
健康診断で血圧が高いといわれたけど、下げるためにはどうすればいいのでしょうか?
血圧が高いと何がいけないのか、血圧を下げるために見直したいポイントを紹介します。
Contents
血圧とは?基準値は?高いとどう悪い?
血圧とは
血圧とは、血管の内側にかかる圧力のことです。
心臓が収縮し、血液が送り出されたときの血圧を「収縮期血圧」
心臓が拡張し、圧力がゆるんだ時の血圧を「拡張期血圧」とし、それぞれの数値を測定します。
「収縮期血圧/拡張期血圧」のように、まとめて表現することもあります。
血圧が高いとなぜ体に悪い?
血圧は常に変動しており、同じ人でも体の状態によって大きく変わります。
一時的に血圧が上がることは問題ありませんが、安静にしていても高いという状態が続くと血管に負担がかかり、血管の劣化である動脈硬化を進行させることがわかっています。
動脈硬化は脳梗塞や心筋梗塞などの大きな病気にもつながる恐れがあり、早めの予防が大事です。
健康診断結果の読み方
日本人間ドック学会の2020年度判定区分表では、以下のように判定されます。
■収縮期血圧
・正常 129㎜Hg以下 ・軽度異常 130~139㎜Hg ・要経過観察 140~159㎜Hg ・要医療 160㎜Hg以上 |
■拡張期血圧
・正常 84㎜Hg以下 ・軽度異常 85~89㎜Hg ・要経過観察 90~99㎜Hg ・要医療 100㎜Hg以上 |
高血圧予備軍にも注意
健康診断では129/84㎜Hg以下は正常値と判定されますが、120~139/89㎜Hg以下の範囲を「高血圧予備群」とする分類もあり、食事などの生活習慣の改善が必要とされることもあります。
血圧の値とあわせて年齢・性別・喫煙・生活習慣病などが組み合わさり、リスクを高める要因となります。
高血圧はメタボの要素のひとつ
肥満に加えて糖代謝・脂質代謝・血圧・喫煙習慣のうちリスクが2つ以上ある場合をメタボリックシンドロームと定義しています。
*)メタボリックシンドローム診断基準検討委員会. メタボリックシンドロームの定義と診断基準. 日本内科学会雑誌; 2005;94:188-203.
メタボリックシンドロームの状態では、体調不良などの自覚症状はないことがほとんどです。
一方で、目に見えない動脈硬化(血管の劣化)を着実に進行させ、血管をもろく・詰まりやすくしていくため、放置すると心筋梗塞や脳梗塞といった命にかかわる大きな病気を引き起こすリスクを高めます。
血圧が高くなる原因・要因
血圧が高くなる原因にはどんなものがあるでしょうか?
ご自分に当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。
肥満
肥満は高血圧の発症・悪化に影響を与えることがわかっています。
メタボリックシンドロームの診断基準では、
おへその高さでの腹囲が男性85㎝以上、女性90㎝以上の場合を生活習慣病につながりやすい「腹部肥満」としています。
また、日本肥満学会の定めた基準では、
身長と体重から肥満度を表すBMI【=体重(㎏)÷身長(m)2】が25以上の場合を肥満としています。
食塩摂取量が多い
日常的な食塩(ナトリウム)の過剰摂取は高血圧の原因となることが知られています。
とはいえ、高血圧になる人すべてが濃い味付けを好む人…というわけではありません。
もともと日本人は食塩摂取量が多く、標準的な食事であってもほとんどの人が「塩分の取りすぎ」に当てはまります。
WHOが食塩の摂取量の目標としている数値は、1日あたり5g未満。
対して、平成30年度国民健康・栄養調査 によると、日本人の現状は、1日あたり10g前後となっており、かなり多いことがわかります。
濃い味付けを好む人はもちろんのこと、塩分摂りすぎの自覚がない人でも、「塩分摂りすぎ」は気を付けたいポイントです。
習慣的な飲酒・アルコール摂取がある
飲酒習慣が長期にわたると、血圧が高くなることが知られており、習慣的な飲酒量が多いほど高血圧になりやすいことがわかっています。
お酒に含まれるアルコールには1gあたり7kcalのエネルギーがあり、お酒からの摂取エネルギーが多くなれば、肥満の原因になることも考えられます。
血圧を改善するためのポイント
肥満の解消
具体的には、
■食事からの摂取エネルギーを減らす ■運動や日常的な動作を増やして消費エネルギーを増やす |
などの方法が挙げられます。
体脂肪1㎏に相当するエネルギーはおよそ7200kcal。
食事の見直しや身体活動を増やすことで、消費エネルギーと摂取エネルギーの差を1日あたり240kcal作れると、1か月で1㎏の体脂肪を消費できる計算になります。
目標はBMI25未満ですが、4㎏程度の減量でも降圧効果があることが知られています。
減塩でナトリウムの摂取を減らす
食事からの食塩摂取を減らすにつれ、血圧も下がる効果があることがわかっています。
■薄味を心がける ■汁物の汁は飲み干さない ■漬物など塩分濃度の高いものは量や頻度を減らす ■食卓で加える調味料(塩や醤油)は一度味を見てから、必要なければ使わない |
などの工夫が挙げられます。
また、単に調味料を減らすのではなく、ダシやスパイス、酸味などをうまく組み合わせることでおいしく減塩することができます。
調味料を減塩商品に切り替えるのも簡単で取り入れやすいので、参考にしてみてくださいね。
カリウムの摂取を増やす
カリウムはナトリウムとともに体内の水分・ミネラルバランスの維持などにかかわるミネラルのひとつです。
カリウムはナトリウムの排泄を助け、血圧を下げる作用を持つため、血圧が高い人だけでなく、塩分を取りすぎているほとんどの人にとって積極的に摂りたい栄養素です。
カリウムは様々な食品に広く含まれていますが、食品によっては積極的に食べることによってエネルギーの過剰摂取・肥満につながりかねません。
摂取エネルギーを抑えつつカリウムを十分にとるには、エネルギーの低い野菜類や生の果物がおすすめです。
お酒の量を減らす
飲酒量を80%減らすことによって1~2週間程度で血圧の低下がみられたとの報告もあり、効果が見えやすいポイントといえそうです。
健康への影響などを考慮した「適度な飲酒」は1日あたり純アルコールで20g(5%のビールなら500mlほど)、週2日の休肝日を設けることとされています。
女性はアルコールの影響を受けやすいことから、さらに半分の1日あたり10g/日程度に収められるとよいでしょう。
ビール以外のお酒の適量について詳しく解説した記事はこちら |
DASH食
DASH食は「Dietary Approaches to Stop Hypertension」の略であり、「高血圧を止めるための食事療法」を指します。
高血圧の予防・治療を目的にアメリカで交換された食事法であり、
■適正体重の維持のため、摂取エネルギーを適正範囲に抑える ■ナトリウムの摂取量を減らし、カリウムを含む野菜・果物を積極的に摂る ■飽和脂肪酸を多く含む肉の脂身・乳脂肪を控え、魚油・植物油に置き換える。乳製品は低脂肪のものを選ぶ。 ■砂糖入りの食品や飲料を控え、食物繊維を多く含む全粒穀物を積極的に摂る。 |
といったものです。
厳密に摂取量を定めて行う方法もありますが、部分的に取り入れることもできそうですね。
まとめ
改善点は見つかったでしょうか?
いちどに全部を変えようとすると、負担が大きく継続が難しくなることも。
はじめは無理せずできるところから、少しづつ習慣を見直していきたいですね。
参考文献 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 メタボリックシンドローム診断基準検討委員会. メタボリックシンドロームの定義と診断基準. 日本内科学会雑誌; 2005;94:188-203. |