メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドロームとは?

「メタボリックシンドローム」という言葉は広く認知されていますが、具体的にどんな状態を指し、どんな問題があるのか正確にわかっている人は多くないのではないでしょうか?

メタボリックシンドロームの定義や問題点を解説します。

メタボリックシンドロームの定義

メタボリックシンドロームは、日本語では「内臓脂肪症候群」と訳されます。(直訳ではありません)

内臓脂肪がたまった肥満状態に、高血圧・高血糖・脂質代謝異常などの複数のリスクが重なり、心臓病や脳卒中を起こしやすくなっている状態のこと、とされています。

内臓脂肪型肥満+高血圧・高血糖・脂質代謝異常→動脈硬化性疾患

メタボリックシンドロームで起こりやすくなる「心臓病・脳卒中」とは?

メタボリックシンドロームになるとリスクが高くなる「心臓病」と「脳卒中」。
いずれも日本人の死因の上位に位置するもので、平成30年において心臓病は第2位、脳卒中(脳血管疾患)は第4位となっています。

心臓病(虚血性心疾患)とは?

心臓病は、狭心症や心筋梗塞をまとめた呼び方です。

狭心症では動脈硬化などにより心臓の血管(冠動脈)が狭くなり、血液の流れが悪くなります。
心筋梗塞では、動脈硬化によって冠動脈に血栓ができて血管が詰まり、心臓の細胞が障害され、死に至ることもあります。

脳卒中(脳血管疾患)とは?

脳卒中は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血をまとめた呼び方です。
脳梗塞は、動脈硬化などにより脳の血管が詰まる状態のこと。
脳出血、くも膜下出血は高血圧などにより脳の血管が破れ、出血することを指します。
いずれも脳の細胞を傷害し、死に至る危険性があります。

心臓病と脳卒中

メタボリックシンドロームの数値基準

メタボリックシンドローム診断基準検討委員会が発表しているメタボリックシンドロームの定義と診断基準では、

内臓脂肪蓄積:ウエスト周囲径 男性85cm以上 女性90cm以上
(内臓脂肪面積 男女とも100㎠以上に相当)

に加え

血中脂質:高TG血症 50㎎/dL以上 かつ/または 低HDL-C血症 40㎎/dL未満
血圧:収縮期血圧 130㎜Hg以上 かつ/または 拡張期血圧 85㎜Hg以上
血糖値:空腹時血糖 110㎎/dL以上

のうち2項目以上を満たすことを基準としています。

*CTスキャンなどで内臓脂肪量測定を行うことが望ましい。
*ウエスト径は立位・軽呼気時・臍レベルで測定する。脂肪蓄積が著明で臍が下方に偏位している場合は肋骨下縁と前上腸骨棘の中点の高さで測定する。
*メタボリックシンドロームと診断された場合、糖負荷試験がすすめられるが診断には必須ではない。
*高トリグリセライド血症・低HDLコレステロール血症・高血圧・糖尿病に対する薬剤治療を受けている場合は、それぞれの項目に含める。
*糖尿病、高コレステロール血症の存在はメタボリックシンドロームの診断から除外されない。

  • メタボリックシンドローム診断基準検討委員会. メタボリックシンドロームの定義と診断基準. 日本内科学会雑誌; 2005;94:188-203.

特定健康診査・特定保健指導では、保健指導の対象者を選定するにあたり、メタボリックシンドロームの基準に近い数値基準が設定されています。
(検査値の項目や基準となる数値にいくつかの違いがあるため、メタボリックシンドロームの診断基準を満たさなくとも、特定保健指導の対象となる場合があります。)

太っている=メタボではない

「メタボ」というと、おなかに脂肪がたっぷりついた状態を思い浮かべやすいですが、実際には、単に太っているだけでは「メタボ」とは診断されません。

「メタボリックシンドローム」は単に太っている状態に加えて、複数の健康リスクを抱えた、とても危険度の高い状態であることを認識したいですね。

とはいえ、現時点でメタボとは診断されなくとも、肥満を指摘されている人は将来の健康のため、注意が必要です。

メタボリックシンドロームは複数のリスクが重なることがポイント

メタボリックシンドロームは内臓脂肪がたまった肥満状態に、高血圧・高血糖・脂質代謝異常などの複数のリスクが重なり、心臓病や脳卒中を起こしやすくなっている状態のことで、この「複数のリスクが重なった」というところがポイントです。

肥満、高血圧、高血糖、脂質代謝異常といったそれぞれのリスク要因に動脈硬化を進行させる危険がありますが、その数が増えるほど、より危険性が高まると考えられています。

動脈硬化を進行させる複数のリスク

内臓脂肪の蓄積

内臓脂肪とは、腹腔内の腸の周りにつく脂肪のこと。
いっぽう、皮下組織につく脂肪は皮下脂肪と呼ばれます。
内臓脂肪を多くため込んだ内臓脂肪型肥満では、皮下脂肪型肥満よりも代謝異常を引き起こしやすいと考えられており、メタボリックシンドロームの診断基準にも内臓脂肪面積(に相当するウエスト周囲径)が用いられています。

内臓脂肪が蓄積されると、脂肪組織からの各種生理活性物質(アディポサイトカイン)の分泌に異常が起こるようになり、

  • 動脈硬化を進行させる
  • 血栓の形成を抑える働きが弱まる

…といった動脈硬化性疾患の直接のリスクが高まるほか、

  • インスリンの効きを悪くする(高血糖)
  • 血圧を上げる(高血圧)
  • 血中中性脂肪を増やし、血中HDLコレステロールを低下させる(脂質代謝異常)

…など、動脈硬化にかかわる生活習慣病のリスクも高めることがわかっています。

代謝異常①インスリン抵抗性と高血糖

内臓脂肪型肥満などが原因でインスリンの効きが悪くなると、血糖値が下がらず、高いままになってしまう状態を、高血糖(糖尿病)といいます。

高血糖が進行すると、血管内に多くなりすぎた糖が血管の内側を傷つけ、動脈硬化を進行させることがわかっています。

また、動脈硬化の進行とは別に、糖尿病が進行すると、目の網膜、腎臓、神経を傷つけ、網膜症、腎症、神経障害を引き起こし、失明、壊疽、認知症などの障害や人工透析を要する状態につながります。

代謝異常②血圧高値

血圧は血管内の圧力を示す数値です。
内臓脂肪型肥満のほか、習慣的な食塩の摂取過多や遺伝的素因なども関係して血圧が高い状態が続くと、高血糖と同様に血管の内側に負担をかけ、傷つける要因の一つとなります。

代謝異常③血中脂質のバランス変化

内臓脂肪が増えることで血液中の脂質のバランスにも変化が見られます。
中性脂肪(トリグリセリド)や全身にコレステロールを運ぶLDLコレステロールが増え、余ったコレステロールを回収するHDLコレステロールは減少します。

その結果、血液中で余ったLDLコレステロールは酸化されて血管の壁の中に蓄積し、血管を厚くして動脈硬化を進めます。

メタボリックシンドロームに自覚症状はほとんどないけれど…

内臓脂肪型肥満、高血糖、高血圧、脂質代謝異常、また、これらの複数を併せ持ったメタボリックシンドロームのいずれも、どこかが痛むような自覚症状はないことがほとんどです。

そのため、体に健康上の危険が迫っていることが実感しにくいという人も少なくありませんが、実際の体の中では動脈硬化が進み、脳血管疾患や心疾患をおこしやすい状態になっていきます。