
「中性脂肪が高い」といわれたものの、何から始めたらいいかわからない、という人は多いのではないでしょうか。
中性脂肪とはなにか?というところから、食事での改善ポイントまで、ご紹介します。
Contents
中性脂肪とは?高いと何が悪い?
そもそも、中性脂肪が高いと何がいけないのでしょうか。
どのくらい高いと問題になるのでしょうか?
体内での中性脂肪のはたらきと健康とのかかわりについて紹介します。
血中中性脂肪とは
「中性脂肪」はいわゆる「あぶら」のことですが、健康診断の場合には、血液内の中性脂肪(トリグリセリド)の濃度を表したものを指します。
中性脂肪は食事から摂取したエネルギーの余りを蓄えるために肝臓で作られ、皮下脂肪組織や内臓脂肪組織に運ばれます。
よって、食後に血中TG濃度は上昇しますが、空腹時に低下するのが正常な状態です。
健康診断結果の読み方
日本人間ドック学会の2020年度判定区分表では、
■基準値…30~149㎎/dL ■軽度異常…150~299㎎/dL ■要経過観察…300~499㎎/dL(生活改善・再検査) ■要治療・要精密検査…29以下、500以上 |
となっています。ご自身の検査結果はどの範囲に入るものだったでしょうか?
150~299㎎/dLの「軽度異常」でも「脂質異常症」になります
生活改善や再検査が求められるのは血中中性脂肪300㎎/dLからですが、300㎎/dLを超えていないから生活改善や治療はしなくてもいい、とも言えません。
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版によると、「軽度異常」に分類される150㎎/dLであっても生活習慣病のひとつ「脂質異常症」と診断される範囲に入ります。
まだ大丈夫、と考えずに、早めの段階から生活改善に取り組むのが賢明です。
いわゆる「メタボ」とは…
肥満に加えて血中中性脂肪などの脂質代謝、糖代謝、血圧、喫煙習慣のうちリスクが2つ以上ある状態になると、「メタボリックシンドローム」、いわゆる「メタボ」と診断されます。*)
自覚症状はなくとも、将来的には…
血中中性脂肪が多い脂質異常症や、複数のリスクを抱えたメタボリックシンドロームであっても、体調不良などの自覚症状はないことがほとんどです。
一方で、目に見えない動脈硬化(血管の劣化)を着実に進行させ、血管をもろく・詰まりやすくしていくため、放置すると心筋梗塞や脳梗塞といった命にかかわる大きな病気を引き起こすリスクを高めます。
血中中性脂肪が高くなる理由と原因
血中中性脂肪が高くなる「脂質異常症」は「生活習慣病」のひとつであり、その名の通り日頃の生活習慣が要因となっている可能性が非常に高いものです。
ご自身と当てはまるものがないか、振り返ってみましょう。
肥満
肥満は高トリグリセライド血症だけでなく、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症などを含むすべての脂質異常症のリスクを高めます。
メタボリックシンドロームの診断基準では、
おへその高さでの腹囲が男性85㎝以上、女性90㎝以上の場合を生活習慣病につながりやすい「腹部肥満」としています。
また、日本肥満学会の定めた基準では、
身長と体重から肥満度を表すBMI【=体重(㎏)÷身長(m)2】が25以上の場合を肥満としています。
甘いものや炭水化物の摂取量が多い
中性脂肪が多い=あぶらの取りすぎ?と想像しやすいですが、実は油よりも糖類やでんぷんなどの糖質のほうが大きく影響することがわかっています。
■炭水化物+炭水化物の食事(ラーメン+チャーハン、うどん+天丼など)を食べる頻度が多い ■間食の量や回数が多い ■糖類を含む清涼飲料水などの飲み物の量や頻度が多い |
このような食習慣は糖質に偏った食事になりやすいため、注意が必要。
多くとも週1回までなど、ルールを作って頻繁になりすぎないようにするのがよいでしょう。
飲酒量が多い
お酒=肝臓というイメージは間違いではありませんが、肝臓だけが標的になるわけではありません。
アルコール摂取量が多いと血液中の中性脂肪が上がることがわかっています。
また、アルコールそのものにもエネルギー(カロリー)があるため、お酒の飲みすぎは摂取エネルギーの増加から肥満につながりやすいポイントともいえるでしょう。
検査値改善のためのポイント
血中中性脂肪が上がる要因となる生活習慣の中で、ご自身に当てはまるものはあったでしょうか?
当てはまった生活習慣を改善することで検査値もよくなってくることが期待されますが、やみくもに取り組むのは失敗のもと。
改善のためのポイントを押さえて取り組むのがおすすめです。
まずは肥満の是正
肥満はこれまでの消費エネルギーに比べて摂取エネルギーが多かったことを示します。
よって、まずは
■食べる量を減らして摂取エネルギーを減らす または ■身体活動量を増やして消費エネルギーを増やす |
といった方法をとり、体についた体脂肪を減らす必要があります。
目標は腹囲やBMIを適正範囲まで落とすことですが、短期間での減量は体への負担も大きくお勧めできません。
1か月あたり1~2㎏程度の緩やかな減量がおすすめです。
ちなみに、1㎏の体脂肪はエネルギーに換算しておよそ7200kcal。
1か月で1㎏の体脂肪を落としたい場合、体重の増減が止まっている状態から1日当たり240kcalを食事または運動でカットできると1か月1㎏のペースに当てはまります。
糖質は「ゼロ」ではなく「適量」を目指す
血中の中性脂肪は脂質よりも糖質の取る量に反応します。
よって、甘いものや糖質の摂取量が多くなりがちなひとは、
■甘いものや糖質の摂取量を減らす ■糖質の摂取割合を減らし、たんぱく質や脂質の摂取割合を増やす |
という工夫が有効です。
とはいえ、糖質の摂取量を限りなくゼロに近づけるような食生活が望ましいわけではありません。
1日3食でそれぞれお茶わん1杯程度のごはん、食パン1枚、麺1人前など、「適量」をとるのが大事なポイントです。
また、中性脂肪は脂質よりも糖が影響しやすいものの、油脂ならいくらでも取っていいわけではありません。
脂質の取りすぎは摂取エネルギー過剰にもつながりますし、血中LDLコレステロール値の上昇など、また別の脂質異常症をもたらします。
糖は悪い、油はいいといったような極端な解釈はせず、いずれの栄養素も摂取量を「適量」にとどめるのが望ましいでしょう。
アルコールは適量にとどめる
日本人の食事摂取基準2020年度版によれば、アルコールの摂取量と血中中性脂肪の数値は関連しており、1日あたり純アルコール4~30gの範囲にある人はほかの範囲の人に比べて中性脂肪の値が低いと報告されているそうです。
アルコールによる様々な影響をもとに決められた「節度ある適度な飲酒量」は1日あたり平均純アルコール20g程度まで、週2日の休肝日をつくることとされています。
純アルコール20gとは、アルコール度数5%のビールでおおよそ500ml、中ビン1本ほど。
量や頻度が「適量」よりも多いという人は、量や頻度が適量に収まるよう、気を付けてみましょう。
そのほかのお酒についての「適量」について詳しく解説した記事はこちら
また、普段の飲酒がこれよりも少ない場合でも、なるべく増やさないようにするのがよいでしょう。
トクホもいいけどメインは食生活改善
近年ではメタボリックシンドロームの改善に着目した特定保健用食品(トクホ)も多く発売されています。
摂取することで血中中性脂肪の低下などに効果があると認められたものではありますが、薬のように効果があるものではないことを理解して取り入れるのがおすすめです。
可能であれば、各商品の紹介ページなどにアクセスし、
・誰が(例:血中中性脂肪値が120~200㎎/dL以上の人)
・どのような取り方をしたら(例:1日1本、12週間継続)
・どのくらいの効果があったのか(例:平均値160㎎/dLが140㎎/dLに低下)
を確認し、納得してから取り入れるのが理想的です。
また、研究で得られた効果は平均値であり、すべての人に同じように効果が表れるとは限らないことを頭に置く必要があります。
簡単に取り入れられるトクホは魅力的な存在ですが、通常の商品に比べて割高であったり、長期間の摂取が前提であったりと、トクホ「だけ」に頼るのはあまり良い方法とは言えません。
食事や運動の見直しに「プラスするもの」として、上手に取り入れるのがおすすめです。
まとめ:一度にぜんぶを変える必要はありません
いくつかの改善点は見つかったでしょうか?
とはいっても、無理をして一度にすべての問題点を解決する必要はありません。
まずは「一番できそうなところ」を見つけ、それが定着したら次の改善ポイントを…という風に、少しずつ変えていくほうが負担が少なく、習慣化につなげやすいのではないでしょうか。
病気になってから後悔しないよう、早めの対策ができると理想的です。
参考文献 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 *)メタボリックシンドローム診断基準検討委員会. メタボリックシンドロームの定義と診断基準. 日本内科学会雑誌; 2005;94:188-203. |