投稿日: 2020.02.28 | 最終更新日: 2023.07.26

ゼロカロリーの人工甘味料で太る?デメリットや危険性のウワサを解説

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調味料

砂糖やコーンシロップの代わりにゼロカロリー甘味料を使ったダイエット飲料。
カロリーを気にせず甘いソフトドリンクを楽しめると人気ですが、「人工甘味料を使ったゼロカロリー飲料はかえって太る」ともいわれることもありますが、実際はどちらが正しいのでしょうか?

甘味料そのものが体重に与える影響と、「甘味料を使った飲み物と食事との関係」について解説します。

ゼロカロリー系人工甘味料は太る?

ゼロカロリーの人工甘味料はダイエット向けの食品に使われていることが多い食材です。
しかし、その一方でゼロカロリーの人工甘味料は逆に肥満につながるという噂もありますが、これは本当でしょうか?

人工甘味料とは

「甘いもの=高カロリー=太る」というイメージは一般的なものですが、いわゆる人工甘味料は「甘いのにカロリーがない(または極めて低い)」というものです。

これら人工甘味料にはいくつかの種類がありますが、砂糖と比較して以下のような特徴があります。

  • 消化吸収されない(アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン)
  • 砂糖と同じカロリー(4kcal/g)だが、甘味が200倍強いためごく低カロリーで済む(アスパルテーム)

人工甘味料はほとんどエネルギーにならないにもかかわらず、甘い味を楽しめるためにダイエット系飲料や食品にひろく活用されています。
一方で、その安全性や健康への悪影響を心配する声もあります。

ゼロカロリー人工甘味料の健康への影響について詳しく解説した記事はこちら

人工甘味料は肥満や糖尿病の原因になる?

人工甘味料にまつわるウワサのひとつが、「人工甘味料でかえって太る」というウワサです。

そもそも、「太る」というのは食事などからの摂取エネルギーが活動などによる消費エネルギーを上回り、余った分が体脂肪として蓄積された状態を指します。
エネルギー源にならない人工甘味料が、なぜ太る原因になるのでしょうか?

人工甘味料による影響を心配する記事では、その理由として、以下のような仮説をあげています。

  • 人工甘味料の甘さに慣れてしまってより甘いものを求めるようになるのではないか?
  • サッカリン(人工甘味料のひとつ)には依存性があることがマウス実験でわかり、ヒトにも同様の効果があるのではないか?
  • 人工甘味料とブドウ糖を続けて摂取すると、水の後にブドウ糖の場合と比較して血糖値が上がりやすくなり、インスリンの分泌が多くなって体脂肪をため込むほうにはたらくのではないか?

いずれも人工甘味料の摂取量と体重の変化を調べたうえでの説ではないために鵜呑みにはできませんが、こういった仮説から「人工甘味料は太る」と考えられているようです。

ダイエット飲料と肥満の関係

ダイエットコーラ

人工甘味料等が使用された「ダイエット飲料」を含む様々な飲料と体格指数(BMI)の関係を調べた研究*1)があります。

1999年から2010年までのアメリカにおける国民健康栄養調査23965人分のデータから、BMIの違いによる飲料・食事からのエネルギー摂取について調べたものです。

グループ分けはBMIによって、以下のように分けられました。

  • 健康的な体重(BMI18.5-24.9)
  • 過体重(BMI25-29.9)
  • 肥満(BMI30以上)

ダイエット飲料と肥満1

調査結果の中で、過体重および肥満の人は健康的な体重の人と比較してダイエット飲料を多く飲んでいた、ということが分かりました。

ダイエット飲料を飲む人の割合

  • 健康的な体重(BMI18.5-24.9):11%
  • 過体重(BMI25-29.9):19%(健康的な体重と有意差あり)
  • 肥満(BMI30以上):22%(健康的な体重・過体重と有意差あり)

ダイエット飲料と肥満2

このような結果を理由に「人工甘味料は太る」といわれることがあります。
しかし、この結果は、人工甘味料が肥満の原因になることを示しているわけではありませんでした。

結果はあくまで体型別の食習慣

肥満度の高い人ではダイエット飲料を飲む人が多かったのは事実ですが、このデータからでは「ダイエット飲料を飲んだから太った」のか、「太っているからカロリーを気にしてダイエット飲料を選んでいる」のかを判断することができないためです。

この論文において調査された内容は、「体型別の食習慣」であり、「食習慣における肥満発生率」ではありません、と論文にも記述されています。

肥満の人はダイエット飲料と砂糖入り飲料のどちらも飲む割合が高い

同論文の調査では、ダイエット飲料のほかに砂糖入り飲料についても調査されていました。

ダイエット飲料を飲む人が多かった過体重や肥満の人では砂糖入り飲料の摂取量が少ない、ということがあるかもしれない…と思いましたが、実際には過体重および肥満の人は健康的な体重の人と比較して砂糖入り飲料も多く飲んでいた、という結果でした。

砂糖入り飲料を飲む割合

  • 健康的な体重(BMI18.5-24.9):59%
  • 過体重(BMI25-29.9):63%(健康的な体重と有意差あり)
  • 肥満(BMI30以上):63%(健康的な体重と有意差あり)

ダイエット飲料と肥満3

肥満の人は摂取エネルギーも多い

さらに、体型・飲んだ飲料の種類別に「飲料および固形食品からの摂取エネルギー」も比較されていました。

砂糖入り飲料を飲んだ肥満グループでは、以下のような結果が得られました。

  • 固形食品由来の摂取エネルギーは有意な差なし
  • 飲料由来の摂取エネルギーが健康体重および過体重グループと比較して多い
  • 総摂取エネルギーは過体重グループと比較して多い

一方、ダイエット飲料を飲んだ肥満グループでは、結果は以下のようになりました。

  • 固形食品由来の摂取エネルギーが健康体重および過体重グループと比較して多い
  • 飲料由来の摂取エネルギーは有意な差なし
  • 総摂取エネルギーは健康体重および過体重グループと比較して多い

ここまでをまとめると、このような特徴があることがわかります。

  • 砂糖入り飲料を飲むBMIの高い人は飲み物からの摂取エネルギーの増加によって総摂取エネルギーが高くなりがち
  • ダイエット飲料を飲むBMIの高い人は固形食品からの摂取エネルギーの増加によって総摂取エネルギーが高くなりがち

つまり、砂糖入り飲料を飲む場合、またはダイエット飲料を飲む場合のいずれにしても、肥満の人では健康体重の人と比較して「飲み物を含む食事全体からの摂取エネルギーが多い」ということが分かりました。

結論は飲み物だけでなく食べ物にも注意すべき

ダイエット飲料と肥満4

体型と食習慣の関係を調べたこの論文の結論は、「ダイエット飲料を多く飲むと太る」ということではなく、実際には以下のような内容でした。

  • アメリカの肥満者は(おそらく)体重管理のためにダイエット飲料を利用している
  • ダイエット飲料を利用した場合、飲料由来の摂取エネルギーが低くなる一方で固形食品由来の摂取エネルギーが多いという実態がある
  • アメリカにおいて、ダイエット飲料を利用する肥満者が体重を減少させるには固形食品由来の摂取エネルギーを減らす必要がある

ダイエット飲料を取り入れるだけではやせられないという現実を示したものではありそうですが、ダイエット飲料を飲むと太る、というものではないのは明らかです。

人工甘味料の有無よりも、食事スタイルが原因

ジャンクフードと野菜

ゼロカロリーの人工甘味料を使った飲み物に変えてもやせない、または太ってしまうとなると、ゼロカロリーでも太る…と感じるかもしれません。

しかし、ダイエットを成功させるためには、ゼロカロリー人工甘味料だけではなく、食事全体を見る必要がありそうです。

飲み物と食べ物の関係

ハンバーガーのセットにつける飲み物はなにを選びますか?
また、一汁三菜の和定食のセットにはどんな飲み物を選びますか?

人工甘味料入りのダイエット飲料そのものによって肥満が増えるとは言いにくいものの、(人工甘味料の有無にかかわらず)飲み物の種類が食事選びに関係する、ということはありそうです。

ソフトドリンクを飲む習慣の多い人は高カロリーなものを食べる傾向

2008年に発表された日本の研究では、砂糖入りおよびゼロカロリーのソフトドリンクの摂取量が多いほど、お菓子類や油脂類の摂取量が増え、摂取エネルギーも高くなることが分かっています。

その一方で野菜や果物、魚、乳製品、大豆製品などの摂取量は少なくなる*2)ことが分かっています。

よって、「砂糖入り、人工甘味料入りにかかわらず、ソフトドリンクの摂取量が多いとそれによく合うお菓子類や揚げ物の摂取量が増え、摂取エネルギーも増える」ということが言えるようです。

この研究でも、ポイントは「飲み物そのもの」よりも「食生活全体」といえそうです。

まとめ

私たちの生活の中で、飲み物と食べ物は意外に深く関係しているようです。

「人工甘味料入りのゼロカロリーのダイエット飲料を飲んでいるから」何を食べても太らない、ということではなく、「人工甘味料入りのゼロカロリーのダイエット飲料を飲んでいるせいで」太る、というのも誤りです。

現状、人工甘味料の影響で太る、ということは考えにくいですが、より効果的に・健康的にダイエットしたい、というのであれば、ダイエット飲料の活用は一つのきっかけとして、食事全体を見直すのがいいのではないでしょうか?

ダイエットを成功させるための食事選びについて詳しく解説した記事はこちら

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参考文献

内閣府 食品安全委員会:「食品安全関係情報詳細 欧州食品安全機関(EFSA)、食品添加物としてのアスパルテーム(E 951)の再評価に関する科学的意見書を公表」

内閣府 食品安全委員会:「食品安全関係情報詳細 欧州食品安全機関(EFSA)、食品添加物スクラロース(E 955)について提案されている幼児向け特別医療目的食品への使用拡大の安全性に関する科学的意見書を公表」

内閣府 食品安全委員会:「評価書詳細 アセスルファムカリウム」

内閣府 食品安全委員会:「評価書詳細 サッカリンナトリウム」

*1)Sara N. Bleich, PhD, Julia A. Wolfson, MPP, Seanna Vine, BA, and Y. Claire Wang, MD, ScD. Diet-Beverage Consumption and Caloric Intake Among US Adults, Overall and by Body Weight. Am J Public Health. 2014 March; 104(3): e72–e78.

*2)Yamada M, Murakami K, Sasaki S, Takahashi Y, Okubo H. Soft drink intake is associated with diet quality even among young Japanese women with low soft drink intake. J Am Diet Assoc 2008;108(12): 1997-2004.

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。