
身近なきのこのひとつ「しいたけ」には、どんな栄養素が含まれているのでしょうか?
加工方法によって栄養素量が変化したり、安全に食べるために注意が必要だったりと、意外な特徴があるようです。
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しいたけの栄養素
しいたけには菌床栽培されたもの、原木栽培されたもの、干ししいたけに加工されたものが存在します。
しいたけ各種の栄養成分から、しいたけの栄養価の特徴を見てみましょう。
生しいたけ(菌床栽培) | 生しいたけ(原木栽培) | 乾しいたけ | |
重量 | 100 g(8個程度) | 100 g(8個程度) | 12 g(8個程度) |
エネルギー | 19 kcal | 23 kcal | 22 kcal |
たんぱく質 | 3.0 g | 3.1 g | 2.3 g |
脂質 | 0.3 g | 0.4 g | 0.4 g |
炭水化物 | 5.7 g | 7.6 g | 7.6 g |
うち食物繊維 | 4.2 g | 5.5 g | 4.9 g |
ビタミンD | 0.4 ㎍ | 0.4 ㎍ | 1.5 ㎍ |
*1)文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成 |
カロリーが低い
しいたけを含むきのこ類全般は、エネルギー源となる栄養素が少なく、エネルギー(カロリー)が低いのが特徴です。
エネルギー源となる栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物)のうち、最も多いのは炭水化物ですが、その大部分はヒトが消化吸収できない「食物繊維」です。
天日にあてるとビタミンDが増える
しいたけを含むきのこ類に特徴的なのが、天日にあてる加工によって栄養素(ビタミンD)の含有量が変化すること。
ビタミンDは食事中のカルシウムの吸収と骨をつくる作用を促進するはたらき、体内で作られてしまったがん細胞の増殖を抑制するはたらきがある栄養素です。
きのこの中にはこのビタミンDのもとになる「プロビタミンD」という成分が存在し、紫外線を浴びることでヒトの体内で利用できるビタミンDに変わることが知られています。
そのため、生のしいたけよりも干ししいたけでよりビタミンDが多くなっています。(天日干し・熱風乾燥など、製造方法によって大きく差があります)
現在、市販の干ししいたけのほとんどは紫外線のあたらない熱風乾燥が主流ですが、調理前に1時間程度日光に当てるだけでも、ビタミンDは7.5-24倍(光を当てる面の違いによる)に増えることが報告*2)されています。
ちなみに、日光によってビタミンDが増えるのは干ししいたけに限ったものではなく、生のしいたけでも1.5-3.5倍程度に増えることも報告*2)されています。
*2)竹内 敦子, 岡野 登志夫, 和田 知子, 須藤 都, 新谷 有美, 小林 正. 日光照射によるしいたけ中のビタミンD_2増量効果. ビタミン 65 (3), 121-124 (1991)
うまみ成分の「グアニル酸」を含む
かつお節にはイノシン酸、昆布にはグルタミン酸といったうまみ成分が含まれており、これらの成分を煮出すことで「だし」として使われています。
きのこにも「グアニル酸」といううまみ成分のもとになる「核酸」が含まれており、加熱する過程でグアニル酸に分解され、うまみ成分が増えることが分かっています。
分厚い冬菇、薄い香信の違いは?
しいたけは分厚い「冬菇(どんこ)」と薄い「香信(こうしん)」に分けられます。
いずれも違う種類のきのこではなく、同じしいたけからとれます。
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であり、栄養価にも違いはないため、料理に合わせて使い分けるのがよさそうです。
しいたけの利点を生かした使い方
低カロリーでビタミンDを含み、うまみ成分を含むしいたけの強みを生かすには、どのような使い方がよいのでしょうか?
低カロリー食材として
しいたけをはじめとしたきのこ類はエネルギーが低い食材です。
しいたけ1つ分が12g程度と考えても、1個当たりのエネルギーは2.5kcal程度。
ごろっと大きめのカットで料理に加えれば、食事全体のカロリーを抑えたまま、ボリュームアップにつながります。
うま味も強く食べ応えがあるので、ダイエット中でも満足感が得られやすそうです。
しいたけを含むきのこ類全体の栄養価について詳しく解説した記事はこちら |
ビタミンDの給源として
しいたけは日光に当てるとビタミンDが増えることが知られていますが、人間も皮膚に紫外線が当たることで、体内でビタミンDを作り出しています。
しかし、冬場や梅雨などの日照時間の少ない時期や、ほとんど日光に当たらないような生活をしている人では、体内で作られるビタミンDが少ないことが予想されます。
体内で生成されるビタミンDの不足分を、干ししいたけや魚類などのビタミンDを豊富に含む食品を食べて補うことができます。
干ししいたけなど、長期の保存ができるものに関しては、日光にあててから時間がたっていても、6か月以内であれば60%以上は残る*3)ともいわれています。
*3)桐渕 壽子.紫外線照射条件の違いによるキノコのビタミンD2生成量の比較および保存中における変化 紫外線照射によるキノコ類の効果的利用 (第5報)日本家政学会誌,43巻7号(1992)
干ししいたけを買ってきたら、天気のいい日にまとめて日に当てておいたり、使う前に日にあてる時間をつくることで栄養価を高めることができます。
うま味をプラスするための「だし」として
しいたけなどのきのこ類にはグアニル酸が含まれていますが、生よりも乾燥させたもののほうが細胞が壊れているために成分が出てきやすい状態にあります。
生のしいたけではなく干ししいたけがだし取りに使われるのはこういった理由があるためです。
また、ゆっくり加熱することで、よりたくさんのグアニル酸がつくられるので、
・干ししいたけを一度水で戻して成分が出入りしやすい状態にする ・グアニル酸がつくられやすいようにゆっくり加熱する |
という方法がおすすめです。
しいたけの健康効果と注意点
しいたけは魅力的な食材である一方、低カロリーやビタミン以外の健康効果も期待されているようです。
しいたけに期待されている健康効果の実際の期待値と、摂取するときに気を付けたいポイントについて解説します。
脂質異常症に効果アリ?
しいたけに含まれる成分「エリタデニン」に血中コレステロール値を下げるというウワサがあり、多くのメディアで紹介されています。
しかし、現時点ではヒトでの効果は十分には検討されていない段階で、「しいたけを食べると(またはしいたけの戻し汁を摂取すると)コレステロールが下がる」とは言えません。
国立健康・栄養研究所でも、コレステロール値低下のためにしいたけ製品の摂取は推奨していないとのことなので、過剰に反応しないようにしたいですね。
加熱不十分は皮膚炎のもと
また、加熱不十分なしいたけ及びしいたけの戻し汁によって、「しいたけ皮膚炎」が起こることが知られています。
通常の調理でも、健康増進目的でも、加熱不十分なしいたけを摂取するのは避けましょう。
まとめ
しいたけの栄養素には様々な特色がありますが、しいたけの第一の魅力はそのおいしさ。
栄養素の摂取源としても大切ですが、あくまで食材のひとつとして、おいしく食べられる方法で取り入れるのがよさそうです。