投稿日:2021.11.15 | 最終更新日:2023.08.16

離乳食で赤ちゃんの鉄分不足を防ぐには?鉄分の多い食材・レシピを紹介

生後6か月を過ぎるころから、赤ちゃんの体は鉄分不足になりやすいことが知られています。
鉄分は吸収率が低く、意識してとることが大切な栄養素です。
気を付けたい乳幼児期の鉄分不足と、鉄分摂取量を増やすポイント、離乳食レシピを紹介します。

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離乳食

赤ちゃんの離乳食で鉄分が重要な理由

粉ミルク

鉄分は必須栄養素のうち、ミネラルに属する栄養素のひとつです。

鉄分は年齢を問わず体に必要な栄養素ではありますが、離乳食中期から後期ごろの赤ちゃんにとっては、特に重要な栄養素でもあります。

離乳食中期以降の赤ちゃんに鉄分が重要な理由は、大きく分けて3つ挙げられます。

  • 6か月以降は体内の貯蔵鉄が減少すること
  • 母乳育児では鉄分が不足しやすいこと
  • 鉄分は吸収率が低いこと

それぞれについて、詳しく解説します。

6か月以降は体内の貯蔵鉄が減少

生まれたての赤ちゃんはおなかの中で蓄えた鉄分を持っていますが、生後6か月以降になると、貯蔵していた鉄分が少なくなることが知られています。
そのため、生後6か月以降は、ミルクや食事から鉄分を十分に補給できていないと鉄欠乏貧血が起こりやすくなる時期といえます。

母乳育児では鉄分が不足しやすい

貯蔵鉄の減少に加えて、母乳育児では鉄分が不足しやすいことが知られています。

母乳は基本的に赤ちゃんにとって最適な栄養バランスとなっているものの、鉄分に関しては6か月以降の必要量に対して含有量が少ないことが知られています。

日本人の食事摂取基準2020年版によると、6~11か月の赤ちゃんに対する鉄分の摂取基準は以下のようになっています。

  • 推定平均必要量(およそ半数が不足しない量)…男女とも3.5㎎
  • 推奨量(ほぼ全員が不足しない量)…男児5.0㎎、女児4.5㎎

一方、母乳に含まれる鉄分量を、1日の哺乳量を仮定して計算すると、以下のようになります。

  • 母乳(1日980mlとする)に含まれる鉄分量…0.4㎎
    ※同時期の育児用ミルクの目安量から、220ml×3回、160ml×2回と仮定

母乳から得られる鉄分量は必要とされる量に比べて少ないことがわかります。

一方、育児用ミルク(乳児用調製乳)については、基本的に母乳の栄養価を模して製造されたものですが、鉄分に関しては必要量を満たすように鉄分が強化されています。

上記の母乳と同量の場合に育児用ミルクに含まれる鉄分量を計算すると、以下のようになります。

  • 乳児用調製粉乳(1日980mlとする)に含まれる鉄分量…8.3㎎
    ※220ml×3回、160ml×2回と仮定

液体量としては母乳と同量であっても、かなり多くの鉄分が含まれていることがわかります。

このような状況から、鉄分不足は母乳育児(特に完全母乳)の場合に起こりやすく、離乳食で上手に補ってあげることが必要です。

鉄分は吸収率が低い

鉄分は栄養素の中でも吸収率が低く、2~35%程度であることが知られています。
そのため、体に実際に吸収される量よりもかなり多く食事として摂取しなければならない性質があります。

鉄分の吸収率に影響を与えることが知られている要因には以下のようなものが挙げられます。

  • 鉄分の形態(ヘム鉄、非ヘム鉄)
  • 鉄分の吸収を促進する物質の有無
  • 鉄分の吸収を阻害する物質の有無
  • 体内の鉄分の必要状態

日本人の食事内容の場合、全体としての吸収率はおよそ15%程度と考えられています。

日本人の食事摂取基準2020年版における推定平均必要量や推奨量はこの吸収率を加味した数値となっています。

離乳食に使える鉄分の多い食材

生後6か月以降の赤ちゃんの体は、徐々に鉄分不足になりやすい状態になっていってしまうため、離乳食で上手に鉄分を補給することが必要です。
そこで、離乳食中期・後期以降で取り入れやすい食材をリストアップしました。

食材10gあたりの鉄分含有量を示していますが、鉄の吸収率はさまざまな要因によって影響されるため、厳密に推定平均必要量や推奨量を満たすようにする必要はありません。

あくまで「鉄分を多く含む食品の目安」として、紹介した食材を意識して取り入れる程度に活用するのがおすすめです。

肉類・魚類

肉類・魚類は吸収率の高い(15~35%)ヘム鉄を含むことから、効率的な鉄分の摂取源となります。

食品名 10gあたりの鉄分量
レバー(鶏) 0.9㎎/10g
レバー(豚) 1.3㎎/10g
牛ひき肉 0.24㎎/10g
豚ひき肉 0.1㎎/10g
かつお 0.19㎎/10g
ツナ缶(マグロ水煮、ホワイト) 0.1㎎/10g

文部科学省:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より作成

肉や魚の場合、赤色の強い肉ほど鉄分が多い傾向があります。

gあたりの鉄分含有量では各種レバーの鉄分含有量が多いことが目立ちますが、家での調理が難しいのが難点。
ベビーフードなどを活用し、無理なく取り入れるとよいでしょう。

ツナ缶について、鉄分量のデータが得られませんでしたが、同じツナでもまぐろを原料としたものよりかつおを原料にしたもののほうが鉄分が多くなります。

野菜類・たまご・納豆

野菜類、卵、納豆に含まれる鉄分は吸収率の低い(2~20%)非ヘム鉄であるものの、使い勝手の良さが魅力です。

食品名 10gあたりの鉄分量
たまご(全卵) 0.15㎎/10g
たまご(卵黄) 0.47㎎/10g
納豆 0.33㎎/10g
小松菜(ゆで) 0.21㎎/10g
ほうれん草(ゆで) 0.09㎎/10g

文部科学省:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より作成

卵の場合、卵白よりも卵黄に多く鉄分が含まれています。
卵黄は離乳食の比較的早い時期から使えるため、取り入れやすいのが魅力です。

野菜では、鉄分と言えばほうれん草、というイメージがある一方、小松菜でほうれん草よりもさらに多く鉄分が含まれています。

粉ミルク、フォローアップミルクなど鉄分を強化した食品

この時期に不足しやすい鉄分を強化した加工品はさまざまあり、以下のようなものが販売されています。

  • ベビーフード
  • ふりかけなどの調味料類
  • 赤ちゃん用お煎餅などのお菓子類

これらの加工品は手軽に鉄分を補うことができるので、ぜひ活用してくださいね。

また、乳幼児期の粉ミルクやフォローアップミルクは鉄分が添加されていて便利な製品です。

ミルクとして飲むほかに、離乳食の食材として、牛乳の代わりに使うことができるので、取り入れてみてはいかがでしょうか?

フォローアップミルクについて詳しく解説した記事はこちら

鉄分の摂取量を増やすためのポイント

鉄分は必要量に対して吸収率が悪く、十分な量をとりにくい栄養素です。

鉄分をしっかりとるために意識したいポイントを解説します。

たんぱく質・ビタミンCと一緒に摂る

食品に含まれる成分には、鉄分(非ヘム鉄)と一緒に取ることで吸収率を高めるもの、妨げるものが存在します。

鉄分の吸収を高める成分としては、肉類のたんぱく質、ビタミンCが挙げられます。

非ヘム鉄を含む食品(野菜類、卵、納豆など)を食べるときには、お肉や野菜を一緒に摂れるとよいでしょう。

一方、非ヘム鉄の吸収を低下させる成分としては、カルシウムやタンニン、ポリフェノール類、豆類などに含まれるフィチン酸塩、大豆に含まれるたんぱく質の一部が知られています。

とはいえ、吸収を妨げる成分を含む食品であっても、ほかの栄養素の摂取源になっていること、避けることで食事の幅が狭くなるとまた別の栄養面の問題につながることから、鉄分の吸収阻害を理由に過剰に避けることは栄養面であまり望ましいことではありません。

鉄分の吸収阻害要因についてはあまり意識しすぎないことが重要です。

ヘム鉄だけにこだわらない

吸収率が高いのは肉や魚に含まれるヘム鉄ですが、日本人の鉄摂取量の70%は植物性食品由来(≒非ヘム鉄)であることも知られています。
十分な量の鉄分を摂取するには、肉類や魚類を積極的にとりいれるほか、動物性・植物性にこだわらず、いろいろな食品から鉄分をとることが大事です。

鉄分が取れる離乳食レシピ

鉄分を豊富に含む食材を取り入れた離乳食のレシピを紹介します。

  • 中期向け…青菜と卵黄のおかゆ
  • 後期向け…青のり納豆ごはんおやき

それぞれの時期の離乳食づくりにぜひ役立ててくださいね。

離乳食中期向けレシピ:青菜と卵黄のおかゆ

【材料】1食分

  • 7~5倍がゆ…50~80g
  • 小松菜(ゆでて刻んだもの)…5g(小さじ1)
  • 卵黄(ゆでてほぐしたもの)…5g(小さじ1)

【作り方】

おかゆに細かくした小松菜・卵黄を混ぜる。

【ポイント】

薄くぺらぺらしやすい小松菜、ぱさぱさになりやすい卵黄は単体では食べにくい食材ですが、おかゆに混ぜることでまとまりやすく、食べやすくなります。

離乳食後期向けレシピ:青のり納豆ご飯おやき

青のり納豆ごはんお焼き

【材料】1食分

  • 軟飯…60g
  • 小麦粉…4.5g(大さじ1/2)
  • ひきわり納豆…10g
  • 青のり…少々
  • 油…少々

【作り方】

①軟飯に小麦粉、ひきわり納豆、青のりを加えてよく混ぜる。

②フライパンに薄く油をひいて火にかけ、①を平らに広げて両面を焼く。

③両面に焼き目がついたら一口大に切る。

【ポイント】

粘りのある納豆はおやきにすることでべたつかず、食べやすくなります。
手づかみ食べの練習にも適したメニューです。

お好みでしょうゆ少々を加えてもOKです。

まとめ

鉄分の補給のポイントは、鉄分が豊富な食品を選びつつ、いろいろな食品からとるようにすることです。

フォローアップミルクやベビーフードなどをはじめとした鉄分を強化した商品も数多くありますので、上手に活用しながら鉄分不足を補ってあげたいですね。

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参考文献

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

文部科学省:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

厚生労働省:「統合医療」に係る情報発信等推進事業eJIM 海外の情報 鉄

児玉浩子. 幼児の栄養:フォローアップミルクを見直そう 小児科臨床. Vol.69 No.11 2016 1893-1899(141-147).

佐々木万里恵, 高橋孝雄. 乳児期の鉄欠乏について 小児科臨床. Vol.72 No.2 2019 193-197(73-77).

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。