投稿日: 2021.05.10 | 最終更新日: 2021.09.24

夜食べると太る?食事の時間とダイエットの関係|管理栄養士執筆

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
夜に食べる食事

「夜中にとる食事は太りやすい」とよく言われますが、食べる時間によって太りやすさが変わるということはあるのでしょうか?

夜中に食事をとることとダイエットの関係について、解説します。

夜間の食事は肥満につながりやすいという根拠はある?

「夜食べると太る」というのは広く認識されていることではありますが、具体的にどのようなメカニズムで太りやすくなるのか…という「科学的な根拠」は示されているのでしょうか?

夜は脂肪をため込みやすい?時計たんぱく質BMAL1のウワサ

夜の食事と肥満との関係で有名な説のひとつに、「体内時計を調節するたんぱく質が体脂肪の合成にもかかわっているため、時間によって太りやすさが変わる」というものがあります。

時間帯によって量が増減することで体内時計の調節にかかわるたんぱく質「BMAL1(ビーマルワン)」が増えると体脂肪の合成が増える*1)ことから、時間帯によって太りやすさが変わるのではないか(具体的にはBMAL1が増える時間帯では太りやすくなるのではないか)と考えられています。

マウスを使った実験にて、BMAL1が多いのは夜間である*2)ことがわかり、「夜の食事は昼の食事よりも体脂肪として合成されやすい」と考えられているようです。

マウスにおけるBMAL1の変化日経ヘルス「あなたの体は夜ごとに脂肪をため込んでいる 時間栄養学入門(2)」より作成

しかし、このデータはあくまでマウスによるものであって、活動時間や体のしくみが異なるヒトでも同じ結果が得られるとは言えません。
夜行性のマウスに対して日中に動くヒトでは全く反対の結果になるかもしれませんし、BMAL1が増えるから脂肪合成が増えるのではなく、食事による脂肪合成の増加に伴ってBMAL1が増えるという可能性も考えられるためです。

現状では、BMAL1の作用を根拠として、「夜は太る(昼は太らない)」と言い切ることはできなさそうです。

「夜遅い食事」と肥満の関係は明確にはわかっていない

また、ヒトを対象として夜遅い食事と肥満との関係を調べた研究を複数まとめた報告でも、一貫した結果は得られておらず*3)、やはり「夜食べると太る」ということは科学的に立証されているとは言えないようです。

「夜に食べる」につながることが太る原因になっているかも

夜のお菓子

現時点では科学的な根拠に欠けるため、「夜に食べると太ります」と明言することはできません。

しかし、夜中の食事はダイエットのためには良くないということは広く認識されていることでもあり、特定保健指導など専門家によるアドバイスの場面でも、肥満解消のために遅い時間の夕食や夜食を控えるように指導が行われています。

この理由として、夜に食事をすることそのものではなく、夜の食事と関連する時間以外のいくつかの要因によって、太ることにつながりやすくなる…ということが考えられるかもしれません。

考えられる理由①:夜食べるものは余分なエネルギー摂取になるかも

本来、太る(体脂肪が増える)という現象は、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることで起こります。
つまり、どの時間帯に食べたとしても、総摂取エネルギーが同じであれば、太りやすさに違いはないはずです。
このことから、食べる時間帯と太りやすさには関係がない…と考えることもできますが、夜食べることによって、意識せず「摂取エネルギーが増えてしまっている」可能性が考えられます。

たとえば、朝・昼・夕の3食と比較して、夕食を食べた後の間食(デザート)や、夜更かしによる夜食は、1日の摂取エネルギーを必要以上に増やす「余分なエネルギー摂取」となりやすい食事です。

また、帰宅時間が遅いために夕食が遅くなってしまったという場合でも、昼食と夕食の間に間食をしている場合には、そのあとに1食分の夕食を取ってしまうと、消費エネルギーに対して摂取エネルギーが大きくなってしまっているかもしれません。

私たちの生活や食べるものは毎日同じではなく、普段通りに生活をしているつもりでも、日によって摂取エネルギーに数百kcal程度のばらつきがあること*4)がわかっています。

特別たくさん食べたつもりがなくても、夜中に食事をすることによって摂取エネルギーをとりすぎる日が多くなると、体重に影響が表れることも考えられますね。

考えられる理由②:肥満につながりやすい不規則な生活習慣を反映しているかも

夜に食べる食事が肥満につながることを示す明確な科学的根拠は見つかっていませんが、夜遅い食事に関連する「不規則な生活」や「睡眠不足」が肥満と関係することが示されています。

不規則な生活の例として、日によって昼勤務と夜勤務が変わる「シフトワーク」をしている人では、メカニズムは明らかでないものの、日中勤務の人よりも肥満につながりやすいこと*5)が指摘されています。

また、睡眠不足の人では食欲を調節するホルモンの変化が見られ、睡眠時間が短いほど肥満が増えること*6)が報告されています。

夜中に食事をする人は、すべての人に当てはまるわけではないものの、不規則な生活や夜更かし・不眠による睡眠不足がある場合も考えられます。
「夜に食事をすること」そのものではなく、夜の食事につながる「不規則な生活」や「睡眠不足」に問題がある…と考えることもできそうです。

ダイエット中、夜の食事は気にするべき?

夜に食べる食事そのものが太る原因になるかは今のところ分かっていませんが、上記の理由(余分なエネルギー摂取や不規則な生活)から、ダイエット中の夜間の食事とそれに関連する生活習慣には注意したほうがよさそうです。

夜間の食事を減らすと腹囲が減少するとの報告がある

また、メカニズムは明確ではないものの、就寝前2時間以内に夕食をとることが週3回以上あった人がその習慣を改善することで腹囲の減少などの効果があった*7)と報告されています。

現状、寝る前の食事をとることが多い人では、その頻度を少なくすることでダイエットにつながるかもしれません。

このとき、「寝る2時間前までに」を守ろうとするあまり、寝る時間を遅らせるのは好ましくありません。
なるべく早い時間に食事をとるほか、仕事などでやむを得ず遅くなるという場合には間食をとることで夕食のボリュームを減らすなどの工夫をするのがよいでしょう。

夜食べないことで「余分なエネルギー摂取」を減らすことにつなげるのが◎

上で述べた通り、夜に食べる食事は余分なものになりやすいといえるため、「夜食べると太るから食べない」というルールを作ることは、余分なエネルギー摂取を抑えることにつながります。
食事量が減ることは直接ダイエットにつながりますし、さらに食事の中でも間食でとることの多い菓子類を減らすことは栄養バランス的にも悪影響は考えにくいので、理想的な食事の見直しのひとつといえるでしょう。

「夜は食べない」ルールはダイエット習慣として一定の意味を持つのでは?

現時点で寝る前に食事をする習慣がある人では、それをやめることでダイエットにつながることが示されています。
また、「夜は食べない」と決めることによって、夕食後のデザートなどのダイエット中には不必要なエネルギー摂取を減らすことができそうです。
早めの就寝を心がければ夜の食事の機会を減らすだけでなく、睡眠不足からの過食を防ぐことにもつながります。

食事をとる時間帯の違いによる太りやすさの違いについてははっきりとしたメカニズムはわかっていませんが、夜の食事を控えることや、夜に食事をしなくて済むような生活習慣を心がけることはダイエットにとって良い影響を与える…と考えることはできそうです。

ダイエット中の朝食について詳しく解説した記事はこちら

参考文献

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

厚生労働省:「標準的な健診・特定保健指導プログラム【平成30年度版】」

*1)Shimba S, Ishii N, Ohta Y, Ohno T, Watabe Y, Hayashi M, Wada T, Aoyagi T, Tezuka M. Brain and muscle Arnt-like protein-1 (BMAL1), a component of the molecular clock, regulates adipogenesis. Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Aug 23;102(34):12071-6. doi: 10.1073/pnas.0502383102. Epub 2005 Aug 10. PMID: 16093318; PMCID: PMC1189312.

*2)日経ヘルス「あなたの体は夜ごとに脂肪をため込んでいる 時間栄養学入門(2)」

*3)小澤 啓子, 鈴木 亜紀子, 髙泉 佳苗, 岩部 万衣子, 松木 宏美, 赤松 利恵, 岸田 恵津, 夜遅い食事と肥満との関連:英文文献を用いたシステマティックレビュー, 日本健康教育学会誌, 2016, 24 巻, 4 号, p. 205-216

*4)Yuko Tokudome, Nahomi Imaeda, Teruo Nagaya, Masato Ikeda, Nakako Fujiwara, Juichi Sato, Kiyonori Kuriki, Shogo Kikuchi, Shinzo Maki, Shinkan Tokudome, Daily, Weekly, Seasonal, Within- and Between-individual Variation in Nutrient Intake According to Four Season Consecutive 7 Day Weighed Diet Records in Japanese Female Dietitians, Journal of Epidemiology, 2002, Volume 12, Issue 2, Pages 85-92

*5)Karlsson B, Knutsson A, Lindahl B. Is there an association between shift work and having a metabolic syndrome? Results from a population based study of 27,485 people. Occup Environ Med. 2001 Nov;58(11):747-52. doi: 10.1136/oem.58.11.747.

*6)Taheri S, Lin L, Austin D, Young T, Mignot E (2004) Short Sleep Duration Is Associated with Reduced Leptin, Elevated Ghrelin, and Increased Body Mass Index. PLoS Med 1(3): e62.

*7)平成22年厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)「特定健診・保健指導開始後の実態を踏まえた新たな課題の整理と保健指導困難事例や若年肥満者も含めた新たな保健指導プログラムの提案に関する研究」(研究代表者 横山徹爾)

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。