中鎖脂肪酸・MCTオイルのダイエット効果は?|管理栄養士執筆

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ココナッツ由来のMCTオイル

ダイエットや美容、健康に効果ありといわれる「MCTオイル」をご存じでしょうか?
やせる油とも言われますが、実際の取り入れ方には注意が必要です。
MCTオイルの特性を知って、かしこく利用しませんか?

MCTオイルってなに?

MCTオイルとは:中鎖脂肪酸が主成分の油

MCTとは「Medium Chain Triglycerides」の略で、日本語では「中鎖脂肪酸」といいます。

MCTオイルは、その中鎖脂肪酸が主成分となった油のことで、一般に販売されているものは100%中鎖脂肪酸でできています。

中鎖脂肪酸を多く含むココナッツオイルなどを主原料として、中鎖脂肪酸だけを取り出したもの。
ココナッツオイルはココナッツ特有の風味がありますが、MCTオイルは無味無臭という特徴があります。

脂肪酸とは?

通常、私達が食べているいわゆる「油」は「トリグリセリド(中性脂肪)」といわれるもの。

トリグリセリドはグリセリンと脂肪酸から成り立つ物質です。

トリグリセリドの組成

このうち、脂肪酸にはいくつもの種類があり、脂肪酸の種類や割合によって油の性質が変わってきます。

中鎖脂肪酸とは?:炭素数の少ない脂肪酸

では、MCTオイルの主成分である中鎖脂肪酸とは、いったい何なのでしょうか?

脂肪酸は炭素原子がいくつもつながった「鎖」のような構造をしています。
その炭素原子の数(鎖の長さ)によって、
・短鎖脂肪酸(炭素数2,4,6)
・中鎖脂肪酸(炭素数8,10,12)(データによって12は含む場合と含まない場合がある)
・長鎖脂肪酸(炭素数12以上)  と分けられます。
中鎖脂肪酸はこのうちの、炭素数が8~12のものを指します。
一般的な食用油を構成する脂肪酸の大部分は長鎖脂肪酸ですが、MCTオイルは中鎖脂肪酸という点で異なる、ということですね。

脂肪酸の分類(鎖)

中鎖脂肪酸は、天然にはココナッツオイル、パーム油、牛乳や母乳に含まれています。

トクホにも利用されている

MCTオイルそのものではありませんが、料理に広く使われている植物油の一部を中鎖脂肪酸に組み換えた食用調理油が、「体に脂肪がつきにくい油」の特定保健用食品として販売されています。

通常の調理油を使った場合と比較して、4~12週間で体脂肪量などの数値がより低下した*1)として、有効性が示されています。
*1)Kasai M, Nosaka N, Maki H, Negishi S, Aoyama T, Nakamura M, Suzuki Y, Tsuji H, Uto H, Okazaki M, Kondo K. Effect of dietary medium- and long-chain triacylglycerols (MLCT) on accumulation of body fat in healthy humans. Asia Pac J Clin Nutr. 2003;12(2):151-60.

加熱調理には不向き

中鎖脂肪酸100%のMCTオイルは通常の食用油に比べて発煙温度が低い(煙が出やすい)ことが知られており、炒め物や揚げ物のような加熱調理に不向き、という弱点があります。

また、カップラーメンなどのポリスチレン製の容器を溶かして変質させ、壊れる可能性があるため、使い方にも注意が必要です。

サラダのドレッシングなど、非加熱で使う油として、また、調理済みの温かいものに足す、といった使い方が推奨されています。

やせる油って本当?

MCTオイル

中鎖脂肪酸を含むトクホもあることで、「中鎖脂肪酸=やせる」といったイメージも強いように思います。
中鎖脂肪酸やMCTオイルを取り入れることでダイエットにも効果的なのでしょうか?

エネルギーとして消費されやすい特徴がある

中鎖脂肪酸は通常の油に多く含まれる長鎖脂肪酸と比較すると消化されやすく、速やかに肝臓に運ばれてエネルギー源となることが分かっています。

中鎖脂肪酸の代謝経路

そのため、中鎖脂肪酸は「消化吸収が早く、エネルギー源として消費されやすい脂質」といえます。

ほかの油と比較してより多く減量効果がみられた

中鎖脂肪酸の減量効果を調べたアメリカの研究の例を紹介します。
BMI27~33の成人男女に減量指導とエネルギー制限を行ったうえで、16週間にわたってMCTオイルを摂取したグループとオリーブオイルを摂取したグループを比較したものです。

どちらのグループも体重が減少しましたが、MCTオイルのグループのほうが体重や体脂肪量がより多く減った*2)との結果が得られています。
(16週間後の平均体重変化…オリーブオイル-1.4㎏、MCTオイル-3.2㎏)
*2)St-Onge MP, Bosarge A. Weight-loss diet that includes consumption of medium-chain triacylglycerol oil leads to a greater rate of weight and fat mass loss than does olive oil. Am J Clin Nutr. 2008 Mar;87(3):621-6.

MCTオイルをいつもの食事にプラスしてやせる?

サラダにオイル

メカニズムや研究報告を見ると、MCTオイルは「やせる油」にも思えます。

注意したいのは、
・体脂肪の増減は摂取エネルギーと消費エネルギーとの差で起こること
・「消費されやすい」のはMCTオイル由来のエネルギーであって、ほかの食材由来のエネルギーには効果が及ばないこと
・すでに蓄積された体脂肪を燃焼しやすくするわけではないこと
といった点です。

体脂肪の増減は摂取エネルギーと消費エネルギーの差で決まる

「やせる」にもいろいろありますが、一般的なダイエットとしては「体脂肪を減らす」ことを指すのではないでしょうか。

体脂肪がたまった状態というのは、使いきれなかったエネルギーを貯蔵している状態。
体脂肪を減らすには、「摂取エネルギーよりも消費エネルギーを大きくすること」で貯蔵した分のエネルギーを使うことが唯一の方法です。

MCTオイルにもカロリーはある

MCTオイルを使うことで消費されやすくなるのは、MCTオイル由来のエネルギーのみで、そのほかの食事については効果のあるものではありません。

また、MCTオイルにも1gあたり9kcalのエネルギーがあり、通常の油と同様です。
いくらMCTオイルが消費されやすい油だったとしても、もともと摂取エネルギーが消費エネルギーを上回った状態でMCTオイルを足すのでは、単にエネルギーの上乗せになってしまいます。

エネルギーになりやすいMCTにおいても、過剰な量を摂取していれば、脂肪として貯蔵される*3)ことが分かっています。
*3)青山 敏明.中鎖脂肪酸の栄養学的研究. オレオサイエンス3巻8号(2003)

足すのではなく「置き換えること」が必須

「体に脂肪がつきにくくする」としてトクホになっている製品でも、MCTオイルがオリーブオイルに比べて体重を減らしたとする研究でも、「通常の油と置き換えて使うこと」が前提です。

本来の使用用途、医療の現場ではエネルギー源として利用されている

もともと、MCTオイルは医療の現場で利用されていた油脂でした。

利用の目的は、
・未熟児や腎臓病を持つ人など、エネルギー(カロリー)を積極的に必要とする場合
・難治性てんかん患者、低体重の糖尿病患者など、ブドウ糖以外のエネルギー源が必要な場合
・消化器や脂質代謝に問題があり、通常の油脂(長鎖脂肪酸)をうまく利用できない場合
などです。

いずれも「やせるため」「体脂肪を減らすため」に使われているのではありません。
むしろ、「やせないため」「エネルギー確保のため」に使われているのです。

このようなことからも、「やせるためにMCTオイルをいつもの食事にプラス」ということが正しくないことが分かるのではないでしょうか。

MCTオイルについて、注意したいこと

中鎖脂肪酸は「飽和脂肪酸」

脂肪酸には、「中鎖」「長鎖」といったような分類とは別に、「飽和」「不飽和」という分類もあります。
「飽和脂肪酸」は中鎖脂肪酸にも長鎖脂肪酸にも存在します。

飽和脂肪酸は動脈硬化性疾患(心筋梗塞など)のリスクを高める

飽和、不飽和といった分類によって体内での振る舞いが変わるのも特徴です。

脂肪酸ごとの違い

飽和脂肪酸は血中の総コレステロール、LDL(いわゆる悪玉)コレステロールを増やす働きがあり、脂質異常症からの心筋梗塞などの動脈硬化性疾患のリスクを高める方向に働くことが分かっています。

食事摂取基準では7%エネルギー以内に

現在の日本人の飽和脂肪酸の摂取量は欧米諸国に比べれば比較的少なく、おおよそ7%前後となっています。

現在の摂取量ではあまりリスクが高いわけではありませんが、現状よりも多く摂取するメリットが考えにくいことから、現状以上はとらないように、と考えられています。

そのため、日本人の食事摂取基準2020年版では、飽和脂肪酸の摂取目標は「摂取エネルギーの7%以下」としています。

油脂は必要なものもあるけれど…

脂肪酸の中では食事からの摂取が必要な「必須脂肪酸」と呼ばれるものがあります。
そのため、厳しすぎる脂質の制限は必須脂肪酸の欠乏につながる恐れがあるため、おすすめできません。

ただし、エネルギーが高いことや飽和脂肪酸の過剰摂取による生活習慣病リスクなどを考えると、いくらでも食べていいもの、と考えることは難しいでしょう。

MCTオイルについては
・エネルギーとして消費されやすい
という機能性がある一方で、
・必須脂肪酸ではない
・生活習慣病リスクを高める飽和脂肪酸である
ということを考える必要があり、積極的に取り入れるべきもの、とは言えないと考えます。

参考文献

吉田勉 監修:「わかりやすい食品機能栄養学」.三共出版,2010.

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

日清オイリオ:「商品情報 ヘルシーリセッタ」

日清オイリオ:「MCTサロン そもそも「MCT」ってなに?」

日清オイリオ:「研究・技術開発 調理適正と栄養効果を併せ持つ食用油の開発」

日清オイリオ:「よくある質問 MCTオイル」

Kasai M, Nosaka N, Maki H, Negishi S, Aoyama T, Nakamura M, Suzuki Y, Tsuji H, Uto H, Okazaki M, Kondo K. Effect of dietary medium- and long-chain triacylglycerols (MLCT) on accumulation of body fat in healthy humans. Asia Pac J Clin Nutr. 2003;12(2):151-60.

St-Onge MP, Bosarge A. Weight-loss diet that includes consumption of medium-chain triacylglycerol oil leads to a greater rate of weight and fat mass loss than does olive oil. Am J Clin Nutr. 2008 Mar;87(3):621-6.

青山 敏明.中鎖脂肪酸の栄養学的研究. オレオサイエンス3巻8号(2003)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/3/8/3_403/_article/-char/ja/

NPO法人PDN:「Chapter2 経腸栄養 4.経腸栄養に用いられる製剤および食品 4.7 脂肪酸 ③中鎖脂肪酸(medium chain fatty acid: MCFA) 中鎖脂肪(medium chain triglyceride: MCT)」

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。