糖尿病の改善・進行予防には、食事が大きく関係しています。
糖尿病の食事療法において、「絶対に食べてはいけない」という食べ物はありませんが、血糖値の上昇や関連する疾患のリスクに関連することから、「なるべく避けるべき食べ物」は少なからず存在します。
この記事では、糖尿病で食事の改善を考えている方に向けて、摂り過ぎないように注意すべき食べ物や飲み物の具体例をランキング形式で紹介します。
糖尿病の改善のために気を付けたい食事全般に対するポイントについても紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
Contents
糖尿病とは?原因と基準値について解説
糖尿病は血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高い状態が慢性的に続き、血管の障害をもたらす病気です。
自覚症状がないことも多いものの、病状によってはのどの渇きや尿量の増加、体重減少などの症状が現れることもあります。
糖尿病は1型と2型があり、それぞれ発症する原因が異なりますが、いずれもインスリン(血糖値を下げる働きを持つホルモン)の分泌や作用が不十分になることで起こります。
- 1型糖尿病…自己免疫疾患などが原因となる
- 2型糖尿病…遺伝素因、肥満、運動不足などが原因となる
糖尿病のうち、2型糖尿病が大多数を占めることが知られています。
今回の記事では、2型糖尿病について解説していきます。
糖尿病の診断基準はいくつかの検査値と症状の有無などから総合的に判断されます。
- 空腹時血糖…126㎎/dl以上
- ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値…200㎎/dl以上
- 随時血糖…200㎎/dl以上
- HbA1c…6.5%以上
- 糖尿病の典型的症状…口渇、多飲、多尿、体重減少
これらの検査値は一般的な健康診断の項目でもあるため、これまで糖尿病を指摘されていない人でも、定期的な健康診断を受けることでも血糖コントロールの状態をチェックすることができます。
糖尿病は合併症を防ぐため食事が重要
糖尿病はさまざまな合併症、併発症の原因となることが知られています。
- 急性合併症…意識障害、昏睡
- 慢性合併症…網膜症、腎症、神経障害
- 高血糖で促進される動脈硬化性疾患…心筋梗塞、脳梗塞、下肢の閉塞性動脈硬化症
- 糖尿病に併発しやすい疾患…すい臓がん、肝臓がん、歯周疾患、骨折、認知機能障害
糖尿病の治療の目的はこれらの疾患を予防することで、生活の質を保つことにあります。
糖尿病の治療には食事療法、運動療法、薬物療法がありますが、このうち食事療法は特に重要な役割を持ちます。
その理由は、血糖値は食事に含まれる糖質の影響を大きく受けるものであることに加え、糖尿病に関連する病気の予防や改善には様々な栄養素がかかわっているためです。
食事内容を見直すことで、以下のような効果が得られることが知られています。
- 体重の減少
- HbA1cの低下
- 血中脂質(中性脂肪、LDLコレステロールなど)の改善
- 血圧の低下
ただし、すべての糖尿病の人に最適とされる食事内容がある訳ではなく、糖尿病の病態のほか、年齢や合併症を考慮して個別に考える必要があります。
糖尿病を悪化させる食べ物のポイント
糖尿病の治療においては食事の見直しが重要です。
そのため、食べ物の種類によっては、含まれる栄養素量等から血糖値の改善や併発症の予防のために取り過ぎないように控えたいものも存在します。
糖尿病の食事療法において注意が必要な食品の特徴を一覧にすると、以下の5点が挙げられます。
- カロリーの高い食べ物
- 糖質が多い、血糖値を上げやすい食べ物
- 脂質、特に飽和脂肪酸が多い食べ物
- アルコールを含む酒類
- 塩分の多い食べ物
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
カロリーの高い食べ物
肥満は糖尿病の主要な発症リスクのひとつであり、肥満の解消は糖尿病の改善のために特に重要視されるポイントです。
カロリーの高い食べ物は同じ食事量でも摂取カロリー(エネルギー)の過多につながりやすいといえるため、食べ過ぎに注意が必要です。
重さあたりのカロリーが高い食品の特徴としては、具体的に以下のようなものが挙げられます。
- カロリーのある栄養素が多い
- カロリーのない食品成分(≒水分)が少ない
カロリーのある栄養素は主に以下の4種類が挙げられ、これらの成分の重さに占める割合が高くなるほど高カロリーな食品になります。
- たんぱく質…4kcal/g
- 脂質…9kcal/g
- 炭水化物(糖質)…4kcal/g
- アルコール…7kcal/g
高カロリーな食べ物は絶対に食べてはいけないということではありませんが、適正エネルギーを守るためには、控えめにすることを意識する必要があります。
糖質が多い、血糖値を上げやすい食べ物
糖質(炭水化物)は体内で消化・吸収されて血糖値を上げるため、糖尿病では取り過ぎに注意する必要があります。
ただし、糖質はできるだけ控えるべき、ということではなく、あくまで取りすぎないよう、総摂取エネルギーの50~60%程度の割合でとるのが良いとされています。
また、食事のうち糖質の摂取を極端に制限する「糖質制限食」については効果の是非がまだ確認できていないことから現時点では推奨されていません。
「糖質」は以下のような物質として食品中に含まれています。
- ブドウ糖(ガムシロップなど)
- ショ糖(砂糖、砂糖を使った食品)
- でんぷん(米、パン、麺、芋類など)
特に砂糖やガムシロップのような糖類を多く含む食品は血糖コントロールを乱し、血中脂質の増加や血圧の上昇を招くことが知られているため、避けたほうが良いでしょう。
具体的には、糖質の摂りすぎにつながりやすい間食(お菓子類)や主食(米、パン、麺など)の取り過ぎを避けるよう心掛けましょう。
また、同じ量の糖質を含む食品であっても、糖質の種類や食品中に含まれる糖質以外の成分によって、血糖値への影響の度合いは異なります。
食品を食べた時の血糖値の上がりやすさはグリセミックインデックス(GI)で表され、GI値が高い食品は一般に血糖値を上げやすい食品といえます。
ただし、GI値は同時に食べるほかの食品等の影響を受けるため、単純な数値比較では判断できない点に注意が必要です。
脂質、特に飽和脂肪酸が多い食べ物
質だけでなく、脂質の摂りすぎにも注意が必要です。
脂質は重さあたりのカロリーが高く(9kcal/g)、脂質の摂り過ぎは摂取カロリーの過剰を介して肥満の改善を妨げます。
また、脂質を構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸は糖尿病の発症リスクを高めることが知られており、摂取量を少なく抑えるべきといわれています。
飽和脂肪酸に対して、多価不飽和脂肪酸では糖尿病の発症リスクやHbA1cの低下に役立つことが知られています。
まとめると、以下のような管理ができると望ましいでしょう。
- 摂取カロリー過多につながるような脂質の多い食べ物の摂り過ぎを避ける
- 飽和脂肪酸の多い食品(肉、乳脂肪)を避け、多価不飽和脂肪酸の多い食品(植物性油脂、魚)から脂質を摂取する
アルコールを含む酒類
アルコールはカロリーのある物質であることに加え、お酒には糖質が含まれることも多いことから、余分なカロリー摂取につながりやすい食品のひとつといえます。
また、お酒を飲む場面では食事内容の乱れが起こりやすく、血糖コントロールや血清脂質に悪影響を及ぼしやすいことから、お酒はなるべく控えることが望ましいとされています。
血糖コントロールやその他の検査値、生活習慣によっては飲酒がOKとされる場合もあれば、肝臓にトラブルがある場合などでは禁酒が必要な場合もあるため、個別に判断する必要があります。
具体的な飲酒の可否については医師の指示に従うようにしましょう。
塩分の多い食べ物
塩分は血糖値に直接の影響は与えませんが、2型糖尿病では食塩の摂り過ぎによる高血圧を起こしやすく、血管の負荷を増やしやすいことから、食塩の摂り過ぎに注意する必要があります。
1日あたりの食塩摂取量は以下のように示されています。
- 男性…7.5g未満
- 女性…6.5g未満
これは日本人の食事摂取基準2020年版における、健康な人の食塩摂取量の目標値と同じもので、糖尿病の有無にかかわらず気を付けたい数値となっています。
実際の食生活では、以下のような食品に注意が必要です。
- 調味料
- 漬物
- 干物
- 塩蔵品(塩漬けの加工品)
薄味を心掛けるほか、味わいを深めてくれる食材や減塩調味料を活用しながら、無理なく食塩摂取量を下げていけるとよいでしょう。
糖尿病の食事で避けたい「ダメなもの」ランキング
ここまで解説した「糖尿病に悪い食べ物」の特徴を持つ具体的な食べ物・飲み物をランキング形式で紹介します。
血糖値を上げるもののほか、糖尿病の合併症や併発症につながりやすい食品をまとめました。
いずれも「絶対に食べてはいけないもの」ではありませんが、できるだけ避けたほうが糖尿病の改善に良い影響をもたらします。
中には、「健康的と思われがちでも実は避けたいもの」もありますので、ぜひ参考にしてくださいね。
1位:清涼飲料水(ジュース、甘いコーヒー・紅茶、スポーツドリンク)
- 炭酸ジュース(コーラ、サイダーなど)
- その他のジュース類
- 加糖のコーヒー
- 加糖のお茶
- スポーツドリンク
これらの飲み物は「清涼飲料水」といわれ、砂糖や果糖ブドウ糖液糖(いわゆるガムシロップ)が多く含まれています。
また、糖類を多く含むのに対し、ビタミンやミネラルといった必須栄養素は基本的にほとんど含まれていないため、あえて摂取する必要性のない食品といえ、さらに「飲み物」であるために、無意識の糖質・カロリー摂取につながりやすい点も特徴です。
清涼飲料水のような砂糖・液糖を多く含む食品は血糖コントロールを乱し、メタボリックシンドロームの助長を招くことから、糖尿病診療ガイドライン2019において、糖尿病の改善のためにはなるべく避けることが望ましいとされています。
清涼飲料水はなるべく摂取を控えるか、低カロリー甘味料等を活用したゼロカロリーのものを選ぶようにしましょう。
ただし、低カロリー甘味料についても食習慣全体から見た場合にメタボリックシンドロームのリスクを上げる可能性があることも指摘されているため、過剰な摂取は避けたほうが安心です。
2位:甘いお菓子、スイーツ、菓子パン
- 甘いお菓子類(飴、チョコレート、グミ、マシュマロ、クッキーなど)
- スイーツ(ケーキ、アイスクリーム、プリン、ゼリー、ドーナツなど)
- 菓子パン(あんパン、ジャムパン、クリームパン、メロンパン、デニッシュパンなど)
これらの甘いお菓子、スイーツ、菓子パンも清涼飲料水と並んで砂糖が多く含まれて高カロリーであることから、なるべく摂取を控えることが望ましい食品といえます。
また、菓子類では種類によって脂質も多く含むため、余分なカロリー摂取につながりやすい特徴を持ちます。
菓子パンは主食としてのパン(食パン、フランスパンなど)とは別物と考え、お菓子の一部と考えるのが良いでしょう。
3位:スナック菓子
- ポテトチップス
- 煎餅
- コーンスナック
- ポップコーン
上記のような、一般に「スナック菓子」といわれる、甘くないお菓子類にも注意が必要です。
砂糖類はあまり含まれていないものも多い一方、脂質や塩分を多く含む傾向があります。
摂り過ぎはカロリーの過剰摂取につながりやすく、肥満の予防・是正を妨げる恐れがあります。
また、飽和脂肪酸、塩分の過剰摂取では、脂質異常症や高血圧のリスクが高まることが心配なポイントです。
必ず食べてはいけないということではありませんが、食事全体のバランスを乱さないような量と頻度に気を付ける必要があるでしょう。
4位:お酒
お酒に含まれるアルコールはカロリーのある物質であり、摂り過ぎは摂取カロリー過多の原因のひとつとなります。
お酒に含まれるアルコールの度数が高いほど、お酒の重さあたりのカロリーは高くなります。
また、原料由来の糖質や、味付けのための糖類が含まれていることも少なくなく、さらなるカロリー摂取になる場合もあります。
- 梅酒をはじめとした果実酒
- 甘味をつけたチューハイ
特にこれらの「甘いお酒」は糖類が多く含まれるため、アルコール度数とは別に注意が必要です。
お酒を飲みたいという場合には、酒量を減らすほか、アルコール度数の低いもの、カロリーが低いものを選びましょう。
ノンアルコール・ゼロカロリーの飲料も販売されるため、有効活用するとよいでしょう。
また、お酒と一緒に食べる食事は以下のような特徴があります。
- 長時間かけて食べるため摂取カロリーが増えがち
- 油脂分、塩分の多い料理に偏りがち
このようなことから、血糖値の改善に望ましい食事スタイルとはいいがたいため、お酒を飲む食事の頻度そのものを減らすよう心掛けるのも大事なポイントです。
5位:果物ジュース、野菜ジュース
野菜ジュースや果物ジュースは一般的に健康的なイメージがありますが、糖尿病の改善に役立つ食品とは言えません。
野菜ジュース・果物ジュースは製造の過程で繊維質が失われていたり、調味のために砂糖や食塩が添加されたりといったことがあります。
また、あくまで飲み物であるため、咀嚼を必要とせず、カロリーのわりに満足感が乏しいのも気になるポイントです。
このようなことから、野菜ジュースや果物ジュースは野菜・果物そのものとまったく同じもの、と考えることはできません。
実際に、果物の摂取は糖尿病の発症リスクを低下させることが報告されているのに対し、果物ジュースでは逆に糖尿病の発症リスクを高めたとの報告もあります。
野菜ジュース、果物ジュースではなく、なるべく野菜・果物そのものを食べるようにしましょう。
果物は糖質を含む食品ですが、1日100g以内であれば、むしろ糖尿病の改善に役立つとされています。
6位:砂糖が多いシリアル(グラノーラ、コーンフレークなど)
シリアルは小麦、大麦、オーツ麦、とうもろこしといった「穀類」の加工食品の一種で、手軽に食べられることから朝食向けの食品として人気があります。
しかし、シリアルのうち、以下のような商品は糖尿病の改善のための食事にはあまり適していません。
- コーンフレーク(フロストタイプ)
- コーンフレーク(チョコレートコーティング)
- ドライフルーツ入りグラノーラ
- チョコレート入りグラノーラ
- パフシリアル(チョコレート味)
これらのシリアルには砂糖類が多く、主食というよりはお菓子に近い栄養価となっているためです。
シリアルの中でも、健康的な食品といえるものもありますので、選び方が大切です。
- オートミールや小麦ブランを原料とするもの…食物繊維が豊富にとれる
- ミューズリー…主原料は似ているがグラノーラと比較して糖・油脂分が少ない
- 無糖のコーンフレーク…砂糖を含まない
シリアルを食べる場合には、上記のようなものを選ぶようにするとよいでしょう。
7位:ごはん、パン、麺類などの主食
- ごはん(うるち米、もち米など)
- パン(食パン、フランスパンなど)
- 麺類(うどん、そば、中華麺、パスタ、マカロニなど)
上記のような穀物由来の食品は「主食」に分類され、糖質の摂取源として、大きな割合を占めています。
糖尿病の食事療法において、炭水化物(糖質)は総摂取エネルギーの50~60%が適量とされています。
そのため、これら主食については摂り過ぎを避け、「適量範囲での摂取」を心がける必要があります。
適量摂取のためには、極端に主食に偏った食事を避けることが大切です。
具体的には、おかずにあたる具材が少なく、主食にあたる食材がほとんどを占める料理が主食の摂り過ぎにつながりやすいメニューといえます。
例:
- 丼もの(天丼、かつ丼、牛丼、カレーライスなど)
- 麺類(ラーメン、うどん、パスタ など)
- 主食+主食のセット(ラーメン+チャーハン、そば+天丼、パスタ+パン など)
糖質の摂り過ぎを防ぐためには、大盛を避ける、主菜(魚、肉、卵料理)や副菜(野菜料理)と組み合わせるなどの工夫がおすすめです。
8位:脂身の多い肉類
脂身の多い肉類、または肉類由来の油脂(ラードや牛脂など)は脂肪分が多く含まれるために高カロリーであることに加え、飽和脂肪酸を多く含む傾向があります。
そのため、食べすぎると肥満の予防・是正の妨げとなるほか、糖尿病と併発しやすい脂質異常症のリスクを高めやすいといえます。
脂身の多い肉類には、以下のようなものが挙げられます。
- 牛バラ(カルビ)、霜降り肉全般、牛脂
- 豚バラ、豚トロ、ベーコン、ラード
- 鶏皮
これらの肉類に関しては、食べてはいけないということではありませんが、食べる量や頻度を下げるとよいでしょう。
具体的な食事の見直しとして、同じ肉類でも脂身の多い部位ではなく、脂身の少ない赤身肉を選ぶのがおすすめです。
また、以下のような置き換えを行うと、摂取脂質を不飽和脂肪酸寄りに改善することができます。
- メイン食材としての肉類…魚に置き換える
- 油脂として使用する牛脂やラード…植物性油脂に置き換える
9位:油脂分の多い料理(揚げ物、マヨネーズなど)
油脂分の多い料理は脂質やカロリーの摂取過剰につながりやすいため、食べすぎに注意しましょう。
油脂分は肉などの食材にもともと含まれるもの以外に、調理のために加えられるものがあり、具体的には以下のような料理・食品が挙げられます。
- 揚げ物(フライドポテト、フライ全般、から揚げ、天ぷらなど)
- 油脂の多い調味料(マヨネーズ、ドレッシング、バターなど)
中でも、マヨネーズやドレッシングは野菜類と合わせて「サラダ」として食べることも多く、一見すると健康的な食事なのに実は脂質を摂り過ぎている…といったことになりやすいのが難点です。
- マヨネーズは低カロリータイプに切り替える
- ドレッシングはノンオイルタイプに切り替える
など、摂取カロリー・摂取脂質を増やしすぎないような工夫を心がけるとよいでしょう。
糖尿病の食事療法のポイント
糖尿病の改善や進行予防において、食事はとても大きな部分を占めるものです。
食事の見直しによって血糖値やHbA1cの低下が期待でき、併発症や合併症などの予防効果も期待できます。
糖尿病の食事療法では、ここまでで紹介した「なるべく避けたいもの・摂り過ぎに注意したいもの」を控えることだけでなく、食事全体を整えることが大切です。
具体的なポイントとしては、以下のような内容が中心となります。
- 適切なエネルギー(カロリー)を把握する
- 食事の栄養素バランスを整える
- 食物繊維を積極的に取る
- 砂糖、アルコール、塩分、飽和脂肪酸を控える
- 規則正しい食べ方を心掛ける
血糖値を下げて長く食事を楽しむために気を付けたいポイントについて簡単に解説します。
適切なエネルギー(カロリー)を把握する
肥満は糖尿病の主なリスク要因であり、糖尿病の改善や進行予防のためには、肥満の解消が重要です。
また、糖尿病とともに動脈硬化を悪化させる高血圧や脂質異常症のリスク要因であるため、これらの疾患の予防のためにも、肥満の解消に取り組む必要があります。
肥満の解消のためには、食事からの摂取エネルギー(カロリー)の適正値を把握し、適切なエネルギー量の食事を心がけることが重要です。
食事の適正カロリーは人によって異なり、以下のような要素から個人に合った数値を設定する必要があります。
- 年齢
- 性別
- 普段の身体活動量
- 現体重と目標体重
具体的な摂取カロリーについては人それぞれの身体状況によっても異なりますので、必ず医師や管理栄養士の指導のもと、自分にとって無理のない数値を設定することが大切です。
食事の栄養素バランスを整える
糖尿病の治療では、食事のカロリーだけでなく、栄養素のバランスも整えることが必要です。
2013年の「日本糖尿病学会の食事療法に関する提言」では、摂取エネルギー全体における各種栄養素の割合の目安を以下のように示しています。
- 炭水化物…50~60%
- たんぱく質…20%以下
- 脂質…炭水化物とたんぱく質の残り
これらの基準は健康な人にとってバランスのとれた食事の内容とほとんど変わりなく、糖尿病だからと言って糖質(炭水化物)を極端に制限する必要はありません。
とはいえ、普段の食事で上記のような栄養バランスを数値として意識するのは簡単ではありません。
普段の食事では、料理単位で管理する方法が簡単です。
- 主食(ご飯、パン、麺など)
- 主菜(肉、魚、卵、大豆製品などを中心にしたメインのおかず)
- 副菜(野菜、海藻、きのこなどを中心にしたサブのおかず)
これらの食事をそろえるようにすることで、ある程度のバランスを良くすることができます。
また、糖質制限食については、ダイエットや糖尿病の改善にどれだけ役立つかがはっきりと分かっていないのが現状で、食事制限の続けやすさや体調管理の面からも、現時点では積極的に選ぶべきとは言えません。
食物繊維を積極的に取る
食物繊維は炭水化物に属する食品成分ですが、体内で糖質として吸収されない物質で、十分に摂取することで糖尿病やその他生活習慣病リスクが低減できることが知られています。
2013年の「日本糖尿病学会の食事療法に関する提言」では、1日あたり20g以上の摂取が推奨されています。
- 精製度の低い穀類(玄米、全粒粉、オートミールなど)を主食に取り入れる
- 野菜、海藻、きのこを使った副菜を取り入れる
これらの食材・料理を食事に積極的に取り入れることで、食物繊維の摂取量を増やすことにつながります。
砂糖、アルコール、塩分、飽和脂肪酸を控える
記事前半でも紹介しましたが、以下の食品成分は摂り過ぎると糖尿病やその他の生活習慣病のリスクを高めることが報告されているため、控えめにする必要があります。
- 砂糖
- アルコール
- 塩分
- 飽和脂肪酸
今回の記事で紹介したランキングは主にこれらの成分が多く含まれるものとなっています。
間食や飲酒の場面でとりすぎやすいものが多いので、間食や飲酒の機会そのものを控えめにすることも有効です。
規則正しい食べ方を心掛ける
糖尿病の食事療法では、「何をどのくらい食べるか」という事に加えて、「どんな風に食べるか」という、「食べ方」も大切なポイントのひとつです。
- 1日3食を欠かさず食べる
- 朝ごはんを抜かない
- 規則正しい時間に食べる
- 深夜の食事は避ける
- よく噛んでゆっくり食べる
- 野菜を先に食べ、主食を後に食べる(野菜先食べ)
これらの食習慣を意識することで、肥満や血糖コントロール悪化のリスクを低くすることが可能です。
また、朝食の欠食には睡眠不足や夜更かしの習慣など、ほかの生活習慣上の問題が隠れていることが少なくないため、いくつかの方向から取り組むことも大切です。
また、食事と睡眠のほか、運動量を増やすことも糖尿病の改善には効果的です。
食べ物だけでなく、生活全体を整えていけるとよいでしょう。
まとめ
糖尿病は発症原因やその改善、進行予防に食事を中心とした生活習慣が深くかかわっています。
糖尿病や関連する疾患に対してマイナスの影響を及ぼす栄養素もあり、以下のような食品は摂り過ぎに注意が必要です。
- カロリーの高い食べ物
- 糖質が多い、血糖値を上げやすい食べ物
- 脂質、特に飽和脂肪酸が多い食べ物
- アルコールを含む酒類
- 塩分の多い食べ物
今回の記事では、このような食品の具体例をランキング形式で紹介しましたが、いずれも「絶対に食べてはいけないもの」という訳ではありません。
食べる量や頻度に気を付けるとともに、食べる時間や食べ方などを意識することが大切です。
ただし、実際の食事内容に関しては身体状況や病状によって異なるため、医師や管理栄養士に相談してから食事療法に取り組むことをおすすめします。
将来にわたって健康状態を維持するためにも、無理のない食事計画を立てたいですね。
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参考文献 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 社団法人日本栄養士会監修:「食事バランスガイド」を活用した栄養教育・食育実践マニュアル.第一出版,2011. |
監修医師
医院名 | NOBUヘルシーライフ内科クリニック |
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院長名 | 藤原 信治 |
資格 | ・医学博士 ・日本内科学会認定 総合内科専門医 ・日本糖尿病協会認定 療養専門医・指導医 ・日本腎臓病学会認定 腎臓指導医 ・日本透析医学会認定 透析専門医・指導医 ・日本循環器学会認定 循環器専門医 ・厚生労働省認定 難病指定医 |