
生後6か月以降は鉄分が不足しやすい時期
生まれたての赤ちゃんはおなかの中で蓄えた鉄分を持っていますが、生後6か月以降になると、貯蔵していた鉄分が少なくなり、鉄欠乏貧血が起こりやすくなることが知られています。
鉄分不足は母乳育児で起こりやすく、離乳食などで補ってあげることが必要です。
また、乳幼児期以外にも、小中学生では必要量に対して摂取量が少なくなりやすく、中でも月経のある中学生女子では貧血の頻度が高くなることが報告されています。
栄養素の中でも不足しやすい鉄分。
意識してとるようにしたいですね。
鉄はどんな食品に多い?
鉄分が多いとされる食品の鉄分含有量をまとめてみました。
レバー(鶏) 0.9㎎/10g
レバー(豚) 1.3㎎/10g
牛ひき肉 0.24㎎/10g
豚ひき肉 0.1㎎/10g
かつお 0.19㎎/10g
ツナ缶(マグロ水煮、ホワイト) 0.1㎎/10g
たまご 0.15㎎/10g
納豆 0.33㎎/10g
小松菜(ゆで) 0.21㎎/10g
ほうれん草(ゆで) 0.09㎎/10g
文部科学省:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より
日本人の食事摂取基準2020年版において、6~11か月の乳幼児では、鉄分の推定平均必要量は3.5㎎、可能であれば取りたい推奨量は男児5.0㎎、女児4.5㎎となっています。
この時期の子どもたちの食事量は少なく、さらにこれさえ食べていれば…という食品もないため、いろいろな食品から少しずつとれるようにしたいですね。
鉄分の吸収はいろいろな要素の影響を受ける
鉄分は吸収率が低めの栄養素ですが、この吸収率は様々な要素の影響を受けることが知られています。
■鉄貯蔵量
食事から同じ量の鉄分を摂取しても、体内に鉄分が不足しているときは多く吸収され、体内に鉄分が十分貯蔵されているときはあまり吸収されないことが知られています。
そのため、単に摂取量だけを見て鉄欠乏性貧血を起こしているかを判断することはできません。
■ヘム鉄・非ヘム鉄
食品に含まれる鉄分には、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種に分けることができます。
肉や魚に含まれる鉄分はヘム鉄、それ以外の卵や野菜類などに含まれる鉄分は非ヘム鉄です。
ヘム鉄は吸収率が高く15~35%、非ヘム鉄は2~20%といわれています。
■食品に含まれる各主成分
食品に含まれる成分には、鉄分(非ヘム鉄)と一緒に取ることで吸収率を高めるもの、妨げるものが存在します。
肉類のたんぱく質、ビタミンCは鉄分の吸収を高める成分です。
カルシウムやタンニン、ポリフェノール類、豆類などに含まれるフィチン酸塩、大豆に含まれるたんぱく質の一部は非ヘム鉄の吸収を低下させます。
■偏りなく食べることがポイント
吸収率が高いのは肉や魚に含まれるヘム鉄ですが、日本人の鉄摂取量の70%は植物性食品由来(≒非ヘム鉄)であることも知られています。
十分な量の鉄分を摂取するには、肉類や魚類を積極的にとりいれるほか、動物性・植物性にこだわらず、いろいろな食品から鉄分をとることが大事です。
このほか、粉ミルクやフォローアップミルクなど、鉄分を添加した乳幼児用ミルクも鉄分の補給に役立ちます。
粉ミルクとフォローアップミルクについて
乳幼児期の粉ミルクやフォローアップミルクは鉄分が添加されていて便利な製品。
見た目や使い方が似ているので混同しやすいですが、取り入れるのに適した時期など、異なる部分も多いので注意が必要です。
粉ミルクは生後すぐから使え、1歳ごろの離乳が完了するまで使える「母乳の代用品」です。
鉄分も添加されているため、母乳だけを与えているよりも鉄分不足にはなりにくい利点があります。
一方、フォローアップミルクは9か月ごろから3歳ごろまで使える「牛乳の代用品」です。
この時期に牛乳では不足しやすい鉄やビタミンを強化し、過剰となるたんぱく質やミネラルを減らすなどの調整がされています。
ミルクとして飲むほか、離乳食や離乳以降の食事にも使うことができるので、選択肢のひとつとしてとらえるのがよさそうです。
まとめ いろいろな食品をとるようにしたい
鉄分の補給のポイントは、鉄分が豊富な食品を選びつつ、いろいろな食品からとるようにすることです。
フォローアップミルクなどをはじめとした鉄分を強化した商品も数多くありますので、上手に活用しながら鉄分不足を補ってあげたいですね。
参考文献
厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書
厚生労働省:「統合医療」に係る情報発信等推進事業eJIM 海外の情報 鉄
児玉浩子. 幼児の栄養:フォローアップミルクを見直そう 小児科臨床. Vol.69 No.11 2016 1893-1899(141-147).
佐々木万里恵, 高橋孝雄. 乳児期の鉄欠乏について 小児科臨床. Vol.72 No.2 2019 193-197(73-77).