投稿日: 2019.11.29 | 最終更新日: 2023.07.26

完全食(完全栄養食)とは?メリット・デメリットと選び方を解説

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パウダー状の完全食

人間に必要な栄養素をひとつの食品でとれる「完全食(完全栄養食)」というものが話題になっています。
通常の食事ではないものだけで栄養素摂取やそのほかの問題はないのでしょうか?
完全食の形態ごとのメリット、デメリットを整理してみましょう。

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Contents

完全食(完全栄養食)とは

完全食、あるいは完全栄養食と銘打った食品は複数ありますが、どれも基本的な考え方は同じ、栄養補給のために手間をかけたくない人向けのものとなっています。

3食食べれば1日の栄養素をとれる食品

人間は食事から得る栄養素によって、生命維持をしています。
ヒトが健康に生きていくうえで必要な栄養素はたんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン13種、ミネラル13種。
加えて、食物繊維やn-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸も望ましい摂取量が示されています。

これらの必須栄養素をひとつの食品でまかなえるとされるのが、「完全食」と呼ばれるものです。

食べ物としての形態はメーカーによってさまざま

食品としての形態にはいくつかあり、

  • プロテインサプリのように粉末を水や飲み物で溶かして飲む粉タイプ
  • もともと液体として調整されているドリンクタイプ
  • パスタやパンのような形態の食品タイプ

に分けられます。

また、自分の性別・年齢・体格・活動量によって量を調節できるものもありますが、
1日に必要な栄養素のおおむね1/3を満たした1食ごとに分けられているものもあります。

そもそも、普通の食事以外から栄養素は取れるのか

完全食そのものではありませんが、何らかの要因によって通常の食事を噛んで飲み込むといったことができなくなった人に対して、医療機関では液状や半固形状に調整した栄養剤(流動食)を提供することがあります。
内容や形状はドリンクタイプの完全食ととてもよく似たものです。
流動食のような食事形態でも、健康維持に必要な栄養素の補給は可能ですので、完全食でも同じことがいえると考えられます。

完全食のタイプ別メリット・デメリット

パスタタイプの完全食

「完全食」とひとくちに言っても、それぞれに違いがあり、メリットとデメリットもさまざまです。

大きく分けると「完全食以外の食品を摂取することが前提になっていない粉末/ドリンクタイプ」と
「完全食以外の食品と一緒に摂取することが前提になっているパスタ/パンタイプ」に分けられます。

粉末/ドリンクタイプのメリット

飲み物として摂取することができる粉末/ドリンクタイプはシンプルさが魅力です。

必須栄養素の含有量、3大栄養素のバランスが完璧

完全食のみで食事を完結することを想定されているためか、必要エネルギーに合わせて摂取すれば

  • たんぱく質・脂質・炭水化物(3大栄養素)のバランス
  • ビタミンやミネラルの摂取量

もともに問題ない範囲で摂取できそうです。

調理の手間がない

コップに注ぐ、または粉末を計量して飲み物で溶かす程度の労力で作ることができるので、時間の節約には最適といえるでしょう。

粉末/ドリンクタイプのデメリット

粉末/ドリンクタイプは、シンプルな製品ゆえの弱点も存在します。

食事の楽しみはない

飲料を飲み込むだけの食事になるため、食事としての味気なさは避けられないものになりそうです。

咀嚼能力の低下が不安

「噛む」動作がなくなるため、あごの筋肉や咀嚼機能が低下することが予想されます。
しっかり噛む習慣がないと噛む力は徐々に弱まっていくため、あまり長期間液体のみで過ごすというのは食事の幅を狭めてしまう可能性があり、健康上あまりおすすめできないポイントです。

パスタ/パンタイプのメリット

普段の食事に近いパスタやパンの形態では、従来の食事の感覚でありながら、十分に栄養素を補完できるのが魅力です。

食事らしい食べ方ができる

粉末/ドリンクタイプと比較すると、食事の形態であるため、「味気なさ」「噛む動作」という点では問題になりにくいことがあげられます。
また、味付けのソースやおかずを一緒に食べることも想定されているため、食事としてのバリエーションは大幅に広がります。

ビタミン・ミネラルの摂取は十分

ビタミンやミネラルなどの摂取量はパスタ/パンタイプの完全食のみでも十分に摂取できるようです。

パスタ/パンタイプのデメリット

パスタやパンタイプは味つけや組み合わせにアレンジの余地があるものの、手間や栄養面でのブレは避けられないものになりそうです。

調理の手間がある

注ぐだけ、混ぜるだけの粉末/ドリンクタイプと比較すると、調理や片付けの手間が増えてしまいます。

完全食そのものだけでのカロリー確保ができない

ほかの食材を組み合わせる余地をつくるためか、パスタ/パンタイプの完全食のみではたんぱく質・脂質・炭水化物のバランスが取れていません。
そのため、「完全食」と言いつつも、商品単体3食分の摂取ではエネルギーが不足しやすくなっています。

バリエーションの反面、摂取栄養素の内容にずれが生じる

味付けのソースや具材、おかずを組み合わせることができますが、その分摂取栄養素の内容にはずれが生じます。
ビタミンやミネラルはバランスよく含まれているものの、組み合わせる食材によってはカロリーオーバーになったり、塩分過多になったりということも十分あり得ます。

どちらのタイプにも共通するメリット・デメリット

栄養素の摂取に特化

どちらにも言えるのが、必須栄養素(特にビタミン、ミネラル)を摂取することに特化しているという点です。

時短・簡単

たくさんの食材を組み合わせて栄養バランスを整える手間は激減します。
また、一般的な「バランスのとれた食事」から考えると調理の手間も大幅に省けるでしょう。

1日3食を完全食にしないとバランスが取れない可能性もある

ただし、1食では「1日の1/3の栄養素」までしか確保できないという面もあります。
1日3食のうち1食を完全食からとったとすると、少なくとも完全食の1食は理想的な栄養素摂取バランスでとることができます。

しかし、ほかの2食でもある程度の栄養バランスが整っていないと、1日を通してみた時に必ずしも十分なビタミン・ミネラルが取れているとは限りません。
たんぱく質・脂質・炭水化物のバランスも、味付けや間食など、完全食以外からの食事がかかわるため、理想的なバランスになっているとは限りません。

1日1食を完全食にしていたとしても、そのほかの食事の内容がチャラになるようなものではない、という点が重要です。

ダイエット目的のものではない

完全食を活用することで摂取カロリーの管理は容易になります。
とはいえ、「量のわりに低カロリー」といった性質のものではないため、摂取エネルギーを低く抑えるという目的にはあまり適していない食品です。

味の好みがわかれる、飽きてしまう

味覚は個人差があるために全員に当てはまるというわけではありませんが、味も大きなネックになるようです。
少量の粉末、ドリンク、パスタ、パンといったものに栄養素を凝縮させているため、苦味を感じやすいとの感想を多く目にしました。

単価が高い?

どのタイプも1食当たり500~600円ほどのコストがかかり、1日3食をまかなうとなると1500円、1か月では4万5000円ほどかかります。
外食よりは安く済みますが、自炊派の人では高く感じる場合もありそうです。

手間なく栄養素をとれる、と考えれば安いかもしれませんし、
味気のない食事としては高いと感じるかもしれません。

価格に関しては、人それぞれの感覚によって違うかもしれませんね。

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食事をする意味は栄養素補給か?食べる楽しみか?

楽しく食べる女性

完全食、というものそのものは「栄養素を効率的にとる」ことを重視したものです。
そのため、どうしても味は二の次になってしまい、現状では口に合わなかったり、飽きてしまって続かないといったことが起こりやすいようです。

食事を選ぶとき、私たちはどちらを優先すべきなのでしょうか?

食事をするのはなんのため?

食事、または食べ物を食べることには3つの意味があります。

  • 生命維持のためのエネルギー・必須栄養素の補給
  • 食べ物を食べて「おいしい」「楽しい」と感じること
  • 生命維持には直接かかわらない健康増進への効果

生命維持のために食べる、というのはもちろんですが、おいしさを求めることも無意味なことではありません。
おいしい食事をとることによってリラックスしたり、元気が出たりといったことには大きな意味がありますね。

栄養もおいしさもどっちも大切

食事は栄養素摂取なのだから栄養のためにはおいしさは我慢すべき、ということはありません。
おいしく食べられて続けやすい食事の中で、なるべく栄養素もとれる、というのが理想的です。

味わいやバリエーションに関しては今後の改良によって解決していくかもしれませんね。

まとめ:利用する目的が明確な人には最適、結論は人それぞれ

時間と食事

現時点での完全食は「栄養素をなるべく簡単に摂取する」ことに特化した食品なので、
「食事に時間と手間をかけたくない人」
「生きていくための食事をしたい人」
「食事においしさや楽しみを求めない人」にとっては最適のものといえそうです。

栄養価・味・価格・手間などの価値観は人それぞれであるため、「利用すべき」とも「避けるべき」ともいいにくいものです。
(ただし、咀嚼機能の低下などの要因から、ドリンクタイプのみで食事を完結することに関しては長期的に行うことは避けたほうがいいと考えます)

自分なりのメリット・デメリットを天秤にかけるヒントになれば幸いです。

現時点でおいしさも健康もどっちも大事、という人は

完全食に頼るほどではないけれど、食事の栄養バランスは気になる、という方は、好き放題に食べるのではなく、食べる楽しみをあきらめるのではなく、食べ方を気にすることから始めるのはいかがでしょうか?

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参考文献

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

株式会社コンプ:「COMP 完全食」

ベースフード株式会社:「完全食 BASE FOOD」

噛むこと研究室:「オーラルフレイルってなに?」

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。