙には、4週間で5.4㎏、4.3㎏の体重減と書かれています。

寝る前にはちみつをなめるだけで減量できるのであれば、驚きの効果といえるでしょう。
どんなメカニズムでやせるのでしょうか?

はちみつダイエットのメカニズム

ハチミツダイエットは、どのようなメカニズムで痩せる方法なのでしょうか?

書籍では…

睡眠中は脂肪をエネルギー源として使っている。
睡眠の質が低いと脂肪をエネルギー源として使えなくなる。
睡眠の質を高めるため、脳に十分なエネルギーを供給する必要性がある。
血糖値の乱高下は深い眠りを妨げるが、はちみつはインスリンの分泌を一定に保ち、寝ている間に必要とするエネルギーを補充する。
そのため、太る原因になる睡眠の質を落とさずに脳にエネルギーを供給するには、はちみつが適している。

というふうに説明されています。

また、書籍以外でも、はちみつは砂糖に比べると太りにくいといったうわさも目にしますが、はちみつダイエットの方法とメカニズムにはいくつかの疑問点があります。

  • 睡眠中のエネルギー消費でダイエットできる?
  • 質の良い睡眠はエネルギー消費が多いのか?
  • はちみつが睡眠の質を上げるという根拠はある?

それぞれについて、ひとつずつ考えていきましょう。

はちみつダイエットのメカニズムを検証

よく眠る女性

はちみつによって質のいい睡眠ができると結果としてやせられる、という「はちみつダイエット」ですが、睡眠とダイエットの関係を調べてみました。

質のいい睡眠とは

そもそも、質のいい睡眠とはどのようなものでしょうか?

厚生労働省の資料では、

  • すぐ眠れる
    (入眠までの時間が長すぎず、また極端に短くないこと)
  • ぐっすり眠れる
    (十分な時間が確保され、中途覚醒が少なく、前半は深い眠り、後半は浅くなる)
  • 気持ちよく目覚める
    (起床前に体温が上がりはじめ、規則的に起きれる。日中、過度の眠気がない)

といった例が挙げられています。

質のいい睡眠とカロリー消費

では、質のいい睡眠ではエネルギー(カロリー)をより多く消費するのでしょうか?

睡眠中でも私たちの体はエネルギーを消費しており、その消費量は眠りの深さと関係しています。

深い眠りほどエネルギー消費は少なく、浅い眠りや中途覚醒ではエネルギー消費が多くなっています。

睡眠リズム

睡眠中にやせる(=エネルギー消費が増える)ということは、浅い眠りの時間帯や中途覚醒が多いということです。
しかし、質の良い眠りとは、中途覚醒が少なく、睡眠の前半には深い眠りがあるものを指します。

この二つを考えると、「質の良い眠り」と「エネルギー消費の多い眠り」というものは、どうやら一致しないようです。
睡眠の質が上がったからと言って、睡眠中にエネルギー消費が増えて痩せる、ということは考えにくいといえるでしょう。

質のいい眠りとダイエットの関係

睡眠中にやせるということは考えにくいですが、睡眠時間が短いと太りやすいといわれます。

これは睡眠中のエネルギー消費に違いがある、ということではなく、1日の過ごし方に違いが出るということのほうが本質ではないでしょうか。

睡眠とカロリー消費の関係

質の良い睡眠がとれている人は、夜、すぐ寝ることができ、ぐっすり眠れ、朝はすっきり起きられます。
日中も眠気に襲われにくいため、活動的に動ける状態といえそうです。

いっぽう、睡眠の質が悪い人は、夜遅くまで起きていたり、日中は眠気でだらだらとしてしまう…ということが多いのではないでしょうか。

睡眠の質が良い人のほうが「日中の活動が活発でエネルギー消費が多く、太りにくく、やせやすい」ということもありそうです。

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はちみつと快眠の関係

はちみつによって睡眠の質が上がるのであれば、間接的にダイエットに効果があるとも言えそうです。

はちみつを摂取することによって睡眠の質が上がるというデータはあるのでしょうか?

はちみつと血糖値

お腹が空いている状態では、寝付きにくくなるという人も少なくないでしょう。
ダイエット中にお腹が空いて寝付けないといった場合には、はちみつのような食品を適度にとることで寝付きやすくなる、ということはあるでしょう。

しかし、はちみつが「血糖値を安定させる」という点については疑問が残ります。
以下は、はちみつの研究について紹介するメディアに掲載されていた、ブドウ糖(グルコース)とはちみつの摂取後の血糖値を比較したグラフを再現したものです。

ハチミツと血糖値はちみつは血糖値を上げにくいといわれていますが、実際には「血糖値をブドウ糖と同じくらい上げやすいが、すぐに下がる」というのが正確な表現ではないでしょうか。

インスリンを分泌する膵臓への負荷は比較的少ないと考えることもできますが、「血糖値を安定させる」という点では誤りだといわざるを得ないでしょう。

風邪で咳がつらい時の睡眠改善に有効

はちみつと睡眠について、「風邪を引いた子どもの咳を症状を緩和するためにはちみつを利用することで、睡眠が改善されたという報告*1)があります。

この場合はちみつが効果を示したのは「咳に対して」であるため、咳の症状がない人の睡眠の質を上げるという効果は期待できません。

検証結果

これらのことから、質のいい睡眠は間接的にダイエットに良い影響をもたらすけれど、はちみつについては咳が原因の不眠以外には効果は期待できない、と結論付けました。

ぐっすり眠れて日中はすっきり起きていられる状態は活動的でカロリー消費も多くなるといえそうです。

しかし、(咳の症状がある場合以外の)睡眠の質の向上にはちみつがよいとする根拠は見当たりませんでした。
はちみつをなめる→睡眠の質が上がる→やせる、とは言えないという結論です。

はちみつダイエットの本質は生活習慣の改善

スプーン1杯のはちみつ

残念ながら、はちみつを食べることによって睡眠の質が上がったり、睡眠中のエネルギー消費が増えたりといったことはなさそうです。

はちみつダイエットを紹介する書籍やメディアでは、夜にはちみつをとることに加えて、以下のような心がけをすすめていました。

  • 夕食を食べすぎない
  • 夕食の糖質を控える
  • 睡眠不足を避ける
  • 早寝早起きを心がける
  • 夜更かししない

夕食など、食事の量を控えるのであれば、摂取エネルギーが減るため、直接的なダイエットにつながります。
また、意識的に睡眠をとるように心がけ、生活リズムを整えると日中を活動的に過ごすことができそうです。

生活スタイルを全く変えず、寝る前にはちみつを食べるだけでは摂取エネルギーを増やすだけになってしまいます。

「夜にはちみつもとっているし、もっと効果的にするためにご飯を控える」
「はちみつの効果を高めるために、早く寝よう」
はちみつをとることよりも、こういった「+αの心がけ」のほうがダイエットに効果を発揮しそうです。

はちみつダイエットを成功させるためには、この+αのほうが重要であり、効果的です。
はちみつに実質的な効果は期待できないと考えましょう。

まとめ

はちみつに限らず、世間には「○○だけダイエット」があふれています。
どの方法も様々な食品の魅力的な機能が紹介されますが、実質的に効果があるものはほとんどありません。

ダイエットの基本は「摂取エネルギーよりも消費エネルギーを多くすること」。
食事と運動の工夫で徐々に体脂肪を減らしていくのが健康的で、リバウンド防止のためにも理想的です。

「簡単にやせられる」という言葉に惑わされず、堅実なダイエットをするのが一番の近道です。

はちみつはおいしい食材の一部として取り入れるのが良いかもしれません。

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参考文献

厚生労働省:「より健康的な睡眠を確保するための生活術」

筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構:「睡眠と代謝の密接な関係」

Kayaba M, Park I, Iwayama K, Seya Y, Ogata H, Yajima K, Satoh M, Tokuyama K. Energy metabolism differs between sleep stages and begins to increase prior to awakening. Metabolism 69: 14-23. doi: 10.1016/j.metabol.2016.12.016

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(ハチミツについて)

*1)Oduwole O, Meremikwu MM, Oyo-Ita A, Udoh EE. Honey for acute cough in children. Cochrane Database Syst Rev. 2012 Mar 14;(3):CD007094.

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。