投稿日: 2023.10.14 | 最終更新日: 2024.01.17

【医師監修】脂肪肝で食べてはいけないもの一覧。脂肪肝改善のための食事のポイントを解説

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脂肪肝の治療

脂肪肝はその発症や進行に食事を含む生活習慣全体が深くかかわっている病気です。
そのため、脂肪肝の改善のためには食生活の見直しが欠かせきません。

今回の記事では、脂肪肝を指摘されて食事改善をしようと考える方に向けて、脂肪肝の改善・進行予防のために食べるのを控えたり、量や頻度を抑えたりすべき食べ物について詳しく解説します。
脂肪肝だけに限らず、生活習慣病全体の予防や改善に役立ちますので、ぜひ参考にしてくださいね。

脂肪肝とは

脂肪肝とは

脂肪肝は肝臓に脂肪が過剰に蓄積する疾患です。
脂肪肝は大きく2つの種類に分けられます。
アルコールの過剰摂取が原因となるアルコール性脂肪肝、もうひとつはアルコールとは関係なく、食生活や生活習慣が原因となる非アルコール性脂肪に分けられます。

肝臓に脂肪が蓄積しても、はじめは自覚症状がほとんどありませんが、徐々に進行し、肝臓の機能低下を招きます。
脂肪肝を放置すると肝炎や肝硬変、肝臓がんなどに発展する可能性があります。

脂肪肝は自覚症状なく進行するため、重篤な状態になる前に定期的な健康診断で早期に発見し、早期に対処することが重要です。

脂肪肝を発症・進行させる要因

脂肪肝の進行

脂肪肝の発症や進行に関連する要因には、食生活の乱れ、食生活の乱れに起因する肥満や糖尿病のほか、一部の薬による副作用などがあります。
このうち、食生活の乱れに当たる要因の詳しい内容としては、以下のようなものが挙げられます。

  • カロリーの過剰摂取、肥満
  • アルコールの過剰摂取
  • 甘いものの食べ過ぎ
  • 脂質の摂りすぎ

それぞれの内容について詳しく解説します。

カロリーの過剰摂取・肥満

生命活動や身体活動によって消費するカロリーに対して食事などから摂取するカロリーが多すぎると、余ったカロリーは体脂肪として貯蔵されます。
体脂肪は皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積されますが、一部は肝臓の細胞にも脂肪が蓄積されていき、脂肪肝の発症・進行要因となります。

また、肥満状態が続くと血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きが低下することでも肝臓の脂肪蓄積を促進させることが知られています。

肥満はこのような複数の経路により脂肪肝を発症・進行させる要因となるため、脂肪肝の予防・改善においてはカロリー管理や減量は重要なポイントとなります。

アルコールの過剰摂取

アルコールの過剰摂取はさまざまな方向から脂肪肝を発症・進行させる要因となります。

摂取したアルコールは肝臓で分解・無毒化されますが、その過程で産生されるアセトアルデヒドが肝臓の細胞を傷つけ、機能低下を招くことが知られています。

また、アルコールの摂取量が多い場合にはその分解のために肝臓の負担が大きくなることで脂質が代謝されにくくなり、肝臓内に脂肪が蓄積されやすくなり、脂肪肝の発症や進行にかかわる要因となります。

肝臓の負担を高めること以外にも、アルコールには他の栄養素と同様にカロリーがあり、過剰なアルコール摂取は摂取カロリー過剰にもつながることによっても、脂肪肝を発症・進行させる要因となります。

甘いものの食べすぎ

砂糖類を多く含む甘い食べ物は単に摂取カロリーを増やすことで肥満の原因となり、脂肪肝を発症・進行させる要因となります。

加えて、吸収の早い砂糖類を多量にとると、血糖値が急激に上昇し、それに対応するために血糖値を下げるホルモンであるインスリンが多量に分泌させます。
血糖値を急激にあげるような食生活が長期になると、インスリンの効き目が悪くなる「インスリン抵抗性」を招き、血糖値が下がらず余った糖が肝臓で脂肪として蓄積されやすくなります。

脂質の摂りすぎ

脂質はカロリー源となる栄養素のひとつですが、糖質やたんぱく質が1gあたり4kcalであるのに対し、脂質は1gあたり9kcalと高カロリーな成分です。
そのため、ほかの栄養素と比較すると同じ重さを摂取しても摂取カロリー過剰につながりやすく、脂肪肝を引き起こしやすい栄養素といえます。

また、脂質の中でも飽和脂肪酸は肝臓に流入する脂質を増やし、細胞の酸化ストレスも増やすことから、特に肝臓の脂肪蓄積を促進させることが知られています。

脂質の摂りすぎも脂肪肝の発症に影響しますが、摂取する脂質の質も大きく関連しています。

脂肪肝で食べてはいけないもの一覧

脂肪肝は生活習慣が発症や進行、改善に大きくかかわる疾患です。
生活習慣の中でも特に食に関するものは最も大きな要因であり、重点的な見直しが必要な部分でもあります。

今回は、脂肪肝の改善や進行を防ぐために摂取量の制限や調整が必要な食品を一覧で紹介します。
いずれも「絶対に食べてはいけないもの」という訳ではありませんが、脂肪肝の改善のためには注意すべきものですので、日々の食事管理に役立ててくださいね。

お酒

お酒

お酒全般に含まれるアルコールは肝臓への脂肪蓄積を促すため、脂肪肝では摂取量の制限が求められます。

日常的に飲んでいたお酒をノンアルコール飲料に切り替えることも有効ですが、組み合わせるおつまみ類のカロリーにも気を付けたいところです。

アルコールが原因の脂肪肝では禁酒によって比較的短期間で改善が見込めることから、早期に摂取量を制限することが重要です。

お菓子

菓子類

多くのお菓子類は砂糖類や油脂分が多く含まれているため重さあたりのカロリーが高く、少量の摂取でも摂取カロリーの取りすぎにつながりやすい食品です。

加えて、お菓子類はたんぱく質やビタミン、ミネラルといった必須栄養素の摂取源になりにくいため、栄養素摂取上の必要性が低い食品です。

間食としてお菓子を食べることが多い人の場合には、お菓子の量を減らす、または低カロリーな食品に置き換えることで肝臓への負荷を減らすことができます。

菓子パン

菓子パン

基本的に、小麦を原料とする「パン」はごはんや麺類と同じ主食に分類されますが、パンの中でもメロンパン、クリームパンのような甘い菓子パン類は砂糖類を多く含むため、主食ではなくお菓子の一部として考えるとよいでしょう。

菓子パンはお菓子類と同様、砂糖類や脂質を多く含み、摂取カロリーの過剰の原因となります。
また、必須栄養素の摂取源としてはあまり役に立たないため、見直しが必要なポイントです。

朝昼夜の3食のいずれかが菓子パン、という人も少なくありませんが、食事として菓子パンをとることは食事の栄養バランスを乱し、摂取カロリーの過剰や必須栄養素の不足などを招きますので、なるべく控えましょう。

揚げ物

揚げ物

揚げ物は多量の油で調理したものであり、食材そのものや衣に油脂が多量に含まれることから、脂質の摂取量を抑えたい脂肪肝の人では注意が必要な料理といえます。
外食や惣菜では揚げ物の登場頻度が高いため、普段の食事で外食が多いという方の場合にはかなり意識して避ける必要があります。

単に揚げ物を食べる量や頻度を抑えるだけでも脂質やカロリーの摂取量を抑えることができますが、味付けは変えず、調理方法を揚げ調理から焼き調理に切り替えたり、ノンフライヤー(ノンオイルフライヤー)を活用したりすることで、負担感なく脂質の摂取量を減らせるかもしれません。

脂身の多い肉

脂身の多い肉

肉類の脂身には脂質が多く含まれるだけでなく、魚の脂質や植物油と比較して脂肪肝への悪影響が大きい飽和脂肪酸が多く含まれる傾向があります。

牛・豚のバラ肉、鶏の皮など、脂肪分の多い部位は量を控えましょう。
反対に脂身の少ない肉類としては、牛・豚のヒレやモモなどの赤身部位、鶏の胸肉(皮なし)やささみなどが挙げられます。

脂身の多い肉類は単に摂取量を抑えるのではなく、脂身の少ない部位に変えたり、魚類に置き換えたりすることで、肉類に含まれるたんぱく質などの必須栄養素を損なわずに脂質やカロリーを抑えられます。

脂質の多い調味料

脂質の多い調味料(マヨネーズ)

脂質は食材だけでなく一部の調味料にも多く含まれています。

サラダ油のような調理用油のほかに、調味料としてとる食材で脂質を多く含むものには、以下のようなものが挙げられます。

  • バター
  • マヨネーズ
  • ドレッシング類

脂質や砂糖類の少ない食材でも、これらの調味料を多用した味付けで食べた場合には、結果的にカロリーや脂質の摂取過剰につながることもありますので、脂肪肝の場合には量や頻度には気を付けましょう。

脂肪肝改善のためのポイント

脂肪肝改善のためのポイント

脂肪肝の改善には食事を中心とした生活習慣全般が深く関係しています。
ここまでは主に「食事でとりすぎないようにしたいもの」について解説しましたが、ここからは「積極的に食べたいもの」を含む生活習慣全体の見直しについて紹介します。

カロリー制限と減量

摂取カロリーの過剰や肥満は脂肪肝の主要な原因のひとつです。
また、肥満状態ではインスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性などがおこることにより、複数の経路から肝臓に脂肪を蓄積しやすい悪循環に陥ります。

摂取カロリーを制限して減量し、肥満を解消することで肝臓に蓄積した脂肪を減らし、肝臓に脂肪がたまりにくい状態に近づけることが可能です。

とはいえ、急激な体重減少は体への負担も大きく、体調を崩す原因になりえます。
医師や管理栄養士の指示を受けながら、緩やかなダイエットを行い、長期的に健康的な体重を維持することを目指すのが安心です。

糖質・脂質・アルコールの制限

糖質、脂質、アルコールはいずれもカロリーのある成分であり、過剰摂取は摂取カロリーの過剰につながります。

また、糖質、脂質、アルコールは摂取カロリーを増やす以外にも、ホルモン分泌や脂質代謝への影響など、様々な経路から脂肪肝を悪化させる作用があるため、脂肪肝の改善のためには摂取量を適正範囲に保つことが必要です。

アルコールに関しては禁酒が望ましいですが、糖質や脂質は必須栄養素でもあるため、摂取量をゼロにするのではなく質と量を整えることが重要になります。
カロリー制限と同様に、医師や管理栄養士の指導のもと望ましい食習慣を身に着けることが必要です。

前述した「食べてはいけないもの一覧」も参考に、効率的に食事改善を目指したいですね。

たんぱく質の適量摂取

たんぱく質は必須栄養素のひとつであり、適量摂取が必要な栄養素ですが、無理な食事制限を行うことにより不足してしまうことがあります。

特に脂質制限などで肉や魚などの食材の摂取量を極端に制限してしまうと、肉や魚に含まれるたんぱく質の摂取量も少なくなってしまい、たんぱく質の不足につながります。

たんぱく質を適量摂取しながら脂質を抑えるには、単に食事量を減らすのではなく、脂質の少ない部位を選ぶなどの工夫が必要です。

低脂質の部位であっても食べすぎはカロリーの摂取過剰につながるため注意が必要ですが、管理栄養士等の専門職に相談しながら、質の良いたんぱく質を摂取できるように食事のバランスを整えていきましょう。

野菜を食べる

野菜類は重量のほとんどを水分が占め、重さあたりのカロリーが少ない食材の代表格です。
また、ビタミンやミネラル、食物繊維の摂取源としての役割も大きく、食事の栄養バランスを整えてくれます。

野菜の摂取量が少ないと同じ量の食事でも摂取カロリーが高くなりやすいため、食事の満足感を維持しながら摂取カロリーを抑えるためにも、野菜を十分に食べるようにするのがおすすめです。

1日の野菜摂取量の目安は350gほど。
野菜のほか、海藻、きのこ類も同じような効果が期待できる食品グループですので、これらを合わせて350gを目指してもよいですね。

小鉢サイズの野菜料理で5皿程度を目標に、1日3食で上手に振り分けて摂取できるとよいでしょう。
脂肪肝の改善のためには、脂質の多い味付けは避けるとさらに良いでしょう。

運動習慣をつくる

運動習慣をつくることによって単純に消費カロリーを増やすことができ、減量に役立ちます。
加えて、筋肉量が増えることで安静にしているだけでも消費するカロリーである基礎代謝が増えるため、ダイエット後も太りにくい体づくりにつながります。

また、消費カロリーの増加以外にも、運動そのものがインスリン抵抗性を改善し、肝臓に脂肪が蓄積するのを抑制するため、積極的に取り入れたい習慣のひとつといえます。
ただし、普段運動習慣のない人が急に激しい運動をすることはケガなどのリスクも高いため、負荷の少ない運動から始めたり、トレーナーなどの専門家の指導を受けたりしながら無理のない方法を選ぶようにしましょう。

まとめ

脂肪肝は日々の食習慣が発症や進行、改善に関係している疾患です。
初期は自覚症状がありませんが、放置すると肝炎や肝硬変、肝臓がんなど重大な病気に進行するため、脂肪肝のうちに改善することが重要です。

脂肪肝の食事において制限や注意が必要な「食べてはいけないもの」には、アルコールを含むお酒のほかに、砂糖類や脂質を多く含むものが挙げられます。

これらの食材を控え、低カロリーな野菜などの食材、脂質の少ないたんぱく源を取り入れたバランスのとれた食事を心掛けましょう。
また、食事全体のカロリー管理と運動習慣によって肥満を解消し、将来にわたって太りにくいからだと生活習慣を身に着けると理想的です。

いずれにしても、自己流で行うには難易度が高く、負担も大きいことに注意が必要です。
医師や管理栄養士をはじめとした専門職の指導のもと、無理のないペースで体と生活習慣を整えていくようにしましょう。

>>脂肪肝の改善に役立つ「脂肪肝にいい食べ物」はこちらで紹介

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参考文献

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

日本消化器病学会:「NAFLD/NASH 診療ガイドライン2020」

厚生労働省e-ヘルスネット:「脂肪肝」

厚生労働省e-ヘルスネット:「アルコールと肝臓病」

監修医師

医院名 NOBUヘルシーライフ内科クリニック
院長名 藤原 信治
資格 ・医学博士
・日本内科学会認定 総合内科専門医
・日本糖尿病協会認定 療養専門医・指導医
・日本腎臓病学会認定 腎臓指導医
・日本透析医学会認定 透析専門医・指導医
・日本循環器学会認定 循環器専門医
・厚生労働省認定 難病指定医
平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。