
ファストフードは子どもの健康に悪いの?
「ファストフードは体に悪いから一切食べさせないようにしている」という例も聞くことがありますが、一般的なチェーン店で提供されるものに対して、一切食べさせるべきではないような「有毒・有害なものが含まれる」ということはありません。
ファストフードの問題点はそのものに含まれる成分ではなく、「習慣化すると健康的な食事の栄養バランスから外れやすくなる」こと。
食事の工夫次第で栄養バランスを整えることは十分に可能ですし、食べさせてはいけないものではないので、安心してくださいね。
ファストフードの栄養バランスの問題点は?
ファストフードが問題となるのは習慣化すると栄養バランスが乱れやすくなるため。
実際にファストフードチェーンの商品情報をもとに、どのような特徴があるのか調べてみました。
今回は子供向けのセットを想定して、
・チーズバーガー
・フライドポテト(Sサイズ)
・コーラ(Sサイズ)
の栄養価を計算します。
栄養素等の摂取基準値は、6~7歳男児のデータを使用しました。
栄養成分値 1セットの栄養価 食事摂取基準の充足率(6~7歳男児)
エネルギー 622kcal 40.1%
たんぱく質 18.7g 32.2%
脂質 24.7g 57.3%
炭水化物 81.5g 35.1%
カルシウム 135mg 22.5%
鉄 1.8mg 32.7%
ビタミンA 61㎍ 15.3%
ビタミンB1 0.23mg 28.8%
ビタミンB2 0.17mg 18.9%
ビタミンC 10mg 16.7%
食物繊維 4.1g 41%
食塩相当量 2.4g 53.3%(少ないほうがいい)
*たんぱく質、脂質、炭水化物の基準値は目標値よりそれぞれ13~20%E→15%E、20~30%E→25%E、50~65%E→60%Eとしました
エネルギーや各種栄養素の摂取量は、1日を通した食事すべてを合計して100%に近いと不足や過剰の心配がないと考えることができます。
(食塩のみ、基準値未満の摂取に抑えることが目標とされているため、100%を下回ることを目標としています)
1日3食を基本とすると、1回の食事では33%程度が適量と考えると、今回のセットメニューの栄養的な特徴は
・エネルギー、脂質が多い
・食塩が多い
・カルシウム、ビタミンが少ない
という点が挙げられます。
また、数値としては反映しにくいですが、野菜や果物の摂取が少ないことも挙げられます。
1回の食事で目に見えて問題があるわけではありませんが、このような食事の頻度が高くなると、習慣的な食事・栄養素摂取の偏りから、肥満や生活習慣病につながりやすい食習慣を作ってしまうかもしれない…という心配があります。
ファストフードの栄養バランスをカバーする方法
脂質・塩分のとりすぎにつながりやすく、野菜、カルシウムやビタミン類が不足しやすいファストフード。
とりすぎやすい、または不足しやすい栄養素をカバーする方法を紹介します。
■サイドメニューを野菜にする
セットメニューはフライドポテトが定番ですが、サラダやコーンなどの野菜メニューが選べることも。
飲み物では、野菜ジュースをとることで(ある程度ですが)野菜の栄養素を補うことができます。
フライドポテトを枝豆&コーンに変更した場合、エネルギー、脂質、炭水化物、食塩が減り、たんぱく質、カルシウム、鉄、食物繊維の摂取を増やすことができます。
ビタミン類はあまり変わりませんが、一部の栄養素についてはバランスが改善されます。
さらに、コーラを野菜ジュースに変更すると、カルシウム、ビタミンAが増加。ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンCもわずかながら増加します。
■前後の食事で調整する
ファストフードの食事では、脂質や食塩が多く、野菜・果物などが少ない点が特徴でした。
その前後の食事で足りない部分を補うことで、栄養面は十分にカバーすることができます。
具体的には、
・油の少ない食材・調理法にする
・薄味を心掛ける
・野菜、果物、豆類、キノコ類などをたっぷりとれるメニューにする
栄養バランスは毎食完璧にする必要はなく、1週間などの一定期間である程度バランスがとれていれば問題ありません。
■ファストフードは特別な食事に位置付ける
とはいえ、あまり頻度が高くなると栄養面をカバーする負担も大きくなってしまいます。
頻繁に、日常的に食べるものではないと子どもに考えてもらうためにも、「たまに食べる特別なごはん」と位置付け、月に1~2回などの頻度を決めて利用するようにしたいですね。
まとめ バランスの良い食事が身についているのが理想
ファストフードは何かと悪者にされがちですが、ファストフードそのものが悪いのではなく、多用することによって栄養バランスの乱れた食習慣が身についてしまうことが問題です。
そうならないためには、普段からバランスの取れた食事が習慣づけられていることが理想です。
ごはんやパンなどの主食、肉や魚などメインとなる主菜、野菜たっぷりの副菜、そのほかに果物や乳製品などを偏りなくとれる食事ができていれば、たまに食べるファストフードやそのほか、特別な食事が問題になることはありません。
食事は体の健康を保つためのものでもありますが、それだけではなく、楽しみのために食べるものでもあります。
あまり厳密に考えすぎず、工夫しながら楽しめるのが一番ですね。
参考文献
厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書
社団法人日本栄養士会監修:「食事バランスガイド」を活用した栄養教育・食育実践マニュアル.第一出版,2011.