投稿日:2022.02.07 | 最終更新日:2021.04.21

子どもの食物アレルギーは予防できるもの?|管理栄養士執筆

乳児期に起こりやすい「食物アレルギー」。

食物アレルギーの発症を防ぐために、妊娠中や授乳中のお母さんの食事や、離乳食の開始時期などについて不安に思っている人も少なくないのではないでしょうか?

これまでの研究からわかっている「食物アレルギーを予防するためにできること」をまとめました。

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
離乳食

食物アレルギーの予防についてはいろいろな説がある

子どもの食物アレルギー予防に関しては、様々な「予防法」がウワサされています。
妊娠中・授乳中のお母さんの食事、離乳食の開始時期、アレルギー対応食品の使用…などですが、効果はあるのでしょうか?

■妊娠中・授乳中からアレルゲンになりやすい食品は食べないほうがいい…というウワサ
→ウソ
厚生労働省から発表されている「授乳・離乳の支援ガイド(2019改訂版)」では、子どもの食物アレルギーの予防のために、妊娠・授乳中のお母さんが特定の食品を避けたり、反対に過剰に摂取したりすることに「効果はない」としています。

妊娠中・授乳中はそうでない時期と比べても、より多くの栄養素が必要な時期です。
また、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などが起こりやすく、食事のバランスが通常以上に大事な時期でもありますので、むやみに特定の食品を避けたり、とりすぎたりせず、バランスよく食べることが大切です。

■粉ミルクではなく、母乳だけで育てるとアレルギーになりにくいというウワサ
→ウソ
赤ちゃんに母乳を与えることそのものは、赤ちゃんに最適な成分組成であること、消化器感染症の減少、お母さんの体の回復促進といった様々なメリットがありますが、食物アレルギーの発症予防には効果がないという研究結果が出ています。

反対に、粉ミルクを与えた赤ちゃんが食物アレルギーになりやすい…ということもありません。
赤ちゃんやお母さんの体調、育てる環境に応じて、どちらを選んでも問題のあることではありません。

■アレルギー用粉ミルクを飲ませると乳アレルギーの予防になるというウワサ
→ウソ
乳アレルギーをもつ赤ちゃんのため、アレルゲンを除去した粉ミルクも存在しますが、食物(乳)アレルギー予防のために取り入れることについての効果は現在では否定する研究報告が多いようです。
粉ミルクに限らず、アレルゲンの除去は自己判断で行わず、必ず医療機関に相談するようにしましょう。

■食物アレルギー予防のため、離乳食の開始(または、アレルゲンになりやすい食品の摂取)はなるべく遅らせるほうがいいというウワサ
→ウソ
離乳食の開始はおおむね5~6か月ごろが目安ですが、これよりも遅く始めたり、たまごや乳製品などアレルゲンになりやすい食品を食べるのを遅らせたりすることにも、予防効果についての科学的根拠はないようです。

むしろ、食物アレルギーのリスクが高いアトピー性皮膚炎をもつ赤ちゃんにおいては、たまごの摂取が遅くなるほどたまごアレルギーを発症するリスクが高くなることもわかってきています。
心配な場合は医師の助言を受け、様子を見ながら新しい食材を試していくのがよいでしょう。

むやみな「除去」にメリットはなさそう

かつては食物アレルギーの予防法として実践されてきた方法でも、現代においてはその効果が否定されているものが多いようです。

お母さんの食事についても、赤ちゃんの食事についても、必要のない制限は行わず、その時期に適した食事をとることが大切です。

まとめると、
・妊娠中、授乳中のお母さんは特定の食品にこだわらず、バランスの取れた食事を心掛ける
・母乳育児のメリットはあるが、アレルギーの予防効果はない
・乳アレルギーのない赤ちゃんにアレルギー用ミルクを与える意味はない
・離乳食は適切な時期に始め、徐々に食べられるものを増やしていく。
(例:卵黄は5~6か月ごろおかゆに慣れてきてから、全卵や乳製品は7~8か月ごろから)

となります。

食物アレルギーのリスク因子になるものは?

妊娠・授乳中のお母さんの食事や、母乳かミルクか…などの違いは食物アレルギーのリスクとは関係がありませんが、それ以外で食物アレルギーのリスク因子となることがわかっているものもあります。

厚生労働省から発表されている「授乳・離乳の支援ガイド(2019改訂版)」、日本小児アレルギー学会の「食物アレルギー診療ガイドライン2016」では、
・遺伝的素因や家族歴
・皮膚バリア機能の低下
・アトピー性皮膚炎
・出生季節(秋冬)
・特定の食物の摂取開始時期の遅れ

…などが指摘されています。

スキンケアが間接的な食物アレルギー予防になるかも

食物アレルギーのリスク因子として、アトピー性皮膚炎や皮膚バリア機能の低下が挙げられていました。

アトピー性皮膚炎に対しては保湿スキンケアに予防効果が、
湿疹に対しては妊娠・授乳中のお母さんがプロバイオティクスを摂取することで減少効果がある可能性が示されています。

食物アレルギーそのものの予防効果は証明されていないものの、
・妊娠・授乳中のお母さんがプロバイオティクス(生きた有用な微生物を含むヨーグルトなどの食品)を摂取すること
・保湿によるスキンケアを行うこと
は食物アレルギーの発症リスクとなる湿疹やアトピー性皮膚炎の予防・減少効果を介した「間接的な取り組み」として行ってもよいかもしれません。

赤ちゃんのスキンケア

まとめ 不安な場合は必ず医療機関に相談して!

食物アレルギーの予防に関して、また食物アレルギーのような症状がみられた場合にも、自己判断での対応は勧められません。

不安なことがある場合には医師の診断を受け、専門職のサポートを受けるようにしてくださいね。

参考文献

厚生労働省:「授乳・離乳の支援ガイド(2019改訂版)」

日本小児アレルギー学会:「食物アレルギー診療ガイドライン2016ダイジェスト版」

食物アレルギー研究会:「食物アレルギーの診療の手引き2017」

日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会:「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。