
カリウムは必須栄養素のひとつで、高血圧の予防や改善に深くかかわっています。
カリウムの働きと高血圧との関係、カリウムの摂取目標量のほか、高血圧の予防や改善のために意識したい食品や食事のコツを紹介します。
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Contents
カリウムとは
カリウムはミネラルに属する必須栄養素のひとつです。
体内ではナトリウムとともに細胞の水分量や浸透圧の維持に働くほか、筋肉の収縮・弛緩、神経伝達などを正常に保つ働きを持ちます。
高血圧とは
血圧とは血管内にかかる圧力のことで、血圧は常に様々な要因により上下しています。
高血圧とは、安静にした状態であっても、血圧が一定以上高い状態になってしまうことを指します。
■日本高血圧学会の成人における血圧値の分類(㎜Hg)
分類 | 診察室血圧 | 家庭血圧 | ||
収縮期血圧 | 拡張期血圧 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
正常血圧 | 120未満 かつ 80未満 | 115未満 かつ 75未満 | ||
正常高値血圧 | 120-129 かつ 80未満 | 115-124 かつ 75未満 | ||
高値血圧 | 130-139 かつ/または 80-89 | 125-134 かつ/または 75-84 | ||
Ⅰ度高血圧 | 140-159 かつ/または 90-99 | 135-144 かつ/または 85-89 | ||
Ⅱ度高血圧 | 160-179 かつ/または 100-109 | 145-159 かつ/または 90-99 | ||
Ⅲ度高血圧 | 180以上 かつ/または 110以上 | 160以上 かつ/または 100以上 | ||
(孤立性) 収縮期高血圧 |
140以上 かつ 90未満 | 135以上 かつ 85未満 |
日本高血圧学会:「高血圧治療ガイドライン2019」 より作成
高血圧は長期化すると血管内に負担をかけ、動脈硬化のリスクを高めることが知られています。
動脈硬化が進行すると、脳卒中や心臓病、腎臓病など大きな病気のリスクが高まるため、これらの予防の観点から、高血圧の予防や改善が必要と考えられています。
カリウムと高血圧の関係
高血圧の予防や改善のため、カリウムを積極的に摂取するとよい、といわれています。
これは、高血圧の一因であるナトリウムの作用をカリウムが相殺してくれるため。
高血圧とカリウム、ナトリウムの関係を整理します。
高血圧の一因はナトリウムの過剰摂取
高血圧には他の病気が原因となって起こるものとそうでないものがありますが、日本人の高血圧の多くは他の病気が原因ではない「本態性高血圧」であり、本態性高血圧はナトリウム(≒食塩)の過剰摂取が原因のひとつです。
食塩のとりすぎによって血液中にナトリウムが増えすぎると、血液中のナトリウムの濃度を下げようとして血液の量が増え、血管の中の圧力が増すことで高血圧の状態を引き起こすと考えられています。
また、ナトリウムの過剰摂取以外では、肥満、飲酒、運動不足、ストレス、遺伝的体質など、複数の要因が組み合わさって高血圧を引き起こすことが知られていますが、日本人の生活習慣では、食塩の過剰摂取が最も重要な要因といわれています。
カリウムはナトリウムの排出促進・高血圧予防に働く
カリウムには、腎臓でのナトリウムの排出を促進し、ナトリウムが血圧を上げる働きと拮抗することから、高血圧の予防や改善にはたらくことが知られています。
WHOでは、高血圧の予防のために1日あたり3510㎎以上のカリウム摂取を勧めています。
また、日本人の食事摂取基準2020年版では、WHOの推奨値を受けた実施可能性な目標量として、成人男性で1日あたり3000㎎以上、成人女性で1日あたり2600㎎以上という数値を挙げています。
令和元年度の国民健康・栄養調査において、カリウムの摂取中央値は、20歳以上男性で1日あたり2313㎎、20歳以上女性で2158㎎となっています。
日本人のナトリウムの摂取量は多く、ナトリウムの過剰摂取を一因とする高血圧の予防や改善のためには、日本人全体としてカリウムの摂取量を増やしていく必要性があるといえそうです。
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カリウムの摂取源となる食品
カリウムはさまざまな食品に幅広く含まれるミネラルですが、効率的に取ろうとした場合には、以下のような食品が効率的です。
- 野菜類
- 果物類
- 海藻類
- きのこ類
カリウムをたくさん取ろうとしたときに摂取カロリーも同時にたくさん取ってしまうと、肥満を招き高血圧の予防の観点からも望ましくありません。
これらの食品は、カリウムの含有量のわりにカロリーが低いのが利点で、摂取カロリーを抑えながらカリウムを摂取するのに適しています。
野菜類
例外はあるものの、野菜類の多くは100gあたりのカロリーが50kcal以内と低く、摂取エネルギーを抑えながらカリウムの摂取量を増やすのに適した食品です。
また、料理として食べるにあたって、なるべく食塩を足さずに食べられると、より効果的です。
■野菜類のカリウム含有量とカロリー(100gあたり)
食品名 | カリウム含有量 | エネルギー |
ほうれんそう(生) | 690㎎ | 18kcal |
えだまめ(生) | 590㎎ | 125kcal |
にら(生) | 510㎎ | 18kcal |
こまつな(生) | 500㎎ | 13kcal |
ブロッコリー(生) | 460㎎ | 37kcal |
西洋かぼちゃ(生) | 450㎎ | 78kcal |
セロリ(生) | 410㎎ | 12kcal |
ししとう(生) | 340㎎ | 24kcal |
ごぼう(生) | 320㎎ | 58kcal |
ズッキーニ(生) | 320㎎ | 16kcal |
アスパラ(生) | 270㎎ | 21kcal |
にんじん(生) | 270㎎ | 30kcal |
オクラ(生) | 260㎎ | 15kcal |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より作成
果物類
果物類は野菜類と比較するとカリウムの含有量に対するエネルギーが平均的に少し高いといえます。
一方で、食べる際に塩分を含んだ味付けをほとんど必要としない点、生で食べることが多く調理によるカリウムの損失が少ない点が魅力です。
これまでの食べていたお菓子類と代えて取り入れることで、カロリーの低い間食として健康的な食事の一部とできそうです。
■果物類のカリウム含有量(100gあたり)
食品名 | カリウム含有量 | エネルギー |
アボカド(生) | 590㎎ | 176kcal |
バナナ(生) | 360㎎ | 93kcal |
メロン(生) | 340㎎ | 40kcal |
キウイ(緑)(生) | 300㎎ | 51kcal |
キウイ(黄)(生) | 300㎎ | 63kcal |
ネーブルオレンジ(生) | 180㎎ | 48kcal |
もも(白)(生) | 180㎎ | 38kcal |
いちご(生) | 170㎎ | 31kcal |
マンゴー(生) | 170㎎ | 68kcal |
温州みかん(生) | 150㎎ | 49kcal |
パインアップル(生) | 150㎎ | 54kcal |
グレープフルーツ(白)(生) | 140㎎ | 40kcal |
和梨(生) | 140㎎ | 38kcal |
ぶどう(生) | 130㎎ | 58kcal |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より作成
海藻類・きのこ類
野菜類と果物類のほか、海藻類やきのこ類もカリウムの含有量に対してカロリーが低く、カリウムの効率的な摂取源となる食品です。
野菜や果物と合わせて、積極的に食べる量を増やしていきたい食材です。
■海藻類・きのこ類のカリウム含有量(100gあたり)
食品名 | カリウム含有量 | エネルギー |
昆布(素干しを水煮) | 890㎎ | 28kcal |
わかめ(生) | 730㎎ | 24kcal |
ぶなしめじ(生) | 370㎎ | 26kcal |
マッシュルーム(生) | 350㎎ | 15kcal |
えのきたけ(生) | 340㎎ | 34kcal |
エリンギ(生) | 340㎎ | 31kcal |
しいたけ(菌床栽培)(生) | 290㎎ | 25kcal |
わかめ(素干しを水戻し) | 260㎎ | 22kcal |
まいたけ(生) | 230㎎ | 22kcal |
ひじき(干しひじきをゆでる) | 160㎎ | 11kcal |
なめこ(カット)(生) | 130㎎ | 14kcal |
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より作成
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カリウムの摂りすぎによる影響
通常の食生活においては、必要な量を超えてカリウムを摂取しても不要な分は排泄される仕組みがあるため、摂りすぎによる健康への影響はありません。
ただし、腎臓の機能が低下している場合やサプリメントの不適切な使用ではカリウムの摂りすぎによる健康への悪影響に注意する必要があります。
腎機能が低下している人は高カリウム血症に注意
腎臓の機能が低下している人などではカリウムを排泄する働きが不十分なことにより、多量のカリウムを摂取すると体内のカリウムが多くなりすぎる高カリウム血症を起こす恐れがあります。
そのため、腎臓の機能が低下している場合には、カリウムの摂取量に制限が設定される場合もありますので、主治医の指示に従うようにしましょう。
高カリウム血症の症状としては、不整脈や血圧の低下などが知られています。
サプリメントの使用は注意が必要
サプリメントは特定の栄養素や食品成分を濃縮した食品です。
目的とする成分を摂取するのに効率的である一方、過剰摂取につながりやすかったり、製品の種類や使い方によっては健康被害につながるケースもあったりするなど、活用にあたっては少し注意が必要です。
カリウムを含有するサプリメントも存在しますが、腸管に異常のある人、腎臓や心臓疾患のある人では使用に注意が必要とされています。
また、高血圧の予防や改善を目的としている場合には、これまでの食生活を変えずにカリウムを付加的に摂取する方法では根本的な解決にならないことが考えられます。
高血圧の予防・改善のための食生活や生活習慣の改善のひとつとして、「カリウムの摂取量を増やす」というものがあると考えるとよいでしょう。
高血圧予防のための食事のコツ
高血圧の予防や改善のためには食事内容の改善が重要です。
カリウムの摂取量を増やすことも含め、高血圧予防のためには以下のような心がけが有効です。
- 野菜・果物の摂取量を増やす
- カリウムを無駄なくとる
- 食塩摂取量を減らす(減塩)
- 肥満の予防、改善のためのカロリーコントロール
- 節酒
野菜・果物の摂取を増やす
上述の通り、カリウムにはナトリウムの排出を促進して血圧を下げる働きがあります。
上で紹介した野菜類、果物類、きのこ類、海藻類などの食品が効率的にカリウムを摂取するのに役立ちます。
野菜や果物をどのくらい食べるかについて、国民の健康増進のための厚生労働省の運動「健康日本21(第二次)」の目標をもとに考えると、具体的には以下のような目標が挙げられます。
- 野菜の摂取量を1日あたり350g以上にする
- 果物の摂取量を1日あたり100g(およそみかん1個分)以上にする
現在の食生活からどのくらい増やすか、というのはそれぞれのもとの食習慣によっても変わりますが、あくまで平均的な食生活をしている人の場合、現在の野菜摂取量の平均値は282gとされているため、増やすべき野菜の量は約70g(およそ小鉢1つ分)が目安となるようです。
きのこ類と海藻類に関しては明確な目標などは設定されていませんが、野菜類と同様に現在よりももう少し多く食べることを意識するとよいでしょう。
カリウムを無駄なくとる
また、カリウムは水に溶けだす性質があることから、生や未調理の状態から調理加工を受けることで含有量が減少しやすいことが知られています。
食材に含まれるカリウムを無駄なく摂取するポイントとしては以下のようなものが挙げられます。
- 生をカットするだけ、など素材そのままに近い状態で食べる
- 切って水にさらす場合は短時間に留める
- 加熱調理では茹でこぼすよりもスープのように汁ごと食べられるものにする
減塩
日本人の食生活では基本的にほとんどの人が「塩分摂りすぎ」の状態にあります。
高血圧予防のためには、カリウムの摂取量を増やす以上に、摂りすぎているナトリウム(食塩)の摂取量を減らすことも重要です。
WHOが高血圧などの疾患リスク低減のために推奨している食塩の摂取量は1日あたり5g未満ですが、日本人の食塩摂取量は男性10.9g、女性9.3g(一部報告では男性14g、女性11gとするものも)となっており、推奨値よりもはるかに多くの食塩を摂取しています。
日本人の食事摂取2020年版では、現時点で高血圧でない人であっても1日の食塩相当量の目標値は成人男性で1日あたり7.5g、成人女性で1日あたり6.5g未満です。
高血圧と診断された場合、高血圧の治療ガイドラインでは1日あたり6g未満が減塩の目標値とされています。
食塩の摂取量を減らすためのポイントには、以下のようなものが挙げられます。
- 薄味を心掛ける
- 高塩分な食品(漬物など)を控える
- 麺類の汁は残す
- 汁物は具を増やして汁の量を減らす
- 食卓で使う調味料は「かける」ではなく「つける」
- 薬味やハーブ類、香辛料を活用して食塩が少なくても満足できる味付けにする
- 減塩調味料を活用する
- 外食や加工品では食塩含有量を確認し、より少ないものを選ぶ
カロリーコントロール
肥満は高血圧の発症リスクを高める要因のひとつです。
BMI(体重(㎏)÷(身長(m))2乗)が25~30の場合には、BMIが20未満の人よりも高血圧の発症リスクが1.5~2.5倍になると推定されています。
BMIが高値の場合、体重を減らすことで高血圧の発症リスクを下げられるほか、現在高血圧の人の場合には、降圧効果も期待できることが知られています。
肥満の解消や適正体重の維持のため、食事からの摂取カロリーの管理は高血圧予防に有効な方法のひとつといえます。
- 適正体重の場合には体重を維持できるよう定期的に体重測定を行う
- 肥満の場合には摂取カロリーを減らす取り組みを行う
- 間食を減らす(摂取カロリーを減らす取り組みとして)
- 脂質控えめの食事を心掛ける(摂取カロリーを減らす取り組みとして)
- 砂糖類を多く使った食事を避ける(摂取カロリーを減らす取り組みとして)
節酒
飲酒習慣は血圧を上げる要因の一つになります。
禁酒までせずとも、適正範囲内に飲酒量を収めることでも降圧効果があることが知られています。
飲酒量を制限することにより、人によっては摂取カロリーのカットによる効果も期待できそうです。
高血圧の人の場合には、飲酒量を以下の範囲に収めるようにするとよいでしょう。
- 男性の場合…純アルコールで20~30ml以下
- 女性の場合…純アルコールで10~20ml以下
*純アルコール20~30mlの目安:日本酒1合、ビール中ビン1本、焼酎半合、ウイスキーダブル1杯、ワイン2杯(女性は半量を目安にする)
まとめ
カリウムは高血圧の原因となるナトリウムの排出を促進する働きを持つことから、高血圧の予防や改善のために積極的な摂取が求められている栄養素です。
WHOや日本人の食事摂取基準などでも摂取目標が定められていますが、現在の日本人の平均的な食生活では十分に摂取できている人は少ないようです。
カリウムを効率的に摂取するのに役立つ食品としては、
- 野菜類
- 果物類
- 海藻類
- きのこ類
が挙げられます。
調味料による食塩摂取量に気を付けながら、これらの食材の摂取量を増やしていきたいところです。
カリウムの摂取量を増やすことに限らず、高血圧の予防や改善のために気を付けたい食生活上のポイントには以下のようなものが挙げられます。
- 野菜・果物の摂取量を増やす
- カリウムを無駄なくとる
- 食塩摂取量を減らす(減塩)
- 肥満の予防、改善のためのカロリーコントロール
- 節酒
このほか、食事以外の生活習慣では、以下のような取り組みも有効です。
- 運動する時間を増やす
- 禁煙をする
- 睡眠を十分にとる
カリウムの摂取量を増やすことだけでなく、生活習慣全体を見直すことで、高血圧の予防や改善の効果が得やすくなります。
普段の生活を振り返って生活習慣の改善を行うのに加えて、特定健診(メタボ健診)で高血圧を指摘された場合には、特定保健指導などの専門職のアドバイスを受ける機会を有効に活用してくださいね。
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参考文献 上西一弘. 食品成分最新ガイド 栄養素の通になる 第5版. 女子栄養大学出版部, 2022.8 医学ボランティア会JCVN:「高血圧とは?原因と対策方法、合併症のリスクなどを解説」 WHO. Guideline: Potassium intake for adults and children. Geneva, World Health Organization (WHO), 2012. 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報「カリウム」 厚生労働省:「健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料」 WHO. Guideline: sodium intake for adults and children(2012) Keiko Asakura, Ken Uechi, Yuki Sasaki, Shizuko Masayasu and Satoshi Sasaki. Estimation of sodium and potassium intakes assessed by two 24 h urine collections in healthy Japanese adults: a nationwide study British Journal of Nutrition Volume 112, Issue 7 14 October 2014 , pp. 1195-1205 |