2020.08.14

デトックスウォーターではデトックスできません|管理栄養士執筆

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デトックスウォーター

SNSや街中で、おしゃれな人がカラフルなボトルを持ち歩いているのを見かけたことはありませんか?

野菜や果物の成分が溶け出したミネラルウォーター=デトックスウォーターを飲むことが美容や健康にいいと話題です。

デトックスウォーターでほんとうに「デトックス」できるのでしょうか?

デトックスウォーターとは?

苺ときゅうりのデトックスウォーター

デトックスウォーターとは、ミネラルウォーターにカットしたフルーツ・野菜・ハーブなどを入れた飲み物のこと。

・果物などの風味を楽しめる

・透明のボトルに入れておけば見た目がおしゃれ

といった理由で人気の飲み物です。

デトックスウォーターの魅力は味や見た目だけでないようで、一部の情報では果物や野菜の栄養素が水に移ることでその名前の通り「デトックスに役立つ」、「健康にいい」、といわれています。

デトックスウォーターでデトックスできるの?

デトックスに役立つ、といわれているデトックスウォーターですが、具体的にはどんな効果が期待できるのでしょうか?

結論から言うと、言葉通りの「デトックス(解毒)」をデトックスウォーターで行うのは難しいでしょう。

デトックスの定義、デトックスウォーターに期待できることを整理してみましょう。

そもそもデトックスとは?俗に言われているのは…

デトックスのイメージ

デトックスとは英語で「解毒」のことを指します。

老廃物や毒素のような体の中に蓄積した有害物質を排出させることをいい、デトックスを行うことによって体の不調を解消するといわれています。

しかし、デトックスにおける「老廃物」や「毒素」といわれるものは明確には定義されておらず、医療用語としてのデトックス(薬物依存症などに対して行われる治療のひとつ)とは区別する必要があります。

人体にとっての有害物質とその分解・排泄の仕組み

ヒトの体の中では常に様々な物質が生成・分解されており、その過程で人体にとって不要・有害な物質も生成されます。
また、食事などから、本来であれば体に不必要で有害な物質が取り込まれることもあります。

例えば、体の中で生成したアンモニアは人体にとって有毒であるため、肝臓に運ばれて人体にとって無害な「尿素」に変換され、腎臓で漉しとられて尿の成分として排出されます。

また、お酒などに含まれるアルコールも、人体にとってはあまり好ましい物質ではありません。
肝臓で有害なアセトアルデヒドに代謝され、続いて無害な酢酸に代謝され、エネルギー源として使われるほか、一部はアルコールやアセトアルデヒドのまま腎臓で漉しとられ、尿に含まれて排泄されます。

体内の毒素の排出という意味のデトックスは、腎臓と肝臓が行っている

このように、人体内の有毒物質については肝臓や腎臓の働きによって解毒・排泄されています。
そのため、肝臓や腎臓が健康な状態であれば、私たちが「デトックス」と称して何らかの行動を起こさずとも、体内の有毒物質は多くの場合蓄積されずに適切に処理されていると考えて差し支えありません。

現状、「デトックス効果がある」といわれるものに取り組んでも、どんな効果があるのか、という明確なデータは存在せず、効果を裏付けるものはありません。

このような理由から、イギリスの国民保健サービス(NHS)では「デトックスはあなたにとって良いことである証拠がない。デトックスを行う必要はない。」と呼び掛けています。

デトックスウォーターで期待される効果はデトックスというより体のメンテメンス…?

俗に言われているデトックスウォーターの「効果」としては、材料である果物と水を取り入れることで

・ミネラル(カリウム)によって余分な水分・塩分を排出

・食物繊維によって便秘の解消

・ビタミン類によって新陳代謝を高める

と考えられていることが多いようです。

先に解説したような毒素の代謝・排泄というよりも、水分や食材の栄養素をとることで体のはたらきをスムーズにするものとして考えられている、といったほうが正しい表現に近いようですね。

では、デトックスウォーターという形で取り入れることで、普通に水分や野菜・果物をとるのに比べていいことがあるのでしょうか?

デトックスウォーター、普通の水と食べる果物でも変わらないかも

水、果物、ヘルシーな食事

「デトックスウォーター」として飲む必要性は…

デトックスウォーターによって得られる効果は、ミネラルウォーターの水分と、野菜や果物の栄養素によるものといえそうです。

■水分をとることのメリット

ヒトは普段の生活で、1日あたりおよそ2.5Lの水分を消費することが分かっており、体内で生成する水0.3Lのほか、食事から1L、飲み水から1.2Lほどを摂取する必要があるといわれています。

水分不足の状態では、便が固くなり便秘になりやすくなったり、体内の水分量が減って脱水症状を起こしたりといったトラブルが起きやすくなります。

デトックスウォーターに限らず、利尿作用のない(カフェインやアルコールを含まない)飲み水は健康のために十分な摂取が勧められます。

■果物や野菜はそのものを食べたほうがいい

野菜や果物の栄養素をとるという意味では、デトックスウォーターとして溶け出した栄養素をとるよりも、野菜や果物そのものを食べたほうが効率的です。

果物や野菜には余分な塩分と水分の排出を助けるカリウム、腸管を刺激して便通を助ける食物繊維、体の様々な働きにかかわるビタミン類が含まれています。

しかし、これらの栄養素は野菜や果物を切って水に入れるだけでは、さほど多くは溶け出しません。

包丁で切ることで壊された細胞からはビタミンやミネラルなどの栄養素が出ていきますが、切り口に接していない細胞は壊されていないため、果物や野菜の中にとどまると考えられます。
また、食物繊維のうち不溶性食物繊維は野菜や果物の細胞の壁そのものであり、水に溶けだすことはありません。

野菜や果物の栄養素をしっかりとりたいのであれば、水に溶けだした栄養素のみをとるのではなく、丸ごと食べるのが一番です。

デトックスウォーターのメリットは?

ボトル入りのデトックスウォーター

デトックスウォーターを取り入れるメリットは、「デトックス」や「栄養補給」というよりも、「楽しく水分補給の習慣がつきそうなこと」かもしれません。

メリットその1:見た目が華やかで、水分補給の習慣づくりのきっかけに

デトックスウォーターの第一の利点は、そのおしゃれな見た目。
色鮮やかで目にも楽しめるので、今までは飲み物にあまり関心がなかった人も、取り入れて飲んでみたい、と思えるのではないでしょうか。

見た目も華やかで健康や美容にもいいといわれれば、試してみたくなりますよね。
デトックスウォーターをきっかけに、結果的にこまめな水分補給が身につく人も増えそうです。

メリットその2:普通の水に風味がついて飲みやすい?ジュースより低カロリー

果物や野菜、ハーブを入れることで、普通の水にそれぞれの風味が移ります。
糖類の入った清涼飲料水に比べると物足りないという人もいそうですが、摂取エネルギーを抑えつつ、普通の水より風味を楽しめるところがメリットですね。

果物の栄養素が溶け出しているといっても、そのカロリーは清涼飲料水に比べればわずか。
摂取エネルギーを気にする人にはより良い飲み物のひとつといえそうです。

果物や野菜をまるごと食べればなお良い

水に入れておいた果物を食べるか否か、というのは人によってそれぞれだとは思います。

とはいえ、ビタミンやミネラル、食物繊維といった栄養素の摂取という視点で考えると、食べられる部分は食べたほうが無駄はないでしょう。

無駄のない栄養素摂取のためには必ずしも「デトックスウォーター」という方法でなければいけないわけではなく、カットフルーツでも、(咀嚼による満腹感はなくなりますが)スムージーのような方法でも、人それぞれ取り入れやすい方法を選ぶのがいいと思います。

水分補給と野菜・果物摂取のきっかけになればいいかも

体にいいとはわかっていても、「水をしっかり飲もう」「果物や野菜を増やそう」といった行動は、何かしらのきっかけがないと実行しにくいものです。

その中で、見た目もおしゃれで取り入れたくなる「デトックスウォーター」という方法は、積極的な水分補給の習慣作りと、野菜や果物の摂取量アップのきっかけになりやすいもののひとつではないでしょうか。

デトックスウォーターにデトックス効果や特別な栄養効果を期待することはできませんが、デトックスウォーターを第一歩として、食事全体を見直すことにつながれば、とても価値のあるものになりそうです。

参考文献

厚生労働省:「「統合医療」情報発信サイト 海外の情報 肥満」

イギリス国民保健サービス(NHS):「’Detox’ tincture Q&A」

厚生労働省:「健康のため水を飲もう」推進運動

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。