辛いものでダイエットできる?辛味と熱さの関係|管理栄養士執筆

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唐辛子

辛い食べ物は食べると体が熱くなり、汗が出てくるため、体脂肪を燃焼してくれそうなイメージがありますね。

ダイエットの方法として辛い食べ物を積極的に選ぶことに意味はあるのか、調べてみました。

やせるためにはエネルギー収支マイナスが必要

世の中にはさまざまな「ダイエット方法」があふれています。
「ダイエット」とひとくちに言っても、その中身は「体脂肪を減らすこと」「むくみや便秘の解消により見た目をすっきりさせること」など、様々です。

今回の場合のダイエットは、体についた体脂肪を減らすためのものを考えます。

ダイエットにはエネルギー消費が必要

私たちヒトの体には、食事からとったエネルギー(摂取エネルギー)のうち、余ったものを主に体脂肪として貯蔵しておく仕組みがあります。
この体脂肪はある程度蓄積されているのが正常な状態ですが、過剰に蓄積されれば「肥満」につながります。

体についた余分な脂肪を減らすためには、摂取エネルギー分だけでなく、さらにこの「余ったエネルギー」を消費する必要があります。

よって、ダイエットでは
「摂取エネルギーを消費エネルギーより少なくすること」
が必要です。

体脂肪1㎏に相当するエネルギーはおよそ7200kcal。
1日あたり240kcalを摂取エネルギー以上に消費すれば、1か月で1㎏の体脂肪を減らせる計算になります。

辛い物を食べるとエネルギー消費は起こる?

人がエネルギーを摂取する方法は食事から。
一方、エネルギーを消費する方法は、運動のほか、生命維持のためのエネルギー消費(基礎代謝)が挙げられます。
生命維持のうち、体温の維持において、私たちの体はエネルギーを消費し熱を生み出しています。

辛い食べ物を食べると体が熱くなります。
辛い食べ物を食べることは、体温の上昇に関連してエネルギーを消費させるということはあるのでしょうか?

辛いものにエネルギー消費を高めるはたらきはある?

辛い=熱い?

英語では「辛い」は「ホット」ともいい、辛いと熱いはとても近いもののようです。

実際、ヒトの口の中で辛味を感じるのは、主に温度や痛みを感じる部分と同じところであることがわかっています。

例えば、トウガラシの辛味成分であるカプサイシンは、熱さを感じる「TRPV1受容体」というところに作用するため、辛さと同時に、熱さも感じるのです。
*そのほかの辛味成分には同じ「熱さ」を刺激するものもあれば、「冷たさ」を刺激するものも存在します。

しかし、辛さに応じて実際に体温が上がるということではなく、熱いと「感じる」だけであり、トウガラシなどの辛い物を食べて体脂肪の燃焼が起こるために熱くなる…というわけではないようです。

トウガラシのカプサイシンにエネルギー代謝亢進作用・体脂肪蓄積抑制作用はある

ラットの食餌にトウガラシの辛味成分カプサイシンを添加し、体重などの変化を観察した研究があります。

この研究では体重の変化こそ見られなかったものの、腎周囲脂肪組織および血清トリグリセリド濃度の低下作用がみられ、カプサイシンにはエネルギー代謝を亢進する作用(≒消費エネルギーを増やす作用)がある可能性が示唆されました。

しかし、この結果をもって、「辛い食べ物はダイエットによい」と結論づけることはできません。

作用はあるものの人での効果は不明、食べすぎにも注意

まず、この研究の対象はラットであり、ヒトの体に対して同じような効果が表れるかは分からない…ということが前提となります。

さらに注意したいポイントとしては、ラットに与えた食事は脂質エネルギー比が60%と、通常のわたしたちの食事バランス(脂質エネルギー比20~30%)とは大きく異なるという点、食事に加えた辛味成分の量はヒトの食事に当てはめると1日あたりおおよそ唐辛子10本分に相当する点があり、「唐辛子でエネルギー消費」という言葉だけをうのみにできないことがわかります。

いつもの栄養素バランスから大きく外れた食事ではかえって摂取エネルギーが増えてしまう可能性もありますし、トウガラシの食べ過ぎで胃腸に過剰な負担がかかることも考えられます。

トウガラシに含まれる辛味成分カプサイシンにエネルギー消費を高める作用があることは否定できませんが、私たちがダイエット目的で摂取するのはあまり現実的ではなさそうです。

【まとめ】やせる食べ物、はないと考えるのが確実

辛い食べ物の刺激は食欲を増進させて、かえって食べ過ぎてしまうことも考えられます。
ダイエット目的というよりも、リフレッシュのための調味料として、適度に取り入れていくのがよさそうですね。

今のところ、食べることにより摂取したエネルギー以上にエネルギーを消費し、結果的にやせる…という食べものは見つかっていません。

ダイエットをして体脂肪を減らしたいと考えるとき、確実なのは運動などの身体活動を増やして消費エネルギーを増やすことか、食事内容を見直して摂取エネルギーを減らすことです。

ありきたりな方法ですが、地道に頑張るのが一番の近道といえそうです。

参考文献

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(トウガラシ属について)

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

川端二功. スパイスの化学受容と機能性. 日本調理科学会誌 Vol. 46,No. 1,1~7(2013)

Kawada T, Watanabe T, Takaishi T, Tanaka T, Iwai K. Capsaicin-induced beta-adrenergic action on energy metabolism in rats: influence of capsaicin on oxygen consumption, the respiratory quotient, and substrate utilization. Proc Soc Exp Biol Med. 1986;183(2):250-256. doi:10.3181/00379727-183-42414

Kawada T, Hagihara K, Iwai K. Effects of capsaicin on lipid metabolism in rats fed a high fat diet. J Nutr. 1986;116(7):1272-1278. doi:10.1093/jn/116.7.1272

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。