マクドナルドなどのファストフードは体に悪い?
マクドナルドをはじめとしたファストフードチェーンは子どもたちにも大人気の飲食店です。
その一方で、健康に良くないというイメージも少なからずあり、子どもたちに食べさせるのをためらってしまう人も少なくないのではないでしょうか。
結論から言うと、マクドナルドをはじめとしたファストフードは、明確に体に悪い食事という訳ではありません。
ただし、栄養的に偏っている特徴を持つため、ファストフードばかリ食べていることで摂取栄養素の不足や過剰につながりやすいといえます。
有害なものが含まれるわけではない
ファストフードであっても、一般的なチェーン店が正規の方法で調理・提供しているものに対して、一切食べさせるべきではないような「有毒・有害なものが含まれる」ということはありません。
子どもであっても、ファストフードは体に悪いから一切食べさせない…というほどの配慮は必要ないものと考えましょう。
栄養バランスを整えるのが難しい
ファストフード全般に関して、含まれる栄養素に偏りがあり理想的な栄養バランスとは異なる、という点が「体に悪い」といわれる所以です。
有害な成分が含まれるのではなく、「食べる量や頻度が多いと健康的な食事の栄養バランスから外れやすくなる」ということが問題点といえるでしょう。
とはいえ、ファストフードの栄養面での特徴を知り、工夫することで栄養バランスを整えることは十分に可能です。
ファストフードの栄養面での問題点
ファストフードが問題となるのは栄養バランスが整いにくいため。
実際にファストフードチェーンの商品情報をもとに、どのような特徴があるのか調べてみました。
今回は子供向けのセットを想定して、以下のメニューの栄養価を計算しました。
- チーズバーガー
- フライドポテト(Sサイズ)
- コーラ(Sサイズ)
このセットメニューの栄養価を、日本人の食事摂取基準2020年版より、6~7歳男児の基準値と比較しました。
エネルギーや各種栄養素の摂取量は、1日を通した食事すべてを合計して100%に近いと不足や過剰の心配がないと考えることができます。
(食塩のみ、基準値未満の摂取に抑えることが目標とされているため、100%を下回ることを目標としています)
1日3食を基本とすると、1回の食事では33%前後が適量と考えることができます。
栄養成分値 | 1セットの栄養価 | 基準に対する充足率(6~7歳男児) |
エネルギー | 622kcal | 40.1% |
たんぱく質 | 18.7g |
32.2%※ |
脂質 | 24.7g | 57.3%※ |
炭水化物 | 81.5g | 35.1%※ |
カルシウム | 135mg | 22.5% |
鉄 | 1.8mg | 32.7% |
ビタミンA | 61㎍ | 15.3% |
ビタミンB1 | 0.23mg | 28.8% |
ビタミンB2 | 0.17mg | 18.9% |
ビタミンC | 10mg | 16.7% |
食物繊維 | 4.1g | 41% |
食塩相当量 | 2.4g | 53.3%(少ないほうがいい) |
※たんぱく質、脂質、炭水化物の目標値は範囲で示されています。今回は比較のため、目標値をたんぱく質:13~20%E→15%E、脂質:20~30%E→25%E、炭水化物:50~65%E→60%Eとしました
これらの数値から考えると、今回のセットメニューの栄養的な特徴は
- 脂質が多い
- 食塩が多い
- カルシウム、ビタミンの摂取源となる野菜、果物、乳製品が少ない
という点が挙げられます。
1回の食事で目に見えて問題があるわけではありませんが、このような食事の頻度が高くなると、習慣的な食事・栄養素摂取の偏りから、肥満や生活習慣病につながりやすい食習慣を作ってしまうかもしれない…という心配があります。
脂質が多い
ファストフードのメニューにおいて共通する栄養的な特徴のひとつが「脂質が多い」ということです。
肉類や揚げ物の比率が多く、どうしても理想の栄養バランスよりも脂質をとりすぎやすい傾向があります。
脂質は他のカロリー源と比較して重さあたりのカロリーが高い栄養素です。
- 脂質…1gあたり9kcal
- たんぱく質…1gあたり4kcal
- 炭水化物…1gあたり4kcal
そのため、量のわりにカロリーが高くなりやすく、カロリーの取りすぎにつながりやすいと考えることができます。
また、脂質の摂取過剰を通じたカロリー摂取過剰によっては肥満や将来的な生活習慣病の発症リスクの懸念があります。
食塩が多い
ファストフードを含めた外食では味覚的なインパクトのために味付けが強めについていることが多く、全般的に食塩が多く含まれています。
食塩の構成物質であるナトリウムは必須栄養素ではある一方、取りすぎによっては高血圧などの生活習慣病のリスクを高めることが知られています。
現代の日本人の食生活では食塩(ナトリウム)をとりすぎる傾向にあり、摂取量を減らしたい栄養素のひとつです。
野菜、果物、乳製品が少ない
ファストフードでは野菜や果物の量が少なくなりがちです。
今回チェックした栄養価では、ビタミンAやビタミンCが特に少ないことがわかります。
ビタミンAは緑黄色野菜、ビタミンCは野菜全般及び果物類から主にとれる栄養素ですが、ファストフードでは全般的に野菜や果物が少ないために、このような部分で栄養価の偏りがみられます。
また、ファストフードではカルシウムの摂取源となる乳製品も比較的とりにくい食品群といえます。
今回はチーズバーガーを選択したため比較的カルシウムが取れる計算になっていますが、チーズ等が含まれないメニューも多く、栄養バランスの偏りにつながります。
ファストフードの栄養バランスを改善する方法
脂質・塩分のとりすぎにつながりやすく、ビタミンやカルシウムの摂取源となる野菜・果物・乳製品が不足しやすいファストフード。
とりすぎやすい、または不足しやすい栄養素をカバーする方法を紹介します。
サイドメニューを野菜にする
マクドナルドをはじめとしたハンバーガショップでのセットメニューはフライドポテトが定番ですが、野菜を中心としたサイドメニューが選べることも。
飲み物では、野菜ジュースをとることで(ある程度ですが)野菜の栄養素を補うことができます。
フライドポテトをえだまめコーンに変更した場合、商品による栄養価は以下のように変わります。
栄養成分値 | フライドポテト(S) | えだまめコーン |
エネルギー | 225kcal | 83kcal |
たんぱく質 | 2.9g | 5.2g |
脂質 | 11.2g | 3.0g |
炭水化物 | 28.0g | 9.6g |
カルシウム | 10㎎ | 27㎎ |
鉄 | 0.6㎎ | 1.1㎎ |
ビタミンA | 0㎍ |
7㎍ |
ビタミンB1 | 0.13㎎ | 0.10㎎ |
ビタミンB2 | 0.01㎎ | 0.06㎎ |
ビタミンC | 9㎎ | 8㎎ |
食物繊維 | 2.6g | 2.9g |
食塩相当量 | 0.5g | 0.2g |
エネルギー、脂質、炭水化物、食塩が減り、たんぱく質、カルシウム、鉄、食物繊維の摂取を増やすことができます。
ビタミン類はあまり変わりませんが、一部の栄養素についてはバランスが改善されます。
また、コーラを野菜ジュースに変更した場合の比較も行ってみました。
栄養成分値 | コカ・コーラ(S) | 野菜生活100(S) |
エネルギー | 90kcal | 79kcal |
たんぱく質 | 0.0g | 0.6g |
脂質 | 0.0g | 0.2g |
炭水化物 | 22.7g | 18.7g |
カルシウム |
4㎎ |
18㎎ |
鉄 | 0.0㎎ | 0.2㎎ |
ビタミンA | 0.00㎍ | 673㎍ |
ビタミンB1 | 0.00㎎ | 0.04㎎ |
ビタミンB2 | 0㎎ | 0.03㎎ |
ビタミンC | 0㎎ | 3㎎ |
食物繊維 | – | 0.4g |
食塩相当量 | 0.0g | 0.2g |
コーラを野菜ジュースに変更すると、カルシウム、ビタミンAが増加。ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、食物繊維もわずかながら増加します。
ポテトは塩抜きにして調整する
マクドナルドではフライドポテトを「塩抜き」でオーダーすることが可能です。
塩を別添にしてもらうことで、薄めの塩味に調整することができ、減塩になりますのでぜひ試してみてくださいね。
前後の食事で調整する
ファストフードの食事では、脂質や食塩が多く、野菜・果物などが少ない点が特徴でした。
その前後の食事で足りない部分を補うことで、栄養面は十分にカバーすることができます。
具体的には、
- 油の少ない食材・調理法にする
- 薄味を心掛ける
- 野菜、果物、豆類、キノコ類などをたっぷりとれるメニューにする
栄養バランスは毎食完璧にする必要はなく、1日、1週間などの一定期間である程度バランスがとれていれば問題ありません。
食べる頻度を決める
ファストフードは工夫をすれば健康面で問題なく食べられますが、頻度が高いと調整も難しくなってしまいます。
また、濃い味付けに慣れてしまい、ほかの食事でも脂質や塩分をとりすぎやすくなることも考えられます。
ファストフードは頻繁に食べるものではないと子どもに考えてもらうためにも、「たまに食べる特別なごはん」と位置付け、月に1~2回などの頻度を決めて利用するようにしたいですね。
まとめ
ファストフードは何かと悪者にされがちですが、ファストフードそのものが悪いのではなく、多用することによって栄養バランスの乱れた食習慣が身についてしまうことが問題です。
そうならないためには、普段からバランスの取れた食事が習慣づけられていることが理想です。
ごはんやパンなどの主食、肉や魚などメインとなる主菜、野菜たっぷりの副菜、そのほかに果物や乳製品などを偏りなくとれる食事ができていれば、たまに食べるファストフードやそのほか、特別な食事が問題になることはありません。
食事は体の健康を保つためのものでもありますが、それだけではなく、楽しみのために食べるものでもあります。
あまり厳密に考えすぎず、工夫しながら楽しめるのが一番ですね。
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参考文献
厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書
社団法人日本栄養士会監修:「食事バランスガイド」を活用した栄養教育・食育実践マニュアル.第一出版,2011.