
親しみ深い食材でありながら、健康的なイメージも強い納豆。
さまざまな健康効果が期待され、サプリメントの素材としても使われているようですが、納豆にはどんな健康効果があるのでしょうか?
注目の食品成分のはたらきとともに、紹介します。
Contents
納豆に含まれる注目の成分
納豆に含まれる成分のうち、健康効果が注目されているのは
・ナットウキナーゼ ・大豆イソフラボン ・納豆菌 |
といったもの。
これらはいずれも必須栄養素ではありませんが、さまざまなはらたきをもつようです。
効果はある?納豆の機能性成分の現在分かっている効果について
ナットウキナーゼで血栓が溶ける?のウワサ
納豆菌が発酵の過程で作り出すナットウキナーゼという酵素には血栓溶解作用があることがわかり、将来的には動脈硬化、脳梗塞を予防できる可能性が期待されています。
しかし、血栓の溶解作用が見られたのは試験管内での実験で、人での実験ではないため、「納豆を食べれば血液サラサラ」と単純に考えることはできません。
ナットウキナーゼはたんぱく質でできており、口から摂取した場合には胃酸や消化酵素などによってその働きを失ってしまうと考えられ、血管内に届いて効果を発揮することまでは期待できないのが現状です。
よって、今のところは納豆やナットウキナーゼを取り入れることで血液についての何らかの健康効果を得られる、とは言えないようです。
反対に、納豆には血液凝固因子の成分であるビタミンKが多く含まれるために、抗凝血剤を服用中の人では、納豆の摂取が制限される場合もあります。
血管系の持病がある人は医療機関への相談をおすすめします。
大豆イソフラボンの作用は女性ホルモンの補助
納豆を含む大豆製品には、「大豆イソフラボン」が含まれています。
大豆イソフラボンは女性ホルモンのひとつ・エストロゲンと似た構造をもつことから、更年期以降に分泌量が低下する女性ホルモンの働きを助ける作用が期待されています。
現時点では、大豆イソフラボンの機能として
・閉経後、女性ホルモンの減少による骨粗しょう症リスクの軽減 ・更年期の血管障害(ホットフラッシュ)の軽減 |
といったはたらきが報告されています。
納豆として摂取した場合の効果については報告がないため必ず効果があるとはいえませんが、大豆イソフラボンを含む大豆製品のひとつとして、毎日の食事に取り入れるメリットの一つになりそうです。
納豆菌は善玉菌を助ける
また、納豆菌は胃酸に強く、生きて腸まで届いて腸内の善玉菌の働きを助ける作用があることが知られています。
薬の代わりになるほどの期待はできませんが、便秘が気になった時には納豆の作用を試してみるのもいいかもしれません。
効果を生かす組み合わせは?簡単レシピも紹介
納豆の健康効果としては、
・更年期の血管障害や閉経後の骨の健康維持に ・納豆菌と食物繊維が善玉菌を助ける |
といったことがあげられそうです。
骨の健康には納豆に加えて骨の素材になるカルシウムを、お腹の調子を整えるにはさらに食物繊維をプラスしたメニューで納豆を食べるのはいかがでしょうか?
【レシピ紹介】骨の健康維持に。 納豆+干しエビ+ゴマのチヂミ
【材料】2人分
納豆 | 1パック(50g) |
ニラ(5㎝幅に切る) | 1/2束(50g) |
干しエビ | 5g |
卵 | 1個 |
水 | 100ml |
薄力粉 | 110g |
ごま油 | 大さじ1(12g) |
しょうゆ | 大さじ2(30g) |
酢 | 大さじ1.5(20g) |
ラー油 | お好みで (ごま油でも可) |
白いりごま | 小さじ1(3g) |
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
【作り方】
1. ボウルに卵と水を入れて泡だて器でよく混ぜる。
2. 薄力粉を入れて混ぜ、納豆、ニラ、干しエビを入れて混ぜる。
3. フライパンにごま油を入れて加熱し、温まったら2の生地を流し入れて中火で焼き色がつくまで焼く。
4. 裏返して両面を焼き、焼きあがったら四角く切り、皿に盛る。
5. たれの材料をすべて混ぜ、食べるときにつける。
【栄養価】1人分397kcal カルシウム260㎎(1日の必要量の約40%)
カルシウムたっぷりの食材を組み合わせたスタミナメニューです。
納豆のにおいも気になりにくいので、納豆が苦手な人にも挑戦しやすいメニューです。
納豆をサプリとして取り入れるメリットはある?
機能性成分や健康的なイメージから、納豆を取り入れたサプリメントや健康食品も数多く販売されています。
納豆や納豆の成分をサプリメントとして摂取するメリットはあるのでしょうか?
ナットウキナーゼのサプリは…
上述の通り、ナットウキナーゼを経口摂取した場合の血栓溶解作用は確認されていません。
また、ナットウキナーゼを含む製品によって薬物性肝障害を起こした例も報告されています。
よって、現時点ではリスクはあってもメリットは期待できませんので、ナットウキナーゼを含むサプリメントを積極的に摂取する意味はあまりありません。
イソフラボンのサプリは…
大豆イソフラボンに関しても、サプリメントなどからのとりすぎに注意が必要です。
納豆など、通常の食品として摂取する分には安全であると考えられていますが、サプリメントや健康食品など、大豆イソフラボンを濃縮・強化した食品では、過剰摂取につながりやすく、子宮内膜増殖症などをおこした報告もあります。
大豆イソフラボンはとればとるほど良いというものではありませんので、納豆のような食品についても、サプリメントや健康食品についても、偏った食事はせず、いろいろなものを食べるようにしたいですね。
まとめ:機能性成分よりも、おいしく食べることが大切
納豆をはじめとした大豆製品に含まれる機能性成分が注目されていますが、はたらきはいずれも限定的で、たくさん食べれば食べるほど良いというわけでもありません。
機能性成分に頼らなくても、納豆はたんぱく質を豊富に含む栄養価の高い食品です。
納豆の栄養価について詳しく解説した記事はこちら |
薬のような効果を期待するよりも、おいしい食事の一部として取り入れるのがよさそうです。
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
参考文献 吉田勉 監修:「わかりやすい食品機能栄養学」.三共出版,2010. 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(ダイズイソフラボン、ナットウについて) Sumi H, Hamada H, Tsushima H, Mihara H, Muraki H.A novel fibrinolytic enzyme (nattokinase) in the vegetable cheese Natto; a typical and popular soybean food in the Japanese diet.Experientia. 1987 Oct 15;43(10):1110-1. 細井 知弘.Probioticとしての納豆菌の作用―腸内菌叢と腸管免疫システムに対する作用―日本醸造協会誌 / 98巻12号(2003) 須見 洋行.世界に誇る納豆 : その効能成分(<シリーズ>教科書から一歩進んだ身近な製品の化学-和食の化学-)化学と教育 / 63巻7号(2015) |